「浅野弥衛の作品を」とお声がけをいただきましたのは、昨年のことでした。
ただ、お集めになられている作品の本流とは違った目的、お考えもお含みなってのお求めでいらしたので、「いつもの作品たち」のなかにこの作品をお飾りになることに少しの戸惑いをお持ちでいらしたのだと思います。
ですから、他の作品のお納めの際に、この作品をお持ちしてご一緒に飾り心地を感じさせていただくことに致しました。
もしお客様が少しでも違和感をお持ちでいらしたら必ずお伝えください。私も必ずそうさせていただきます。
そのようにお伝えをしてからの訪問となりました。
画商は本来「風呂敷画商」が本筋であると思っています。
お客様のお宅に長く通わせていただき、お客様のお好みやお部屋に飾り映えがするのではないか?という作品を幾つか風呂敷に包み、お客様とご一緒にその場での作品の雰囲気を感じ、相談させていただく。
佐橋も若いころはそうして仕事をさせていただいて参りました。
けれど、時代がかわり、ましてコロナなどの問題も重なり、又、訪問というスタイルも引きこもりがちな性格の佐橋と私には似合わず、第一に体力もなく、、ですからせめてもという気持ちで、店を「おうち風に」設えさせていただき、当店の作品をご自宅などに飾られたらどうなるか?想像をしていただきやすい環境を整えたいと思いました。
ご自宅とは別に作品をお並べになっていらっしゃるマンションの一室
ギャラリー?と思えるほど素敵な空間にお邪魔させていただきました。
羨ましくなるような微笑みのお優しい奥様もお待ちくださっていました。
どうだぁーーーという虚像は一切なく、それでも品よく、ご夫婦お二人のお心をいっぱいに感じさせていただくおもてなし。
いちご一粒、お茶の一杯の美味しさに感動し、勉強にもなりました。(「古都華」という品種とお聞きしました)
さて、浅野作品を実際に壁に掛けさせていただくと、白地のクロスに白いマットが埋没し、ピン!とこない印象。
また別の場所に掛けさせていただいても、こちらは全くダメ。
一応最初に飾らせていただいた場所に戻しましたが、私の心に葛藤が生まれました。
「せっかく伺ったのだから、何とか作品をお納めしたい」邪心。
「ピン!とこないことをお伝えしたほうがよい」素直な気持ち。正義感。
情けなくも迷い、しばらく頭を冷やそうと別のお部屋で風呂敷などの整理をしているとお客様が私をお呼びくださる声がしました。
「ここならどうですか?」
画像がまずく申し訳ございません。
「お~🥰」初めに掛けさせていただいた壁の反対側、椅子の黒に作品が響きあって、ピン!ときました。
書斎でいらっしゃるので、椅子も定位置。常に響きあってくれます。
この場所を奥様がご提案くださったと後から知りました。
こうして、私は自分の心の迷いを恥じ→何とも申し訳なく→深い深い感謝の一日を過ごしました。
そしてこんなに素敵なバラの花のお土産まで頂戴いたしました。
利行作品は店にある時より、ほんの少し黄色が強く見えました。
けれど、広い壁面ということ、また一緒にお飾りになっていらっしゃる作品や設えに少し茶色系、黄色味があることが作用し、このお部屋で作品が「利行の絵」として堂々と成り立ち始めました。
昼夜の日の当たり方、スポットの当て方、設え、全てに反応しながらその場を落ち着かせて見せるのが良い作品の証拠だと納得もいたしました。その反応を敏感にお感じいただくのがコレクター様の感性です。
お誘いをいただくお客様のお宅に伺いたいと思う気持ちは勿論強くありますが、いまはまだそうそう体が動きません。
慣れた自分の店でお客様をお待ちし、ときどき作品をお飾りになられている画像を見せていただいたほうが気も楽で、結局お客様とも長いお付き合いができるように考えています。
ですから、ときどきこうして「突撃!お客様のギャラリー(^▽^)/」的なことをはさみながら、今できることを一生懸命行い、心静かに皆様のご来店をお待ちしたいと思っています。
最後の最後にこんな可愛らしい根付の作品をお見せくださいました。
「無事かえる」
そういうお見送りのお気持ちもありがたく頂戴いたしました。
「お納めのあとに」
「M氏のコレクション」
同時にお楽しみいただきました。M様、奥様、お世話になりまことにありがとうございました。
さて、鳥海展を楽しみにしていてくださると何人かのお客様よりご連絡をいただいております。とても嬉しく存じます。
ありがとうございます。
この展覧会のことは、また少しづつ書かせていただきます。よろしくお願い申し上げます。