神戸の小磯記念美術館にお出かけになられたお客様より、絵葉書のお土産をいただきました。
「人形」1970年 油彩・キャンバス 72.5×53.2㎝
割と大きな作品なのですね。記念美術館さんには何度かお邪魔していますが、この作品は私の記憶では
拝見したことがありません。
1970年というのは小磯良平の一番良い時、佐橋はその前後5年を小磯の黄金期と呼びます。
西洋人形だと思いますが、ふっくらとした頬、人形らしい足の置き所などとても可愛らしいですね。
また小磯らしいベージュと基調とした色使いも私は好きです。
(それにしても、この座面の横に添えられたピンクの四角いものはなんでしょうか??携帯?
佐橋は後から先生が足したんだよ。色が寂しいから~と言っていますが本当でしょうか?)
小磯作品に登場する人形は、人形としてそこにあります。私たちと日々、一緒に暮らしてくれる人形です。
人形は物を言わず、こちらが明るい気持ちで微笑みかければ、微笑み返してくれる。
こちらが寂しいよと言えば、寂しいねと返してくれる、そんな存在ではないでしょうか?
小磯は誰よりも卓越した技術と、センスで、近代日本の洋画壇に大きな仕事を残しました。
日本画の杉山寧と同じように、あまりに技量がかち、一見その作品に冷たさを感じますが、
「小磯は筆を動かせば動かすほど、無に近づき、時間を止めてしまう。」
「その作品を鑑賞する私達も、感動しながらも、心を静かな世界、生死ギリギリの無の世界に導かれる。」
という印象を今私は強く持っています。
先日あるブティックに初めて伺ったとき、小磯のリトグラフをお飾りでしたので
「良い作品ですねぇ~皆さんよくご覧になられるでしょう。」とお声がけすると
「そうなんです。婦人ものが多いのですが、男性の方達が店のこんな奥にある絵をショーウィンドウから見つけてくださるのですよ」
とおっしゃいました。
「お医者様?」とお聞きすると
「そう!お医者様が多いです。」とお応えくださいました。
小磯ファンがお医者様に多いのは、製薬会社のカレンダーのせいだとばかり今まで思っていたのですが、
この頃どうもそれだけではないぞ。。ふむ、怪しい"(-""-)"と考えはじめています。
お医者様に杉山と小磯のファンが多くていらっしゃる理由をいつか突きとめたいと思っています。
ヒントはこの人形かもしれません。
お医者様が人間をどのように?また人間としてのご自分をどのようにお感じになられているか?
に答えがあるような気もしています。
以前4号の作品を持ち、かなり研究させて頂いたので、しばらく小磯作品にはご縁がないのかもしれませんが
もういちど、あの小磯の無の力、空間の支配力、重みを味わいたいと願っています。