つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

蘭の花

2023年06月26日 | 日記・エッセイ・コラム
ランの花は、私の子供時代にはあまり見ることがなかったお花だと思います。

その白い花は、慶弔、どのようにでも使い道がありますし、なんといっても時々お水をあげれば長く咲き続けるので見栄えも良く、この頃では入手も簡単になりました。

今のこの梅雨から夏にかけての季節は、水が傷みやすく、生花のお世話をするのが大変ですので、諸々セットで葬儀社さんから私の自宅に運ばれてまいりましたこのランの鉢の花はなんとも便利で、なんとか四十九日の法要まで元気にその花を保ってくれないかとさえ思っているところです。










もっとも頼りになるものは、結局、時の流れであるということだけだと、この頃つくづく感じます。

どうしようもない事実に直面すると、人は自分を守るために体と心を自然に閉ざそうとするものです。

けれど、そうした省エネモードにありながら、必ずわたしは生きている。

その閉じこもった小さな穴蔵からでも、この1か月、私は色々な物に見ようとしたのだとなと今強く感じています。

そしてそこから見える景色は、今まで見てきたものより案外新鮮で、しかも深く感じ入ることの多いものでした。











動きが早く、敏感でなかなか写真におさめるのが大変でしたのでご覧になりにくいかと思いますが、お分かりになるでしょうか。


自宅にイモリが長く棲みついている事は知っていましたが、こんな門灯の小さな穴に出入りしていたとは今まで
気づきませんでした。


気づいてしまったら、、

何か気配を感じると、とても慌てて、体のバランスを崩しながら必死で穴蔵に隠れようとするその姿に
どこか自分を重ね合わせ、つい毎日その様子を見たいと思うようになりました。


命を尊ぶというよりも、今私の目の前に、生きて一緒に居てくれるもの。

私にイキイキとした姿を見せてくれる雀、燕などの鳥も、家に住み着く小さな虫達も(蚊は別として)
みな心通わす大切な友達のように思えてきました。


そして、蘭のお花も便利で綺麗かもしれないけれど、少し街を歩けば見られる今だけの季節に咲く花、
紫陽花や立葵、ひまわりの花の堂々と生きる姿に心癒される時間が、この1か月の私を支えてくれていたのだと思えました。

「今の自分の命」を感じさせてくれるもの。

それが美というものの本質ではないだろうか。

ふとそんなことを考え始めたのでした。


つづく

























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お別れの後に

2023年06月24日 | 日記・エッセイ・コラム
長くブログの更新をお休みさせていただきました。

何のお知らせも差し上げず、1ヶ月もの間お休みをいただきましたのにも関わらず、以前の日々と同じように多くの方にここにアクセスをしていただきました。

皆様の「何かあったのだろうか?」というご心配のお気持ちと「次の更新を待とう」という応援のお気持ちを、何もできずにおりました日々にも確かに受け取らせていただく事ができました。


数字というものへの信頼を今まで持つことができませんでしたが、数字も人の生み出した美しい芸術。「アクセス数」というものにさえ救われることがあるのだと感じる日々でございました。

みなさま、まことにありがとうございました。


5月も後半に入ります頃、かねてから膠原病と難病の闘病を続けておりました店主、佐橋雅彦が亡くなりました。

急なお別れでした。

この日のことを振り返るのは、まだ辛く何もお伝えできませんが、佐橋を亡って一週間を自宅で過ごし、その後ひとり、恐る恐る店に出てみますと、店は一週間前と何も変わらずシーンと静まりかえり、佐橋と共に集めて参りました作品たちも私に何かを語りかけることもなく、ただ壁に吊るされているばかりでした。

2人で育み、お客様にお通いいただきました店にポツンとひとりきり。

仕事というものの現実を、重く、厳しく受けとめなければならない時間でした。

そして、各お客様にお楽しみいただきます場所を守る為に、この現実を佐橋はひとりで長く受けとめてきてくれたのだと改めて感じました。




先のことはまだ何も決めておりませんが、通常通りとはいかなくても、7月よりとりあえず店の営業を再開させていただこうと思っております。

みなさまに何かしていただきたいということは全くございません。

どうぞ、いつものまま時々このブログにお立ち寄りいただけたらと存じます。

少しずつ記事の更新をさせていただきます。

よろしくお願い申し上げます。



令和5年6月23日

佐橋美術店
佐橋夏美



コメント (1)
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