台風が近づいて、名古屋は風が強くなって参りました。
皆さまのお住まいの地域ではいかがでしょうか。
さて、当店の展覧会のご案内の前に、先日伺ったクリムト展について少し書かせていただこうと思います。
といっても、クリムトについてはウィーンにご旅行に行かれたり、また各展覧会や画集などで、きっと皆様のほうが画家自身のことや作品についてお詳しいだろうと思いますので、今回は「私はクリムトのどこか好きか?」についてだけ触れさせていただこうと考えています。
まず、好きだなぁと思った作品の絵葉書のご紹介を・・
黄金様式の時代の作品を除いてはこんな絵葉書を求めました。
代表作といえば、代表作ですね。
クリムトは1862年7月14日ウィーンの金工師の家庭に生まれました。
家族を大変大切にしたといわれたクリムトは、若い頃に父や妹・弟の死、また母や姉の鬱病に接し、人の生死について深く感じ、考えながら自身の人生を歩んだようです。
クリムトがどのように優しい人であったかは上の写真からも想像できるように思います。
クリムト19歳〜20歳ころの作品です。
クリムトの素晴らしさは
その〝描く線の揺るぎない美しさ〟と、
描くという行為の〝丁寧さ〝にあるように思っています。
ウィーン工芸美術学校で共に学んだクリムトとフランツ・マッチュが同じモデルを描いた作品です。図録の解説には「肖像画の注文制作でなく、おそらく学校の課題であったと考えられる」とあります。(向かって左がクリムト作品です)
この少女の肖像画はどちらも大変素晴らしい作品だと思い、感動いたしました。
どちらの作品も描かれた少女の表情はちょっと哀しげです。そして大変美しい。
お好みにもよると思いますが、やはり私はクリムトの作品の方に興味を持ってしまいます。
マッチュは「悲しげな少女を見ている」
クリムトは「少女の悲しみのひとつに触れたいと思っている」
そんな印象を受けてしまいます。
今回の展覧会で、クリムトがいかに日本の美術、特に工芸品に興味を持ち、その技法を多く学んでいたかを理解することができました。
そしてそれを踏まえ、黄金様式の時代に、クリムトがクリムト独自の画境を展開してゆきます。
琳派の時代も、そして現代も日本画に金を用いる技法はさかんに行われますが、このクリムト作品のように「黄金という色の持つ儚さ」を表現できる画家はなかなかいなかった、また居ないと思えます。
まさにクリムトの〝金色〟です。
今回のクリムト展では1〜8章の区分に分けて作品を展示、紹介してくださっています。
最後の第8章「生命の円環 」のブースに展示された作品達を拝見すると、クリムトの心のうちを少し感じ取れる気がいたしました。
東京でのこのクリムト展では57万人の来場者があったとお聞きしました。
よくある夏休みの美術館イベントであるかのようでありますが、なかなかに奥の深い展覧会。
きっとどんなに幼い方のお心にも、クリムト作品は何かを伝えてくれるように思います。
よろしければ、ぜひご家族皆さまでご鑑賞くださいますようお願いいたします。
豊田市美術館 10月14日まで