つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

求め合う心

2021年01月29日 | 画家の言葉

情致の線の局所を求め工夫致居候。

局所は美にてはなく超越的玄妙なるものに帰し可申存候、

美を八釜敷云出したるは西洋舶来にて

東洋的には美は極致には無之候。

              小川芋銭



趣のある描線の極みを求めて色々工夫してきたのです。

その求める極みは、「美」に繋がるものでなく、どうやらそれを超越した世界、

つまり幽玄の世界、無の世界に至る道筋にあるように思えます。

「美」について、とやかく言い出したのは西洋舶来文化であって

東洋的には「美」の概念は芸術の求める極致には存在していないように思えます。




誠に勝手な解釈ながら、私は芋銭の言葉をこう捉えさせていただきました。


さて、先のいくつかの記事に書かせて頂いたように

身土不二。

また1960年代から始まるカッコイイ。


から察するに、私たちには今


せっかくこの日本に育んできた美意識をどこかに忘れてきてしまったか??

或いは初めから持っていなかったのか??という疑問がわいてきます。


勿論、私にもその答えは持ち合わせませんが

唯一、少し分かったことがあります。


それは、


佐橋美術店が多く選ばせていただく作品達が持つ情致は、どうやら「美」「かっこよさ」に繋がるものではなく

玄妙の世界。筆を動かし続けた者だけが至る境地に由来するものである。


ということ、そして


それならば、「かっこいい」や「美」を越えて。。。

私たち「鑑賞者」も、美術鑑賞を通して、更なる高みに自分を精進させていくことができる!


ということです。


美意識やカッコイイの感覚は生理的なもの。

その感覚をさらに超えて、もっと自由で広い世界に誘ってくれる作品達をこれからも求めていきたいと思います。



絵の上手い!下手!を超える、絵がわかる!わからない!を超える作品。


ひたすら自然、宇宙に帰ろうとする作品。


そして、唯一、生きる愉しさをひそかに讃える作品を!です。




本日も最後までお読み頂き光栄に存じます。ありがとう存じました。




本日ホームぺージの更新をさせて頂きました。

よろしければご覧ください。

佐橋美術店 ホームページ




























コメント (5)
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美学講座へ

2021年01月28日 | 日記・エッセイ・コラム

どうしても受けてみたいと思う講座を見つけたので、12月と1月の2回だけ受講させていただくことにいたしました。

と言っても文化センターの講座ですので、堅苦しいことはなく芸能人のお話なども混じえ、平明な内容の講座でした。

講師は大学で美学をご研究なさっていらっしゃるお若い先生でいらっしゃいました。

テーマは「かっこいいの美学」

特に私の受けさせていただいた2回の講座は「かっこいいの定義」「かっこいい生き方」をテーマにしたお話でした。


日本にカッコイイという言葉が今のように頻繁に使われるようになったのは、まだ歴史が浅く1960年代のことだそうです。
まさに戦後、私の生まれた時代からということになります。

英語のcoolやフランス語のchicが主に「カッコイイ」の意味になります。

日本語では恰好がいい(格好がいい)という言葉は既に存在していて、元々は「適切である」とか「うってつけ」の意味が強かったようです。「恰好の餌食」などという言葉が日本にはありますね。

が60年代以降はアメリカロック的な自由な若者の新しいかっこよさ、それと同時にヨーロッパ的な高級な大人の知的なかっこよさの2つの概念が主流となり日本独特の「かっこいい!」の概念を育んできたようです。手っ取り早く言えば破壊と防備。革新と保守。外国のそんな対立する概念が戦後の日本のカッコイイを生んだということでしょうか。

どうしてカッコイイの美学に興味を持ったかといえば、結局今現在の「カッコいい」という私達の概念が「美しい」に繋がり、美術品への興味、アートばやりの現象を起こしているのではないか?という疑問を常々持っていたからです。


カッコイイ!と思う対象は人によって確かに随分違いますが、例えば室町時代の絵画と江戸期の絵画、どちらをカッコイイと思うかか?と聞かれたら、多くの方が、江戸期の作品の方にカッコいい!とおっしゃるのではないか?特に外国の方達は北斎や若冲などを選ばれるのではないか?

厳重に管理されたお教室でマスクをして受講させていただいた講座で、結局「こうだ!」という答えは見つかりませんでしたが

1960年代の若者が1番カッコいいと思っていたのは三島由紀夫。世界ではケネディ大統領。そんな情報は沢山得ることが出来ました。



この講座をきっかけに考えさせて頂いた事と

当店のホームページの1月の画家の言葉👨‍🎨



情致の線の局所を求め工夫致居候。

局所は美にてはなく超越的玄妙なるものに帰し可申存候、

美を八釜敷云出したるは西洋舶来にて

東洋的には美は極致には無之候。

              小川芋銭


について次回また少し書かせて頂こうと思っています。




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ストーリー

2021年01月28日 | 絵画鑑賞
コレクションを続けてゆく時の、作品集めの動機の一つに各画家のもつ「ストーリー」が大切になっている気がいたします。

そして、このストーリーを特に大切にされるのは、間違いなく男性のコレクター様だと思っています。


長谷川利行には利行のストーリー

佐伯祐三には佐伯のストーリー

青木繁にも松本竣介にも、夭折の画家のもつ独特な人生のストーリーがあります。

浅井忠や岸田劉生、、興味を持てばキリがないほど、画家達は実に特別な人生を歩んでいます。



各々の人生のストーリー自体が、その個性的な作品を生んだと言えばいいのだと思いますが、
特に近代日本美術を鑑賞するときには、その画家の持つストーリーは一編の詩となって作品を更に魅力的なものにしていると言えるように感じます。


勿論日本画にも同じ様なことは言えますが、

特に近代日本画の場合は、関東なら今村紫紅を加えた紅児会の周辺の画家、京都なら土田麦僊を中心とした国画制作協会周辺の画家達の動き、或いは作品に、皆さまが独特の「香り」を感じてくださっているように思います。


私は関東に生まれたので、やはり紅児会参加の画家達の切磋琢磨を「かっこいいなぁ」と思って参りましたが
名古屋に長く住むようになって、今ではかなり国画制作協会の画家たちの作品に魅力を感じる様になりました。

身土不二。

人生のストーリー無くしてはその画家の作品が語れないように、鑑賞者にも与えられた人生、環境が生む思考、趣向があることに気付かされます。









さて、今日はどんな作品に自分を遊ばせましょうか。


お寒さがまた戻ってくるようです。
寒明けまであと少し、、どうぞお体をお大切にお過ごしください。



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ランプ屋さん?

2021年01月23日 | お納めの前に
今日、ご来店くださいましたお客様がドームのランプをお求めくださいました。

久しぶりにお会いするお客様。ご来店いただき、大変嬉しくなりました。

ランプは沢山持っているわけではありませんが、必ず一つか二つ、小窓のカウンターの上などに飾らせていただいています。

今日のお客様は何度か店の前をお通りくださり、このランプ達をお見かけくださったようです。







電球、スタンドとしての機能はほとんどありませんが、「灯り」という意義ではこれほど空間にムードを与えてくれるオブジェは他にはないなぁと日々感じます。

今日まで店のカウンターや本棚を照らしてくれていたランプが、これからお客様のお宅のお部屋に温かい灯りを灯します。

どうかご家族皆さまを癒し、お健やかなお暮らしを見守ってくれますように。

絵画と同じように、ランプにもお別れを伝えました。






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テレビ鑑定団に思う

2021年01月23日 | 日記・エッセイ・コラム
初めてお会いする方に、私たちの仕事のことをお伝えすると、お話のきっかけとしてテレビ鑑定団のことに触れてくださることがあります。

「あれは本当に何千万もするんでしょうかねぇ〜?」

想像以上の長寿番組となり、鑑定団の鑑定家たちの中には私たちよりお若い画商さんたちが登場されるようにもなりました。

決まって見てはいませんが、たまたま見させていただくと、大概、というかほとんど評価額がずれてしまうし、ひどいときは偽物に
「う〜ん、なかなか良い作品だねぇ」と2人で感動してしまったりするので。。少し横目で「見学させていただく」程度に見ることにしています。


先日の特集では、3点並べられた作品のどれが本物か?というクイズ形式で番組が進められていました。
丁度棟方志功の木版画作品が出題されましたので、棟方作品を数多く見せていただいてきた佐橋は自信たっぷり!
2人でしばらく番組を見ることにしました。




そして、番組内ではどなたも正解できなかった「本物」を見事に当てました。
「くちなし妃の柵!」

ところが、、、白隠の肉筆画の出題になると。。。









佐橋は「さわっとらんもんなぁ〜」(見事な名古屋弁!扱ったことがないものなぁ)と言いながらCを。
私は「白隠は得意!」と言いながら「Aではないだろうけれど残りで迷う。けどやっぱりCか?」と選んだところ

2人とも見事に大外れ❌

Bが正解でした⭕️


というような恥ずかしいことばかりですので、少なくともテレビ鑑定団が放送されている間は📺
私たちは画商ですと偉そうに言ったり、図図しくブログを書かせていただいたりすることもできないのですね😭



今週もお寒い中をご来店くださいましたお客様、またご連絡をいただきましたお客様に心より感謝申し上げます。

大寒、そして冬土用に入りましたので、皆様どうぞ胃腸を整え、お風邪など召されませんよう十分お気をつけくださいませ。











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