つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

花森安治の仕事  碧南市藤井達吉現代美術館

2017年05月04日 | おススメの展覧会、美術館訪問

 

昨日は碧南市藤井達吉現代美術館に伺い

「花森安治の仕事ーデザインする手、編集長の眼」を拝見しました。

 

NHK朝のテレビ小説「とと姉ちゃん」で話題になった雑誌「暮しの手帖」の

創刊者でもあり、編集長であった花森氏の描いた作品と編集者としての仕事内容についての

展覧会です。

碧南は少し遠いですし、始めは伺うつもりはありませんでしたが、

お近くのSHUMOKUギャラリーのオーナーさんが

「花森さんは佐野繁次郎のお弟子さんなんですよ。だから作品もとても面白いです」と

教えててくださったことがきっかけで、出かけることになりました。

 東京帝国大学文学部美学史学科を卒業した花森氏は学生時代から

知己を得ていた佐野繁次郎が手掛けていた伊藤胡蝶園の広告の仕事を手伝うようになり

挿絵や編集の世界に身を置きはじめます。

 

花森氏の線はどれも大変な集中力のもとに丁寧に引かれ、隙がありません。

また戦争体験を通し、「暮らす」ということの本当の意味を深く知り、

自ら真剣に日々を暮そうとした人の温かな線であるように感じます。

 

 

暮しの手帖という雑誌は、幾度も「商品テスト」を繰り返したことでも話題になりました。

私達が一番惹かれたのは「クレヨンとクレパスの商品テスト」です。

なんと!本物の画家、、梅原や三岸、小磯といった大画家がその商品テストを行った

ことに驚きました。

商品テストの仕方も画家それぞれで

たとえば三岸節子は他の画家が四角か長方形に色を塗っていくのに対し、一人だけ

大きな〇で色を塗っていく

梅原はおおよそどのクレヨン、パスの評価にも◎をつけてしまう寛容さ、

伊藤清永は必ずすべての色を濃く、また薄くぬり、清永の画風らしいクレパスの扱い方、

小磯は微妙な色の評価に△が目立つなどなど。。。

商品テストにも、その画家らしさが多く出ていて、大変面白く、展示の場を二人でしばらく占領してしまいました。

花森氏がお孫さんに宛てたいくつものお便り。

この優しさに何だか少し涙が出そうになりました。

 

 

花森氏の仕事は、日本の戦前と戦後の狭間、芸術と生活の狭間、文学と美術の狭間を一つ一つ丁寧に埋めていく、、大変貴重な、美しい仕事であったと思えます。

 

碧南の展覧会は5月21日まで、そのあと高岡、岩手を巡回予定です。

よろしければ皆さまお出掛けくださいませ。

 

 

 

コメント
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