あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

戒嚴軍隊に編入されたること

2017年10月07日 15時39分19秒 | 暗黒裁判・幕僚の謀略3 磯部淺一の闘争

戒嚴軍隊に編入されたること
( 戒嚴軍に入った事によつて、吾人は完全にその行動を認められたのだ )

二月廿七日 吾人は戒嚴軍隊に編入され  
午前中早くも第一師戒命によつて 麹町警備隊となり 小藤大佐の指揮下に入った。
 リンク→ 命令 「 本朝出動シアル部隊ハ戦時警備部隊トシテ警備に任ず 」 
戒嚴は 天皇の宣告されるものだ。
その軍隊に編入されたと云ふことは 御上が義軍の義擧を許された、
御認めになつたと云ふことだ、それは明伯だ。

鈴木貞一大佐も二十七日、余に對して次の如く云った、
「 戒嚴軍隊に入ったと云ふことは君等の行動を認めると云ふ最大唯一の證ではないか 」 と
所が軍の不逞幕僚は
「 戒嚴軍隊に入ったのは行動を認めたから入れたのではない、あれは謀略命令だ 即ち反軍を靜まらせる爲めに入れたのだ 」
と云ふのだ。
行動を認めないで入れたと云ふのだ。
反軍であることを知りつゝ入れたと云ふのだ。
反軍を陛下の軍隊の中に入れて警備を命ずるとはそも如何なる理由か、又 反軍を誰が戒嚴軍の中に入れたのだ。
軍首脳部が入れたと云ふのか 幕僚が入れたと云ふのか。 
反軍なることを知りつゝ勝手に陛下の軍隊の中に之を入れたらそれこそ統帥權の干犯ではないか。
軍首脳部軍幕僚は挙って統帥權を干犯した國賊ではないか。
臣下か勝手に反軍を天皇宣告の戒嚴軍の中に入れると云こと程重大な國體問題があるか、統帥權問題があるか、
彼等は謀略命令だと云ふ、
これをきく時吾人は怒り、怒り、激怒にたえぬ
どこ迄彼等は 天皇をバカにしてゐるのだ。
戒嚴命令だぞ
天皇宣告の戒嚴だぞ
一體命令に謀略と云ふことがあるか
若し命令に謀略があるならば軍隊は破カイスル
友軍を謀るために命令を下す
反軍は命令によつてだまし討ちをされるのだ。
命令は寸分のカケヒキのない所がいゝのだ。
カケヒキがないから之が励行をドコ迄もせまる事が出来、
之れに背反した時には斷乎刑罰することも出來るので 命令は森嚴峻嚴だ。
決してカケヒキ、謀略のある可きではない。
若し戒嚴命令 統帥命令 にカケヒキがありとせば、
陛下はカケヒキある命令を下し國民をだまし討ち遊ばされる事になるのだ。
軍部上下の不逞漢どもよ、汝等はどこ迄陛下をないがしろにすればいゝのだ。
汝等は謀略命令でもすむだらふが陛下はどうなるのだ。
汝等が謀略命令と称する時陛下はどうなるのだ。
余は怒りの情を表す方法を知らぬ程に汝等を怒るものだ。
汝等が勝手な事を云ふ爲めに 天皇陛下は全くの機關、否、
ロボットとしての御存在にすぎなくなつてしまつてゐるではないか。

吾人は奉勅命令に抗してはゐない
故に賊と云はる筈なし
吾人の行動精神は 蹶起直後 陸軍首脳部によつて認められ大臣告示を得た。
続いて戒嚴軍隊に編入されて戒嚴命令により警備に任じた、
以上の事を考へみたならは吾人が反軍でない事は明かである。
反乱罪にとはるゝ筈はないのだ。
然るに軍部は気が狂ったのか、大臣告示は説得案と云ひ、
戒嚴軍隊に入れて警備命令を発し警備をさせた事は謀略だと云って
無二無三に吾々を反乱罪にかけてしまつた。
 磯部浅一
・・・獄中手記 (1) 「 義軍の義挙と認めたるや 」 から