木漏れ日

日差しがキラキラと躍ってる…

第10回乳がん患者会スノードロップ学習会

2011年05月06日 | 患者会
第10回乳がん患者会スノードロップ学習会が開かれ参加してきました

今回は
「こころのケア ~自分でできる対処法の工夫~」と題して
浜松医大病院 精神神経科臨床心理士 井上淳先生
 緩和チームの一員として心のサポートもされている先生のお話でした

大まかな流れは

 ストレスとは
   ↓
 効果的なストレス対処法
   ↓
 心理的苦悩の性質
   ↓
 +αのストレス対策

ストレスとは
 ある物体に力(刺激)を与えたときに物体に生じる“はり”や“ゆがみ”のこと

ストレスにはどんなものがある? 
 人間関係(家族 職場 近所) 
 物理的(気温 天気)
 環境的(騒音 空気汚染)
 心理的(不安 喪失体験) 
 社会的(多忙 責任 借金) 

ストレスのサイン
 
 身体の変化           心の変化
 
 身体がだるい         情緒不安定
 疲れやすい          気分の落ち込み、晴れ晴れしない 
 寝つきが悪い         イライラする
 途中で目が覚める      意欲がわかない
 頭痛              おっくう、だるい
 動悸 めまい         集中力の低下
 胸の痛み           不安感
 肩こり              罪悪感                          
 食欲が無い/食べすぎ
 下痢/便秘

ストレスや辛い気持ちに自分で対処できそうか?…この判断が大事です

自分でできる 
 気分転換…元気があるとき  
   ストレスには気分転換が一番
   悩みから意識を離す事で客観的に問題を見つめなおす心の余裕ができる
 休息…元気が無いときは先ず休みましょう
   疲れていてエネルギーが無いときは気分転換は効果が無い
   休息をとって全体的なエネルギーを回復すること     
 問題解決
  「今の自分に何ができるのか」を考え 実行する
   受け止め方を変える 

自分だけでは難しそう
 身近な人への相談
   家族 友人 恋人 先生など相談できる人を作る
   周囲からのサポートがあるかどうかが予防にもつながる
 専門家の力を借りる
   医師 看護師 臨床心理士 栄養士 介護士 弁護士 税理士 警察など
   自分の問題に合わせて 体 心 社会の側面からのサポートを受ける

人に話すことの効果
 悩みを話す→離す→放す
悩みから距離を置く→離す

自分でできる対処法の工夫

心理的苦悩
  
 複数の感情の組み合わせ(複雑な感情)
  怒り イライラ 不安 心配 恐怖(恐れ)うつ 罪悪感・自責感 悲嘆(悲しみ)
  後悔 絶望感 孤独感・疎外感   

より良く生きたい…上手くいかない自分に劣等感

⇒このような感情を抱き 持続する状態を心理的苦悩状態と名づけることにします

心理的苦悩時の思考の状態
 ぐるぐる ぐるぐると同じ事を考え続け、堂々巡りになる
 自分で考えているというより、「考えさせられている」様な状態となる
 ある観念や心配がその不安に自分の生活が大きく支配されてしまう状態
  →不安にとらわれる

心理的苦悩時の感情・身体の状態
 例) 胸のあたりがもやもや、お腹の中に重い塊がある様、
    身体全体が重い、息が詰まる様…
 感情は強度が強くなり、距離をとれなくなる
⇒思考はこうした不愉快な身体感覚や感情を必死で避け、感じないように感じないようにと無意識に勝手に動くことが多い

心理的苦悩にどう対処?

心理的苦悩の性質 

◇不安や抑うつという感情や不愉快な身体感覚、繰り返されるマイナスな思考などの心理的苦悩は、取り除こうとすればするほど、追いかけてきて、心理的苦悩は増大し、それに絡めとられやすいという性質をもつ
◇死の恐怖は人間の本能であり、いくら努力してもそれをなくすことはできない
死の恐怖を振り払おうとすればするほど、そのことに心が向き、死の恐怖がますます強くなる

⇒ではどうするのか?

心理的苦痛にどう対処?

◇人間のこころとからだは自然の一部。天気のようなものであり、自然をコントロールできないのと同様、人の心もコントロールできない。
⇒コントロールしようとせず ただ観察する。
苦悩は時として避けることができないものあるが、それを持続し、深めてしまう習慣的なパターンに気づき、そこから抜け出す方法を学ぶ事ができる

観察する 見つめる 何もしないで時の力を信じる

+αのストレス対処のポイント

 力まず
 避けず
 妄想せず
  
   (熊野宏昭「ストレスに負けない生活」ちくま新書 2007) 

力まず とは?
 リラクゼーションとはただゆったりとした心身の状態を指すのではない!
⇒リラクゼーションを作り出すための特別な方法によって生み出される固有の状態
 リラクゼーションとは少々の負荷ではへこまない、あるいはへこんでもすぐに元の状態に戻る事 ができるような、復元力の高まった柔軟な状態を意味する

お話の途中でリラクゼーションできる呼吸法を皆で試してみました

実験
 呼吸に集中して目を閉じ3分間

呼吸に集中できない → 悩んでいるとき
 頭の中はおしゃべりに忙しい…過去の事例を行ったり来たり

呼吸法
 
横になるか椅子に楽な姿勢で腰掛けます
体の力を充分に抜き 姿勢に偏りがないようにしてからゆったりとした腹式呼吸をしてください
お腹のあたりの動きに注意を向け 膨らんだ感覚 縮んだ感覚に注意・集中してください
息を「吸って吐いて」1と数え 続けて「吸って吐いて」2「吸って吐いて」3と10まで数え たらまた1に戻ってください
途中でいくつまで数えたか分からなくなったら静かに又1に戻って数えなおしましょう
 数える 事に一生懸命になり過ぎないように注意してください
規則正しく呼吸する必要はありません
 ゆったりとした呼吸で長ければ長いなりに短ければ短いなりに
要は「吸って吐いて」で1「吸って吐いて」で2と数えればよいです
 呼吸をコントロールしようとせず「呼吸のことは呼吸に任せて」呼吸を行いましょう

必ずと言っていいほど気持ちがそれます 今 気になっていることが浮かんできます
 幾つまで数えたか分からなくなります 分からなくなったらまた1に戻ってください
雑念を押しのけようとする必要はありません
 雑念が浮かび集中がそれたことに気がついて、そっと、呼吸に意識を戻します

1回あたり5分から10分、1日1回~2回行ってください
続けることで初めて効用が現れてきます
しかし、毎日時間を作ってやろうとするとなかなか続ける事が難しい…
 という場合ちょっとした空き時間、信号待ちなどの僅かな時間などに呼吸を数えるようにする
生活の中で継続的にちょっとやってみる、といった心構えでかまいません

呼吸法の作用・効果

気になることが出てきても、手放す
 気になることが出てきても、手放す
ということを繰り返す活動を行う事で10分 15分の後にはすっきりしてくる

一日の中に取り込むことで気がかりが出てきたら手放す行為を作ることができます

通常 外から中へ情報を詰め込んできたものが、中から出てきて消えていくという感覚なので、心理的リラクゼーションは深くなる


生活に取り入れるマインドフルネス

掃除や皿洗いに没頭して雑念が消えた体験は誰にもあるもの
何らかの作業にしばらくの時間取り組み、途中で何らかの雑念が浮かんできたら静かに目の前の作業に戻る事を繰り返す
目の前の事に集中するように心がけ、余分な思考をさしはさまないように、マインドフルネスを心掛けると、不安や落ち込み、怒り、執着に苦しめられるのは軽減していく

心理的苦悩への対処法

不愉快な感情や繰り返し生じる不愉快な思考などは不愉快な感情や思考として認め、そのままにしておき、現在できることに目をむけ、行動に移すこと
死や再発の恐怖・不安などはあっても仕方ないとそのままにしておいて、心から追い出そうとせず、今日一日自分が何をしたらよいか考え取り組む


ストレスを完全に解消するのは不可能です
 「ストレスと上手に付き合っていく」ことが大事になります
対処法には『これが絶対』という正解があるわけではありません 人それぞれです
これまでに使い慣れた対処法を用いるのが一番有効です

ストレス対処法を選択する際の最大の指針は
 自分が『心地よい』『気持ちいい』と感じられるものであることです

そうかぁ
力まず 避けず 妄想せず
 悩みを話す→離す→放す
  時の力を信じる
   呼吸法を生活に取り込みリラックス

知っているだけでもなんだか気持ちが楽になる様な
 肩の力が抜けるようなお話の数々でした