ウラジーミル・ソローキン、『ロマン』

 詳しい感想を書く気にはなかなかなれないので、報告まで。ソローキンの『ロマン』を読んだ。

 読み終えてから一日経ったが、ちょっとしたトラウマ…かも知れない凄まじい読み応えだった。夜中に目が覚めたときとか、本当に思い出したくない。物語が終わって本を閉じた瞬間の、口の中に厭な味の広がる読後感も忘れがたい。それでもやっぱり、面白かったよ…(屈服)。
 特に上巻(てか大部分か)の、ロシア文学の流れを踏襲して普通に面白くぐいぐい読ませてしまう物語の巧さ(風呂小屋の場面とか笑った笑った)なんて、後になって振り返れば周到な悪意すら感じられて、酷い!と思う。けれどもそこがまた堪らないのだ。

 そして予想もつかなかった終盤は、ここまで私が楽しく読んできたことはいったい何だったんだろう…?という虚しさの前になす術もなく、饒舌な語りも豊かな心理描写も突然絶たれて、何の説明も一切与えられないまま奈落の底へ突き落される恐怖に、身も心も凍るようだった。実を言うと、この作品をいざ読まんとしているまさにその時、ついうっかりネタばれをチラッと目にしてしまったと思いがっかりしていたのだが、ちょっとやそっとのネタばれなんてどうってこともないほど最悪なラストだった…幸いにもね! 
 どす黒グロロシア、堪能いたしました。何だかんだ言って私って、心のどこかではこういうのが好きなのだ。たまには打ちのめされたいのだ…きっと。
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