シオドア・スタージョン、『一角獣・多角獣』

 『一角獣・多角獣』、シオドア・スタージョンを読みました。

 収められているのは、「一角獣の泉」「熊人形」「ビアンカの手」「孤独の円盤」「めぐりあい」「ふわふわちゃん」「反対側のセックス」「死ね、名演奏家、死ね」「監房ともだち」「考え方」、の10篇です。 
 いや~これがまた、スタージョンいいじょん。この一冊は〈異色作家短篇集〉の復刻版第3巻ということですが、なるほど異色ってこういうことか…と思い知りました。奇妙奇天烈な10篇。何しろ“異”なもののオンパレードみたいです。異形と言いますか、異質な発想による物語ばかりでぐでんぐでんに酔ってしまうけれど、抗えない魅力があります。  

 読んでいてかなりぞっとしたのは、「熊人形」と「めぐりあい」です。
 「めぐりあい」は、他の短篇集では「シジジイじゃない」というタイトルで収録されているそうですが、この“シジジイ”というものにこだわった作品には、「反対側のセックス」もあります。何て言うか…、たぶん初めて出くわした概念なので戸惑いつつも(ゾ、ゾウリムシの生殖方法?)、面白く読みました。
 凄く好きだったのは、「孤独の円盤」や「死ね、名演奏家、死ね」、「考え方」。どの作品も独創的ですが、とりわけ「考え方」は、発想が独特過ぎて考え方が奇妙な男が出てきて(女に扇風機を投げつけられたら、女を扇風機に投げつけ返す、とか)、先がまったく読めません。何とな~く不気味な予感を漂わせながら話は進み、最後に違う“考え方”で思いっ切り突き落とされる作品でした。

 ぞっとするような話ばかりではなく、私の好きな「孤独の円盤」は胸が締めつけられるような作品です。「その発想を使ってこのラストですか、凄い!」と嘆じつつ、じ~んと打たれました。この話は、海で自殺しようとしている一人の女が、通りかかった男に助けられるという冒頭から始まるのですが、ではその女を自殺へと追い詰めた出来事とは…? と、そこから驚くべき女の事情が、語られるのでした。
 (2007.9.28)

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