クラフト・エヴィング商會、『らくだこぶ書房|21世紀古書目録』



 『らくだこぶ書房|21世紀古書目録』を読みました。

 “〈21世紀のギリシア神話〉と銘打たれたこのシリーズは、「老眼鏡をかけた神様たちのものがたり」というキャッチコピーが示すとおり、いつのまにか時代の片隅に取り残されてしまった「ギリシア神話」の登場人物たちの、その静かなる老後を描いた大人の神話です。
 『老イカロス氏最後の旅』 
 『老アガメムノンの7人目の妻』
 『老タイタンのあたらしい航海術』
 なぜか死んでも死に切れない――つまりは、誰もが忘れてしまったころに、とつぜん再生させられたりして――いささか疲れを覚えはじめた「彼ら」の物語。” 28頁

 目の前の未来は着々とたゆまなく、私の背部へとなめらかに流れ去る。過去は積み重なっていく。未来が懐かしいということは、未来がいずれは思い出のうちになっていくことを前もって知っているから…なのだろうか。
 “懐かしい”という感情に、なぜこんなに心が揺らぐようになったのか私にも分かりません。誰かに、何かに、懐かしさを感じるということは、目に見えない何かしらの繋がりを感じるということかしら…なんて、思ったりします。孤独を受け入れられるようになったら、懐かしい存在たちが見えてきた。

 ああ、肝心の本の話…。クラフト・エヴィング商會の作品は、いつも懐かしさがぎゅうぎゅうに詰まっているから好きです。例えばこの本は、「未来から届いた古本が、なぜかこんなに懐かしいよ…」というコンセプトの一冊なのです。
 未来から届いた古本たちは、まあ実際にはクラフト・エヴィング商會の作品なわけですから、書影を眺めるだけでも楽しいです。紹介されている21世紀の古書は、21作品。中でも一番私が中身を読んでみたかったのは、「老アルゴス師と百の眼鏡の物語」でしょうか。
 あと、タイトル買いをしてしまいそうなのは『羊羹トイウ名ノ闇』です。しかも装幀が羊羹そっくりなんて、私きっと買うわ。読んでみたかったのは、『茶柱』とか『7/3横分けの修辞学』でした。7/3横分けって、見かけなくなりましたね。
 (2007.9.25)

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