製作年:2021年
製作国:ノルウェー/デンマーク/フィンランド/スウェーデン
日本公開:2023年7月28日
監督:エスキル・フォクト
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム,アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ
ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。
退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へと変わっていく姿を、美しくも不気味に描いたノルウェー製のサイキックスリラー。監督は、「わたしは最悪。」でアカデミー脚本賞にノミネートされたエスキル・フォクト。ヨアキム・トリアー監督の右腕として、同監督の「母の残像」「テルマ」「わたしは最悪。」で共同脚本を務めてきたフォクトにとって、自身の監督作はこれが2作目となる。
不思議な力に目覚めた4人の子供たちの遊びが狂気に変わっていく物語。全編を通して漂う、不気味で気持ち悪くて痛々しいような空気感にゾクゾクさせられました。自閉症の姉を持つイーダ。姉に付きっきりの両親に寂しさを感じ、1人で遊んでいるところに近所に住む少年ベンが声をかけるのです。姉のアナはというと散歩に出掛けた際に、アイシャという女の子と仲良くなります。ベンは自在にモノを移動させる特殊能力を持っていて、アイシャは人の心が読める能力を持っていました。最初は子供たちだけで特殊能力を遊びで使っていたが、次第にベンは恐ろしいことを考え始めるのです…。
淡々進む物語と、淡々とした表情の子供たち。それが淡々と狂気へと変わっていく。子供の視点から、子供ならではの幼さ、不安定さ、無邪気さで描かれている本作は、新鮮な怖さを感じました。子供だからこその軽い気持ちで相手を傷付けてしまうような言動。最初は“つねる”という行為だけだったが、次第にエスカレートしていくのです。大人たちには絶対に言えない。仲間外れにはされたくない。バレないから大丈夫。子供の頃にそんなふうに思ったことは僕自身もあるので、怖いけれど共感してしまう部分もありました。舞台が郊外の団地というのも、閉鎖的な空間で起こる恐怖を増大しているよう。子供たちだけでなく3つの家族それぞれの親にも何かしらの問題を抱えているのも見どころの一つ。詳しくは描かれてはいないが、色々な環境や偏見や差別が重なって、子供たちは親から色々な感情を吸収し、そして色々な方法で発散してしまうものかと考えると、子供=純粋無垢などとは決めつけは良くない。
ジワジワとくるサイキックスリラーでした。※猫好きな人は鑑賞注意
この作品の評価・・・・★★★★★★★☆☆☆(満点は★10)