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ビル・カニンガム&ニューヨーク ★★★

2013年06月21日 | は行の映画
「The New York Times」の人気ファッション・コラムと社交コラムを担当する大御所写真家、ビル・カニンガムの実像に迫るドキュメンタリー。ファッションに魅了され、50年間ニューヨークでストリート・スナップを撮り続けてきたチャーミングな彼の知られざる素顔を描き出す。ビルをよく知るアメリカ版「VOGUE」編集長のアナ・ウィンターら有名人が続々登場。セレブも一般人も関係なく、ただひたすら魅力的なファッションだけをカメラに収めるプロ根性に舌を巻く。
あらすじ:1929年生まれのビル・カニンガムは、ハーバード大学を中退してニューヨークに移り住み、広告業界に足を踏み入れる。その後、帽子のブランドを立ち上げるものの一時兵役に就き、除隊後は再びニューヨークでファッション関連の記事を執筆するようになる。やがてカメラ片手に自転車で街に出て、精力的にストリート・ファッションの撮影を始める。

<感想>80歳を超えた今でも、ニューヨーク・タイムズの現役のカメラマンだ。マンハッタンの街に自転車を漕ぎ出して、颯爽と全身に目を光らせて、お洒落で楽しそうな人々の姿を撮っているのだ。どうすればこんなに自由に好き放題にやれるのかしら?・・・ビル爺さんの誕生日に、ニューヨーク・タイムズの編集者たちがビルを祝福仲間たちは、ビルの着ている青いシャツを着て、ビルの顔写真のお面を被り歌を歌う。

このドキュメンタリーの主人公ビル・カニンガムは、80代になってもニューヨークタイムズの人気ファッションコラムを担当する名カメラマン。仕事へのこだわりは半端じゃない。フイルムの現像だって自分ではやらない。街の写真店に依頼する。今流行りのデジカメなんて使わない。だからネガも編集者がPCに取り込む作業をする。
50年以上独り暮らししていた、カーネギーホールの上の小さな部屋。豪華な部屋ではなく、事務所といってもいい、ネガを収納する事務キャビネットに挟まれて眠り、バスとトイレは共同で、キッチンとクローゼットもない生活だが、マンハッタンが自宅だとばかりに青い作業ジャケットを着て自転車で駆け巡る。
そしてビルは、ファッションショーやセレブのパーティ、路地裏や交差点、街角ですれ違う人々に、いつもと変わらぬ態度で、気になった装いの人に向かってシャッターを切り続けるのだ。
映画の途中でビルの若きころ、兵隊に行った時の写真や、帽子屋をしていた時の写真と両親や兄弟の写真も挿入される。どうして結婚をしなかったのかと聞かれると、写真を撮るのが好きで、恋愛をしている暇がなかったと笑う。だからゲイではない。

ビルは言う、「自由より価値があるものなんてないよ。」誰もがそうだと、声を上げ、「ああ、私も好きな事だけを仕事にして、気楽に自由に人生を歩んでいけたら」と思うだろう。
しかしだ、ビルの生き様があくまでポジティブに捉えられている本作を観て、安易に「これぞ理想の老い方」などと言い切ってはいけませんぞ。ビルがニューヨークで孤独に陥らず、誰にもとがめられずに、ストリートで写真を取り続けられるのは、ある意味で奇跡的な事だと思う。
本作を観て、ビルが何故に老齢でも孤独に陥らず、疎外もされずに写真家として愛され続けてきたのだろう。もちろん最大の理由はそのセンスと腕前だろう。確かに彼の写真は誰にも撮れるものではなく斬新で、時代の流行を象徴している。そして決して人嫌いではなく、誰にでも屈託のない笑顔で話かける人柄の魅力も大きい。それに、なによりもビルのような存在を抱え込むニューヨークという街、のふところの深さも重要なのだ。

そんなビルも、花の都パリのファッションショーへ出かける。有名な女優さんも撮れば、一般人の女性も男性も被写体になる。パパラッチとは違うので、あまりというか女優とかモデルは撮らないのだ。それでもフランスで、勲章をもらった時のパリでの授賞式では、流暢なフランス語を交えたスピーチを披露する。その時のビルの満面の笑顔には、今までの人生の中で一番輝いているように見えた。

とはいえ、それだけではない。作品の終り頃に毎週教会へ行っていると言う。長い沈黙の後に「信仰は僕にはとても大切なもの」と答える。自由で気楽な生活の根底から支えているものは、もしかすると神への絶対的な信頼感なのだろう。神に祈るようにシャッターを切り、感謝とともに1日を終わる。
ニューヨークの交通地獄の中を自転車で走る爺さん。いつ交通事故に遭うかもしれない。こんな人生を送れるのは、ビルしかいない。それでも毎日元気に、雨の日は安い合羽を着て自転車を走らせる。
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