パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

桜、ふたたびの加奈子 ★★★

2013年04月09日 | さ行の映画
広末涼子と稲垣吾郎が娘を亡くした夫婦を演じ、さまざまな人とめぐり合いながら再生していく姿を描いたヒューマンドラマ。

娘の加奈子を事故で亡くした容子は、自分を責め続け、もう存在しない容子が見えると言って世話を焼くようになる。夫の信樹は、そんな妻を救い出したいと願いながらも、現実を受け入れ、前を向こうとしない容子にいら立ちを募らせていく。そんなある日、容子はシングルマザーとして子どもを産む決意をしていた女子高生に出会い、その子どもが加奈子の生まれ変わりに違いないと確信する。デビュー作「飯と乙女」がモスクワ国際映画祭最優秀アジア賞を受賞した栗村実の監督第2作。
注意:ネタバレで書いてますので、内容を知りたくない方はご遠慮くださいませ。
<感想>娘を失った母親の一途な思いが不思議な巡り合わせを招く物語。原作は新津きよみが2000年に発表した「ふたたびの加奈子」。冒頭の葬儀のシーンに始まり、食卓の皿や、調理中のフライパンなどが、たびたびハイ・アングルで映し出される。その他にも、頭上からの映像、公園でのコンクリートの間からのアングル・ショット、ソメイヨシノの桜の映像など、いろいろな角度からの映像が面白い。それに、映像に合わせてのクラシック界の奇才、佐村河内守の弦楽曲が、ヒロイン容子の揺れる心情とシンクロするのだが、そのバイオリンのメロディが見る者をどこか不安にさせるのも異質な感じがした。

女子高生の正美が生んだ女の子、夏月を、加奈子の生まれ変わりだと信じ、初めて夏月を抱かせてもらったとき右手の平に加奈子と同じほくろがあるのを見つける。そのことで、加奈子の生まれ変わりだと確信し、執着するようになる容子。夫の信樹は輪廻転生を信じられないが、妻を否定することなく支えるように寄り添う。
信樹を演じている稲垣五郎が、力まず優しい笑みを浮かべて絶妙な距離感で、押し付けまがしくない思いやりを感じて抑えた演技でよかった。広末涼子演じる容子は心が壊れているのか、それとも彼女の言うように加奈子の魂は存在するのか、難しい役柄を演じている。そこがミステリの鍵となります。古本屋を経営しているお婆ちゃんの江波杏子さんも、知恵の輪作りで、これってボケ防止になるんだよね。

普通だと自殺未遂までする容子は、心が壊れており精神病院へ入院するのがベストだと思うのだが、ここでは容子が生まれ変わりを信じていて、正美の子供夏月を養子にしたいと申し出るのだが、正美の父親がダメだと、正美も夏月に母親として愛情を持ち始め、手放せないと断る。
周囲の人物像も良く出来ているが、やはり主人公二人の葛藤が何より鍵で、諦めとともに心の平安を束の間取り戻したかに見えた夫婦に、突然訪れるお花見の危機的状況に、輪廻転生を信じる容子が救われるというかそんな驚きがあった。

それは正美の小学校の先生が生んだ息子ケンイチが、意外な輪廻転生の謎を紐解くのである。加奈子が可愛がっていた犬のジロウが家を飛び出し、逃亡の先には加奈子の生まれ変わりの子供が、容子を見て「ママ」と呼ぶその懐かしさと嬉しさ、容子が立て続けに聞く加奈子の好きだった物をすかさず当てる。それと、一番感動したのは、ポケットに桜の花弁を持っていたのと、それと、最後の119番の種明かしには、本当にまさか?・・・これって心霊ものなの、信じられれません。
しかしフィクションにルールや制約などなく、書いたものの勝ちで、描いたものの勝ちではあるが、終盤の展開は逆に話を薄っぺらにしているとしか思えない。こんなのアリなのと、時々凝ったアングルで話を繋げる栗村監督の映像演出も、なぜかそこだけ浮いているようだ。
でも、映画では観る人によっては捉え方が違うと思うので、容子が加奈子の死を自力で昇華していくという前篇と、救済としてのファンタジーを後半部分で描いているように思った。容子が信樹との生活を立て直す一歩を踏み出せたので、ご褒美があったということですね。
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