パピとママ映画のblog

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麦子さんと ★★★.5

2014年02月22日 | ま行の映画
『純喫茶磯辺』『さんかく』など独特なセンスで注目を浴びる吉田恵輔監督が、構想に7年かけたハートフル・ドラマ。納骨のため亡き母の故郷を訪れたヒロインが、町の人々との交流を経て母の知られざる一面に触れ、それまでとは違う母に対する思いを抱いていく。声優を夢見るオタク女子の主人公に、連続テレビ小説「梅ちゃん先生」が好評だった堀北真希がふんし、兄役に『探偵はBARにいる』シリーズの松田龍平、二人の母をベテラン余貴美子が演じる。
あらすじ:声優を目指して奮闘中の麦子(堀北真希)が、兄・憲男(松田龍平)と暮らすところに、かつて二人を捨てた母・彩子(余貴美子)が戻ってくるが、間もなく病のために、帰らぬ人となる。麦子は、納骨のため母がかつて青春を謳歌(おうか)した田舎を訪れると、町の人気者だった彩子に似ている麦子の登場に町の人々は活気づく。そんな彼らと交流するうちに、麦子は自分の知らない母の一面を垣間見ることになり……。

<感想>格別に何がどうした、というのではないけれども、吉田作品の人物たちは、みなどこか“やましげ”である。「机のなかみ」「純喫茶磯辺」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」の彼や彼女たち。誰もが小さなズルしたり、隠しごとで話が転がって、亡き母の若き日と出会うことになる。
だが、日常的なディテールの達者さに比べ、ドラマの核となる部分は今回も曖昧で、それが物足りなく感じた。ズルズルと話が進んで、何となく収まって、日本人的なのだが。

この作品では、堀北が娘と若き日の母親の一人二役を演じていて、だから「同じ」ではなく「似ている」だけのはずだが、画面では過剰なまでに同一感を強調しているのだ。また、部分的ながらオリジナルのアニメを作っちゃう、という発想も楽しい。アニヲタと田舎町のアイドルを演じる堀北真希の魅力満載だが、この女優さんの素の部分が前者のキャラに近いんじゃないかと思わせてくれるところもいい。
長年音信不通だったは母親が、突然現れてからの騒動を始め、しかし不仲のままで母親は死んでしまう。だから、一緒に数日間過ごした日々は、母親に対して毒舌を吐き捨て、なんて乱暴な娘、感じの悪い教養のない娘だと思ってしまった。そう感じたのは、娘もそうだが、松田龍平演じる義理の兄である憲男も口が悪いのだ。ババァと吐き捨てるように言う。

母親は、自分たち子供を捨てて出て行ってしまい10年間音信不通だというのだが、毎月生活費を15万円も仕送りしてもらっているのに、なんて礼儀の知らない親不孝ものの子供たち。女が一人でラブホテルの掃除婦、スナックでのアルバイトなど、かけもちで働き子供たちにお金を送金する。体を悪くするのは当たり前だ。きっと病院へは行っていないのだろう。自分の死期が迫っているのを感じ取り、我が子の傍で幾日かでも一緒に過ごしたいと思ったに違いない。亡き母親の遺骨を持って、故郷まで納骨に行く娘。その若き母を知る故郷の人々を通して、母を描く間接話法が効果的で良かったですね。
80年代のアイドルに田舎町とくれば、朝ドラと比較する声もあろうが、本作の方が圧倒的に素晴らしい。これは堀北真希の代表作になると思う。生き別れの母との再会、死という王道の母子ものを、吉田監督が撮れば、安易な母子の和解を拒否して、母親の死も感傷が入り込む隙を与えないほど呆気なく描かれている。
若き母とうり二つだと故郷の人々が言う。母は歌手になりたくて親の反対を押し切って上京。だが、世間は甘くなかった。子供のいる男と結婚をして、娘の麦子を産む。その後、結婚生活はうまくいかなくて離婚してしまう。

母親の余貴美子、田舎町の麻生祐未ほか女優陣が総じていいです。故郷の同級生でタクシーの運転手の温水さん、そしてとどめの聖子ちゃんメロディ、最後まで引っ張る「赤いスイートピー」が流れる瞬間に、思わず涙がじんわりと滲みます。
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