久しぶりに朝の散歩に出かけた。
南九州の梅雨明けは報じられたが、中国地方はまだ梅雨のさなかということなのだろう。しかし、昨日今日と、雨の気配はない。
早朝の、陽の昇らぬ野辺に、黄色い花が咲いていた。近寄ってみて、<あッ、宵待草!>と思った。と同時に、竹久夢二の「宵待草」を思い出した。
三行の短い歌を、歩きながら口ずさんだ。
待てど暮らせど来ぬ人を
宵待草のやるせなさ
今宵は月も出ぬそうな
恋の、切なさを詠った歌である。
恋しい人は、早この世の人ではない。歌えば、一層やるせなさが募る思いだ。
広辞苑で、「宵待草」を引いてみたら、「オオマツヨイグサ」の異称と出ていた。「宵待草」は夢二の造語で、植物の名前としては存在しないとのことだ。
なお、歳時記には「月見草」の名で出ている。「待宵草」「大待宵草」は、「月見草」の別の言い方として挙げてある。
「月見草」についての説明を読んでみると、
<アカバナ科の多年草。北アメリカの原産で、19世紀の半ば頃わが国に渡来した。夕方、細い茎に清楚な白い四弁花を開き、朝方には閉じる。待宵草のような逞しさがないので野生化せず、今日では植物園や園芸愛好家の手によって栽培されているにすぎない。夏の夕方、川原や浜辺の草地に黄色い四弁の美しい花を開く待宵草や大待宵草を月見草と呼んでいるが、これは花の咲き方が同じためか、月見草と混同した誤称である。[星野麦丘人]>
とあった。
私は、月の色のイメージと重ねて、月見草は黄色い花だと思い込んでいた。今朝見た花は、花の大きさから推察して、雌待宵草(メマツヨイグサ)ではないかと思う。昔、よく見かけた大ぶりの花が、大待宵草なのだろうと思う。
白色の月見草を見たという記憶が蘇らない。見たことがないのか、ぼんやりと見過ごしたのか、どちらであるかもよく分からない。
白い月見草を見るチャンスがあるといいのだが……。
「富士には月見草がよく似合う」と言った、太宰治の見た花は、本物の、白い月見草だったのだろうか。黄色い待宵草の方だったのだろうか。
なんとなく、後者のような気がするけれど、どうだろう?
「宵待草」を作詞した竹久夢二は、<1884~1934年>の人。
作曲は大正7年、多 忠亮(おおのただすけ)<1895~1929年>によるもの、と初めて知った。
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