ギャラリー<うつわ>でくつろぐ時間は、短くなった。
コーヒーとお菓子をいただきながら、
Aさんと話す。
葛籠の話が多くなる。
子供のころ、葛の葉を採ってきてウサギに与えたことなど……。
Aさんは若いけれど、共通した体験である。
草を食むウサギの口元まで思い出す。
(大きな桑の葉を食む、蚕の様子も思い出した。)
Aさんの耳に大きなイヤリングが下がっている。
「これも、葛籠細工です」
幾種類かのイヤリングを見せてもらった。
私も一ついただくことにし、
ふたりで評定して選んだのが、下のイヤリング。
河口の部屋を慌てて飛び出したわけでもないのに、
イヤリングつけ忘れていた。
早速、つけてみる。
重みを全く感じない。
蔓の端の細い部分が使われているのだろうか。
「ゆらゆらして、いい感じ」
と、Aさん。
葛籠のイヤリングをつけて、帰途につく。
三浦ちづるさんの作られた小さな栞をいただいた。(下の写真)
部屋に帰ってから、ゆっくり読んだ。
秋から冬にかけ、山を歩いて葛籠を集め、
作品として完成するまでのプロセスや、
自然に対する作者の畏敬の念などが、記されている。
作品に、懐かしさを感じるのは、背景に自然があるからだろう。
今は、簡便な日常品が安く手に入り、
昔、身近にあったものが、影を潜めている。
私自身、今は老いの身、
ものは増やすまいと努力している。
でも、イヤリングをゆらゆらさせるくらいの愉しみは、
失いたくない。
話は変わるが、
Aさんに、明治35年に発行された<むかし話>の稀覯本を見せてもらった。
亡き母の生まれた頃の絵本である。
鮮やかな彩りが、全く損なわれていなかった。
絵を見ただけで、子供のころ親しんだ物語が蘇った。
(カメラに収め忘れて残念。)
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