広島に出かけたのは、もう二週間も前のことであるのかと。
烏兎怱怱。いやになってしまう。なんだか中身のない生活をしているうちに、歳月だけは容赦なく過ぎてゆく。
9月29日に、広島で、二つの美術館に行った。
一つは、<広島県立美術館>で開催中の『生誕100年 靉光展』、もう一つは、<ひろしま美術館>の『野田弘志展 写実の彼方に』であった。
前者が、主目的だったのだが、靉光の絵画については、日曜美術館などで紹介されたときの感慨以上でも以下でもなく、ただ代表作に、目で触れることができた満足感だけであった。有名な<眼のある風景>や<自画像>の三点など。<鬼あざみ>を描いた絵などに、むしろ好感を抱いた。
広島県立美術館の大窓からは、縮景園が風景画のように眺められるのが嬉しい。また、常設館の絵にも触れることができ、その方がむしろ楽しかった。
野田弘志展の方は、やや、ついでに見てこようといった感じだったのだが、こちらの方が、私にはずっと興味深かった。(写真は美術館前の看板)
前々から写実の細やかな絵を描く画家というのは知っていたが、実際の作品に接して、ただ驚嘆するばかりであった。精密であるばかりでなく、そこには詩情豊かな美しさがある。静かな音楽も聞こえてきそうな、そんな絵であった。
大いに気に入って、こちらは図録も求めた。
写真を超える精密さは、どういう描き方から生れるのだろう?
その製作過程を見てみたい気がした。
ひろしま美術館の常設館にも、名画が多いのだが、さすがに疲れたのと閉館も間近になったので、今回は鑑賞せず、館を後にした。