温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鶯宿温泉 寿広荘

2013年06月30日 | 岩手県

先日岩手県盛岡へ所用で出かけた際、市内のビジネスホテルに宿泊するのは芸がないので、ちょっと足を伸ばして鶯宿温泉で一泊することにしました。そのついでに当地で湯めぐりをしたときの訪問記が前回および前々回の記事です。2箇所湯めぐりした後に宿泊したのは、直前でも某大手宿泊予約サイトから予約でき、且つ平日限定のリーズナブルなプランが利用できた「寿広荘」です。数ある鶯宿温泉の旅館でも最も盛岡側に位置しており、「けんじワールド」の手前です。広い駐車場に車を止められるので、盛岡市街地のホテルのように駐車料金を徴収される心配なんて全く無用。
広い敷地に縦長な平屋の建物がずっしり構えており、ゴージャスな旅館なんだろうなと想像しながら玄関から中に入ると、フロントは意外とコンパクトにまとまっており、スタッフの方も肩肘張らないアットホームでハートフルな対応でした。



廉価なプランだったのでお部屋には期待していなかったのですが、入室してみたら、とても広くて綺麗なお部屋にびっくり。一人じゃ持て余しちゃう広さです。お部屋にはトイレがついており、テレビもエアコンも冷蔵庫も完備です。


 
広縁からは中庭が見下ろせ、見晴らしの良い窓から気持ち良いそよ風が吹き込んできます。お世辞抜きで気持ち良いお部屋でした。


 
夕食の前にひとっ風呂浴びましょう。てことで大浴場へ。籐のソファーが置かれた浴室入口のラウンジには国鉄盛岡鉄道管理局当時の新幹線上野駅開業を告知するポスターが掲示されていました。上野開業って1985年ですから、今から28年前のものなんですね。もうそんなに経つのかぁ(個人的な想い出話ですが、鉄道少年だった私は当時の赤羽駅でカメラを構えていたことがあったのですが、新幹線大宮暫定開業時の東北本線を走る優等列車は185系200番台の新幹線リレー号ばかりだったので、子供心に「またリレー号!? つまんないなぁ」と不貞腐れたものです)。当時のポスターってこんなスケベ親父臭がプンプンするものだったのか…。



綺麗でよく手入れされている脱衣室。ちょっと実用本位な構成なので、旅館というよりスポーツクラブのような感じもします。棚はすべて無料のロッカー。洗面台に用意されているアメニティー類の品揃えもまずまず。


 
タイル貼りで落ち着いた雰囲気の内湯は、清掃が行き届いていて気持よく利用できました。室内の右側にはシャワー付き混合水栓が7基一列に並んでいます(カランのお湯は真湯です)。


 
浴槽はひとつのみですが、その容量はかなり大きく、無色透明のお湯が湛えられていました。岩の湯口からは不自然なまでに大量のお湯がドバドバ投入されているのですが、それもそのはず、内湯はしっかり循環されているのでした。館内表示によれば温度の状態によって加温や加水が行われ、循環や消毒を実施しているとのこと。お湯からは鶯宿温泉らしい知覚的特徴は失われており、単なるお湯と化していましたが、それでも消毒臭さがほとんど感じられなかったのは喜ばしいところでした。


 
内湯から戸を開けてステップを登り下りすると露天風呂です。浴槽自体はそこそこの大きさが確保されているのですが、腰を掛けたり休憩できるようなスペースが無く、露天に出る通路を歩くとそのまま浴槽へドボンと直行せざるを得ないような構造になっていました。
頭上は屋根が覆われており、屋外側には蚊帳の網が張られていて、露天と言うよりは半露天といった佇まいです。浴槽自体は手前側から4段構造になっていて、奥に向かって徐々に深くなる造りとなっています。



露天に浸かってお庭を眺めるとこんな感じになります。画像で感じるよりも圧迫感や閉塞感は無く、虫のすだきやそよ風を感じながら湯浴みすることができました。


 
内湯と違って露天のお湯は掛け流しの湯使いなんだそうでして、それを証明するかのように湯船のお湯は弱い白色系の貝汁濁りを帯びており、湯口では弱いながらもタマゴ感と軟式テニスボール感を足して2で割ったような明瞭な硫黄の味と匂いが感じられました。使用源泉は前回取り上げた「あけぼの荘」と同じく「あさひの湯」ですが、同民宿で見られたような湯の花は確認できなかったものの、お湯の鮮度が良好な朝一番に利用してもやや青みを帯びた貝汁濁りを有していたので、お湯の濁りは湯疲れなどではなくてお湯の個性に由来するものかと思われます。館内表示には露天でも消毒を実施している旨が明記されていましたが、内湯同様こちらもそれらしい匂いは特に感じられませんでした。なお湯船のお湯は縁からオーバーフローせず、浴室側の流路より排湯されていました。


 
「寿広荘」のご自慢施設が「みんなの石の湯」と称する施設。ざっくり言えば岩盤浴の岩盤を砂利に替えたようなものなのですが、館内廊下にはこの施設に関する特許・実用新案・登録商標の各証が掲示されており、いわゆる岩盤浴とは一線を画するべきものであることがわかります。この「石の湯」を利用する場合、日帰り入浴でしたら別途料金が必要ですが、宿泊客は1回限り無料で利用できるので体験してみることにしました。
まずフロントで専用の浴衣・タオル・茣蓙・そして水分補給用のミネラルウォーターを受け取ります。大量発汗するので利用前や利用中の水分補給が欠かせません。



浴室(脱衣室)もしくは石の湯エリアの更衣室で専用の浴衣に着替え、この扉の向こうへと入室です。室内構造としては上述したようにいわゆる岩盤浴に似ており、室内に敷き詰められている礫の上に茣蓙を敷き、その上で10分ほど寝っ転がっていればよいのですが、その僅かな時間にもかかわらず、そんじょそこらの岩盤浴なんて目じゃないほど大量に発汗するので本当にビックリしてしまいました。



「石の湯」の隣には涼み処もあるので、こちらで一休みしながら水を飲み、落ち着いたら再び「石の湯」に入って汗をかく・・・今回はそれを3セット繰り返し、おかげで心身ともすっきりさっぱりできましたよ。

綺麗なお部屋とお風呂、そして大量発汗できる「石の湯」が利用でき、且つリーズナブルなプランも用意されている、とてもコストパフォーマンスの良いお宿でした。ビジネスホテルよりもはるかに充実した時間が過ごせ、しっかりくつろげましたよ。


あさひの湯(混合泉)
アルカリ性単純温泉 51.9℃ pH8.9 溶存物質0.6075g/kg 成分総計0.6075g/kg
Na+:145.2mg(80.10mval%), Ca++:28.9mg(18.25mval%),
Cl-:45.8mg(16.37mval%), HS-:0.9mg(0.38mval%), SO4--:286.3mg(75.63mval%)
H2SiO3:63.7mg,
内湯:温度が高いとき加水、浴槽の温度が下がったとき加温、衛生管理のため循環ろ過、塩素系薬剤を使用、
露天風呂:加水なし、浴槽の温度が下がったとき加温、温度維持のため循環、塩素系薬剤を使用、

岩手県岩手郡雫石町鶯宿夜明沢21-1  地図
019-695-2465
ホームページ

日帰り入浴9:00~21:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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鶯宿温泉 温泉民宿あけぼの荘

2013年06月29日 | 岩手県
 
前回取り上げた「清光荘」に続いて鶯宿温泉での湯めぐりを実践すべく、予め見当をつけておいた宿を訪って日帰り入浴をお願いしたのですが、閑散期の平日だったためか、4軒中2軒は留守、残り2軒には断られてしまいました。斜陽の温泉街で湯めぐりをする難しさを改めて実感した私は、精神的にかなり凹んだ状態で旧温泉街を抜け出したのですが、1湯だけではあまりに悔しかったので、藁にもすがる思いで駆け込んだのが、今回ご紹介する温泉民宿「あけぼの荘」です。場所としては、北東北を代表するアミューズメント施設「けんじワールド」の道路を挟んだ真向かいでして、とてもわかりやすい立地です。



建物外観はいかにも民宿らしい佇まいなのですが、玄関から中に入ると、正面には中規模旅館にも匹敵するような立派なカウンターのあるフロントが構えており、そこで座っていたご主人に入浴をお願いしますと快く受け入れてくださいました。



浴室はフロントの右側に配置されていました。長期滞在を想定しているのか、脱衣室には洗濯機が設置されており、なんとなく生活感が漂っています。衣類用の棚は9つあり一つ一つが大きいので、荷物も楽におさめられました。



お風呂は男女別の内湯のみで、オフホワイト基調でまとめられたタイル貼りの浴室は実用本位の質実剛健といった感じ。よく手入れされており綺麗で清潔です。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設置されており、水栓金具は温泉に含まれる硫黄のために硫化して黒く変色しています。黒い水栓を見ると「硫黄の温泉なんだな」とわかって嬉しくなっちゃうのは私だけでしょうか…。


 
全面タイル貼りの湯船は3人サイズといったところでしょうか。隅っこにある石積みの湯口よりお湯が注がれており、その対角線上の浴槽縁から静々とオーバーフローしています。湯口の直下やオーバーフローの流路は薄っすらと橙色に染まっていました。こちらに引かれているお湯は「あさひの湯」源泉なんだそうでして、これは鶯宿温泉の中でも「けんじワールド」周辺に点在する各旅館では一般的に使われているものですね。見た目は無色透明ですが湯中には半透明で綿くずのような淡い褐色の湯の花がたくさん浮遊していました。匂いはあまりよくわかりませんでしたが、味覚面に関しては弱タマゴ味と芒硝味が感じられ、微かな塩味もあったような無かったような…。浴槽加水用蛇口のハンドルが取り外されているため、客が任意で加水することはできず、このため湯船も若干熱めの湯加減でしたが、完全掛け流しのお湯からはシャキっとした浴感が得られ、気持ち良い湯浴みが楽しめました。


あさひの湯(混合泉)
アルカリ性単純温泉 51.9℃ pH8.9 溶存物質0.6075g/kg 成分総計0.6075g/kg
Na+:145.2mg(80.10mval%), Ca++:28.9mg(18.25mval%),
Cl-:45.8mg(16.37mval%), HS-:0.9mg(0.38mval%), SO4--:286.3mg(75.63mval%)
H2SiO3:63.7mg,

盛岡駅東口(10番のりば)より岩手県交通バスの鴬宿温泉行きで「いこいの家」下車、徒歩1~2分
岩手県岩手郡雫石町鴬宿第9地割65-1  地図
019-695-2245

日帰り入浴9:00~19:00(要確認)
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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鶯宿温泉 清光荘

2013年06月28日 | 岩手県

先日所用で盛岡へ出かけた時には鶯宿温泉で一泊したのですが、ただ泊まるだけでは芸がないので、時間の許すかぎり当地で湯めぐりすることにしました。まず1湯目は温泉街の中心部に位置している「清光荘」です。廃業相次ぐ当地でも頑張って営業を続けているお宿の一つですが、袖看板も建物全体も相当年季が入って草臥れており、某大手予約サイトから予約した方は実際のお宿を目にすると不安に陥るかもしれません。
玄関で「ごめんください」と声をかけると、帳場からゆっくりとおばあちゃんが登場。入浴をお願いしますと「これから団体さんが来るんだけれども、今だったら大丈夫ですよ」とのことで、無事入浴することができました。鶯宿温泉は、表向き多くの宿で日帰り入浴が可能となっているのですが、実際にはお宿の都合によって不可な場合も多々ありますので、利用の都度確認をした方がベターです。



脱衣室は棚がくくりつけられているだけの、至ってシンプルな造り。壁クロスも床も棚のペンキも、室内全てが色褪せており、おそらく建物が建てられた当時のものがそのまんま使われ続けているような雰囲気です。風通しも決して良い方ではなく、扇風機も無いため、夏だったら相当蒸し暑くなりそうな予感がしますが、そんな古さを払拭すべく室内はきちんと清掃されていますので、実使用においては特に問題ありません。



全面タイル貼りの浴室は、モスグリーンの側壁だけ見ると渋い印象を受けますが、床は白と青のタイルでストライプ模様となっており、全体的に捉えるとひと昔前のアトリエのようなアーティスティックな装いに見えなくもありません。
左側が手前に出っ張っている浴槽は、槽内には水色の小さなタイルが、そして縁には群青色のタイルがそれぞれ貼られており、この濃淡の青系配色によって無色透明のお湯の透明感がより際立っていました。なお手前側へ出っ張っている部分は浴槽の底が浅くなっています。浴室内にはふんわりと薄く石膏泉のような匂いが漂っていました。



洗い場には混合水栓が6基設置されており、うちシャワー付きは3基(そのうちの1つは立って使うもの)です。腰掛けも桶も各水栓前にきちっと並べられており、整理整頓を徹底している浴室からは旅館としての矜持が感じられます。



洗い場の混合水栓も、浴槽に加水するための水道蛇口も、お湯に含まれる硫黄の影響で悉く黒く変色していました。分析表によれば総硫黄は硫化水素イオンの0.8mgしかありませんが、実際のお湯はイオウ感を有していますし、こうした金具類も自らの姿を変貌させることによって硫黄の存在を証明してくれています。



石積みの湯口から湯船へ注がれるお湯は、鶯宿温泉でもメジャーな源泉である八九四の湯。おばあちゃんが私をお風呂へ案内してくれたときに「熱いからよくかましてね(「掻き混ぜて」の意)」と教えてくれたのですが、この時の湯船は本当に熱く、そのままでは入れたもんじゃなかったので、水道の水を大量に投入し、且つ桶を使って懸命に掻き混ぜて、なんとか入れそうな温度まで調整しました。
お湯は無色澄明で湯の花などは見当たりません。薄いタマゴ味とともに、弱い芒硝感や石膏感が得られました。分湯槽から配湯されてきたお湯をそのまま注いでおり、完全掛け流しのお湯は新鮮そのもの。弱いツルスベと弱いひっかかりが拮抗する浴感があるのですが、それ以上に鮮度の良さゆえのキリリとした浴感がとても嬉しく、体が多少のぼせかかっても、その浴感の良さのために湯船から出る時は後ろ髪を引かれる思いでした。鶯宿温泉の中小規模旅館はどこでも苦境に立たされているようですが、お湯の鮮度の良さに限って見れば、中小旅館の方がはるかに優れていますね。


八九四の湯
単純温泉 60℃ pH8.3 溶存物質0.6536g/kg 成分総計0.6537g/kg
Na+:153.3mg, Ca++:34.5mg,
Cl-:42.2mg, SO4--:325.7mg, HS-:0.8mg,
H2SiO3:66.1mg,
(平成9年2月4日)

盛岡駅東口(10番のりば)より岩手県交通バスの鴬宿温泉行きで終点下車、徒歩3~4分(約300m)
岩手県岩手郡雫石町鴬宿第6地割14-1  地図
019-695-2136

10:00~19:00(要確認)
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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湯浦温泉 ささ原温泉

2013年06月26日 | 熊本県
 
今回も湯浦温泉の公衆浴場を巡ります。豪農の母屋を思わせるこの2階建ての和風建築は「ささはら温泉」という民営の公衆浴場であります。画像左(上)は正面から、右(下)は裏手の川側から、それぞれ撮影したものです。建物の四方は駐車場となっているのですが、そんなに広くしてどうするのと首を傾げたくなるほど広いスペースが確保されていました。
玄関入ってすぐ右手に番台のカウンターがあり、愛想の良いおばちゃんに料金を直接支払って男湯へ。なお番台の前には2階へあがる階段があるのですが、そこを上がって何があるのかは不明(こちらの浴場に関してはネット上にレポートが多くアップされているので、もし2階に何があるのか知りたい方は、他のブロガーさんの素晴らしいレポートをご覧あれ)。


 
天井が高い浴室は広々しており、なかなかの開放感がありますが、至るところが草臥れていて建物の古さは隠せません。洗い場にはシャワー付き混合水栓が左右に分かれて計3基取り付けられているのですが、この浴場の利用客はカランをあまり使わないのか、私がお湯のコックを開けたらバフッという音とともにエアが吐き出され、その後しばらくはお湯ではなく水が出続けました(つまりお湯の配管はしばらく使われていなかったわけですね)。また洗い場には桶や腰掛けの他にバケツが2つも備え付けられており、後客のおじちゃん達はみなさんこのバケツで湯船のお湯を汲んでシャンプーや洗体をしていたのですが、お風呂でバケツを当たり前のように使う浴場というのも珍しいかと思います。


 
浴槽は14~5人同時に入浴できちゃいそうな大きなもので、槽内に貼られている水色のタイルのためにお湯がとても清らかに見えます。浴槽の隅っこに据えられている岩より突き出たパイプからお湯が供給されており、その投入量は多くて縁からふんだんにオーバーフローしています。


 
220円というリーズナブルな公衆浴場にもかかわらず露天風呂に入れるのがこの「ささ原温泉」の素晴らしいところ。和風の庭園の中に4~5人サイズの岩風呂が設けられており、最奥のホースよりお湯が投入されて、手前側のステップより排湯されています。外気に触れている影響なのか、内湯よりもややぬるめの、ゆっくり浸かれる湯加減でした。

さてお湯に関するインプレッションについて。見た目は無色澄明で清らかに澄んでいるのですが、脱衣室にて明示されているように塩素消毒が行われており、内湯・露天ともにお湯からは塩素の臭いがはっきりと嗅ぎ取れました。口に含んだら(飲んでいません)甘い塩味と一緒に妙な苦味が感じられたのですが、この不快味は薬品由来かも。また前回取り上げた「岩の湯」で感じられたタマゴ(イオウ)感はこちらではほとんど確認できず(イオウの痕跡のようなものは微かにあり)、泡付きも確かにあるものの「岩の湯」ほど夥しく付着することもありませんでした。館内表示によれば塩素消毒こそ実施されているものの、加温加水循環は行われておらず、上述のようにドバドバと浴槽へ注がれている源泉はしっかり放流式の湯使いになっているわけですが、源泉井の違いによるものなのか、あるいは塩素消毒のためか、同じ湯浦温泉でも浴場によってお湯の特徴にはかなり異なっているようです。
しかしながらお湯に体を沈めると柔らかいフィーリングに包まれ、且つ41℃くらいの温度に維持されているため、ついつい長湯したくなってしまいました。あれだけの投入量があれば浴槽内のお湯の鮮度は良好な状態が維持されるでしょうから、消毒しなくてもレジオネラ属菌や大腸菌の問題はクリアできそうですが、もしかしたらお役所がうるさいのかもしれませんね。



湯上りに帳場で挨拶すると、番台のおばちゃんが「最近飲泉許可をもらったんですよ」と言いながら、冷蔵庫で冷やした温泉水をコップに注いでくれました。おばちゃん曰く、温泉の汲みたては温泉臭(おそらくタマゴ臭)が気になるけれども、しばらく置いておけば臭いも抜けて飲みやすくなるとのこと。実際に飲んでみますと、口当たりがとてもまろやかで喉越しも良く、ゴクンと飲みきった瞬間に水がすぅーっと体へ吸収されてゆくような爽快感が全身を駆け巡りました。「あたしに言ってくれれば、そこからいくらでも汲んで行って良いですよ」とおばちゃんは玄関の方を指し示していたのですが、飲泉用の水栓って、玄関脇にあるのこの水栓かな? いずれにせよ、飲泉したときの爽快感から想像するに、やっぱり非消毒のお湯は素晴らしいだろうと思われます。この手のお湯は非常に繊細で、ちょっとした外的要因が与えられることでせっかくの特徴が忽ち雲散霧消してしまいますから、できるならば消毒されていないお湯に入ってみたいものです。


 
風呂あがりにクールダウンを兼ねて湯浦の街を散策。地区の真ん中を薩摩街道が貫いているのですが、その道標の片方には江戸と記されていました。江戸ですか!? ここからどれだけ遠いんでしょうか。
その薩摩街道を歩いているとやがて線路と沿うようになり、踏切の音が鳴ったかと思いきや1両のローカル列車が疾走していきました。新幹線のルートから外れている当地は、余程のことが無い限り、現状の鄙びた風情から脱却することはないでしょうね。


 
訪問時は端午の節句の一週間後だったのですが、湯浦川には鯉のぼりが悠然と泳いでいました。


ささ原温泉
単純温泉 43.1℃ pH8.1 216L/min(動力揚湯) 溶存物質0.54g/kg 成分総計0.54g/kg
Na+:73.6mg(78.24mval%), Ca++:10.3mg(12.47mval%),
157.2mg(52.92mval%), HCO3-:217.6mg(42.55mval%),
H2SiO3:50.8mg,
塩素系薬剤を投入(衛生管理を確実に行うため)

肥薩おれんじ鉄道・湯浦駅より徒歩9分(700m)  地図
熊本県葦北郡芦北町湯浦66-1
0966-86-2683

7:00~22:00 毎週木曜定休
220円
ロッカー(100円リターン式)あり、他備品類見当たらず

私の好み:★★
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湯浦温泉 岩の湯

2013年06月25日 | 熊本県
 
熊本県芦北地方の湯浦温泉は、1200年近い歴史を有し、国道3号沿い且つ駅近という便利な立地であるにもかかわらず、温泉街とは思えない静かなごくごく普通の集落が湯浦川に沿って広がっています。そんな湯浦温泉には現在数軒の旅館といくつかの共同浴場があり、今回はその共同浴場の一つである「岩の湯」でひとっ風呂浴びて来ました。国道3号の「湯浦」交差点角という、非常にわかりやすい場所にあるので、迷うこと無く一発で辿りつけました。浴場自体はかなり古いそうですが、建物は2010年12月にリニューアルしたんだそうです。



駐車場の一角にあるこの構造物って源泉井かな?


 
まだ新しい建材らしい輝きを放つ玄関を開けると、正面で構える番台には物静かなお爺さんが座っており、上がり框に置かれている券売機で料金を支払って、そのお爺さんに券を手渡します。
機能的で使い勝手の良い脱衣室には木材が多用されており、お爺さんがこまめにやってきては整理していたので、明るく清潔な状態が保たれています。壁には天草出身の画家鶴田一郎の絵が飾られていました。一方、同じく室内に掲示されている入浴者心得には昭和26年と記されており、完全リニューアルされた浴場にも部分的にかつての面影を残そうとしているようでした。


 
浴室入口のガラスドアに貼られている注意書きには、今や全国的な人気を博している「くまもん」のイラストが! 最近は熊本県のどこでも何にでもくまもんが登場しますが、こんなところでも会うとは想像だにしていませんでした。一方、くまもんの左上の注意書きには「手・足・特にお尻・おちん●んをきれいに洗って・・・」と、直球勝負な表現も見受けられたりして、くまもんの愛らしさと下表現のストレートさのギャップがユニーク。


 
浴室は明るいブラウン系のタイル貼り。浴室入口と浴槽の間には小さな衝立が立てられており、脱衣室と湯船の相互間でそれぞれ直接見えないように配慮されています。共同浴場には珍しく、品のある造りですね。
浴室左側にはシャワー付き混合水栓が6基一列に取り付けられており、水栓からは源泉が出てきます。浴室の床は中央が高い拝み勾配となっており、洗い場の排湯と浴槽のオーバーフローが混ざらないような構造になっていました。一見すると何気ないお風呂なのですが、細かくチェックすると、いろんなところで細かな工夫がなされており、設計に関係した方々の、入浴客に対する思いやりや配慮が伝わってきます。



浴室入口右側には上がり湯もあり、大小のアヒル隊長が投入口の上で佇んでいました。


 
浴槽は7~8人サイズ。うさぎの湯口からドバドバと音を立てながら源泉が大量投入されています。このうさぎは以前の湯屋から90年以上もここの浴場でお湯を注ぎ続けてきたんだそうでして、常連さんの強い要望を受けてリニューアル後も残されることになったんだそうです。獅子をはじめとして動物の湯口はいろいろとありますが、うさぎってかなり珍しいですよね。


 
目を惹くのはうざぎだけじゃありません。そこから吐き出されるお湯の量も凄いのであります。浴槽は共同浴場にしては大きな方なのですが、そんな湯船の中に流れを作るほどの量が常時投入されており、浴槽の縁全辺からザバザバ溢れ出して、床は排水が追いつかずに洪水状態となっていました。流量の多さゆえ、排水口では渦が発生しています。なお湯使いは完全掛け流しです。



お湯は無色澄明でふんわりとした上品なタマゴ臭が漂い、口に含むと明瞭なタマゴ味の他、微収斂や芒硝的な味も感じられました。特筆すべきは入浴中の肌への夥しい泡付きでして、湯中には無数の気泡が浮遊しており、湯船に体を沈めて1分もしないうちに全身が泡で覆われてしまいました。特別ツルスベ感が強いお湯ではないのですが、この気泡のおかげでフワっとした軽やかな浴感が楽しめ、湯上りの爽快感も半端じゃありません。しかも40~1℃くらいの湯加減ですから、じっくりと長湯することも可能。こんな素晴らしいお湯がわずか170円で楽しめるとは信じられません。私の好みのストライクゾーンど真ん中の名湯でした。


単純温泉 40.6℃ pH8.54 溶存物質598.7mg/kg 成分総計598.7mg/kg 
Na+:169.2mg(97.87mval%),
Cl-:111.3mg(41.37mval%), HS-:1.2mg(0.53mval%), HCO3-:232.2mg(50.07mval%), CO3--:15.0mg(6.59mval%),
H2SiO3:57.4mg,

肥薩おれんじ鉄道・湯浦駅より徒歩8分(600m)
熊本県葦北郡芦北町湯浦230-10  地図
0966-86-0653

7:00~22:00
170円
ロッカーあり、他備品類なし、石鹸・シャンプー等販売あり

私の好み:★★★
コメント (9)
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