温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

某所の超有名野湯 2015年11月、またまた訪問

2016年09月29日 | 秋田県
前回記事までは今年(2016年)1月の温泉訪問記を取り上げてまいりましたが、今回記事からはさらに時計の針を戻して、ほぼ一年前となる2015年11月に巡った北東北の温泉を連続してアップさせていただきます。毎度毎度のことですが、情報鮮度に欠けるブログで誠に申し訳ございません。言い訳になっちゃいますが、これから紅葉を迎える東北観光の参考にしてくだされば幸いです。

さて今回取り上げるのは、拙ブログにおいて4度目の登場となる、秋田県山中の超有名野湯。
最近では六本木の某テレビ局など各メディアでも取り上げられるようになったらしく、最早その知名度は全国的になっておりますので、いまさら匿名にする意味はありませんが、でも大っぴらに公表すると秘湯感が薄れるような気がするので、今回も世間の目を憚って匿名で書き綴らせていただくことにしました。



はい、到着です。私個人としては6回以上は訪問しているかと思います。今回訪れたのは2015年11月の某日。前回訪問したのは6月初旬だったためブヨの猛襲に悩まされましたが、冬を目前にしたこの日は紅葉もすっかり落ちており、野湯の大敵となる虫が完全になりを潜めていましたので、痒み痛みを気にすることなく湯浴みに専念できました。



最近、この野湯には行政関係と思しき方によってロープが張られるようになりました。ネット上では「とうとう関係当局によって目をつけられるようになったのか」とか「もしかしたら入れなくなるかも」などといったような憶測が広がりましたが、実際に現地で確認したところ、立入禁止を宣告するものではなく、ゴミや人工物は置きっ放しにしないでね、といった程度の注意喚起でした。ゴミの放置はもってのほかですが、以前は桶など入浴グッズも置かれており、入浴者にとっては便利であった反面、人工物を放置することは当地に関係する法令に抵触してしまい、結果として何らかの措置を取らざるを得ない状況になりかねないため、そうした事態を招かないよう、行政の担当者が注意してくれているんだろうと推測されます。つまりとっても親切な配慮なんだと思います。
そうした呼びかけのためか、前回訪問時に見られたケロリン桶などはすべて撤去されており、自然に近い姿へ戻されていましたが、それでも当地でテントを張ったり、あるいは車中泊をする方が残していったのか、残念ながら川沿いの駐車スペースにはゴミが散らかってされました。そんなこともあろうかと、私は持参したビニール袋でゴミ拾いをしましたが、一介の温泉ファンとして僭越ながら申し上げれば、ゴミの持ち帰りは徹底していただきたいと強く願っております。


 
この野湯は、湧出地こそ決まっていますが、そこから流れ出る下流側の湯溜まりは、来るたびにその位置や形状を変えているようです。前回訪問時と比べると、湯溜まりがひとつ増えていました。誰かさんが手掘りしたのかな。その一方、炭酸カルシウムの付着のためか、天然ジャグジーのメイン湯溜まりは、若干小さくなっているような気がしました。


 
天然ジャグジーはこの日も元気に湧出しており、温度計を突っ込んだら44.1℃と表示されました。炭酸味+塩味+金気という知覚的特徴は以前と同様であり、噴出する勢いにも衰えは見られません。この温泉はしばらくは安泰でしょう。


 
前回訪問時には無かったと思われるこの小さい湯溜まりは、大人一人が入るのにちょうど良いサイズなのですが、湧出地から若干離れているため程良くお湯が冷めており、噴出地直上の44℃という湯温が熱く感じる方でも入れるるような、丁度良い湯加減になっていました。



私は多少熱くても天然ジャグジーの直上が良いので、湧出地で湯浴みさせていただきました。
はぁ、いい気持ち。極楽だぁ。ここは何度訪れても最高ですね。

余談ですが、4年前の『小坂町議会だより』第60号(平成24年2月10日)の中で気になる記事を見つけましたので、ちょっと古いネタですが、当記事の最後にご紹介させていただきます。この天然のジャグジーは当然ながら地元の方々もご存知であり、この自然の恵みを求めて私のように他県からわざわざ足を運ぶ観光客も多いため、他県からの訪問者を町おこしへつなげられないかと地元の方が考えるのは至極自然な流れです。実際にそうした発想が平成23年12月の町定例議会で提案されました。議会において或る議員が「観光振興について」と題して、最近多くなっている●●温泉を訪れる観光客への対応とその利活用について町長に質疑したところ、町長は「国有林内であること、法的な手続きをとった本来の温泉施設ではないことから、現状では自己責任で利用していただく事としており、観光施設としては位置づけておりませんので今のところは現状のままと考えております」と答弁しました。詳しくは「小坂町議会だより」第60号(平成24年2月10日)の8ページをご覧ください。翻って思い出しますと、確かにこの野湯では数年前から営林署名義で同様の文章を記した看板が立つようになりましたね。そして答弁から4年経った現在でも、マス媒体に取材されながらも以前と同じ状態が維持されつづけているということは、当時の町長の見解が今でも通用しており、今後も余程のことが無ければ関係機関による黙認状態が続いて、従来通りに野湯を楽しむ事ができるのだろうと思われます。尤も、議員の提案のように観光目的で下手に人工的なものが設けられると興醒めですし、逆に国有林関連の法令に抵触するとして閉鎖されるのは最も避けたい事態ですから、我々温泉ファンとしても現状維持が最善な形です。そのためにも、ぜひゴミの持ち帰りやゴミ拾いを心がけていただき、またテントなどで山火事を起こさないようくれぐれも注意していただきたいと心より願っております。


秋田県鹿角郡小坂町某所

私の好み:★★★

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コメント (9)
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林温泉 かたくりの湯 2016年1月再訪

2016年09月27日 | 群馬県
前回記事まで3つ連続で上州の草津温泉を取り上げましたが、強酸性の温泉をハシゴした後には、上がり湯の代わりに非酸性の温泉へ入りたくなったので、路線バスで長野原草津口駅まで戻り、そこから徒歩圏にある林温泉「かたくりの湯」へ向かうことにしました。この「かたくりの湯」は拙ブログで6年前の2009年に取り上げていますが(当時の記事はこちら)、2015年に従来の仮設然とした建物から新しい湯屋へ完全リニューアルしたらしいので、その新しい姿を自分の目で確認したかったことも、当地へ向かった動機のひとつです。


 
八ッ場ダムの工事に伴って新しい駅舎に生まれ変わった長野原草津口駅。まだ開発するまで及んでいない駅前は更地が広がるばかりで、観光案内所やレンタカー事務所がポツンポツンと建つばかりで閑散としています。そんな寂しい駅前を一人で旧国道を歩きはじめました。


 
車がほとんど通らなくなった旧国道は、早くも荒れはじめていました。
途中で左へ逸れる細道を上がって・・・


 
使用停止になった踏切を横切ります。この線路は八ッ場ダムの工事進捗に伴って線路の付け替えが行われた吾妻線の旧線跡。もうこの線路に列車が走ることはありません。


 
車一台がやっと走れるような狭い里道を歩いてゆき・・・


 
工事箇所を抜けると、駅から約30分ほどで林集落にたどり着きました。


 
目的地である温泉へ入る前に集落の鎮守である王城山神社を参拝。
鳥居の前の道路沿いには石柱が立っており、そこには「愛国而興家」と読み取れる文字が記されていました。


 
(上2枚の画像はいずれも2007年撮影)
まだダム工事による集落移転が済んでいなかった2007年には、上述の石柱のほか、「教神而尊皇」と読み取れる石柱も立っていましたし、神社の境内には砲弾をつかった記念碑(社殿を銅板葺きにしたことを記念するもの)も立っていたのですが、今年(2016年)はいずれも見つけることができませんでした。移設したのか撤去されたか、それとも単に私が見落としただけなのか。温泉目当てにのどかな山村を散策していたら、こんな戦争色の強いものがいまだに残っていることを知って驚いたのですが、ダム工事や時代の流れによって、とうとう過去へ葬りさられたのかもしれませんね。念のために申し上げておきますと。私個人的としては政治的な右や左は好きではなく、単に歴史を感じる物件が好きなだけですので、どうか誤解なきよう。


 
さて、前置きが長くなりましたが、神社の斜め前にある「かたくりの湯」へ。本当に新しくなったんですね。
屋外側にはトイレが設けられ、また湯屋の後ろには貯湯タンクも設置されていました。当地は完全な車社会ですから、駐車場も設けられています。



新浴場は旧浴場の隣に建てられましたが、かつての仮設然とした佇まいが持ち味のひとつだった旧施設は完全に撤去されていました。上画像でバリケードで囲まれている箇所が旧施設跡です。


 
湯屋には利用時間に関する案内が掲示されており、村外の人が利用可能な時間帯は10時から17時までですが、火曜と金曜の8時から15時までは清掃のため利用不可とのことでした。


 
建物が新しくなっても浴場は相変わらず無人施設。下足場の窓枠に料金箱が置かれていますので、そこへ100円玉を3枚投入します。
地元の方々がこまめに清掃なさっているおかげで、ウッディーな脱衣室は綺麗な状態が保たれており、しかも6畳ほどの広さがあるため、スペース的にストレスなく利用することができました。室内にはトイレも完備されています。
 

 
浴室もすっかり以前とは別物に変わっていました。外光が降り注ぐ大きな窓の下に浴槽が据えつけられ、高い天井の上には湯気抜きが設けられています。大きな窓の外側には目隠しの塀が立てられているため、景色はそんなに楽しめませんが、塀の上から吾妻川対岸にそびえる山々の稜線を眺めることができました。床・側壁・浴槽など浴室内ではワインレッド系の御影石調タイルが多用されており、暖色系のカラーコーディネートによって湯浴みにマッチしたぬくもりある雰囲気が醸し出されています。旧施設では無かった洗い場も新たに設置され、カランが2基(うち1基はシャワー付き)並んで取り付けられていました。浴槽は1.8m×3.5mほどの大きさで、5〜6人は入れるキャパを有しています。



かつての林温泉では、お湯が熱すぎるために湯口から出てきたお湯を樋で浴槽の外へ逃していましたが、新しくなった今のお風呂では、石材を加工して作られた湯口によって、浴槽へ投入する湯量をコントロールしています。この湯口は小さな湯溜まりになっており、中央の穴から直に触れないほど熱い温泉が噴き上がっています。そしてこの中に溜まったお湯は、浴槽と洗い場の2方向へ流下できるようになっており、湯船にお湯を注ぎたい時には洗い場側の出口にタオルの塊を詰めてお湯が浴槽へ落ちるようにし、逆に湯船のお湯が熱くて止めたい時には、湯船側の出口にタオルの塊を詰めて洗い場側へお湯を逃します。上画像ではお湯を全量浴槽へ注ぎ込ませています。この画像をご覧になればわかるように、旧施設時代の伝統を踏襲しているのか、洗い場側へお湯を逃す流路の直下には風呂桶が置かれていました。なお湯口には水道蛇口も設けられていますので、加水することもできます。

林温泉といえばアブラ臭が強いことで温泉ファンから知られていましたが、新しい施設になった現在では、室内空間が増加し、換気環境が向上したためか、室内に籠るアブラ臭が若干薄くなったような気がします。でもアブラ臭ファンを唸らせる芳香そのものは健在であり、特に湯口へ鼻を近づけると頭がクラクラするほど強い匂いを嗅ぐことができます。今回私もしっかりと鼻をクンクン鳴らして匂いを堪能させてもらいました。
お湯はほぼ無色透明で湯の華は特に見られません。お湯を口に含むと薄塩味とほろ苦み、そして少々の芒硝感が得られます。肩までお湯に浸かると、食塩泉的なツルスベと硫酸塩泉的な引っかかりが拮抗する複雑で奥の深い浴感が肌に伝わりました。湯上がりにはパワフルな温浴効果が得られ、真冬だというのに外套要らずで長い時間ホコホコ状態が続きました。湯屋の上物が変わってもお湯のクオリティは変わることはありません。相変わらず素晴らしいお湯です。

建て替えによりごく普通のお風呂になったので、仮設施設ならではの独特な雰囲気を楽しむことはできなくなってしまいましたが、お湯は完全掛け流しですし、そして何よりも、八ッ場ダム対策事業によって設けられた地元住民向けの湯小屋にもかかわらず、外来者が利用できる貴重な存在ですから、これからもありがたく湯浴みできる状態が続いてほしいと願っています。


 
お湯に満足した私は、湯小屋から出た後、日が暮れた八ッ場を歩いて川原湯温泉駅まで向かうことにしました。「道の駅 八ッ場ふるさと館」前の十字路を南側へ移り、不動大橋で対岸へと渡ります。この不動大橋は、民主党政権が発足した当初、その高い橋脚が八ッ場ダム建設中止の是非を問う象徴的な存在としてメディアで連日取り上げられましたが、あの騒動は一体何だったんだろう…。


 
 
温泉から歩くこと30分で、ダム工事進捗によって移転した新しい川原湯温泉駅にたどり着きました。高崎行の普通列車に乗車です。
吾妻線では長らく国鉄時代に製造された115系電車が普通列車として使われ続けてきましたが、間も無くこの電車は廃止され、ステンレス製の車両(高崎線のおさがり)に替わる予定です。温泉も地域の景色も吾妻線も、この地域ではあらゆるものが姿を変えてゆくのですね。


ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 75.5℃ pH未記載 成分総計4.36g/kg
Na+:954mg, Ca++:574mg,
Cl-:2140mg, SO4--:384mg, HCO3-:48.7mg, HS-:0.5mg, Br-:9.2mg,
H2SiO3:84.7mg, HBO2:135.0mg, CO2:16.5mg, H2S:0.4mg,
(平成19年6月29日)
加水加温循環消毒なし

長野原草津口駅もしくは川原湯温泉駅より徒歩30分、
群馬県吾妻郡長野原町大字林字東原1426  地図

村外者利用可能時間10:00~17:00(火曜と金曜の8:00~15:00は清掃のため利用不可)
300円
備品類なし

私の好み:★★★
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草津温泉 湯元館

2016年09月25日 | 群馬県
 
前回取り上げた「草津館」を出た後、昼食を食べてひと休みしていたら、なぜか無性にオーソドックスな湯畑源泉に入りたくなったので、湯畑の目の前にある「湯元館」で日帰り入浴をお願いすることにしました。こちらのお宿は湯畑から東へ伸びる滝下通りに面しており、通りに合わせて建物自体も緩やかな曲線を描いています。


 
玄関で声をかけて入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。館内は和の趣きたっぷり。お風呂は玄関から見て左手(帳場の東側)にあるラウンジに面しており、男女両浴室の他に貸切風呂もあるようです。さすが天下の草津で営業しているお宿だけあり、脱衣室はお手入れが行き届いておりとても綺麗で、気持ち良く使うことができました。なおロッカーは無いため、貴重品は帳場で預かってもらいましょう。



お風呂は内湯のみですが、大きな窓ガラスを採用した浴室はとても明るく、また換気状態も良く冬でも湯気篭りが少ないため、快適な入浴環境が整えられていました。尤も、地形的な事情で窓の外にはコンクリの擁壁が立ちはだかっているのですが、竹垣を設けることで和の雰囲気を出し、殺風景さを緩和させていました。浴槽タイルのスカイブルーと、床のワインレッドの対比が実に鮮やかです。


 
窓と反対側の壁に沿って洗い場が配置されており、計6基のシャワー付きカランがL字形に並んでいました。こちらに備え付けられているアメニティー類は、前回記事で取り上げた「草津館」と同じく、資生堂が開発した草津温泉オリジナルの「泉と恵」です。一般的に硫黄の湯の香が漂う浴室の水栓金具は、硫化によって金属部分が青黒く変色してしまうものですが、こちらのお宿では金具の表面に研磨した形跡が見られましたので、こまめにお手入れすることによって変色を防いでいるのでしょう。


 
窓に面した浴槽はおおよそ4m×2mの長方形で、10人横に並び足を伸ばして入っても余裕があるサイズです。石造りの湯口からお湯が滔々と注がれており、湯口の上では小さな亀の置物が鎮座していました。そしてその湯口の周りには温泉成分の結晶がびっしりとこびりついていました。


 
湯元を名乗るだけあってお湯の供給量が多く、浴室に誰もいない時からお湯が惜しげもなく溢れています。ワインレッドの御影石の上を流れてゆくお湯は、絶え間なく美しい波紋を描いていましたが、私が湯船に入ったら、オーバーフローによって洗い場がちょっとした洪水状態になってしまいました。言わずもがな完全掛け流しの湯使いでしょう。

こちらに引かれているお湯は目の前の湯畑で湧く湯畑源泉。源泉地から至近にあり、また運良くこの時は先客がいなかったために、お湯がとってもフレッシュでした。見た目はほぼ無色透明であり、湯の花などもほとんど浮遊していませんが、わずかに青白い色合いを帯びているようにも見えます。お湯からは酸っぱい匂いとともに火山の噴気孔的な硫化水素臭が漂い、口に含むと口腔粘膜を収斂させるミョウバン系の強い酸味が感じられますが、ほんのりとゴムテニスボールを連想させる風味があり、また酸味に関しても万代鉱源泉のような攻撃性が弱い代わり、甘味を伴うフルーティーな味覚を有しているように思われました。湯中では強酸性泉らしいヌメリを伴うツルスベ浴感がしっかりと肌に伝わり、42℃前後という絶妙な湯加減に調整されているため、お湯のフレッシュさも相まって、いつまでも浸かっていたくなる気持ち良さを楽しむことができました。


湯畑
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 51.3℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.65g/kg 成分総計1.69g/kg
H+:8.91mg(36.54mval%), Na+:56.0mg, Mg++:36.3mg(12.33mval%), Ca++:73.5mg(15.16mval%), Fe++:17.5mg, Al+++:43.8mg(20.14mval%),
F-:9.9mg, Cl-:311mg(35.63mval%), SO4--:640mg(54.16mval%), HSO4-:192mg, Br-:1.3mg,
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.3mg, CO2:36.7mg, H2S:7.1mg,
(平成25年5月15日)

草津温泉バスターミナルより徒歩5分(約400m)
群馬県吾妻郡草津町草津366  地図
0279-88-3394
ホームページ

日帰り入浴時間12:00〜16:00
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品帳場預かり

私の好み:★★★
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草津温泉 草津館

2016年09月23日 | 群馬県
 
引き続き上州草津温泉を巡ります。今度は湯畑の方へ下っていき、2013年に開業した草津の新たなシンボル「御座の湯」と、以前からある共同浴場「白旗の湯」に挟まれるような場所にある旅館「草津館」で日帰り入浴をお願いすることにしました。湯畑のまわりは土産物店や飲食店など派手やかな建物が軒を連ねているため、「御座の湯」の前で且つ観光案内所の隣という好立地にもかかわらず、周囲に埋もれてその存在に気付きにくいかもしれませんが、宿としてゆっくり過ごすには寧ろその方が良いかもしれませんね。


 
玄関で入浴をお願いしますと快く対応してくださり、廊下を歩いた先にある帳場で丁寧に案内してくださいました。帳場の前にあるラウンジでは、私のような日帰り入浴客でも湯上がりに休憩することができます。この部屋はひだまりになっており、明るくホッとできる空間です。


 
玄関と帳場やラウンジを結ぶ廊下の途中右には、お宿の自家源泉である若の湯源泉が湧出しており、温泉が自噴する様子を目にすることができます。これから入るお湯は、まさにここから直接引いたお湯であります。



玄関のすぐ目の前に暖簾が掛かっています。源泉でお湯が湧き出でる姿を見学した後は、その湯に浸かるべく浴室へと向かいました。総木造の脱衣室はやや年季を感じるものの、隅々まで手入れが行き届いており、気持ち良く使うことができました。


 
男女別の浴室は内湯のみで露天風呂はありませんが、男女とも一つの浴室内に2つの異なる源泉が引かれており、一回で二度美味しい湯浴みを楽しむことができます。脱衣室と同じく浴室内も木造で木のぬくもりが伝わってくるとともに、足元に敷かれた切り出し石材の感触が、伝統的な温泉旅館らしい重厚感をもたらしています。
私が訪れたのは真冬だったため、室内には湯気がこもっており、しかも逆光で大変見にくいのですが、室内には草津名物の湯もみ板が立てかけられていました。


 
男湯の場合は、浴室入って右手に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが2基とスパウトのみの混合水栓が1基取り付けられていました。洗い場に備え付けられているアメニティー(ボディーソープやシャンプーなど)は、資生堂が開発した草津温泉オリジナルの「泉と恵」で、この製品は草津温泉の他旅館でも目にすることができますが、残念ながら非売品ですので、どんな使い心地なのかを知りたければ、草津のお宿でお風呂に入らなければなりません。でも、そのレア感こそ製品の希少価値を高めているのでしょうね。


  

上述したように浴室内には2つの源泉が引かれており、それぞれに浴槽が設けられています。手前側にある1人サイズの小さな浴槽は、お隣「白旗の湯」で用いられている白旗源泉です。木の栓が突っ込まれたバルブ付きの湯口からお湯が注がれており、湯船のお湯は灰色を帯びた弱い白濁を呈しています。湯中では大小様々な大きさの湯の花が舞い、お湯をテイスティングしてみますと、強烈な収斂酸味が口の中に広がると同時に、アルミ箔を齧った時のような不快感や金属感が口腔の粘膜を刺激しました。湯加減はやや熱めですが、切り出し石材で囲われた浴槽は入り応えがあり、両腕を縁の上に載せてじっくりと浸かっていたくなりました。


 

一方、奥の大きな浴槽には自家源泉の若の湯が張られています。槽としての大きさはおおよそ2m×2.5mで5〜6人サイズ。湯船のお湯はやや青みを帯びた半透明で、見た目だけでも2つの源泉の違いは明らかです。濁りの少なさはお湯が新鮮である証左。すぐそばの源泉から引いているのですから当然ですよね。湯中では白く細かな湯の花が無数に舞っており、これがお湯を半透明のような淡い濁りに見せているのでしょう。
お湯は木箱の湯口から注がれていて、その木箱の周りには結晶化した温泉成分がビッシリとこびりついていました。やや熱めの小さな浴槽に対し、こちらは絶妙な湯加減がキープされており、一度入ると後ろ髪を引かれて出られなくなってしまうほど気持ち良いお湯です。湯口のお湯を口に含んでみますと、白旗源泉よりも酸味がいくらかマイルドで、頬の収斂もワンテンポ遅れて感じられます。また白旗源泉の酸味は梅干の汁みたいな味でしたが、若の湯はどちらかといえばフルーティであり、ほろ苦味も混ざっていて、一言では表現できないような奥深い味わいでした。匂いに関しても、白旗源泉は鼻腔をツーンと刺激するようなストレートに酸っぱい匂いですが、若の湯は同じくミョウバン臭でありながら、火山の噴気孔のようなガス臭も伴っており、やはり若の湯の方が重層的であるように感じられました。
両源泉とも、分析書上の数値にはあまり差がないのですが、源泉の違いによるわずかな差や引湯の距離など、ちょっとした違いによって知覚的特徴にこのような差異が生まれるのでしょう。いずれのお湯も強酸泉ならではのヌメリを伴うツルスベ浴感がはっきりと肌に伝わり、草津の湯らしい温まりが得られるのですが、殊に若の湯は湯加減も良く、またフィーリングもマイルドであるため、時間を忘れていつまでも入り続けていたくなります。まさに名湯です。

草津では外湯巡りも楽しいのですが、こうしてそのお宿でしか入れない源泉を味わうのもまた一つの楽しみですね。いずれ泊まってみたいお宿です。


若の湯
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.0℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.69g/kg 成分総計1.78g/kg
H+:8.92mg(36.10mval%), Na+:56.4mg, Mg++:35.2mg, Ca++:79.6mg(16.21mval%), Fe++:16.8mg, Al+++:44.7mg(20.30mval%),
F-:10.0mg, Cl-:340mg(37.88mval%), SO4--:634mg(52.20mval%), HSO4-:190mg, Br-:1.7mg,
H2SiO3:227mg, H2SO4:4.3mg, CO2:82.5mg, H2S:6.9mg,
(平成21年11月6日)

白旗源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.8℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.66g/kg 成分総計1.76g/kg
H+:8.91mg(36.30mval%), Na+:54.4mg, Mg++:37.4mg(12.63mval%), Ca++:76.5mg(15.67mval%), Fe++:17.6mg, Al+++:43.9mg(20.04mval%),
F-:9.5mg, Cl-:310mg(35.19mval%), SO4--:651mg(54.61mval%), HSO4-:195mg, Br-:1.5mg,
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.4mg, CO2:88.0mg, H2S:7.7mg,
(平成25年5月15日)
※館内掲示の白旗源泉のデータは平成6年のものでしたが、他施設で新しいデータがありましたので、ここでは新しいデータを抄出転記します。

草津温泉バスターミナルから徒歩4〜5分(約350m)
群馬県吾妻郡草津町草津甲419  地図
0279-88-2027
ホームページ

日帰り入浴時間要問い合わせ
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★★

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草津温泉 躑躅の湯

2016年09月21日 | 群馬県
 
今回記事から数回連続で群馬県吾妻地方の温泉を取り上げます。と言っても、これまでの記事と同じく半年以上前の冬に訪れた際の内容ですので、季節外れの雪景色が連続してしまいますが、何卒ご容赦ください。まずは温泉ファンの聖地である草津温泉の共同浴場「躑躅の湯」から。私が訪れた時には屋根上の湯気抜きから白い湯気を上げており、温泉風情たっぷりでした。

こちらの共同浴場は、草津に数ある外湯の中でも温泉街の中心部から最も遠く離れていますが、「道の駅 草津運動茶屋公園」から至近であるため、基本的に駐車場を併設しない草津の外湯にあって、車で利用しやすい数少ない施設と言えるかもしれません。ちなみに私は路線バスで伺いました。余談ですが、まだ大学生の頃に学生仲間と草津を訪れた時、この「躑躅の湯」を「ドクロの湯」と読んだ女の子がいましたが、なるほど躑躅と髑髏は字面が似ており、みんなで爆笑した想い出があります。もちろんこの浴場と髑髏とは全く関係ありません。


 
浴室内は草津の外湯の標準仕様と称すべきレイアウトで、木造の湯屋内部に浴槽が一つあるだけの至ってシンプルな構造です。床や側壁立ち上がり部分など、お湯が掛かりやすい箇所に耐酸塗装が施工されている点も草津の他の外湯と同様です(このため大変滑りやすいので、足元にはご注意を)。


 

原則的に地元の方のための共同浴場であるため、外来者向けの備品類は無く、ロッカーも設置されていないのですが、全国から人々が集まる日本屈指の観光地であり、その中には不届きな輩もいるため、脱衣室にはロッカーの代わりに貴重品を入れる巾着袋が用意されており、浴室内に取り付けられているフックに貴重品を入れた巾着袋をぶら下げて、入浴中は各自が目視で監視する方法を採用しています。この方法は当浴場のみならず、草津の他の外湯でも見られますね。


 
浴槽は(目測で)1.5m×3mほどの寸法で、おおよそ5〜6人サイズ。浴槽にはライムグリーン色の耐酸塗装が施され、バルブ付きの湯口からお湯がドバドバと注がれています。そして底面にあいた穴からオーバーフロー管によってお湯が排出されています。言わずもがな完全放流式の湯使いです。訪問した日は寒さが厳しい冬だったためか、お湯を大量投入しても熱くは感じず、むしろ長湯したくなるような丁度良い湯加減でした(でも強い酸性のお湯であり、体への影響も強いため、不用意な長湯は禁物です)。
こちらに引かれている源泉は万代鉱源泉。浴槽内のお湯は無色透明で湯の花などは見られず、酸っぱい匂いは弱いものの、とてつもなく強烈な収斂酸味が感じられ、湯船への入りしなには脛にピリピリとした刺激が走り、お湯に肩まで浸かると強酸性のお湯らしいヌメリを伴うツルスベ浴感がはっきりと肌に伝わりました。草津で最も凶暴とされる万代鉱源泉ですが、引湯距離が長いためか、同源泉を引いている他浴場よりもお湯が幾分こなれており、劇しさが若干抑えられているように感じられました。

地元の方々のおかげで脱衣室も浴室内も綺麗に維持されているこの浴場。
草津のお湯をありがたく享受させていただきました。


万代鉱
酸性-塩化物・硫酸塩温泉 96.5℃ pH1.6 湧出量測定せず(掘削自噴) 溶存物質3.30g/kg 成分総計3.32g/kg
H+:26.0mg(54.84mval%), Na+:101mg(9.35mval%), Mg++:57.0mg(9.97mval%), Ca++:102mg(10.84mval%), Fe++:6.31mg, Al+++:47.1mg(11.15mval%),
F-:23.2mg, Cl-:742mg(44.41mval%), SO4--:836mg(36.92mval%), HSO4-:732mg(16.00mval%), Br-:2.9mg,
H2SiO3:501mg, HBO2:18.7mg, H2SO4:48.1mg, CO2:14.7mg,
(平成25年5月15日)
加温加水循環消毒なし

JR吾妻線・上野原草津口駅よりJRバス関東の草津温泉行きバスで「運動茶屋公園」バス停下車すぐ
群馬県吾妻郡草津町南本町  地図

外来者の利用は10:00〜15:00
無料(貰い湯の精神で)
備品類なし

私の好み:★★
コメント (4)
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