温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

津曲温泉共同浴場

2011年12月30日 | 鹿児島県
※残念ながら2018年10月末を以て閉鎖されました。

 
鹿児島県隼人の郊外、松永集落の端っこにちょこんと佇む小さな地元民向け共同浴場です。県道475号から田んぼ越しに、建物に描かれた温泉マークを確認することができますが、浴場の前にはただ田んぼが広がるばかりなので、はじめに県道からこの湯屋を見つけたときには、水田の上にポツンと建っているかのように錯覚してしまいました。このえも言われぬ長閑な佇まいが私の心をギュっとつかんで離さず、一目惚れしちゃったのであります。


建物の裏手に廻ると、源泉井と貯湯タンクがありました。その横に1台(軽なら2台)駐車できますが、それ以外に駐車スペースはありません。


 
基本的には地元民専用ですが、外来者も利用可能なので今回実際に入浴させていただくことにしました。男女別に分かれた入口ドアを開けると、すぐ両室の仕切りが一部切り取られた部分があり、そこに料金箱が置かれています。



脱衣室は余計な装飾や設備が一切ないシンプルな構造ですが、ジモ専にしては広めの空間が確保されており、窓から日の光も存分に降り注がれるので室内が隅々まで明るく、また床はフローリングでよくお手入れされているのでとっても快適でした。


 
浴室は浴槽・洗い場ともにモルタル造。日常使いのジモ専のお風呂はシンプルが一番ですね。周囲の田園集落の雰囲気にとってもマッチしています。やや深めの浴槽は6~7人サイズ。天井が高いためか、湯気が籠りにくく、不快な思いをせずに湯あみできたのが益々好印象でした。


 
湯口はふたつあり、浴槽側壁の中央に位置しているメインの湯口からはドボドボ音を立ててお湯が落とされ、ザブザブ惜しげもなく溢れ出ていきます。またオーバーフローの流路は赤茶色に染まっています。もうひとつの湯口は樋をかけられているもので、そのお湯は後述の通り洗い場用として加水されており、浴槽への供給というよりも洗い場で使われない分を逃がしてやるのが本来の目的かと思います。



面白いのが洗い場のカランでして、蛇口のような類ではなく、源泉が引かれた配管を分岐させてそれぞれにバルブを取り付け、それを利用者が各自開閉する方法がとられているのです。この源泉は加水されているようで、浴槽の湯口よりはかなりぬるくなっていました。

お湯は無色透明ですが僅かに白く靄がかかっているように見えます。弱金気味+弱炭酸味+弱ダシ味、弱金気臭+化石海水系の温泉にありがちな有機的な香ばしい匂いが感じられました。泡付きは見られず、やや熱めの湯加減で、少々キシキシする浴感が得られました。なにしろお湯の鮮度は抜群で、浴場の雰囲気もさることながら、このお湯の感触がたまらなく気に入り、お風呂から上がることに躊躇いをおぼえたため、何度も出たり入ったりを繰り返してしまいました。こんな素晴らしいお湯が近所にある土地を心の底から羨望してしまいます。


ナトリウム-炭酸水素塩温泉 48.5℃ pH7.5 59L/min(動力揚湯) 溶存物質1887mg/kg 成分総計1984mg/kg
Na:418.3mg(89.22mval%),
Cl:112.1mg(14.93mval%), HCO3:1091mg(84.50mval%)

鹿児島県霧島市隼人町松永川原田1133-2  地図

※残念ながら2018年10月末を以て閉鎖されました。
5月~10月→12:00~21:00
11月~4月→12:00~20:00
150円
備品類なし

私の好み:★★★
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塩浸温泉龍馬公園

2011年12月29日 | 鹿児島県
今回の記事文中には著者の偏屈な思考に起因する偏向した歴史観が一部に見られますが、あくまで冗談ですので、本気にして怒らないでくださいね。笑って許して(^o^)。


新川渓谷温泉郷を形成する温泉地の一つ塩浸温泉は現在宿泊施設がなく、日帰り入浴施設のみとなっています。2~3年前までは公共入浴施設の「福祉の里」と共同浴場「鶴の湯」が並んでいましたが、老朽化に伴い取り壊された後、龍馬ブームに乗っかって敷地内に2010年オープンした「龍馬公園」内に新たな浴場が設けられることとなりました。当地をはじめとする旧牧園町一帯は坂本龍馬とお龍が新婚旅行で訪れた土地なんだそうでして、前回取り上げた「犬飼の滝」などをはじめとして地元観光関係者は坂本龍馬人気にあやかろうと懸命のアピールを繰り広げています。


川の向こうにお目当ての浴場を発見。かつて「鶴の湯」があった位置に新たな平屋の湯屋が建てられたようです。


ちなみに擁壁下の川面に近いところにある小さな露天浴槽は、龍馬夫婦が新婚旅行で湯あみしたとされるものなんだそうです…。

川の手前の国道沿いにある駐車場には交通整理のおじさんがいましたが、彼の視界から国道を走行している車が消えない限り進めの誘導をしてくれず、これは安全を考えれば間違ったことではなく、またお年寄りを相手にするなら良いのでしょうが、余裕で出られるタイミングでも彼が車の前に立ちはだかって出させてくれないので、普段から都内で運転している私にとっては、まどろっこしくてイライラしてしまいました。なんでこんなにイライラしているのかは後述しますね。あまりにくだらないイチャモンにすぎないのですが…。


公園側へ渡る橋の袂には入場者を計測するためのカウンターが置かれていて、各自で1回押してくださいと書かれていました。なんで自分で押さなきゃいけないんだ…イライラ。

 
塩浸温泉公園の看板には「龍馬とお龍の日本初の新婚の湯」といまいちよく意味が分からないコピーが振ってあったり、公園内で張っているテントの下で売られているお茶には「龍馬も飲んだ霧島茶」と眉唾ものの説明が書かれていたりと、なんでもかんでも龍馬とお龍に結びつけようとしていることにイライラ。
この牽強付会ぶりにはむしろ滑稽で微笑ましく思えるほどでしたが、もし当の本人が生きていたら、眉をひそめるかもしれませんね。そして今まで持ち上げられていた西郷南洲は臍を曲げちゃうこと間違いなし。


公園事務所で入浴料金を支払うと、窓口の向こうのおじちゃんはお釣りを間違え、これを指摘すると「朝だからねぇ」と意味不明な言い訳をして、つり銭と一緒に大量の観光リーフレットがこちらへ手渡されました。気持ちはありがたいのですが、これから服を脱いでお風呂入るのに、サイズがバラバラのチラシ類はちょっと邪魔だなぁ…。

 
「縁結びの足湯」というネーミングにも「足湯自体には歴史も無ぇくせに縁結びを名乗るな。わけわかんねぇ」とイライラ。ちなみに湯口では温泉タマゴが作れるようですが、自分で作るのではなく、あくまで施設の人が作ったものを購入するだけみたいです。


公園の最も川上側に屹立する龍馬夫婦の立像。像の付近ではタクシーの運ちゃんに案内された老夫婦の姿が目立ちました。ここまで龍馬でプッシュする公園ですから、ここを訪れる観光客の多くは龍馬のロマンに陶酔する幕末歴史ファンなのでしょうけど、会津と仙台の血が流れる生粋の東日本人たる私は薩長土肥に対する燠のようなささやかな反抗心が心の奥底でくすぶっているので、遠くから眺めるだけにとどめておきました。

私はここへ立ち寄った目的は、龍馬ではなく温泉なのであります。さっきからイライラしているのは、この公園が龍馬でガンガン押していることに、奥羽越列藩同盟贔屓の私の薩長土肥に対する怨嗟の念がメラメラ燃え出して「オイラは龍馬になんかにゃ興味ねぇ」と叫びたい一心になっちゃったのが原因なのかもしれません。更には流行のものやマジョリティーに対して無条件に牙を剥こうとする私の反骨精神が反応しちゃっているにも大きいかと思います。
いやはや、くだらないですね。普段から鹿児島県の人にお世話になっているくせに、当地まで来て私は何を言っているんだか。これだからいつまで経っても負け犬なんだよ…。


 
さて赤手空拳の私を自嘲したところで、お風呂へ向かいましょう。お湯で戊辰の恨みつらみは綺麗さっぱり流そうではありませんか。お風呂は男湯が「龍馬の湯」、女湯が「お龍の湯」と名付けられていますが、かといって室内はそれに応じたような装飾があるわけでなく、ただ単にご夫婦の名前を冠しただけの話です。


さすがにまだ開業して1年ほどの新しい施設だけあって、館内は綺麗です。が、あまりに実用本位すぎてちょっと無味乾燥かも…。

 
浴室は結構広く、訪問時は私一人だったので、スペースを思いっきり持て余してしまいました。室内には浴槽が2つ、掛け湯用の槽がひとつ、洗い場のシャワー付き混合栓は8基設けられています。ボディーソープ類はないので持参しましょう。洗い場に用意されている腰掛や桶は、プラスティック材のものと木材のものが交互に並べられていました。どうして統一しなかったのかしら…。


浴室の脱衣所側に設けられているのが掛け湯槽。オープンしてまだ1年半しか経っていないのに、もうこんなに析出や着色がコテコテです。しかもそれは床のタイルにも及んでおり、創業してから20~30年は経っていそうな貫禄が早くも伝わってきます。すげぇな…。

 
主浴槽は8~10人サイズで「塩浸温泉」源泉が注がれて、浴槽縁の切欠からしっかりオーバーフローしています。岩に白い塩のようなものが付着するのでこの名前で呼ばれるようになったんだそうですが、ざっくり言えばこの地域でよくみられる重炭酸土類泉的な黄土色濁りのお湯です。濁り方は近隣の他の温泉よりも強くて底が見えず、槽内など全体が析出によりベージュ色に染まっていました。やや熱めの湯加減で、湯口ではかなり熱いです。石灰味+金気味+微塩味、金気臭+石灰臭そして微かなタマゴ的な匂いが感じられました。


 
もうひとつ1~2人サイズの小さい浴槽は「鶴の湯」源泉。脚に弾を受けて負傷した鶴が傷を癒したことが名前の由来なんだそうですが、主浴槽のお湯と似て非なる個性を有しており、このお湯が非常に素晴らしい!
主浴槽同様にしっかりとした掛け流しで、見た目は黄褐色を帯びた笹濁り、主浴槽とは異なり底まで透けて見え、金気が多いのか浴槽を含め全体的に深紅に染まっています。金気臭、そして金気味と炭酸味がはっきりがはっきり感じられ、味覚臭覚面が明瞭であるばかりでなく、湯船の温度は長湯に適したややぬるめの湯加減でして、重炭酸土類泉的なお湯にありがちな体にまとわりつくような浴感ではなく、フワっとやさしく体を包み込むような感じなのです。あまりに気持ち良い浴感のために後をひいてしまって、私はなかなかこの「鶴の湯」から出ることができませんでした。

両方の浴槽とも塩素消毒が行われているようですが、あまり気になりませんでした。
お風呂自体は歴史を感じさせるような構造ではなく、寧ろ実用本位のいまいち面白みに欠ける造りですが、お湯はさすがにホンモノで、特に「鶴の湯」はとっても印象に残る優しい浴感のお湯でした。
龍馬さん、いままで侮っていてごめんなさい。


塩浸1号
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 44.5℃ pH6.3 溶存物質1921mg/kg 成分総計2540mg/kg
Na:195mg(37.57mval%), Mg:87.4mg(31.86mval%), Ca:114.0mg(25.21mval%), Cl:149.0mg(18.89mval%), HCO3:990.2mg(73.01mval%), 遊離CO2:619.1mg

塩浸9号
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 51.5℃ pH6.4 溶存物質2042mg/kg 成分総計2543mg/kg
Na:208.0mg(37.80mval%), Mg:89.2mg(30.66mval%), Ca:122.0mg(25.44mval%), Cl:165.0mg(19.76mval%), HCO3:1050mg(73.14mval%), 遊離CO2:501.1mg

両方とも塩素消毒あり


鹿児島県霧島市牧園町宿窪田3606  地図
0995-76-0007
霧島市の紹介ページ

9:00~18:00(受付17:30まで)
360円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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和気湯と犬飼の滝

2011年12月26日 | 鹿児島県
 
鹿児島県を取り上げる観光ガイド本にはよく登場する野湯みたいな露天風呂「和気湯」に行ってみました。近くには名瀑「犬飼の滝」が轟音を立てながら落ちており、温泉だけ立ち寄って帰るのではあまりに芸が無いので、せっかくですから滝も見学してみることにしました。県道470号には駐車場が備えられた展望台があるので、今回はそこに車を止めて歩いてみます。当地は坂本龍馬が新婚旅行で訪れたゆかりの地として、地元の観光関係者が「龍馬」を前面に押し出して懸命にアピールしています。



展望台から滝を眺めてみましたが、梢に遮られて滝の全容が見えるわけではありません。しかも滝まで結構隔たりがあるぞ…。



せっかく来たのですから滝つぼまで歩いてみましょう。展望台の脇に遊歩道入口があり、そこから滝つぼまで行けるようです。道しるべによれば300mか…。


 
長い階段をひたすら下ります。滝つぼまで下ったついでにその川沿いにある「和気湯」にも寄るつもりなので、この道を進むことに誤りはないのですが、帰路にここを上がらなきゃいけないと思うと、ちょっと憂鬱です。
階段を下りきった突き当たりを左に曲がると「犬飼の滝」、右は「和気湯」。まずは滝を目指します。



展望台から4分で滝壺付近に到着です。トレイルはここまで。なかなか結構な瀑布ではありませんか。滝幅21.8m、高さ36.0mなんだそうです。もっとも、滝壺のすぐ傍まで近づけないので、迫力は想像していたほどではなかったかも。

 
さて道を引き換えし、階段を通過して川沿いを下流に向かって歩きます。ちょっとしたトレッキングコースですから、革靴やヒールのある靴では歩きにくいでしょう。


 
滝から6分で和気湯に到着。



そばにある岩は流罪で当地にいた和気清麻呂が湯上がりに座ったとされるものなんだとか。



一部サイトやガイド本でこの「和気湯」は無料と紹介されていますが、訪問時は寸志制となっていました。浴槽廻りにはお金を入れる料金箱が二つほど立てられていました。


 
簾に三方を囲まれた石組みの浴槽が地面からやや下がったところに設けられています。この「地面からやや下がったところ」というのが重要なんですね。浴槽に用いられている石材は相当古いもののようで、重厚感のある肌触りからは貫録が伝わってきます。
開けた方からは川が眺められ、とってものんびりとした良い雰囲気です。浴槽へ下る段は山側と川側の両側にありますが、山側は簾で塞がれているので使えません。
お風呂周辺にはトイレはおろか更衣室や目隠しすら無く、浴槽のそばにただ農業用の籠がおかれているだけ。開けたところで着替える行為に慣れていない方にはちょっと精神的ハードルが高いかもしれませんが、あんまり人が通る場所じゃありませんから、神経質になる必要はないでしょうね。私なんて脱衣に関しては羞恥心ゼロで堂々と着替えてちゃいました。といっても別に露出狂ではありません。


 
入浴前に露天風呂の前に架かる橋の上からこの「和気湯」を撮ってみました。渓流の河畔に据えられている素朴な佇まいが何とも言えません。でもこういうロケーションってことは、夏になるとアブの猛襲に見舞われそうですね。



お湯に入ってみるとけっこうぬるく、訪問時のような寒い12月だと、一度入ったら出るのがちょっとツラくなるような湯加減でした。でもそんな湯温の不満を払拭してくれたのが、湯面に絶え間なくプクプクと上がってくる泡たちでした。そう、ここは足元湧出なのであります。上で浴槽の位置を「地面からやや下がったところ」と書いたことが重要だとする理由はこの点でありまして、これは物理的に考えれば非常に自然な状態なんですね。従いましてお風呂に湯口は無く、底からこんこんと湧出したお湯は浴槽の切り欠けから少しずつ溢れ出て川へと流れてゆきます。
お湯は濃い山吹色に濁り、同じ色の湯の華もたくさん浮遊しており、2~3分お湯に体を沈めていると、体毛にその湯の華がビッシリとからみつきます。またこの湯の華は浴槽内にもこびりついており、槽内を触るとその接触箇所の肌が黄色に染まりました。またお湯への入りしなは皮膚がちょっとピリピリしました。味覚臭覚ともに土気と金気が感じられます。

ちなみに、私のように展望台から階段を下ったり登ったりしなくても、「和気湯」から川下方向へ徒歩3分のところにも広い駐車場があるので、そちらを利用したほうが階段の上下の労を厭わずして滝の見学もできるので便利でしょう。事前に調査をしないでその駐車場の存在を知らなかった私のような場当たり主義だと、無駄に歩いて徒労を重ねてしまうようです。でもぬるいお湯にブルブルっと身震いした私の体も、階段の上りのおかげですっかり温まってしまったことは否定できませんが。


実質的な野湯につき温泉分析表の掲示なし

鹿児島県霧島市牧園町下中津川  地図

日の出~日没
寸志
備品類なし
私有地につき節度ある行動を。

私の好み:★★
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犬飼温泉共同浴場

2011年12月25日 | 鹿児島県
 
霧島市下中津川の犬飼地区にある地元民専用の共同浴場です。ジモ専とはいえ外来者でも利用可能ですが、看板が出ているわけでもなく、実に地味な建物なので、事前にその存在を知らない限り、ここを利用する観光客はほとんどいないでしょう。


 
男子脱衣所の窓のすぐ外には日立の揚湯用ポンプが設置され、けたたましい音を立てながら動いています。またその脇には「湯之神」と彫られた温泉発掘記念の石碑が立てられています。この温泉は昭和50年にボーリングをして発見されたもので、掘削当時はまだ浴槽が設けられていなかったためビニールシートを敷いてそこにお湯を溜め、即席の露天風呂にして入浴していたこともあったんだそうです。


 
入口から男女別に分かれており、ドアをあけるといきなり脱衣所です。いかにも共同浴場らしい佇まいでとっても良い雰囲気ですね。料金は室内に掛かっている料金箱へ。建物はブロックを積み重ねてモルタルで固めている実に質素な構造で、屋根などにアクリル波板を多用しています。


 
壁にはこの温泉浴場を維持している組合員さんの名札がさがっていました。お名前を拝見すると迫さんや久保さんが多いようです。また室内にはなぜか古いマッサージチェアが置かれていました。けだし組合員による寄付だと思われますが、老人の利用がほとんどですから、意外と重宝しているかもしれません。


 
浴室にはモルタルの浴槽がひとつ据えられています。浴槽は3人が同時に入れるサイズで、温泉に含まれる石灰質により綺麗にコーティングされており、金気が混じっているため全体的には朱鷺色を帯びた象牙色に染まっています。


 
浴槽の横にはプラスティック樽が置かれ、そこにもお湯が注がれて上がり湯として用いられています。この樽からオーバーフローするお湯の流路は薄いながらも鱗状の石灰華が形成され、びっしりと床を覆っていました。


 
大量に投入されるお湯には圧巻です。大して大きくない浴槽にドバドバと落とされ、浴槽の切欠から贅沢に捨てられていきます。なにしろ投入量(及びオーバーフロー量)が多いのでお湯は新鮮そのもの。完全掛け流しの湯使いで、加水もされていない状態では44℃くらいとやや熱めの湯加減ですが、常連さんはこの熱めのお湯がお好きのようですので、ヨソ者が勝手に水で薄めるようなことは避けた方がよいのでしょう。
お湯の特徴はこの界隈で一般的にみられる重炭酸土類泉チックなものでして(泉質名としては含土類-重曹泉となるのでしょう)、やや橙色を有した薄い黄土色の笹濁りの色合いで、弱金気臭と石膏が焼けたような香ばしい匂いが漂い、石膏味に炭酸味、そして土気味と金気味が感じられました。周辺の他の温泉よりも石膏味が若干強いように思われます。

訪問時は地元のお爺さんが3人御入浴中。みなさん80歳以上で、集落最高齢である95歳の方もいらっしゃいました。中でも私に色々とお気づかい下さった81歳の方はとても半寿と思えない若々しさで、毎日ここの温泉に通っているおかげで病院には全く世話にならないどころか薬すら飲んでいない、と胸を張っておっしゃっていました。そして「湯上がりは汗が引かないから、しばらく(上半身は)裸でいないと汗が止まらない」と言い残し、寒風吹く12月の空の下を、本当に上半身裸でご帰宅されていきました。いやはや、御長寿パワーおそるべしです。1ヶ月2,500円で毎日こんな温泉を利用できる地元の方が羨ましいと、私は心の底から羨望してしまうのですが、お湯が熱くて現代人向きではないこと、そして運営経費削減のために入浴時間を短縮して20時までにしてしまったこと、などを理由として老人以外はあまりこの温泉を利用していないんだそうです。あぁ勿体ない…。


ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 48.1℃ pH7.2 84L/min(動力揚湯) 溶存物質2051mg/kg 成分総計2139mg/kg
Na:192.9mg(34.40mval%), Mg:90.1mg(30.38mval%), Ca:146.2mg(29.93mval%), Cl:135.8mg(16.13mval%), HCO3:1093mg(75.41mval%)

鹿児島県霧島市牧園町下中津川79-8

15:00~20:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★

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安楽温泉 鶴乃湯

2011年12月24日 | 鹿児島県
 
鹿児島県霧島市の安楽温泉にある湯治宿のうちの一軒です。安楽温泉は谷間の狭い土地ですからどの宿も駐車場の確保に苦労なさっているようですが、この「鶴の湯」さんは何か所かに分散しているものの駐車できる台数をしっかり確保しており、運転に自信がない方でも問題なく利用できるのではないかと思います。
最近建物を改修したのか、黄色と黒の2色ペイントで国道の通行者の目を惹く外観でした。



駐車場の奥には飲泉所や川を臨むテラスが設けられていました。飲泉所が用意されているってことはお湯に自信があるってことですね。なおテラスではお食事ができるみたいです。昔ながらの湯治宿も頑張って時代の流れに順応しているようです。


 
玄関や帳場はこじんまりとしていながらも立派な造り。帳場の左側にある階段で階下の浴室へと下りてゆきます。脱衣所もいわゆる昔ながらの湯治宿にありがちな、ただ棚があるだけの質素な構造ではなく、広さが十分に確保されて洗面台やドライヤーも用意された旅館に近いアコモディションとなっていました。



館内には往時の安楽温泉を俯瞰した写真が展示されていました。往古からこちらのお湯は人々を癒してきたのでしょう。


 
浴室は決して広くないのですが、限られたスペースにいろんなものが凝縮されています。まず内湯の浴槽は年季の入ったモルタル造りで、大小の二つに分かれていますが、私の実感では双方に大した違いは無かったようで、両方とも長湯したくなるような丁度良い湯加減でした。


 
注目すべきは湯口まわりに固着した析出のトゲトゲ。まるでハリネズミみたい。自然的な現象ですが、この造形はほとんど芸術の領域です。また床にこびりついている石灰華も立派で、単に固着しているのみならず、床や浴槽などお湯が触れるところ全てが赤茶色に染まっています。


 
洗い場のカランはシャワー付き混合栓が2ヶ所に分かれて合計5個設置されています。うち2つは内湯浴槽の右壁の裏、残る3つは浴槽の向こう側の増設されたと思しきエリアに設けられていますが、前者2つについてはかなり狭く、しかもそこが通路を兼ねており、誰かがそこを使っていると後者のカランや後述する露天風呂・サウナ・打たせ湯などに行きにくいため、この辺りは改善してほしいなぁと感じました。



浴槽を挟んだ向こう側には打たせ湯が2本、ドボドボ音を響かせながら大量のお湯がひたすら落ち続けています。落ちるお湯の勢いがすさまじいためか、跳ね返りで他の客に迷惑をかけないよう腰を下ろして利用してほしいとの注意書きがありました。


 
天降川を臨む露天風呂。こちらもやや無理矢理造られたような感は否めませんが、川の淵に当たる位置から谷全体を眺められる絶好のロケーションで、川風に吹かれながら爽快な湯あみが楽しめました。浴槽は4人サイズといったところで、外気の影響か湯加減は若干ぬるく、川を望む景色を堪能しながらいつまでもじっくり長湯していたくなるようなお風呂でした。こちらの湯口も内湯と同様にトゲトゲや赤茶色の着色が非常に目立ちます。


露天風呂は小さいながらも、源泉の湧出圧力を活かしたジェットバスみたいなものが浴槽中から出ていたり、また同じくその圧力をつかって特定部位にホースでお湯を当てる筋湯なるものが設けられています。


 
露天風呂の隣には、温泉を噴霧させたミストサウナがあり、室内には何本ものパイプが敷設されてそこに空けられた穴からお湯が霧状に噴き出て室内を充満させていました。キャパは4人でちょっと狭いのですが、このミストサウナだったら温度が低くて体への負担が軽いので、ドライサウナが苦手な私でも気持ち良く利用できます。

ちなみにお湯のインプレッションですが、この地域では一般的な山吹色に弱く濁る重炭酸土類泉で、橙色の小さな湯華が浮遊しており、味覚は薄い塩味+ダシ味+石灰味+明瞭な炭酸味+ほろ苦み、そして臭覚は布団を干した時のような芳しい匂いが感じられました。なお泡付きは確認できませんでした。同じ安楽温泉でも知覚面は前回の「佐藤温泉」(安楽1号)よりこちら(安楽16号)の方が強いように思われます。
豊富な湯量を存分に楽しめる面白いお風呂でした。


安楽16号
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉 45.4℃ pH6.1 溶存物質2092mg/kg 成分総計2466mg/kg
Na:201.4mg(36.94mval%), Mg:82.1mg(28.48mval%), Ca:143.6mg(30.21mval%), Cl:129.4mg(15.06mval%), HCO3:1111mg(75.09mval%)

鹿児島県霧島市牧園町宿窪田4221  地図
0995-77-2483

立ち寄り入浴300円
ロッカー(帳場前に設置)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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