温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

草津温泉 御座の湯

2018年01月31日 | 群馬県
 
草津温泉のシンボル、湯畑。いつも多くの観光客で賑わっています。


 
そんな湯畑の前、かつて駐車場があった場所に2013年オープンした日帰り入浴施設が「御座の湯」。オープンから5年近くが経ち、いまや草津の新たなランドマークとして威風堂々たる存在感を放っています。この浴場に関しては既に多くの方がネット上で紹介なさっているので、今さらこの拙ブログで紹介するまでもないのですが、今回は草津白根山の噴火により客足に影響が出ている草津温泉を応援するべく、簡単ながら取り上げさせていただきます。なお私が訪れたのは約1年半ほど前(2016年)ですので、その当時と現在とでは若干の違いがあるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。

唐破風の玄関が印象的な木造建物は歴史ある温泉街を代表するに相応しい風格を備えており、威風堂々たる構えはとてもフォトジェニックです。この日も多くの方が建物を背にして記念撮影していました。御座之湯という湯屋は明治期まで存在していたらしく、その後取り壊されてしまったようですが、温泉街の新たなシンボルを創るに際し、かつての浴場名を復活させ、あわせて伝統的な様式も取り入れて、いにしえの温泉街を感じてもらおうというコンセプトで計画がすすめられたようです。なお「御座」とは源頼朝が座ったという伝説に由来しているんだとか。

破風の玄関を入ると、フローリングで明るいフロントもまた立派な造り。受付の方に説明を受け、男女に分かれた1階の浴場へと向かいます。東日本を代表する温泉地ですから、多くの利用者が訪れることを想定しており、脱衣室に用意されているロッカーの数も草津の入浴施設にしては多い方なのですが、それでもこの日はほとんどが埋まっており、貴重品用の小さなロッカーも7割近くが使用中でした。温泉は入ってこそ楽しめるものですから、湯畑を目にして感動した観光客が、その足でこちらへやってくるのでしょう。



浴室は「石の湯」と「木の湯」の2つがあり、男女日替わりで使われています。ちなみに、私が訪れた日は「木の湯」に紺の暖簾が掛かっていましたので、以下「木の湯」について述べてまいります。おそらく両者は浴室名の通りに使われている建材が異なっているものの、構造そのものはシンメトリであるものと推測されます。

屋根が高く開放的であり、且つ柱や梁が立派。天井の天頂部は明かり採りになっているので、単に開放的であるのみならず、明るいのです。それでいて余計な飾りつけなどは無く、落ち着いて静かに入浴に専念できる環境が整えられていました。
「木の湯」の場合、浴室に入って右側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが4基並んでいます。利用客数に対してカランの数が少ないように思われるのですが、それでも何とか上手く回っており、特にシャワー待ちのお客さんはいらっしゃらないようでした。なお洗い場に備え付けられているボディーソープやシャンプーは、資生堂が開発した草津温泉オリジナル品「泉と恵」。温泉街の各旅館でも同じものが導入されています。
一方、洗い場と反対側には掛け湯用の湯枡が設置されており、湯畑源泉と思しきお湯をぬるくしたものが張られていました。「木の湯」は床も木材使用なのですが(「石の湯」は石材敷きのようです)、木材に強酸性のお湯が掛かると足元が滑りやすくなるためか、床にはブロック状に滑り止めのスリットが入っていました。



浴槽は2つ並んでおり、それぞれは(目測で)2.5m×3.5mほど。各浴槽の中央には太い丸太が渡されており、大きな浴槽を2つに分割することで入浴者が寄りかかれるスペースを増やしているほか、枕のような機能も果たしていました。これら2つの浴槽は、源泉によって使い割れられています。こちらに引かれている2つの源泉は、草津の外湯でおなじみの「湯畑源泉」と「万代鉱源泉」。両浴槽の中間に据え付けられた湯口よりそれぞれに対してお湯が注がれており、それぞれ万人受けする42℃前後の湯加減に調整されていました。これらの源泉が引かれている草津の外湯は、これよりはるかに熱い場合が多いのですが、さすがに観光客向けの施設ですから、温度は適温に調整されていました。とはいえ加温循環消毒の無い放流式の湯使いですので、循環のお湯が嫌いな御仁でも大丈夫。両浴槽とも浴槽の縁の切り欠けからお湯がしっかりと溢れ出ていました。

「湯畑源泉」と「万代鉱源泉」という草津を代表する両源泉について、いまさら拙ブログでその特徴を申し上げるまでもないのですが、いくら適温に調整されているとはいえ、「万代鉱源泉」は肌に対して攻撃的であり、ピリピリくる刺激が敬遠されてしまうのか、私の訪問時にいたお客さんの多くは「湯畑源泉」の湯船に集中していました。その一方で当然ながらお湯の特徴を知らずに「万代鉱源泉」へ入る方もいらっしゃり、迂闊に長湯をして軽い疲労感に見舞われている光景も見られたのですが、そんな場合も大丈夫。室内の壁に沿って長いベンチが括りつけられており、そこに腰かけてゆっくり休めます。日本のお風呂は休憩と言う概念に欠ける傾向があり、逆上せたような場合でもひと息つけないお風呂が散見されますが、こちらのように腰をかけるスペースがしっかり設けられていると、安心して入浴を楽しめます。小さくて目立ちにくい箇所ですが、私としてはこのベンチに対して大いに評価したいところです。



1階はフロントと浴場で占められており、正直なところ休憩できるような空間がないのですが、その代わり2階には湯畑を見下ろすお座敷「大広間」が用意されていて、御座の湯入浴客でしたらどなたでも利用できます。この他別料金を要する「中広間」もあり、ご家族やグループ利用での休憩にはこちらが良いかもしれません。

この他、こちらでは外出用浴衣レンタルのサービスも行っているんだとか。お宿に泊まらなくても浴衣が着られるわけですから、海外からいらっしゃった旅行客だけでなく、国内旅行者にも喜ばれそうですね。オープンから間もなく5年になり、すっかり草津の代表的な施設となった「御座の湯」は、これからも草津の観光客を温もりをもって迎えてくれることでしょう。


湯畑源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 51.3℃ pH2.1 自然湧出 溶存物質1.65g/kg 成分総計1.69g/kg
H+:8.91mg(36.54mval%), Na+:56.0mg(10.06mval%), Mg++:36.3mg(12.33mval%), Ca++:73.5mg(15.16mval%), Al+++:43.8mg(20.14mval%), Fe++:17.5mg,
F-:9.9mg, Cl-:311mg(35.63mval%), Br-:1.3mg, SO4--:640mg(54.16mval%), HSO4-:192mg(8.04mval%),
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.3mg, CO2:36.7mg, H2S:7.1mg,
(平成25年5月15日)

万代鉱源泉
酸性-塩化物・硫酸塩温泉 96.5℃ pH1.6 湧出量測定せず(掘削自噴) 溶存物質3.30g/kg 成分総計3.32g/kg
H+:26.0mg(54.84mval%), Na+:101mg(9.35mval%), Mg++:57.0mg(9.97mval%), Ca++:102mg(10.84mval%), Fe++:6.31mg, Al+++:47.1mg(11.15mval%),
F-:23.2mg, Cl-:742mg(44.41mval%), SO4--:836mg(36.92mval%), HSO4-:732mg(16.00mval%), Br-:2.9mg,
H2SiO3:501mg, HBO2:18.7mg, H2SO4:48.1mg, CO2:14.7mg,
(平成25年5月15日)

群馬県吾妻郡草津町大字草津421  地図
0279-88-9000
ホームページ

4/1~11/30→7:00~21:00(最終入館は20:30まで)
12/1~3/31→8:00~21:00(最終入館は20:30まで)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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草津温泉 煮川の湯

2018年01月28日 | 群馬県

前回記事で取り上げた「ペンションはぎわら」に泊まった晩、夕ご飯を摂るべく温泉街へ繰り出したついでに、外湯をハシゴしました。外湯巡りといえば草津温泉の楽しみのひとつですよね。今回は巡ることに専念したため、その全てを記録したわけではないのですが、大滝乃湯の近くにある「煮川の湯」だけ記録しましたので、今回記事で取り上げさせていただきます。拙ブログでは初登場ですが、私個人としては6年ぶりの再訪です。総木造で小ぢんまりろし造りの浴舎は、いかにも草津の外湯らしい佇まいです。



脱衣室には荷物や衣類を置く棚の他、床に直置きする籠も用意されています。また、常に無人である草津温泉の外湯では、貴重品を備え付けの巾着袋に入れて袋ごと浴室へ持ち込み貴重品を自分で管理するスタイルがしばしば見受けられますが、こちらの浴場でも同様であり、室内にはそのための袋やフックが備え付けられていました。防犯上の観点なのか、脱衣室と浴室の間には小窓があり、相互で目視できるようになっていました。こうした造りは、草津温泉のみならず他の温泉地の外湯でも見られますね。



外観から想像できるように浴室もコンパクト。湯気が立ちこめる室内には、浴槽と水道の蛇口がそれぞれ一つずつあるだけで、とてもシンプルです。なお、総木造とはいえ、床や浴槽など草津の酸性泉が恒常的にかかる箇所は、モルタル塗の上で耐腐食塗装が施されています。



浴槽は4~5人サイズ。縁の切り欠けからは絶えずお湯が溢れ出ています。湯船のお湯はほぼ無色透明ですが、湯中では薄い黄色を帯びた微細な白い湯の華がたくさん浮遊していました。湯加減は(私の体感で)44~45℃でしたから、一般的なお風呂よりもちょっと熱めですね。でも強酸性のお湯らしいヌルヌル感を伴うツルスベ浴感ははっきりと肌に伝わりますし、何よりもこの熱さがお湯の個性と合っているのか、熱さが嫌味にならず、むしろ非常に心地よく感じるのです。良泉ならではの特徴なのかもしれません。


 
草津の外湯に引かれているお湯といえば、湯畑源泉か万代鉱源泉が一般的ですが、こちらは浴場名と同じ名前の煮川源泉です。お湯からは酸っぱい匂いが放たれ、口をキュッと収斂させる明礬的な酸味を有しているのですが、その酸味はレモンのようなフルーティーさがあり、(個人的な感覚ですが)草津温泉の他源泉と比べると酸味がややマイルドかもしれません。また、上述のようにお湯の熱さが心地よく、それでいて湯上がり後のサッパリ感と肌のサラサラ感も実に気持ち良いんです。草津温泉はこうしたあまり有名ではない源泉に入ってこそ、より深層にある面白さに触れることができるんですよね。


煮川源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 45.0℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.43g/kg 成分総計1.55g/kg
H+:7.95mval%(37.15mval%), Na+:47.7mg(9.77mval%), Mg++:30.5mg(11.82mval%), Ca++:62.8mg(14.7mval%), Fe++:18.4mg, Al+++:38.9mg(20.36mval%),
Cl-:263mg(34.57mval%), SO4--:576mg(55.85mval%), HSO4-:154mg, Br-:1.6mg,
H2SiO3:190mg, H2SO4:3.1mg, CO2:110mg, H2S:10.0mg,
(平成25年5月15日)
加温加水循環消毒なし

24時間開場(清掃時間は入浴不可)
備品類なし

私の好み:★★+0.5

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草津温泉 ペンションはぎわら 2016年秋再訪

2018年01月26日 | 群馬県
先日(2018年1月23日)に発生した草津白根山(本白根山)の水蒸気爆発で犠牲になった方のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。私のような温泉バカにとって、火山やそれに伴う地熱活動は、温泉という自然の恵みを与えてくれるありがたい存在なのですが、時折このような惨禍をもたらし、その被害はあらゆる方面に及んでしまうので、無神経に喜んでいられないのがツライところ。今回の噴火でも、人的被害はもちろんのこと、その麓にある草津温泉の各旅館では早速キャンセルが相次いでおり、観光で成り立っている当地にとっては死活問題となっているようです。そこで今回から少しだけですが、私の記事ネタのストックから草津温泉関係を掘り起こして、いくつか紹介させていただきます。いずれも1年以上前のネタで申し訳ないのですが、何卒ご了承ください。


 
以前拙ブログでは草津の「わたの湯」源泉に入ることのできる「ペンションはぎわら」をご紹介したことがありますが(前回記事はこちら)、2016年の初冬に草津で滞在する機会があった際にも、あの素晴らしいお湯が恋しくなったので、一晩お世話になりました。今回記事ではその時のことを書き綴ってまいります。



前回訪問したときには、黒い毛の老犬がお客さんを出迎えていましたが、その後残念ながら天国へ旅立ってしまったんだとか。でも新たに子供の柴犬がやってきて、早くも宿の一員として愛想を振りまいていました。この日も私を見かけるや、このワンコは機敏に動きながらこちらへすり寄って来て、すぐにゴロンとお腹を向けたのでした。人懐こい性格なので、接客業にピッタリですね。


 
お宿の客室は和室と洋室の2タイプから選べるのですが、今回も前回と同じ洋室のベッドルームをお願いしました。正直なところ建物の古さは隠せませんしトイレも共用なのですが、室内は綺麗にお手入れされており、テレビや洗面台などが備え付けられているので、快適に過ごすことができました。


 
さて、お風呂へ向かいましょう。浴室は2室あり、大きさと形状が若干異なっているのですが、極端に違う訳ではなく、紺と紅の暖簾を入れ替えたり、あるいは貸切のような形にして、適宜使い分けているようです。前回宿泊時には両方入ったのですが、今回は奥側の大きな浴室のみ利用しました。

記事の冒頭でも申し上げましたが、こちらのお宿では「わたの湯」という源泉を引いており、この源泉に入れる施設はこちらを含め僅かしかありません。しかもこちらでは源泉に一切手を加えず、そのままの状態で浴槽へ供給しています。このため季節によって気温などの影響を受けてしまうんだとか。この日も浴室入口には「冬の間は温泉が少々ぬるく成りますので 熱い湯を出して入浴下さい」という文言の書かれた札がさがっていましたが、訪問日はそこまで冷え込んでいなかったので、ボイラーの沸かし湯を加えることなく、源泉そのままの状態で入浴させていただきました。


 

小ぢんまりとした室内には硫黄の香りがふんわり漂っています。壁はモルタルの上に白く塗装され、床はタイル貼りという実用的な設えですが、浴槽の傍らに据えられたゴツゴツとした黒い岩が、非日常的な雰囲気を演出しています。洗い場にはカランが2基設置されており、うち1基はシャワー付きです。


 
浴槽に注がれる「わたの湯」源泉は、この日も一切手を加えることなく絶妙な湯加減が保たれていました。言わずもがな、完全掛け流しです。湯船のお湯はほぼ透明に見えますが、浴槽の切り欠けから洗い場へ溢れ出ているお湯の流路がクリーム色に染まっており、イオウの濃さがビジュアル的に伝わってきます。その一方で、以前訪問した時、湯船の底には湯の花がたくさん沈殿しており、私が湯舟に浸かるとそれらが舞い上がって瞬間的にお湯が濁ったのですが、この日は予め除去されていたのか、そのような現象はほとんど見られず、終始透明度の高い状態が続いていました。そんなお湯を口に含むと余計な雑味のないストレートな収斂酸味が航空の粘膜を刺激するほか、アルミ箔をかじったような感覚も少々あり、湯面からはイオウの香り、そしてツンと鼻孔を刺激する酸っぱい匂いも放たれていました。

それにしても「わたの湯」は実に素晴らしい。入った瞬間に肌へ伝わる強酸性泉独特のヌルヌル感のほか、いつまでも続くツルツルスベスベ浴感も心地よく、お湯なのにフワっとするようなエアリー感すら覚えるとても優しい浴感を持ち合わせています。またオーバーフローのお湯によって洗い場が軽い洪水状態になるほどお湯の投入量が多いため、湯舟のお湯は常に鮮度感が抜群であり、これがお湯の持つ浴感をさらに高めています。前回記事でも申し上げましたが「わたの湯」というネーミングは実に言い得て妙。本当に綿に包まれているような軽やかな感触で湯浴みを楽しめるのです。お宿はリーズナブルですし、それでいてこんな極上のお湯に入れるのですから、ありがたいことこの上ありません。リピートして良かった!


わたの湯源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 56.0℃ pH2.05 蒸発残留物1.46g/kg 成分総計1.61178g/kg
H+:8.98mg, Na+:53.0mg, Mg++:38.5mg, Ca++:73.6mg, Al+++:40.0mg,
F-:10.5mg, Cl-:309mg, SO4--:601mg, HSO4-:180mg,
H2SiO3:240mg, H2S:13.6mg, H2SO4:4.0mg,

群馬県吾妻郡草津町草津464-279  地図
0279-88-2363
ホームページ

日帰り入浴不可
シャンプー類あり、ドライヤー貸出

私の好み:★★★

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桜湯 (旧国母駅前温泉健康ハウス)

2018年01月23日 | 山梨県
前回に引き続き山梨県の温泉を巡ります。甲府盆地はモール泉系温泉の宝庫。私はそんな当地の温泉が大好きなので、年に数回は通っています。かつて身延線国母駅の目の前にあった「国母駅前温泉健康ハウス」も私が何度か通っていた施設の一つなのですが、一旦閉業して建物を解体した後、昨年全面リニューアルオープンし、全く新しい施設に生まれ変わったという情報を得て、どのような姿になったのか自分の目で確認すべく、昨年(2017年)夏に行ってみることにしました。



噂に聞いていた通り、旧施設は完全に取り壊され、その跡地に全く新しい平屋の施設が建てられていました。建物の脇に設けられている駐車場は以前より停めやすくなり、場内の真新しい舗装が黒光りしていました。
玄関のドアを開け、靴を下足箱へ入れて館内へ入り(下足箱のカギは退館まで自分で管理します)、券売機で料金を支払って券を番台へ差し出します。番台から続いているフローリングのホールには自販機や飲料水のサービスが用意されています。またフロントの隣にはタイルカーペット敷きの休憩室が続いており、既にお風呂から上がったお客さんたちが室内に並べられたちゃぶ台を囲んでゆっくりと寛いでいました。
外観はもちろん、館内にも旧施設の面影はどこにも残っていませんでした。完全なる新施設なんですね。

脱衣室も広くて明るくてきれい。使い勝手が格段に向上していました。正方形に近い形状をしているロッカーは全て無料で使えます。洗面台にはドライヤーが2台用意されていました。



新しいお風呂は早速人気を集めており、場内は多くのお客さんで賑わっていましたので、館内写真に関してはパンフレットに掲載されているものをお借りしました。
大きくて奥行きが長い浴場。脱衣室から浴室に入って、まず目に入るのが掛け湯用の小さな湯枡。中温のお湯と低温のお湯の2槽に分かれており、その2つが背中合わせになっています。男湯の場合は、浴場の左手に洗い場、右手に浴槽類が配置されています。洗い場にはシャワー付きカランが計22基並んでおり、いずれも浴槽類に対して背中を向けるように設置されている上、後述する浴槽ゾーンとパーテーションで仕切られているため、石鹸の泡やシャワーの飛沫が混入しにくい構造になっています。

浴槽類に関しては、主浴槽に相当する大きな中温槽が中央に据えられ、その両側に各種浴槽が並んでいます。各浴槽を脱衣室側から具体的に列挙していきますと、サウナ・水風呂・高温・準高温(※)・中温・準中温(※)・気泡という順です(※は私が勝手に名づけました)。最も脱衣室側(手前側)にあるサウナと水風呂を除けば、手前から奥へ向かって湯船の温度が徐々に下がってゆくような配列であり、その真ん中に上述の大きな中温槽を設けているわけです。各浴槽について一つ一つ見ていきましょう。高温槽は42~3℃で4~5人サイズ。こちらの温泉は浴槽に浸かると体に気泡が付着するのですが、この槽は泡付きの程度が最も良く、またお湯の鮮度感も良好なので、湯中の体がシャキッとします。その隣の準高温槽は高温槽からのお湯を受けており、5~6人サイズで42℃前後の湯加減です。この準高温槽からお湯が洗い場へオーバーフローしていました。続いては主浴槽でもある中温槽。最大幅で3m×6m程あり、洗い場へ向かって曲線を描きながら緩やかに膨らんだ形状をしているのが特徴。浴槽の大きさを活かして一部では泡風呂装置が稼働していました。その名の通りに41~2℃の中温域で万人受けする湯加減に調整されているのですが、その影響なのか高温槽より泡付きは弱めでした。この中温槽からさらに奥へ向かって準中温槽・気泡風呂と続きます。サウナや水風呂以外の各浴槽は温泉が張られています。


 
内湯の奥にあるドアを開けると露天風呂。市街地なので周囲は塀で囲まれており、また全体の半分以上は屋根で覆われていますが、塀の高さやフェンスの構造などを工夫することによって屋外のそよ風を体に受けながら湯浴みできる爽快な空間が出来上がっていました。
露天はいわゆる岩風呂。露天ゾーンの大半が浴槽によって占められており、20人は余裕で同時に入浴できそうなサイズを有しています。後述する湯口から注がれたお湯は大きな露天風呂を満たし、縁に取り付けられた目皿から排水されるほか、縁の上を乗り越えてザコザコと大量にオーバーフローしており、露天風呂の床は排水が追い付かず洪水状態になっていました。それほど湯量が豊富なのでしょうね。



露天風呂では岩積みの湯口からお湯が注がれていました。吐出時点で既に適温でしたので、もしかしたら加水されているのかもしれませんが、その割には鮮度感もしっかりしており、私が湯船に入った実感では、上述の高温浴に次いで泡付きが多くみられました。投入量の多さが良い影響をもたらしているのかもしれません。

こちらで使っているお湯は掘削自噴している自家源泉。僅かな緑色を帯びつつ淡い黄色を呈しており、口に含むと重曹的な清涼感を伴うほろ苦味の他、弱い金気の味と匂い、弱い鉱物油的な風味が得られます。いわゆるモール泉的な知覚的特徴は弱いものの、甲府盆地で良くみられる典型的なモール泉系の温泉であることに違いはありません。泉質名は単純温泉ですが、実際には純重曹泉と称しても良いほど重曹らしさ個性がよく現れており、味や匂いの他、湯船に浸かったとき肌に伝わるツルスベの滑らかな浴感も素晴らしく、また豊富な湯量も相俟って、どの浴槽も実に気持ちよい湯浴みが楽しめます。とりわけ私は、泡付きも良好な内湯の高温浴槽が気に入りました。なお源泉名と新施設名が同じなので、私はてっきり源泉を掘り直したのかと早合点してしまったのですが、以前の「国母駅前健康ハウス」時代から源泉名は同じだったらしく、つまりリニューアルに際して施設名と源泉名を統一させたのですね。

そんな屁理屈はともかく、湯量豊富で浴感も素晴らしく、しかもワンコインで新しく大きな内湯と露天の両方に入れるのですから、人気を博するのは至極当然。私が訪れたのは平日の日中でしたが、びっくりするほど多くのお客さんで賑わっていました。新たなスタートを切った国母駅前温泉。ぜひとも永劫に人々から愛され続けていただきたいものです。


桜湯
単純温泉 43.6℃ pH7.9 199L/min(掘削自噴) 溶存物質0.792g/kg 成分総計0.850g/kg
Na+:139.2mg(71.34mval%), Mg++:14.5m,g(14.03mval%), Ca++:18.2mg(10.73mval%),
Cl-:28.8mg(9.69mval%), HS-:0.2mg, HCO3-:458.6mg(89.95mval%),
H2SiO3:117.4mg, CO2:58.1mg,
(平成29年4月20日)

JR身延線・国母駅より徒歩1~2分
山梨県中巨摩郡昭和町西条251  地
055-268-3088

10:00~23:30(最終受付23:00) 年中無休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★



コメント (4)
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下部温泉・湯沢温泉郷 不二ホテル

2018年01月21日 | 山梨県
 
前回記事に引き続き、山梨県南部に湧くぬる湯の温泉を巡ります。厳しい寒さが続いているというのに、季節外れのネタが続いて申し訳ございません。

今回訪ねるのは下部温泉の温泉街から外れた田園にポツンと佇む「不二ホテル」です。場所としては身延線波高島駅の近くであり、有名な下部温泉とはやや離れているのですが、お宿の看板や公式サイトでは「下部温泉 湯沢温泉郷」と称しているので、それに倣って拙ブログでも同じように呼ぶことにします。波高島駅から国道300号の旧道(本栖みち)を北上してゆくと、途中で温泉の看板が現れます。それに従って右折して身延線の線路を潜ると、車一台分の幅員しかない細い道が伸びています。この先はこれといった看板がなく、にもかかわらず狭い路地を進んでは曲がることを繰り返すので、カーナビが無い場合は迷うことなく一発で辿り着くのが難しいかもしれません。


 
線路を潜ってから400~500メートルでお宿の駐車場に辿り着きました。この湯沢温泉郷には、今回訪ねる「不二ホテル」のほか、「長生館」というかなり渋い佇まいの旅館も営業しており、この2軒を総称して湯沢温泉郷と呼んでいるのかと思われます。


 
「長生館」の駐車場の前に建つ民家然とした建物が「不二ホテル」。こぢんまりとしたお宿なのかと想像しながら玄関の引き戸を開けると、その内側に広がっている玄関ホールは予想を覆すスペースがあり、質素な外観とは対照的な館内の様子に驚いてしまいました。
ホテルですから宿泊業が本業ですが、今回私は日帰り入浴での利用です。帳場で宿の方に入浴料金を支払い、奥のお風呂へと向かいます。

なお浴場は写真厳禁ですので、今回の記事では文書だけの紹介となります。あしからずご了承ください。

古いながらもよくお手入れされている脱衣室。男湯の場合は右の壁に沿ってロッカーが設置され、左側に窓と洗面台が並んでいます。窓からは後述する露天風呂が見えるのですが、この露天は男女混浴ですので、脱衣室とはいえ下手に携帯電話などを操作しない方がよいでしょう(浴場内撮影厳禁になっているのもこうした事情によるものと思われます)。

窓から陽光が降り注いで明るい浴室は、床に伊豆青石が用いられており、歩くと足裏から気持ち良い感触が伝わってきます。この室内には大小の浴槽が一つずつ据えられているほか、壁に沿って洗い場が配置されており、6基のシャワー付きカランが一列に並んでいます。なおカランから出てくるお湯は真湯です。

浴槽は大小それぞれ一つずつ。隣り合って設けられています。いずれも黒い御影石で縁取り去れており、浴槽内はタイル貼り。タイルの色は浴槽によって異なっています。洗い場に近い小さな浴槽は加温浴槽。3~4人サイズでタイルの色はベージュ。お湯は42℃前後に加温の上、循環されており、底面にて強力に吸引されていました。
一方、窓の下に据えられている大きな浴槽は小浴槽の倍近い大きさがあり、タイルの色は淡いブルー。そんな寒色のタイルが表しているように、大きな主浴槽に張られているのは、小浴槽よりもぬるい35℃前後のお湯です。浴槽の底には強力にお湯を吸引する吸い込み口があり、柱状節理のような形状をした湯口から加温済と思しきお湯が投入されていました。源泉温度は27.2℃であり、また湧出量は毎分25.6リットルと決して多くないため、この湯口から供給されているお湯は循環加温されたお湯なのでしょう。しかしながら、この主浴槽に関しては、石の湯口の上に細い竹樋が取り付けられており、そこから冷たいながらタマゴ感を伴う水が浴槽へ注がれていましたので、おそらくこれが非加温の生源泉であり、つまり主浴槽は加温循環と非加温放流式を併用した湯使いと捉えてよいのかと思われます。

さて、内湯から屋外へ出てみましょう。日本庭園のような美しい環境の中でお湯を湛えているのが露天の岩風呂です。先述のようにこの露天は混浴であり、男女両浴室に挟まれる形で設けられています。一応露天風呂の真ん中には仕切りが立てられているので、他人の存在が気になる場合は仕切りを背にして湯浴みするとよいでしょう。
私が訪れた時は、清掃して間もなかったのか、まだ完全にお湯が溜まっておらず、寝そべらないと肩までお湯に浸かれませんでしたが、それでも私は何としてでもこの湯船に入りたかったのです。なぜなら露天風呂は非加温の源泉掛け流しであるから。27℃しかない源泉のお湯は、ぬるいを通り越して冷たいと表現すべき温度ですが、真夏の暑いときに入ると非常に気持ち良く、心身ともにさっぱり爽快となりました。

非加温の生源泉は無色透明で、湯中には綿埃のような浮遊物や、薄くて白っぽいゼリー状の物体がチラホラ舞っています。また湯船の中の肌には少々の気泡が付着します。内湯の湯口に置かれたコップで生源泉を口に含んでみますと、ゆで卵の卵黄のような味とともにほろ苦みも感じられ、また弱いタマゴ臭も嗅ぎ取れました。タマゴ感が得られたので、てっきり硫化水素イオンやチオ硫酸イオンが一定程度含まれているのかと思いきや、分析表の数値にはイオウ感をもたらすような要素の数値が悉く"0"と表記されており、実際のお湯と分析表の数値との間に不可解な乖離が見られるのでした。他の温泉でも時折このような知覚的特徴と分析書の数値で大きく食い違うことがありますが、なぜこうなってしまうのでしょう…。
とはいえ、そんな屁理屈を気にするのは私のような偏屈な男だけ。アルカリ性のぬる湯はスルスルスベスベの大変滑らかで気持ち良い浴感をもたらしてくれますし、特に暑い夏には極上の清涼が得られ、お風呂上がりもさっぱりとした爽快感が持続します。そんな気持ち良さを求めて他県からもお客さんが訪れるらしく、この日も私以外に群馬県や埼玉県からのお客さんがいらっしゃいました。

今年も数ヶ月後には暑い夏がやってきます。暑さで心身がバテそうなとき、もしお時間があれば涼を求めてこちらへ足を伸ばしてみるのはいかがでしょうか。


表下部温泉
アルカリ性単純温泉 27.2℃ pH9.6 25.6L/min(掘削自噴) 溶存物質0.257g/kg 成分総計0.257g/kg
Na+:69.7mg(81.45mval%), Ca++:12.5mg(16.67mval%),
Cl-:109.2mg(83.47mval%), OH-:0.6mg, HCO3-:18.8mg(8.40mval%),
H2SiO3:33.8mg,
(平成24年6月4日)

JR身延線・波高島駅より徒歩10分
山梨県南巨摩郡身延町上之平1525  地図
0556-36-0219
ホームページ

日帰り入浴9:00~20:00(最終受付19:00)
第4月曜および第4火曜定休(第5週目のある月は第5月曜・火曜が休業)
500円/1時間(半日や1日プランあり。詳しくは公式サイトでご確認ください)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★



コメント (3)
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