温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

盤石温泉

2012年12月31日 | 北海道
 
拙ブログの2012年は、鄙び系の温泉ファンにはおなじみの「盤石温泉」で締めくくらせていただきます。上画像の地点から林道へと入り、橋を渡ってダートを道なりに進むこと数百メートル…



駐車スペースは2台分ぐらいでしょうか。車を止めて、「気を付けて渡って下さい」と書かれた立札の橋を渡たり、沢の対岸へ。



トタンの小屋は、いかにもマニアが狂喜しそうな佇まいですね。
「盤石山荘」と彫られた扁額の文字は、手作り感があふれる味わいのある字体。


 
小屋の真裏に源泉があって、パイプで浴槽へ直送されているから、お湯の鮮度は抜群なんですね。



お邪魔しまーす。
小屋の中は無人。何かしらの控室のごとく、室内には長椅子やテーブルなどが置かれ、この日はタオルの類がたくさん干されていました。長椅子にはプラスチックの籠が置かれているので、この場で着替えるわけです。


 
壁には「歓喜」と書かれたポストがくくりつけられており、その言葉から察するに寸志箱だと思われましたので、喜んで寄付させていただきました、その傍らにはジッパー付きのビニルケースの中にノートが収められており、「入浴頻度調査中」とのことで、私も訪問日と名前、そして一言コメントを記入したのですが、記入ついでにノートをパラパラとめくったところ、平均して一日2人くらいのお客さんがこの温泉目指してやってくるようですね。



浴槽は石を組んでモルタルで固めたような造りをしており、膝をたたんで詰めれば3人は入れそうですが、一人でしたら悠然と寛げそうなサイズです。当然ながらカランなんてものは無し。床にはスノコが敷かれています。


 
お湯は若干貝汁濁りのようにも見えますがほぼ無色透明で、口に含むとしっかりとした塩味とともに、出汁味と金気味、そして明瞭な炭酸味が感じられ、お湯を手に汲んで鼻に近づけると金気臭が嗅ぎ取れたと同時に、炭酸ガスのためか軽く咽てしまいました。

源泉投入量は結構多く、入浴客がいようといまいとお構いなしに湯船は新鮮なお湯を湛えつづけ、そのお湯は惜しげもなく掛け捨てられています。湯使いは源泉100%の完全かけ流しで、こんな質素な湯小屋ですから加温循環なんてものとは無縁ですが、加水すらも行われておらず、源泉からダイレクトに注がれたお湯がそのまんまで絶妙な湯加減となっており、ツルツルな浴感も相俟って、一旦この極上なお湯に浸かっちゃうと、魅力を超えた魔力が私の心を掴んで離さず、すっかり虜になってしまって、お風呂から出ようにも出られなくなってしまいました。質素な佇まいだけでもマニアを引き付けるには十分な魅力を有していますが、それ以上にお湯の質感が最高ですね。



本年も拙ブログをご覧くださり、ありがとうございました。
質より量というべき低レベルの記事を羞恥心も無く連日晒してしまいましたが、それにもかかわらずお付き合いくださり、心から感謝申し上げます。年始は数日休載させていただきます。来年も変わらぬご贔屓を。それでは良いお年をお迎えください。
K-I
コメント (3)
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八雲温泉 おぼこ荘

2012年12月30日 | 北海道
 

前回取り上げた「見市温泉旅館」から雲石峠を越えて八雲町側へ下り、途中から細い道を入ってゆくと、その先に山奥という立地にはそぐわない立派な建物が目に入ってきました。今回の目的地である八雲温泉「おぼこ荘」であります。日帰り入浴も歓迎らしく、玄関には大きな看板も立っていました。
「おぼこ」という名前から私は西日本の方言の「おぼこい」を想像してしまったのですが、鉛川の上流に聳える雄鉾岳が名勝の由来なんだそうです。北海道なのに遠く離れたところの方言を用いるはずありませんよね。相変わらず私の脳みそはトンチンカンです…。



玄関からちょっと裏へ回ると、貯湯タンクと思しきものを発見。


 
こちらのお宿は元々八雲町営だったそうですが、平成17年に民営化されて地元の水産物販売会社が運営しています。そもそも公営施設だったためか、妙に立派な建物で、とりわけフロントまわりはとても綺麗ですが、どことなく第三セクター臭が漂っており、この手の施設はえてしてサービス面で当たり外れが大きかったり擦るものですが、そんな私の懸念を払拭するかのように、ロビーへ入ると作務衣を着た女性スタッフの方がフロントから券売機の傍までやってきて、丁寧に案内してくださいました。


 
ロビーから右へ進んで浴室へ。



浴室入口前にはフリーの休憩スペースとなっているお座敷が。


 
ステップを数段下がって脱衣室へ。室内は手入れがとても良く行き届いており、気持ちよく利用できました。



檜山・渡島地区の各温泉施設ではしばしばマイナスイオンドライヤーを目にしますが、御多分にもれずこちらでも備え付けられていました。このドライヤーの業者(あるいは販売会社)と当地域には何か特別な関係があるのでしょうか。


 
浴室には土類臭と湯気が充満。室内はかなり広く、川側はガラス張り。浴槽は遊泳できちゃいそうなほど大きなもの。
床はタイル貼りですが、浴槽からのオーバーフローがかかる箇所は、温泉成分によりすっかり変色しちゃっています。
洗い場は2つのエリアに分かれており、合計7基のシャワー付き混合水栓が設けられていますが、これとは別に金具が際立って腐食している水栓が一つ。ちょうど浴室清掃が終わってすぐのタイミングだったためか、腰掛けや桶が整然と並べられていました。


 

浴室で目を奪われるのが、室内の一角に屹立している巨大な岩です。その迫力に圧倒されそう…。
岩の下の裂け目から源泉がドバドバと投入され、湯口とは逆サイドになる、露天風呂入口ドア付近の排水口から惜しげも無く大量に捨てられてゆきます。湧出量が相当豊富なんですね。大きな湯船はそれ自体が川のようでもあり、槽内では流れが生まれていました。その贅沢な湯使いは圧巻です。お湯は滞留せずにどんどん流れてゆきますからお湯の鮮度感も抜群で、湯加減もちょうど良い塩梅でした。


 
緑色がかった黄土色に暗く濁っていますが、浴槽底はちゃんと見える程度の透明度はあります。湯面にはカルシウムと思しき白い粉状のもの膜状に浮いており、またオレンジ色の泡が塊になっていくつか浮いていました。甘塩味+石膏味、そして塩味と同じタイミングで舌に伝わる炭酸味、遅れて焦げたような味も、炭酸味については酸の収斂と炭酸の後味がはっきりと残ります。分析表を確認したら実際に遊離炭酸ガスが多いようです。サラサラとキシキシが混在する浴感が得られ、入浴中は体全体が石灰で覆われたキシキシ感に包まれるのですが、お湯から上がると一転して肌がツルサラになり、何とも言えない爽快なお湯です。渡島半島の中部には重炭酸土類泉的な温泉が多く存在しており、この温泉もそのひとつに含まれるかと思いますが、あくまで個人的な感想ですが、少なくとも拙ブログで取り上げてきた見市や乙部よりはこちらのお湯の方が自分の肌に合うようでした。


 
次に露天風呂へ。
ちょっと目を傍を流れる川の上流方向へ向けてみますと、川に架かる赤い橋の下には、モンスターの顎を彷彿とさせる石灰の析出物丘が形成されていました。おそらく内湯の排湯が川へ落ちる箇所なのでしょうね。


 
アクリル波板で囲まれた階段を川へ向かって下りてゆくと露天風呂です。


 
渓流に沿って展がっている開放的なロケーションで湯船も大きく、上流側の赤い吊り橋が景色にアクセントを加えています。まるで風景画の中に紛れ込んだかのような世界。今回は山が冬の装いを纏う直前に訪れたので、目の前には枯れ木が広がるばかりでしたが、きっと新緑や紅葉のシーズンには明媚なのでしょうね。
訪問時(午前11時頃)は清掃して間もなかったため、お湯が半分くらいしか溜まっていませんでしたが(仲居さんから予め説明を受けています)、ちょっと寝そべれば肩までちゃんと浸かれました。



この露天などで用いられている岩は道南界隈や羊蹄山から運んできたものなんだそうです。わざわざこんな山奥まで運んだんですね。



露天の湯口は湯面下に2箇所ほどあるらしく、建物側の側面に沿ってブクブクと泡があげながら源泉が供給されていました。また川へ向かって2本の溝が設けられており、そこから排湯されていました。内湯と同じ源泉のはずですが、外気に触れて熱が奪われてしまうためか、露天のお湯はちょっとぬるく、また酸化も進むために内湯よりも濁り方が強く、いくらか橙色を帯びた黄土色に強く混濁し、浴槽底は全く見えませんでした。尤もこれはまだお湯を溜めている段階での話ですから、お湯がしっかり溢れ出るような状態になればコンディションも変わってくるのでしょうね。

正直なところ、立派な建物を目にした時にはお湯に対してあまり期待していなかったのですが、実際に利用してみたら、湯量の豊富さと質感の良さにすっかり惚れてしまいました。水産関係の会社が運営しているので食事には期待できそうですし、スタッフの方の対応にも好感が持てましたので、次回訪問時は是非宿泊で利用したいものです。


おぼこ荘3号井・5号井混合
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 混合45.5℃ pH6.4 600L/min(混合・動力揚湯) 溶存物質3.209g/kg 成分総計3.831g/kg
Na+:662.0mg(66.02mval%), Mg++:54.4mg(10.27mval%), Ca++:171.1mg(19.56mval%),
Cl-:731.1mg(45.74mval%), SO4--:205.9mg(9.52mval%), HCO3--:1229mg(44.68mval%),
H2SiO3:41.1mg, HBO2:46.3mg, CO2:622.0mg,
加水あり(源泉温度が高いため)・加温循環消毒なし

北海道二海郡八雲町鉛川622
0137-63-3123
ホームページ

日帰り入浴11:00~21:00
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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見市温泉旅館

2012年12月29日 | 北海道
 
見市川の野湯を楽しんだ後は、泥を洗い流してちゃんと温まりたかったので、野湯と同じエリアからお湯を引いている「見市温泉旅館」へ立ち寄り入浴することにしました。源泉地帯の野湯と旅館のお風呂の両方に入れば、引湯される間に温泉がいかに変化しているかを比較することもできますね。
国道沿いには「9時から入浴可能」という旨を掲示するLED看板が立っており、入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。その看板から国道を逸れてアプローチを下ると、いかにも北海道の僻地の一軒宿らしい、飾り気のないトタン葺きの鄙びた建物が川に沿って構えていました。



玄関を上がってすぐ右手にある帳場にて料金を支払います。帳場窓口の向こうに広がる茶の間では、ワンコがスヤスヤとお昼寝中。
帳場前には見市川を眺望する小じんまりとしたラウンジが設けられており、川を眺めながらのんびりとおしゃべりしたくなるような空間になっていました。


 
帳場から左に折れて廊下を進んで浴室へと向かいます。その途中には、自販機が置かれている休憩スペースがあったり、マッサージチェアが置かれていたり…。


 
脱衣室はごく一般的ですが、清掃直後に伺ったためか、きちんと整理整頓されていました。でもドライヤーが有料で100円という点はちょっと引っかかります。



浴室の戸を開けた途端、湯気とともに室内で充満していた土類臭がプンプン匂ってきました。川を望む広い窓に面して大きな浴槽が据えられています。温泉成分の影響で、床も壁も、浴室全体が赤茶色に染まっているようでした。


 
窓とは反対側の壁面にはシャワー付き混合水栓が7基一列に並んでいます。腰掛けや桶はきちんと積み重ねられており、好印象を受けました。


 
湯使いは加温加水循環消毒なしの完全掛け流し。 
前回記事の野湯ではぬる湯に悩まされましたが、逆にここのお風呂の湯口から落とされるお湯はかなり熱く、そのままでは火傷しそうだったので、本当は何も手を付けないままで入浴したかったのですが、悔しさを噛み殺しながら水道の蛇口を開けてジャンジャン加水させてもらいました。お湯は赤みを帯びた黄土色に濁っており、お湯の表面ではカルシウムなのかホウ酸なのか、白い粉状の浮遊物が膜を形成していました。川の野湯では湧出したばかりでしたからお湯は無色透明でしたが、さすがにここまで引湯されると、温度こそ高いままで維持されているものの、混濁の発生は避けられません。

湯口では小規模な石灰華が現れており、また浴槽縁には鱗状の析出も出現していますが、ガラス窓下に排湯用の穴が開いてて、浴槽のお湯は常時そこから捨てられてゆくため、縁をオーバーフローするお湯は少なく(人が湯船に入ったときだけオーバーフロー)、これに伴い浴槽縁の石灰華もかなり薄くて、ややもすれば見逃しちゃいそうです。

お湯を口に含んでみると甘塩味+重炭酸土類泉的な味+弱金気味+微苦味+弱炭酸味が混在しているように感じられました。この温泉は泉質名としては食塩泉ですが、分析表を見るとカルシウムイオンも炭酸水素イオンも相当量含有しているので、実質的には含土類・食塩泉とほぼ同類と見做して差し支えなく、お湯の濁りや味・匂いから考えても然りだと思います。


 
露天風呂には3~4人サイズの浴槽が据えられており、清流見市川を見下ろす絶好のロケーションで、とっても爽快で開放的。こりゃ素晴らしいや!


 
こちらの湯口にも小さいながら石灰華が形成されていました。かなり熱くて1分も浸かっていられなかった内湯とは異なり、露天風呂は外気に冷やされるためか加水せずとも丁度良い湯加減にまで下がっており、じっくりとお風呂に浸かりながら渓流の景色を独り占めすることができました。ただ泉質の性質ゆえなのか、浴槽内は少々ヌメヌメしており、潔癖症の人だと躊躇っちゃうかも。



清冽な渓流見市川。露天からは川底の石ひとつひとつまでくっきり見えちゃいます。
心身ともに清らかになれるお風呂でした。


1号井戸と2号井戸の混同井
ナトリウム-塩化物温泉 59.8℃ pH6.4 110L/min(自然湧出) 溶存物質4.667g/kg 成分総計5.106g/kg
Na+:1083mg(67.68mval%), K+:230.5mg(8.46mval%), Ca++:278.2mg(19.94mval%),
Cl-:2006mg(80.60mval%), HCO3-:755.5mg(17.64mval%),
H2SiO3:162.7mg, HBO2:57.1mg, CO2:439.3mg,

北海道二海郡八雲町熊石大谷町13  地図
01398-2-2002
ホームページ

日帰り入浴9:00~22:00
500円
貴重品は帳場預かり(ロッカーなし)、シャンプー類あり、ドライヤー有料(100円/5分)

私の好み:★★★
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見市川の野湯 2012年11月

2012年12月28日 | 北海道
私のファーストネームは「けんいち」なのですが、同じ読み方をする北海道の見市川(けんいちがわ)には親近感を抱いており、そんな感覚に導かれて2012年11月某日、野湯ファンには有名な見市川の野湯を探索してみることにしました。


 
国道から岐かれるこの砂利道からスタート。道に入ってすぐに車が入れる区間は終了。右手の高台には「見市温泉旅館」の貯湯タンクが鎮座しております。


 
貯湯タンクとは反対側へ進み、川へ向かって歩き出します。比較的歩きやすい道で、幅員から考えると4駆の軽自動車なら走れそうな気もしますが、途中には大きな陥没が開いており、その上を大きな鉄板で塞がない限り車両通行は不可能な現状でした。


 
中間地点の右手に見えるのは温泉旅館用のポンプ小屋。近くには、見市川は水産資源保護法で指定されている保護水面であるから河川での生物捕獲はNGである、という旨を告知する看板が立っているのですが、そこには川面に釣糸を垂らすかっぱの傍らで不敵な笑みを浮かべながら釣竿を片手に立っているクマのイラストが描かれており、このクマの表情が妙に不気味なんですね。


 
ポンプ小屋の下には乾燥した赤茶色の析出物丘が形成されていました。ネット上の情報によると、かつてはポンプ小屋からお湯が漏れ出ており、これが析出物丘を創りだしたらしいのですが、現在は漏出が止められているため、すっかりカラカラに干からびていました。


 
河原へ下りてきました。下りきってすぐにいくつかの温泉湧出ポイントや湯溜まりが発見できますが、逸る気持ちを抑えて、冷静に周囲を見回してみることに。


 
落ち葉に覆われているため画像ではわかりにくいんですが、河原へ下りきったすぐ左手には立派な析出物丘が出来ており、その表面をお湯が流れているため、落ち葉と泥でドロドログチャグチャな状態でした。そのてっぺんにはパイプが突き出ており、湯気を上げながらお湯が噴出しています。どうやら「見市温泉旅館」へ引かれている源泉のひとつのようです。



さてさて、どこか入浴できそうな場所はないかしら。
この日の気温は9.1℃だったので、野湯とはいえ、あまりぬるいお湯には浸かりたくありません。まずは上流の方から探索してみると、早速湯溜まりを発見。


 
湧出地点では51.8℃と高温なのですが…


 
湯溜まりまで流れると一気に下がって34.4℃というぬる湯になってしまいます。ほんの僅かな距離なのですが、湯量の少なさと湯溜まりの浅さが温度を急激に低下させてしまうのでしょう。決して入れない温度ではありませんが、浅すぎてお尻すら浸かれないため、残念ながらここはパスしました。



ちなみに更に上流にはコンクリで固められた曝気用のパイプが立ち上がっていました。この先にも何かありそうですが、面倒くさかったのでここで引き返すことに。


 
河原へ下りきったところへ戻って来ました。ここでもしっかり温泉が湧出し、流路を真っ赤に染めています。湧出ポイントに温度計を突っ込んだら45.7℃と表示されました。


 
そこから数メートル下った大きな岩の下にちょっとした湯溜まりがあるので、そこでも試しに計測したら、なんと43.6℃という入浴にはもってこいな温度ではありませんか!



その数値を見たら居ても立ってもいられなくなり、即座に全裸になって、湯だまりに寝そべって入ってみました。中年太りのオッサンが写る見難い画像でゴメンナサイ。湯溜まりの状態(深さなど)をお伝えしたく、画ヅラが悪いのを承知で載せてみました。このように仰向けになると半身が浸かる程度の嵩しかないのですが、実に良い湯加減だったので、この姿勢のまま数分間じっとし続けちゃいました。意外とこの程度の入浴でも体はそれなりに温まるものなんですね。

お湯の流路は鮮やかな朱色に染まっていますが、決してお湯が濁っているわけではなく、寧ろ無色透明で澄み切ったものであり、赤く見えるのは流路に沈殿付着した成分の澱です。従いまして、湯溜まりのお湯も入浴前には無色透明なのですが、私が足を踏み入れた途端に朱色の沈殿が撹拌され、お湯は一気に赤茶色に混濁して、私の体にもその沈殿がまとわりつきました。
どんな濁り湯でも大抵の場合は湧出直後は無色透明であり、その後圧力の変化や空気との接触によって濁りが発生するわけですが、このお湯はその現象を教科書的に示してくれているようです。ここのお湯が無色透明であるということは、それだけお湯が新鮮だということですね。


 
岩を挟んだ隣には、ぬるいけど程よく深い湯溜まりもあり、いかにも鈍った土類系の成分を多く含む泉質らしい黄土色に澱んだぬる湯がプールされています。



全身浴したかったのでここでも入浴してみましたが、深さは充分であったものの、案の定、お湯の鮮度感はよろしくなく、底の方はヌメヌメした不快なもので覆われていました。なお温度の計測は失念しちゃいましたが、体感で33~35℃くらいだったように記憶しています。このまま上がって服を着るのは腑に落ちないので、上述の適温半身浴の湯溜まりに戻り、手のひらで掬って掛け湯して温まってから着替えることにしました。

場所柄、大雨などによって河原の状態が変わる度に、湯溜まりの位置や状況もその都度変化するものと思われますから、次回訪問時は、適温で程よい深さの湯溜まりがあれば良いなあ、という希望を抱いています。



野湯につき温泉分析表なし

北海道二海郡八雲町熊石大谷町
(今回は地図による位置特定は控えさせていただきます)

私の好み:★★

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乙部温泉 いこいの湯

2012年12月27日 | 北海道

「おとべ温泉いこいの湯」は前回取り上げた「光林荘」に隣接している日帰り入浴施設であり、「光林荘」に宿泊すると1回だけ無料で利用することができるので、帳場で無料券をもらって実際に利用してみることにしました。「光林荘」には露天風呂がないため、露天を希望するお客さんには「いこいの湯」を案内しているようです。


 
「光林荘」から「いこいの湯」へはまるで倉庫のような通路を通っていきます。なお浴場内にボディーソープやシャンプー類は用意されていないので、必要でしたら帳場で貸してくれます(もちろん宿泊客限定)。


 
あたかも役場の出張所のような小さな受付で係員のおばちゃんに入浴券を手渡します。なお一般利用の場合は券売機で支払います。玄関からまっすぐ伸びる廊下の右手にはお座敷の食堂が開かれてましたが、私が利用した日は食堂が休業中で、単なる休憩所と化していました。



建物の外観も館内も白を貴重とした明るく綺麗な建物。館内の一部エリアはミニミニ美術館みたいな空間となっており、文化の薫りが辺りを包みます。


 
そのミニミニ美術館的空間には江戸後期や明治期の磁器などが展示されていました。私は骨董の器関係に全く疎いのですが、その筋の方が見られたら「いい仕事してますねぇ」なんて唸っちゃうような品なのかもしれませんね。尤もこの温泉の利用者で美術品に関心が有る方はどれだけいらっしゃるのか相当怪しく、私が展示ケースの前を通ろうとすると、風呂あがりの爺ちゃん婆ちゃんが美しい染付磁器には一瞥もくれずに、噴き出る汗をタオルで拭いながら持病についてお喋りしていました。
この展示スペースで通路は男女両浴室へと分かれており、右手を進んだ奥の浴室に男湯の暖簾がかかっていましたが、男女は入れ替え制だったりするのでしょうか。



利用者が多いにもかかわらず脱衣室は清潔に保たれており、使い勝手もまずまず。


 
公的施設らしく室内にはベビーベッドが置かれているのですが、実際に使われる機会が少ないのか、ベッドの上にはサウナ用の黄色いタオルが積まれていました。利用者の殆どは子育て終了間近かもう子供が独立しちゃっているような中高年の方ばかりですから、ベビーベッドが本来の使われ方をされないのは仕方がないのでしょうね。


 
浴室は白いタイル貼りで清潔感があり、広々しており天井も高くてとっても開放的です。この浴室で感心するのが洗い場ゾーンと入浴ゾーンをしっかり区分していることでして、湯船にシャワーの飛沫や泡が飛んでくることもなく、また湯船に浸かりながら誰かが体を洗っている光景を見ずに済みます。
洗い場にはシャワー付き水栓が15基設置されています。ここの水栓はボタンを押すオートストップ式ですが、温度や流量の調整はできず、お湯だけが出るものタイプです。江差の「みどりヶ丘の湯っこ」と同じタイプですが、江差はカランから源泉が出てくるのに対し、こちらでは真湯が出てきます。「光林荘」の記事でも述べましたが、乙部温泉のお湯は赤茶色に濁っているので掛け湯には不適ですし、もしシャワーへ引湯したとしても配管内がすぐにスケールで詰まっちゃいますから、真湯にするほは至極当然です。この他サウナや立ったまま使うシャワーも設けられており、他の温浴施設と同様、こちらでもサウナは大人気でした。


 
内湯は縦長の長方形で、真ん中に据えられたオブジェを境に、脱衣室側が一般的な深さ、窓側がちょっと浅くて座湯するには丁度良い深さとなっていました。ちなみに浅い方の湯船で私が縁の出っ張りに後頭部を載せて仰向けになったら、うまい具合にジャストフィットし、安定して全身浴することができました。
オブジェの他、壁には数点の絵画(主に地元名勝の風景画)がかかっており、上述した脱衣所前の空間のみならず、浴室内もアートな空間になっているのでした。温泉とアートの融合がこの施設のコンセプトなのかもしれません。



浴槽の真ん中に据えられたカリントウのお化けみたいなオブジェは地元出身の芸術家が制作した作品なんだそうでして、このオブジェから熱い源泉が浴槽へ供給されています。でもここから供給されるお湯の量は浴槽の容量に対してそれほど多くないので、おそらく浴槽内には別の湯口が存在するのではないかと推測しますが、お湯が強く濁っているので詳しくは確認できませんでした。なお、浴槽の手前側面には細長く口を開いた給湯口がありますが、現在は使われていないようです。

お湯は「光林荘」と同じ源泉を用いており、赤みを帯びた橙色に強く濁り、透明度は20~25cm程度で浴槽の底は全く見えません。味覚面では甘塩味、芒硝味、そして金気味やホウ酸味が感じられ、芒硝臭や金気臭が湯面から放たれていました。お隣の「光林荘」と同様に加水以外の加温循環は実施されていない掛け流しの湯使いですが、濁り方はこちらのほうが強く、酸化が進んでるのか金気もはっきりと現れており、実際に入浴して体感してみたところ鮮度的には「光林荘」の方が優れているように感じられました。といっても極端な差が開いているわけじゃありませんから、こちらでも充分に鮮度感を堪能できるはずです。また分析表には「硫化水素泉」と表記されていましたが、蓄膿気味な私の鈍い鼻で嗅いでみたところ、湯口にて硫化水素泉というよりも油っぽい匂いがあったような無かったような…。泉質的に温熱効果の高いお湯である上、湯船はやや熱めの温度でしたから、下手に粘って長湯すると逆上せること必至です。


 
露天風呂は裏手の山に面して設けられており、4人サイズの四角い浴槽がひとつ据えられています。こちらも放流式の湯使いですが、外気の影響かあるいは投入量に左右されるのか、内湯のお湯のほうがシャキっと冴えており、露天へやってくるお客さんはあまり湯船に浸かろうとせず、むしろその傍に立ってひたすらクールダウンをしている傾向にありました。熱くて火照りやすい性質のお湯ですから、入浴中のクールダウンは欠かせません。


 
露天風呂の傍らには足ツボを刺激するプレートが4枚敷設されていました。それぞれ反射区に対応する内蔵別に分かれており、たとえば腎臓のツボを刺激したければ左のプレートを、胃や腸への効果を期待したければ右から2番めのプレートを踏むようになっています。ここへやってくる手前数十メートルには「健康遊歩道 素足のこみち」と称する町営の公園があり、その園内では文字通り足つぼを刺激する突起が通路状に敷かれていますので、乙部町は足つぼ健康法にご熱心なのでしょう。ちなみにこの露天風呂の足つぼ刺激エリアにて、私はなぜか生殖器のツボのプレートを懸命に踏んでおりました。あぁ男の哀れな本能…。



乙部町館浦源泉2号井
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 74.5℃ pH7.2 320L/min(動力揚湯) 溶存物質5.794g/kg 成分総計5.839g/kg
Na+:1808mg(94.20mval%),
Cl-:956.6mg(32.51mval%), SO4--:2205mg(55.31mval%), HCO3--:604.3mg(11.93mval%),
H2SiO3:66.6mg, HBO2:35.1mg, CO2:44.7mg,
温度調整のため加水

北海道爾志郡乙部町字館浦515-3  地図
0139-62-3264

11:00~21:00 無休
400円
貴重品用ロッカー・ドライヤーあり、シャンプー類なし

私の好み:★★
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