温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鉄輪温泉 陽光荘 その1 客室と地獄蒸し

2016年06月30日 | 大分県
今年(2016年)4月の熊本地震は、大分県の一部地域でも被害をもたらしましたが、同じ大分県でも日本屈指の温泉観光地である別府市は、地震の被害が軽微だったにもかかわらず観光客の減少が著しく、観光業が基幹産業である当地にとっては深刻な事態になっています。そこで別府応援企画と致しまして、今回記事から連続して先月訪れた別府の温泉を取り上げてまいります。



地震発生以降、度々九州を訪れている私は旅費が嵩んで赤貧状態に陥ってしまったため、旅費を一銭でも安くあげるべく、鉄輪のいでゆ坂に沿って建つ有名な貸間の宿「陽光荘」でお世話になることにしました。拙ブログでは以前、同じく鉄輪の貸間宿である「双葉荘」を紹介したことがありますが、こちらのお宿は路地を挟んだお隣に位置しています。
鉄輪には貸し間と称する湯治向け素泊まり宿がたくさんありますが、その中でも「陽光荘」と「双葉荘」は特に有名であり、安く泊まれる上、後述する地獄蒸しで自炊できるため、いつもでしたら季節を問わず多くの宿泊客で賑わっているはずです。しかしながら、地震の影響は鉄輪の温泉街にも及んでおり、いでゆ通りを行き交う観光客の姿はまばら。私は2泊したのですが、お宿では多くの客室を持て余しており、女将さんも「温泉はいつもと変わらずたくさん湧いているんですけど、使う人がいらっしゃらなくて」と嘆息していました。


●客室
 
いでゆ坂に面している間口こそ大したことありませんが、中へ入ると奥行きが長くて懐が広く、たくさんの客室を擁していることにびっくりします。2階立ての木造建築は、後述する地獄蒸しの釜を囲むように口の字型になっており、その形状に沿う形で客室が並んでいます。今回私が案内された客室は、路地に面した2階の6畳間。玄関から廊下を歩いて客室まで、そして客室から地獄蒸しの釜へ行くまで、女将さんは立て板に水で淀みなくまるで口上のように、お風呂や地獄蒸しの使い方を説明してくださいます。
客室には布団が一式用意されているほかは、特にこれといった備品はありませんので、たとえば寝巻き・入浴に必要なタオル・洗面道具などアメニティーなどは全て持参することになります。また室内に備え付けられているテレビやエアコンはコインタイマー式ですので、もし利用する場合は事前に100円玉を数枚用意しておくと良いでしょう(私はスマホのワンセグでテレビを視ました)。



アメニティー類の備え付けがない代わり、客室の棚にはお鍋と羽釜、そしてお皿が用意されています。さすが自炊する湯治客向けの宿ですね。


●地獄蒸し
 

宿の中心部には地獄の上に釜をかぶせたような地獄蒸しのキッチンがあり、これを目当てに宿泊するお客さんも多いほど。昭和12年までこの場所には鉄輪地獄と呼ばれる地獄があって観光客に開放されていたんだそうですが、その後、地獄の上に宿が建てられて現在の「陽光荘」になっているんだとか。
地獄蒸しの蒸し場は2階層になっており、私は自分の部屋から近い2階の蒸し場を利用させていただきました。この地獄蒸しキッチンに立ち入ると、シューシューという蒸気の音、もうもうと立ち込める湯気とともに、硫化水素臭がプンと香り、猛々しい大地の息吹を実感します。鉄輪で地獄蒸しを有するお宿はこの「陽光荘」とお隣の「双葉荘」、そして「大黒屋」など数軒ありますが、蒸し器の数はこちらの宿が鉄輪最大かもしれません。数が多ければ同時並行していろんな食材を調理でき、しかもほかのお客さんと競合することもありませんから、とっても便利です。なお、客室への案内後、女将さんはこの地獄蒸しの前で実際の利用方法や調理のコツを細かく教えてくれます。キッチンには食材別の蒸し時間の目安が掲示されており、外国人客も利用するので、英語も一緒に表記されていました。


 
キッチンには大きな流し台のほか、コンロやフライパンもあるので、蒸さずに炒めることも可能。


 
鉄輪の九州横断通り沿いには大きなスーパーがありますから、そこで食材を調達して自炊。
1日目は地元産のサザエや鶏肉、そして根菜類を蒸し、2日目は豊後牛や地元産の鯵を蒸していただきました。どれもみんな美味い!
なおお米は自宅から持参した山形産「つや姫」です。地獄釜でご飯を炊くと、米粒がぴんと立ち香りも強くて美味いのなんの!

さて次回は「陽光荘」の館内にある2つのお風呂を取り上げます。

次回記事
につづく
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蔵王温泉 ホテルオークヒル

2016年06月28日 | 山形県
昨年秋の某日、蔵王の温泉街からスキー場の方へ上がった上ノ台にある「ホテルオークヒル」に立ち寄り、「湯めぐりこけし」を利用して日帰り入浴しました。

 
建物は小高いところにあり、車でしたら坂道のアプローチを上がっていけば良いのですが、そのアプローチはちょっと遠回りであるため、温泉街の中心部やスキー場などから徒歩でアクセスするお客さんは、通りに面して出入口が設けられている専用エレベーターでフロント階まで上がります。訪問した日は雲一つない青空が広がっており、ホテル周辺の木々は紅葉がとても綺麗でした。


 
私は自分の車で訪れましたので、ホテルの本棟をぐるっと回る形で伸びるアプローチの坂道を上がり、駐車場に車を止めて正面玄関へと向かいました。



玄関を入ると、天井が高くて窓が大きい開放的な洋風のロビーが出迎えてくれます。目の前に置かれているソファーで思いっきりふんぞり返りたい衝動に駆られつつ、フロントで「湯めぐりこけし」を差し出して入浴をお願いしたところ、スタッフの方が快く対応してくださいました。


 
浴場は男女でネーミングが異なっており、裸で浴槽へ入るというイメージに由来して、女湯は「人魚姫」、男湯は「裸の王様」となっていました。人魚姫は誰も納得するでしょうけど、裸の王様とは、どんなことにも客観視できない視野狭窄な男の性(さが)を揶揄しているのかな。でも心当たりがたくさんある私としては、正鵠を射ている表現だと言わざるをえず、その名前に全く文句を言うどころか、妙に納得してしまいました。
開放的で洋風なロビーに反し、脱衣室は昭和のホテルを思い出させるちょっと懐かしい雰囲気ですが、明るく綺麗な環境が保たれていました。


 
浴室(内湯)は2方向が窓になっているため、日中は大変明るく、湯気などの篭りも少なくて大変快適です。室内には浴槽がひとつ、そして洗い場にシャワー付きカランが7基設けられています。なおカランから出てくるお湯はボイラーの沸し湯(真湯)です。


 

全面タイル張りの内湯浴槽は、湯口の箇所だけ斜めにカットしたような五角形で、寸法としては(目測で)2.5m×3.5mというゆとりのサイズ。湯口からお湯がドバドバ吐出されています。館内表示によれば温度均衡のためお湯を循環させているとのことですが、私が訪れた時には浴槽縁の切欠よりお湯が大量に排出されていましたので、実質的には掛け流しのような湯使いではないかと思われます。若干レモンイエローを帯びつつ青白色を呈して弱く濁っており、私が湯船に入りますと沈殿していた湯の花が舞い上がって、底が目視できないほど濁り方が強くなりました。


 
内湯から屋外のテラスに出ますと、上画像のような総木造の露天風呂が据えられていました。キャパとしては3~4人でしょうか。蔵王の木々を眺めながら湯浴みできる、清々しいロケーションです。


 
 
このテラスには温泉の中継槽があり、内湯やテラスの露天、そして後述する露天岩風呂へお湯を分配しているのですが、それだけでは使い切れないのか、露天脇の溝へオーバーフローが捨てられていました。湯量豊富なんですね。


 
 
内湯にはもう一つ屋外へ出る出入口があり、そこから出て階段を下りて行くと、露天岩風呂へ至りました。こちらは全体的に屋根掛けされており、和の趣きたっぷりです。テラスの露天は木々を見下ろすような位置でしたが、この岩風呂は木立の中に囲まれた静かで落ち着いた雰囲気であり、2つの露天風呂は同じ木々と対峙していながら趣きを異にしていました。こちらの露天風呂も3~4人サイズといったところ。内湯やテラスの露天と同じお湯が張られていましたが、投入量が些か少なく、湯加減もちょっとぬるいような気がしました。

さてお湯に関してですが、こちらのお宿に引かれているお湯は近江屋3号源泉。内湯のところでも述べたように、館内表示によれば循環しているとのことでしたが、内湯や2つの露天とも、かなりの湯量の源泉投入や排出が行われており、お湯の鮮度感も良く、実質的には掛け流しであると考えて差し支えないような状態でした。ただ浴槽によってお湯のコンディションに若干の差があり、あくまで私個人の主観で3つの浴槽でお湯の良さを比べたら、内湯>テラス露天>露天岩風呂といった感じでした。いかにも蔵王の湯らしく、刺激を伴う弱い硫化水素臭を放っており、ミョウバン的な収斂酸味と柑橘系のフルーティーな味わいを具有しています。薄い黄色を帯びつつも淡く青白色に濁ったお湯の中では、大量の湯の花が沈殿しており、湯船に入ると湯の花まみれになります。そして強酸性の湯らしいヌメリを伴うツルスベ浴感が得られます。

ワンコイン(500円)で内湯とふたつの露天に入れ、お湯もなかなか良く、しかも夜9時まで日帰り入浴できるのですから、蔵王で湯めぐりする上では大変ありがたい施設と言えそうです。


近江屋3号源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 45.4℃ pH1.7 蒸発残留物2268mg/kg 溶存物質2894mg/kg
H+:20.1mg, Na+:53.9mg, Mg++:54.5mg, Ca++:96.0mg, Al+++:95.8mg, Fe++:6.8mg,
F-:11.7mg, Cl-:312.0mg, Br-:1.8mg, HSO4-:802.1mg, SO4--:1194mg,
H2SiO3:175.8mg, H2SO4:40.4mg, CO2:396.5mg, H2S:8.0mg,
(平成27年3月23日)
循環装置使用(浴槽内の水温を均一にするため)
加水あり(気温の高い期間のみ)

山形県山形市蔵王温泉756  地図
023-694-2110
ホームページ

日帰り入浴12:00~21:00
500円(もしくは「湯めぐりこけし」シール1枚)
貴重品用の小ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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蔵王温泉 四季のホテル(離れ湯 百八歩) 後編・露天風呂

2016年06月26日 | 山形県
前回記事の続編です。

 
総木造のモダン和風でシックな佇まいの内湯も素晴らしいのですが、露天風呂も負けず劣らず大変魅力的。温泉街からちょっと離れている立地が幸いし、人工物に視界を邪魔されることなく、蔵王連峰を一望できるんですね。初めてこの露天に足を踏み入れたとき、そのパノラマに感動して、しばし立ち尽くしてしまいました。蔵王温泉に数ある露天風呂の中でも屈指の開放感ではないでしょうか。


 
前回記事でも述べましたが、「離れ湯 百八歩」には2つの浴室があり、日替わりで男女を交互に入れ替えており、私の訪問時には右側浴室に男湯の暖簾が掛かっていました。左右両浴室は、基本的な造りはシンメトリなのですが、内湯の浴槽の形状や露天のレイアウトが若干異なっており、右側浴室の露天では、岩風呂を主体に構成されていました。湯船の半分ほどには屋根が掛かっていますので、多少の雨や雪なら凌げるかと思います。
この日は文句なしの秋晴れ。蔵王連峰の上には真っ青な空が広がり、山々は紅葉で彩られていました。そうした蔵王の自然美と足元の白濁湯とのコントラストが非常に美しく、まるで風景画の中で湯浴みをしているかのよう。極楽にいるようなひと時でした。「四季のホテル」という名前のように、この露天風呂では四季折々でいろんな景色に出逢えるのでしょうね。


 
右側浴室の露天には2つの湯口があり、ひとつはチョロチョロと、もう一つはしっかりとした量のお湯が注がれていました。そこそこ大きなお風呂ですので、全体的な湯温均衡を図るために湯口を複数箇所設けているのかと推測されますが、投入量に関してはその時々の湯加減に応じて調整されるのでしょうね。おかげさまで、絶妙な湯加減が維持されており、この大絶景を眺めながらのんびりと湯浴みすることができました。


●もう一つのお風呂の露天
実は私の訪問時に浴場施設のメンテナンスが行われており、開場時間が通常より遅かったにもかかわらず、その事実を知らなかった(注意書きを見落としてしまった)私は「多分こっちが男湯でねぇべか?」と勝手に推測し、この日は女湯に指定されるはずであった左側の浴室に入ってしまいました。尤もその時はまだ作業中でしたので、他のお客さんと遭遇することなく、幸いに作業員の方が声をかけてくださったおかげで大事には至らなかったのですが、転んでもタダで起きるわけにはいきません。せっかくの機会ですので、簡単に内部を見学させていただくことにしました。


上述しましたように左右両浴室は基本的にシンメトリーな造りになっているのですが、内湯の浴槽や露天のレイアウトに若干の違いがあります。私が入浴した右側浴室では、内湯の浴槽が一般的な四角形でしたが、左側浴室ではホームベースのような五角形となっていました。


 
露天も岩風呂である点に変わりはないのですが、右側浴室が大きなひとつの浴槽であったのに対し、こちらは段差で隔てた2つの浴槽に分けられており、浴室に近い小さな浴槽は屋根で覆われ、その奥のちょっと小高い場所に設けられた浴槽は屋根がなく、容量もそこそこ大きなものとなっていました。



使用源泉は左右両浴室とも同一で、近江屋1号泉と2号泉の混合泉です。その源泉名からもわかるように、温泉街の上湯共同浴場前に建つ老舗旅館「おおみや旅館」(私は訪問済みですが拙ブログでは未掲載)がこのホテルの経営母体であり、その敷地内で湧く源泉をここまで引いているんでしょうね。各浴槽においても、湯船のお湯は青白色を呈しながら弱く濁っているのですが、浴槽の底面など湯中には大量の湯の花や沈殿が存在しており、お湯に動きを与えるとこの湯の花が一気に撹拌されて、底面が目視できなくなるほど強く濁りました。いかにも蔵王のお湯らしく、ミョウバン系の収斂酸味が強くて湯面からイオウの香りをプンプン漂わせており、強い酸性泉ならではのヌメリを伴うツルスベ浴感もはっきりと肌に伝わったのですが、引湯距離が長いためか、「おおみや旅館」で入るよりも幾分こなれてマイルドになっているような気がしました。とはいえ完全掛け流しであり、浴場としての完成度も高く、露天の景色も素晴らしいため、総じて高評価、大満足の一湯となりました。今度は是非宿泊利用してみたいものです。「蔵王でおすすめのお風呂は?」と訊かれたら、真っ先に紹介したくなるような、ブリリアントなお風呂でした。


近江屋1号源泉・近江屋2号源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 47.9℃ pH1.8 蒸発残留物2702mg/kg 溶存物質2805mg/kg
H+:16.0mg, Na+:51.9mg, Mg++:58.6mg, Ca++:84.6mg, Al+++:129.8mg, Fe++:11.7mg,
F-:15.1mg, Cl-:349.4mg, Br-:3.7mg, HSO4-:624.2mg, SO4--:1169mg,
H2SiO3:230.7mg, H2SO4:25.0mg, CO2:401.8mg, H2S:8.9mg,
(平成23年1月28日)
加水加温循環消毒なし

山形県山形市蔵王温泉1272  地図
023-693-1211
ホームページ

日帰り入浴時間要確認
800円(もしくは「湯めぐりこけし」シール2枚)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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蔵王温泉 四季のホテル(離の湯 百八歩) 前編・内湯

2016年06月25日 | 山形県
 
蔵王温泉の中心部からちょっと離れたところに位置するリゾートホテル「四季のホテル」で立ち寄り入浴してまいりました。
曲線を描くこの本棟には、立派な大浴場があるのですが、残念ながら温泉が引かれておらず真湯のみであるため…


 
こちらで温泉に入りたければ、離れの温泉棟である「離れ湯 百八歩」を利用することになります。といっても、いきなりこの離れを訪れてもダメ。立ち寄り入浴の際には、まず本棟で受付を行い、入浴券を入手してから温泉棟へと向かいます。蔵王温泉の「湯めぐりこけし」も利用できますが、多くの施設ではシール1枚で入浴できるのに対し、こちらでは2枚を要するので、その点は予め確認しておいた方が良いでしょう。ちなみに百八歩とは、ホテル本棟から離れまでの距離を歩数で示したものなんだそうですが、煩悩だらけの私はその名前を目にすると「このお風呂でテメーが抱える108の煩悩を落としやがれ」と糾弾されているような気がし、その後ろめたさのため、玄関の扉に手をかける瞬間は全身に緊張が走りました。


 
ウッディで落ち着いた雰囲気の玄関ホール。正面に足湯があり、その左右に浴室が配置されています。2つの浴室は基本的にシンメトリなレイアウトになっているのですが、露天風呂だけは異なった造りになっており、それゆえ日によって男女を入れ替えているようです。宿泊客なら両方入れますが、日帰り利用の私は片方だけ。ちなみに私が訪れた時には右手の浴室が男湯に指定されていました。


 
下足場の前には番台があるのですが、私の訪問時は無人でした。この窓口カウンターに置かれている小箱に、入浴券を投入します。


 

玄関ホールの正面にある足湯は、利用しながら庭越しに蔵王連峰を眺められる素晴らしい造り。
腰掛けには足拭きタオルが用意されており、心配りにもぬかりありません。


 
 
モダン和風の木造で清潔感に満ちた脱衣室は、ガラスを多用しているので明るく開放感があり、各種アメニティも揃っているので、使い勝手が大変良好です。フローリングの床は綺麗に磨き上げられており、ピッカピカに輝いています。細かい点ですが、棚が斜めにセッティングされていて、収納したものが取り出しやすくなっているところも、お宿のホスピタリティーがよく現れているように思われました。


 
浴室は天井から床まで全て木造という立派な造り。伝統的な趣きとともに、現代的な利便性や快適性などのニーズもしっかりと取り込んでいる、実に美麗で素敵なお風呂です。またガラス窓も多用されているため、照度が十分で見通しもよく、開放感すら得られました。洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでおり、一つ一つに仕切り板が取り付けられているため、隣同士で干渉することなく、快適に利用できます。


 
浴槽も総木造でゆとりのあるサイズ。やや深めの造りなので、肩までしっかり浸かることができました。湯口から滔々と注がれるお湯は青白く濁っており、シックな木目とのコントラストがとても美しく神秘的です。美しいだけでなく、お湯の投入量もしっかり多く、私が湯船に浸かるとザバーッと豪快に音を響かせながらお湯が溢れ出てゆきました。オーバーフローのお湯が流れ去ってゆくグレーチングは、まるでこけしの胴体のような木工品。こんな細かなところにまで木材のぬくもりに一途なんですね。素晴らしい!


 
湯船の底にはたくさんの湯の花が沈殿しています。私が湯船に入る前は、その沈殿が撹拌される前でしたので、底面が見える程度の透明度を有していましたが(画像左or上)、私が入ると沈殿が一気に撹拌され、たちまち底面が全く目視できなくなるほど濃く濁ったのでした(画像右or下)。

内湯だけで十分ブリリアントなのですが、さらに露天もあるんですね。
あまりに素敵なお風呂でしたので、ついつい文章が長くなってしまいます。このため、今回はここまでにして、露天風呂に関しては次回記事(後編)にて取り上げます。

後編へ続く
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上山温泉 葉山共同浴場 寿荘

2016年06月23日 | 山形県
 
上山温泉はいくつかのエリアに分かれていますが、今回は葉山地区にある共同浴場「寿荘」を取り上げることにします。上山の他の共同浴場は湯屋が単独で建てられていますが、こちらの浴場は市の老人福祉施設に内包されており、一見するだけではここに共同浴場があるとは思えません。


 
玄関を入って右手にある受付窓口にある缶の中へ湯銭を納めてから館内へ上がります。応接セットが置かれた玄関ホールの右手に行くとデイサービスのゾーンとなり、左奥から伸びる廊下を進むと、その右側に男女別の浴場出入口が並んでいます。私はデイサービスのお世話になるほど年老いていませんから、もちろん迷うことなく浴場へと直行しました。


 
オフホワイト基調の脱衣室は10畳ほどの広さがありますが、ちょっとした小上がりがある以外は至って簡素で、棚と洗面台が並ぶばかりです。



2方向にガラス窓が設けられている浴室はとても明るく、その光が老朽化に伴う壁などのクスミやシミを白く飛ばしているようです。窓下に据え付けられている浴槽のお湯は、窓から差し込む外光を反射してキラキラと輝いていました。


 
「寿荘」の建物は小高い丘の上に建てられているのですが、特にこの浴室がある箇所は丘の先端であるため、浴室の窓からは盆地に広がる市街地や蔵王方面の山々を一望することができました。私が窓を開けると、眼下に広がる市街や田園風景の中を、山形新幹線が米沢方面へ向けて走り去ってゆきました。


 
室内の左右両側に洗い場があるのですが、洗髪用のシャワーが1基取り付けられている他、4つある水栓は全て水道オンリー。上山温泉の共同浴場共通のルールとして、洗髪する際には別途100円を要しますので、シャワーを使う際には、受付で追加料金を支払い、専用のハンドルを貸してもらって、お湯のコックを開く必要があります。ということで、掛け湯をする場合には桶で湯船のお湯を直接汲むことになります。


 
窓下の明るい場所に設けられた浴槽は1.5m×2.5mの3~4人サイズで、縁は御影石ですが浴槽内には水色のタイルが用いられています。
浴槽にお湯を供給する湯口には短い金物の樋が取り付けられており、お湯はその樋を流れてから浴槽へ落とされていました。そして黒御影石の湯口は白い析出で覆われていました。湯船に張られたお湯は無色透明で、縁からしっかりとオーバーフローしており、純然たる掛け流しの湯使いかと思われます。ただ投入時点でかなり熱く、私の訪問時は湯船の温度も50℃近くまで上がっていたため、止むを得ず多少加水してから入浴させていただきました。

室内にふんわりと石膏臭を漂わせるお湯を口に含んでみますと、薄塩味と弱石膏味、そしてほのかな芒硝風味が感じられます。そして湯船へ入る瞬間には硫酸塩泉ならではのピリッとくる刺激が脛を走ります。熱さを堪えながらゆっくり肩まで浸かると、スルスベの中に少々の引っかかりが混在する浴感が得られ、徐々に熱さにも慣れ、やがて熱さや浴感などのすべてが気持ちよくなり、気づけばこのお湯の虜になっていました。午前中でまだお湯が鈍っていないうちに利用したため、湯船のお湯は大変クリアに澄んでおり、鮮度感良好。熱くても長湯したくなるような、とっても魅惑的な良泉でした。


●足湯
 
湯上がりに、「寿荘」の目の前にある足湯にも立ち寄ってみました。駅や主な観光地から離れているこんなところに、なぜ足湯が設けられているのでしょう…。


 
足湯槽に注がれているお湯は「寿荘」のお風呂と同じ源泉です。この足湯は盆地の底にある市街中心部から葉山地区の丘へ上がって行く途中にあるため、利用しながら市街や山々を一望できますし、屋根掛けされていますから、日差しを気にせず足湯を楽しめますね。はじめ見たときには、こんな場所で誰が利用するのだろうと疑問を抱いていたのですが、私がここにいると、近辺を散策中と思しき女性二人がやってきて、とても慣れた感じで靴下を脱ぎ始め、何の躊躇いもなく自然な感じで湯に足を入れて、景色を眺めながらおしゃべりに花を咲かせていたのでした。おそらくこちらへ何度も訪れている地元の方かと思われるのですが、足湯を使うのは別に観光客であるとは限らず、地元の方々の憩いの場として、共同浴場のような側面もあることを認識させられました。


 
 
足湯の左側にはお地蔵さん、そして上山三号源泉の記念碑が建てられています。お地蔵さんの足元には温泉が流されており、そのお湯をお地蔵さんにかけて拝むんだとか。足元のお湯受けには白い析出がこびりついており、れっきとした温泉であることがわかります。一方、三号源泉の記念碑は昭和53年11月に建立されたもので、「高松、葉山、河崎、三源泉をと烏合してここに移す」という碑文が刻まれており、高さ1m弱のお湯受けにはアツアツの源泉が注がれていました。上山温泉では複数ある源泉からお湯を集めて統合管理していますが、その中でも葉山地区を中心とするこのエリアでは、3号泉としてまとめられるようになった、そのタイミングが昭和53年だったんですね。ちなみに上山市では温泉の安定供給を図るべく、2010年に2本の新しい源泉を掘り当てています。そのうちに一本は上山3号源泉、そしてもう一本は葉山2号源泉です。くわしくは「広報かみのやま」2010年4月15日号(PDF版)をご覧ください。新源泉の掘削だけでなく、昨年には、葉山地区で温泉管理の負担軽減に効果をもたらすと期待される源泉管理システムが導入されたんだそうです。上山温泉はより良い方向を目指して着実に頑張っているんですね。


(以下、「寿荘」のデータです)

葉山地区1号源泉・2号源泉
60.5℃ pH8.1 蒸発残留物2261mg/kg 溶存物質2180mg/kg
Na+:527.5mg, Ca++:218.9mg,
Cl-:712.6mg, Br-:1.9mg, SO4--:591.6mg,
H2SiO3:55.5mg, HBO2:12.0mg,
(平成25年8月3日)

山形県上山市葉山5-70  地図
上山市観光物産協会公式サイト

6:00~21:00 月曜および正月三ヶ日定休
150円(洗髪の場合は別途100円)
備品類なし

私の好み:★★★
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