温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

野沢温泉 上寺湯

2023年10月25日 | 長野県

(2022年6月訪問)
引き続き野沢温泉の共同浴場を巡ります。今回取り上げるのは、野沢温泉のバスターミナルから「熊の手洗い湯」へ下ってゆく途中にある共同浴場「上寺湯」です。


こちらの浴場の内部構造は、野沢温泉の共同浴場では一般的な、更衣スペースと入浴ゾーンが一体になっているタイプなのですが、ドアを開けたら浴室まで丸見え、という事態を防ぐため、出入口から奥の方まで仕切り塀が設置されています。


浴槽は3人サイズといったところでしょうか。ほぼ無色透明ながらぼんやり霞んだような感じのお湯が張られており、湯中では白い湯の花が浮遊しています。ちょっと熱めの湯加減ですが、肩まで湯船に浸かると心身がシャキッと冴えるので、大変気持ち良いです。


湯口から出てくるお湯を掬って口に含んでみますと、砂消しゴムを思わせるゴムのような硫黄感がそこそこしっかり感じられました。いかにも野沢のお湯という特徴ですね。

ところで、こちらに引かれている源泉に関してですが、浴場内には二つの源泉名が掲示されており、どちらが正しいのかよくわかりません。ひとつは平成9年分析の細かなデータが記載された分析表に書かれている「丸釜源泉」で、もうひとつは令和元年12月に長野県北信保健所が発行した書類に書かれた「上寺湯源泉」です。後者についてはおそらくどこかに細かなデータが記載された分析表が存在しているかと思われますが、私の訪問時には見当たりませんでした。浴場名と源泉名が同じということで、きっと後者の源泉名が正しいような気がしますが、実際のところはどうなんでしょうか。

私の好み:★★+0.5
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野沢温泉 滝の湯

2023年10月20日 | 長野県

(2022年6月訪問)
前回記事では野沢温泉の旅館「げんたろう屋」で一晩お世話になったことをご紹介しましたが、お宿のお風呂に掲示されていた温泉分析表には、源泉名として滝の湯の名前が記載されていました。そこで、今回は同じ滝の湯源泉を使用している共同浴場「滝の湯」を取り上げます。
野沢温泉のシンボル的な存在である「麻釜」から更に急な上り坂を登った先にあり、観光客が訪れるような場所ではないため、野沢温泉の共同浴場の中では比較的目立たない存在かもしれません。とはいえ総木造の伝統的な湯屋はさすが野沢温泉というべき佇まいであり、コンパクトながら実に立派です。


この「滝の湯」は野沢温泉の共同浴場では一般的な、更衣スペースと入浴ゾーンが一体型になっているレイアウトであり、男女別の出入口から中へ入ると、そこはもう浴室です。おっ、さっそく硫黄の湯の香が漂ってきたぞ。


長年使いこまれていると思しきタイル張り浴槽には、綺麗なエメラルドグリーンのお湯が張られていました。浴槽内側に用いられているタイル自体の色は水色なので、お湯は黄色透明なのでしょうか。それにしてもうっとりするほど美しい色合いです。お湯の中では白や黒の湯の華がたくさん浮遊しています。



石が積まれ、お湯の流路が白く染まっている湯口。70℃近い源泉なので、湯口の上から真水を落として加水しています。このお湯を口に含んでみると、硫黄泉らしいタマゴ風味と硫黄臭、そして苦味がはっきりと感じられました。分析表によれば硫化水素イオンが46.6mg、遊離硫化水素が6.1mg、合計すると52.7mgもの硫化水素が含まれており、それゆえに硫黄泉らしい特徴がしっかり表れているのでしょう。おそらくお湯の色も気温や天気、時間などいろんな要因によって変化するものと思われます。

ここでちょっと不思議に思ったのが、前回記事の旅館「げんたろう屋」で紹介したお風呂のお湯の件。上述のように館内掲示の分析表には源泉名として「滝の湯」と記載されており、湧出地として記載されている所在地は、共同浴場「滝の湯」で掲示されている湧出地と全く同じ場所(日影8883-1)でした。ということは共同浴場のお湯もお宿のお湯も同じなはずですが、少なくとも両方を利用した私の実感ですと、両者のお湯には結構な違いがありました。もちろん引湯の過程で変質してしまった可能性は否定できませんが、果たしてお宿のお湯は滝の湯と同じなのか、あるいは自家源泉を謳っていたように滝の湯源泉ではない別の源泉だったのか、疑問が残るところです。
ま、そんな屁理屈はともかく、共同浴場もお宿もお湯は大変良いので、あまり気にしないでお湯を楽しんだ方が良いのかもしれませんね。特にこの共同浴場「滝の湯」は、「真湯」と同等の硫黄感を堪能できるのでおすすめです。ちょっと熱めですが実に気持ち良いお湯でした。


滝の湯
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 73.4℃ pH7.9 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質1.150g/kg 成分総計1.175g/kg
Na:270.6mg(80.73mval%), Ca++:50.7mg(17.35mval%),
Cl-:115.4mg(21.24mval%), HS-:46.6mg, SO4--:317.3mg(43.06mval%), HCO3-:244.1mg(26.06mval%),
H2SiO3:85.1mg, HBO2:10.6mg, CO2:18.4mg, H2S:6.1mg,
(平成28年8月25日)

長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字日影

4~11月→5:00~21:00
12~3月→6:00~23:00

私の好み:★★★
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野沢温泉 げんたろう屋(後半 お風呂)

2023年10月16日 | 長野県
前回記事の続編です。


お風呂は1階へ下ります。1階エレベータホールには上画像のような小上がりが設けられていますので、湯上がりのちょっとした休憩に使えそうですね。


こちらのお風呂は宿泊客のみ入浴可能。つまり立ち寄り入浴は不可です。
男女の暖簾替えは無いらしく、私の宿泊時は男女が固定されていました。


浴室はご覧の内湯のみ。室内には白いタイルが多用されている一方、換気性と目隠しを両立させていると思しき格子の窓が印象的です。なおもう一つの浴室(女湯)は総檜造りなんだとか。


洗い場にはシャワー付き混合水栓が4つ。


浴槽にはちょっと熱い無色透明のお湯が張られており、しっかり掛け流されています。お湯は綺麗に澄んでおり、湯中で浮遊する湯の花は少なかった一方、黒い繊維のような湯の華の沈殿が目立っていたように記憶しています。


お宿の案内を見ますと自家源泉を謳っているようですが、分析表によれば滝の湯源泉とのこと。湯口から注がれているお湯をテイスティングしてみますと、燻したような硫黄の香りがふんわり漂い、口にするとその風味とともに、弱いタマゴ味、そしてしっかりとした苦味が感じられました。
心身がシャキッと冴える熱さと、お湯そのものが有する優しさという、一見すると相反する特徴を同時に体感でき、とても気持ち良く入浴することができました。


滝の湯
単純硫黄温泉 73.4℃ pH8.3 溶存物質894mg/kg 成分総計897mg/kg
Na+:205.1mg(75.72mval%), Ca++:50.9mg(21.56mval%),
Cl-:113.5mg(26.69mval%), HS-:33.3mg, SO4--:286.5mg(49.79mval%), HCO3-:89.5mg, CO3--:8.6mg,
H2SiO3:87.4mg, H2S:1.9mg,
(平成18年6月30日)

長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9539
0269-85-2256
ホームページ

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野沢温泉 げんたろう屋(前半 お部屋など)

2023年10月11日 | 長野県

(2022年6月)
2022年6月に野沢温泉を訪ねた際の記録を連続して記事にしておりますが、その時に一晩お世話になったお宿は、前回取り上げた「松葉の湯」の斜前に位置する「げんたろう屋」さんです。


こちらのお宿は、外壁に描かれた大きなアートが印象的。
壁一面に描かれ、しかも鮮やかな色遣いなので、通りを往来する人は間違いなく立ち止まって見上げてしまうでしょう。


小規模なお宿ですが鉄筋PC造の4階建で、館内にはエレベーターも設置されていますので、館内の上下移動がとても楽。なおフロントは2階です。


今回私が案内されたお部屋はこちら。6畳の和室で、エアコンやテレビなどひと通りの設備は揃っており、心地よく一晩を過ごすことができました。今回私は地獄釜のように暑かった東京の猛暑から逃れるために野沢温泉へやってきたのですが、その目的に相応しく、日が傾いた頃から窓を開けておけば涼しい風が室内に入り、エアコンをつけずに心地よく安眠することができました。
なお部屋の鍵はタッチ式のカードキー。小規模旅館でカードキーは意外でしたが、いちいち鍵穴に挿して回して…という手順を踏まずに済むので楽ですね。


お部屋の窓から外を見ると、目と鼻の先の「松葉の湯」があり、そのまわりに野沢温泉の温泉街が広がっています。外からこの窓を見ると、ちょうど外壁の大きなアートに開いた窓から私が顔を出して温泉街を眺めていることになりますね。


夕飯は別室へ移動していただきます。
山の幸をメインにした献立で、特にネマガリタケが柔らかくて美味でした。


メインディッシュはこの鍋。
煮えた豚肉や野菜を白いご飯の上に一旦置いてから口へ運びます。すると出汁がご飯に染み込むので、ご飯がすごい勢いで進み、気づけば動けなくなるほど鱈腹に食べていました。

さて、肝心のお風呂については次回の記事で取り上げます。

次回記事に続く。
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野沢温泉 松葉の湯

2023年10月06日 | 長野県

(2022年6月訪問)
前回記事に引き続いて野沢温泉の共同浴場を巡ってまいります。
今回訪ねるのは「松葉の湯」。小規模な旅館が軒を連ねる温泉街の中にあり、スキー場へ上がる坂道の途中に位置しています。この浴舎は2階層になっており、道路に面した1階部分は・・・


地元の方が洗濯など日々の生活で使用する洗濯場。当然入浴は出来ません。野沢温泉ではこの「松葉の湯」のほか、「熊の手洗い湯」にも洗濯場があります。


洗濯場内部の様子。その名の通りに温泉のお湯を使って洗濯するほか、野沢菜を洗う時にも洗濯場のお湯を使うそうです。さすが歴史ある温泉地らしく、温泉と生活が密接に結びついているのですね。


階段を上がった2階がいわゆるお風呂。男女別に分かれた出入口のドアを開けて脱衣室へ上がります。野沢温泉に計13ヶ所ある共同浴場の多くは、脱衣場と浴場との間に仕切りが無い一体型の構造が採用されていますが、この「松葉の湯」は脱衣室と浴室の間がサッシ類で仕切られており、野沢温泉の共同浴場では珍しいスタイルです。
浴室には黒御影石の縁が印象的な浴槽が一つあり、壁に沿って水栓がいくつか設けられていますが、シャワーやお湯が出る水栓は設けられていませんので、体を洗う際のお湯は湯船から直接汲むことになります。


私はこの「松葉の湯」を何度か利用したことがあるのですが、湯船のお湯は、ある時は無色透明で白い湯の花が浮遊していたり、またある時は上の画像のようにはっきりと白濁していたりと、その時々によって見え方が異なっていました。硫黄泉ですので、時間・気温・水温などいろんな要因によって姿を変えるのでしょう。こちらに引かれているのは大釜源泉と御嶽源泉のミックス。湯口から出るお湯を口に含んでみますと、ふんわりと優しく硫黄の香りや味が感じられました。アルカリ性に傾いていることや炭酸イオンが多いなど滑らか要素をたくさん兼ね備えているためか、湯中ではツルスベの心地よい浴感が楽しめ、ちょっと熱めですが大変良いお湯です。

なお浴場内に掲示されていた平成30年分析の分析表によれば溶存物質0.998g/kgとのことですので、あと0.002gあればアルカリ性単純硫黄温泉ではなく、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉という泉質名を名乗っていたでしょうし、この程度はほとんど誤差みたいなものなので、分析するタイミングによっては明確に含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉であるのでしょう。


大釜及び御嶽の混合泉
アルカリ性単純硫黄温泉 76.0℃ pH8.5 160.0L/min 溶存物質0.998g/kg 成分総計0.998g/kg
Na+:189.4mg(64.35mval%), Ca++:86.8mg(33.82mval%),
Cl-:89.1mg(18.67mval%), OH-:3.9mg, HS-:15.7mg, SO4--:456.1mg(70.52mval%), CO3--:20.4mg
H2SiO3:119.4mg, H2S:0.5mg,

私の好み:★★★
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