温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

十津川温泉 昴の郷 星の湯

2014年07月03日 | 奈良県
 
十津川村の第三セクターが運営するリゾート施設「昴の郷」には、村で最大規模の宿泊施設である「ホテル昴」の他にレストラン・日帰り温泉施設・温泉プール・野外劇場などがあり、温泉入浴施設では村の「源泉掛け流し宣言」に則って完全放流式の湯使いを実践しているそうですので、どんなお風呂なのか行ってみることにしました。酷道として悪名高い国道425号の新西川トンネルを抜けたすぐ左手に、山間部を大胆に開拓した敷地が広がっており、広場の真ん中に周辺環境との調和を図ったと思しきブラウン系の建物がどっしりと構えています。運営会社には奈良交通も出資しているためか、日本最長の路線バスである奈良交通の八木新宮線は、わざわざこの建物前まで乗り入れてきます。


 
山間の奥地とは思えないほど広い芝生広場には野外ステージが設けられており、駐車場の傍らには温泉スタンドも設置されていました。


 
「日帰り入浴」の立て看板に従ってコリドーを進み、後述するホテルのエントランスを通り過ぎますと、十津川温泉の豊かな温泉資源を活かして、無料で利用できる飲泉所や足湯が設けられていました。足湯ももちろん掛け流しです。


 
飲泉所や足湯の更に奥には、ご当地ならではの乗り物である「野猿」があり、これも無料で自由に使えるようです。「野猿」とは野生の猿のことではなく、人力で動かすロープウェイのこと。谷や川の両岸から張ったワイヤーロープに「やかた」と呼ばれる小さなゴンドラが吊り下げられており、これに乗って自分の腕力で引き綱をグイグイたぐり寄せて、対岸へと渡るんですね。現在のように橋があちこちに掛けられる以前は、このようなアナログな設備で川を渡っていたんですね。
両岸からテンションを掛けてワイヤーを張っていますけど、両端が高くて中央部分が低くなっているのは仕方の無いことであり、乗ってスタートさせるとはじめのうちはスイスイ進んでくれるのですが、真ん中を過ぎて上り勾配に差し掛かると、それこそ結構な力仕事になり、腕力が無い方は息が切れちゃうかもしれません。でもこういう場所こそ父子で訪れるべきであり、はじめ子供一人で載せていかに大変かを実感させた後、父子で一緒に乗って男の腕力を振るって引綱を手繰り寄せれば、翌日以降に苦しめられる筋肉痛と引き換えに、普段は地の底に落ちきっている父の威厳をきっと回復できるでしょう(たぶんね)。



足湯等がある場所から歩道をちょっと戻って、「ホテル昴」のエントランスへ。


 
広々としているホテルのロビー。ガキンチョ子供だったら衝動的に駈け出してしまうこと必至です。フロントで受付を済ませ、ロビーのお土産販売コーナーの前を通って、隣接する別棟の「昴の郷温泉保養館」へ向かいます。


 
「昴の郷温泉保養館」の下足場には、「源泉かけ流し温泉」と大きく記された扁額が誇らしげに掲げられており、その下には温泉の沿革や源泉掛け流しの取り組みに関する説明パネルが展示されていました。現在では他の温泉地でも全施設掛け流しに取り組むところが増えてきましたが、全村でそれを宣言したのは十津川村が日本初なんだそうですから、このように積極的にアピールしているのでしょうね(宣言せずとも昔から掛け流しであるところは存在しているでしょうけど)。


 
さすがにリゾート的なホテルのお風呂だけあって、脱衣室は広くて清潔感に溢れています。棚には籠がたくさん並べられており、洗面台は5台、ドライヤーは2台設けられています。しかしながら、こんなにゆとりのある空間があるのに、なぜか室内にはロッカーがありません(貴重品類は受付時にホテルのフロントへ預けます)。


 
大きな窓から陽光が降り注ぐ明るい浴室は、木材を多用することにより落ち着きとぬくもりに満ちています。メンテナンスも行き届いており、実に気持ちよく利用できました。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が6基並んでおり、用意されているアメニティはシャンプーとコンディショナーがちゃんと分かれていました(温泉によくあるリンス・イン・シャンプーって、ちっともリンスしてくれずに髪がゴワゴワしちゃいますよね…)


 
多くのお客さんが大好きなサウナ(と水風呂)も完備。洗い場の手前には上がり湯もあります。


 
内湯の浴槽は10~11人サイズの長方形で、その長辺は大きな窓に接しており、木箱状の湯口から結構熱くて混じりっけのない源泉が湯船に注がれて、窓下の溝へ溢れ出るような造りになっていました。湯口のお湯は熱いものの、投入量の問題か、あるいは表面積が広いためか、湯船では41℃くらいの誰しもが入りやすい湯加減となっています。湯船のお湯は笹濁りを呈しており、槽のまわりは全体的に薄っすらと橙色に染まっていました。


 
露天風呂ゾーンには内湯に近い方から、飲泉所・主浴槽・打たせ湯・寝湯の順に各設備が配置されており、そばには足湯や野猿そして遊歩道などがあるために、周囲に目隠しの塀が立てられていますが、日本庭園のような風情ある造りであり、この「昴の郷」以外に周囲に建物がないため、塀を気にせずに緑の山々を眺めることができ、実に開放的な環境です。

露天風呂の主浴槽は縁が木で槽内は石板貼りの12~3人サイズ、手前半分ほどに東屋の屋根がかかっていますから、降雨時はこの下に入って湯浴みすることができますね。


 
内湯同様に露天風呂も完全掛け流しであり、奥の湯口からこんこんと温泉が注がれ、浴槽縁の左右双方にある切り欠けからふんだんに溢れ出ています。この時の投入量は内湯よりも多く、これに伴い湯加減も内湯よりはるかに熱い43℃くらいでした。お湯は薄っすらと赤みを帯びた黄土色に弱く濁っており、入浴中に肌をさすると、サラスベ浴感に弱い引っ掛かりが混在しているようでした。


 
飲泉所は施設外の足湯の傍にもありますが、この露天風呂ゾーンにも設けられているんですから、これって即ち温泉に対する自信の現れなのでしょう。飲泉所のつくばいは温泉成分によって橙色に染まっており、実際にお湯を飲んでみますと金気臭と弱いタマゴ臭がふんわりと漂い、弱いタマゴ味と弱い金気味、そして土気味とほろ苦みが感じられました。端的に表現すると、重炭酸土類泉を薄くしたような感じの味と匂いと言え、とりわけこの飲泉所では金気が明瞭でした。

一方、主浴槽を挟んで反対側にある打たせ湯は2本あり、うち1本は座りながら利用できるように石の腰掛けが設置されているのですが、その腰掛けにお湯が落ちて辺りに飛沫が飛ぶことにより、壁が赤銅色に濃く染まっていました。お湯の濃さがビジュアル的に伝わってくるので、誰しもその色合いには目をひかれることでしょう。



最も谷(川)に近い場所に設けられている寝湯は2人用で、他浴槽と同じく熱い源泉が注がれているのですが、浴槽(表面積)が小さくて冷めにくいためか湯加減はかなり熱く、しかもやや浅い造りである上に槽内の石がゴツゴツするので、正直な所あまり寛げそうにありません。でも日没後にこの寝湯で湯浴みすると、きっと満天の星空を仰げるのでしょうね。

広くて綺麗で多様な浴槽があり、お湯も完全掛け流し。
お湯の質にこだわる方も家族連れでも、多くの方が満足できる施設と言えそうです。


2号源泉・7号源泉混合
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 pH不明(2号泉pH6.8、7号泉pH7.2) 75.6℃ 溶存物質1733mg/kg 成分総計1838mg/kg 
Na+:441.7mg, Ca++:16.6mg,
Cl-:125.1mg, HS-:0.2mg, S2O3--:0.2mg, HCO3-:1008mg, CO3--:1.5mg,
H2SiO3:89.1mg, HBO2:21.3mg, CO2:104.6mg, H2S:0.1mg,
加水あり、供給量200L/min(湧出量:2号泉610L/min・7号泉290L/min)、引湯距離2.2km、
(平成17年3月25日)

7号源泉
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 pH7.2 71.0℃ 溶存物質1563mg/kg 成分総計1668mg/kg 
Na+:393.9mg(93.10mval%), Ca++:10.8mg(2.93mval%),
Cl-:103.0mg(15.89mval%), HS-:0.4mg, S2O3--:0.4mg, HCO3-:920.3mg(82.36mval%), CO3--:1.0mg,
H2SiO3:95.6mg, HBO2:17.3mg, CO2:104.4mg, H2S:0.3mg,
(平成18年1月23日)

奈良交通バスの八木新宮線で「ホテル昴」、もしくは十津川村営バス「昴の郷」下車すぐ
奈良県吉野郡十津川村大字平谷909-4  地図
0746-64-1111
ホームページ

日帰り入浴12:00~17:00(年末年始・5月連休・お盆は除く)
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカーなし(貴重品はフロント預かり)

私の好み:★★★
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十津川温泉 南部老人憩の家 憩の湯

2014年07月02日 | 奈良県
 
奈良県十津川村では村内の温泉の「100%源泉掛け流し」を宣言していますので、どの施設に入っても循環のお湯に怯えることなく安心して入浴できますね。今回は村の南部の十津川温泉エリアにある「南部老人憩の家 憩の湯」を利用してまいりました。老人福祉施設に付帯する温泉浴場で外来入浴を受け入れているケースは全国各地で比較的多く見られますが、十津川村観光協会の公式サイトによればこの「憩の湯」は公衆浴場として扱われており、十津川温泉バスターミナルからも至近距離にあって、一般客にも利用しやすい料金や営業時間に設定されていますので、当地の外来入浴施設として重要な役割を担っているのかもしれません。
ゲート前に立つ看板には黄色のラインに赤い字で「源泉掛け流しの温泉」と目立つように記されていました。敷地内には2棟の建物があり、手前側は「平谷地区生活改善センター」で、奥がお風呂のある「南部老人憩の家」です。戸口には「ゆ」と染め抜かれた暖簾がかかっており、そこだけ見ると寧ろここが老人福祉施設だとは思えません。


 
マッサージチェアが置かれた玄関に面する窓口で係員のおばあちゃんに料金を支払い、赤い鉄橋を右手に眺めながら廊下を歩いて階段を下ります。さすがに老人福祉施設だけあって、階段にはリフトが設置されていました。


 
階段を下りきってすぐ右手に男女別浴室の入口が並び、その手前にはドライヤーやミラーそして扇風機が用意されている身支度専用の小部屋があります。


 
廊下から脱衣室にかけての狭くて角の多い間取りからは、ダム湖の崖上の限られた敷地を何とか有効に活用しようとする設計者の意図が伝わってきます。脱衣室もこぢんまりしており、2~3人同時に着替えたら窮屈でしょう。なお壁の張り紙によれば、シャワーは水道をボイラーで沸かしたものであり、お湯が出てくるまで3~4分かかるとのこと。その張り紙の左側にはボイラーの湯温設定パネルが取り付けられていました(もちろん Don't touchですよ)。


 
浴室もかなりコンパクトで、ほぼ全面タイル貼り、窓に面して浴槽がひとつ据えられ、手前側の洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置されています。なお2つのシャワーの間にはシャンプー類がバスケットに収められているのですが、初めて見た時には、その様子から私は誰か他の客の私物ではないかと勘違いしてしまいました。


 
浴槽は3~4人サイズ、窓の外では二津野ダムの湖面がキラキラと輝いています。浴槽左隅には石積みの湯口があり、50℃以上はある熱いお湯が落とされる流路は黒く染まり、その周囲の表面は象牙色に覆われ、部分的にトゲトゲとした析出も発生していました。なお源泉のままでは熱すぎてしまうため、洗い場の蛇口からホースが伸びて加水されていましたが、それでも湯船は44℃近いやや熱めの湯加減でした。このように加水は行われているものの、加温循環消毒は行われておらず、浴槽の切り欠けからしっかりとお湯が捨てられており、れっきとした放流式の湯使いとなっています。

お湯は無色透明で、浴室に入った瞬間はふんわりとしたタマゴ的芳香が微かに存在を主張してくるのですが、やがて鼻が室内の空気に慣れるに従いその匂いはわからなくなり、「あれれ? さっき感じた匂いは何だったのか」と確認すべく湯口に鼻を近づけてみたところ、改めて弱いながらもタマゴ臭を嗅ぎ取ることができました。また湯口に置かれた竹の猪口で飲泉してみますと、大雑把に表現すれば無味に近いのですが、味覚神経を研ぎ澄ませながら口の中でお湯をよく転がしたら、重曹的な味と微かなタマゴ味、そして粉っぽい味が感じられました。やや熱めの湯加減ですが入浴中はツル・サラ・スベの三拍子が揃った気持ち良い浴感が楽しめ、湯上がりもよく温まり、それでいてベタつきは少なく爽快感が持続しました。
コンパクト且つシンプルなお風呂ですが温泉は本物の放流式。お湯のクオリティを重視する方にも満足していただけるお風呂ではないかと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩温泉 61.5℃ pH記載なし 48L/min(動力揚湯) 溶存物質1.535g/kg 成分総計1.594g/kg
Na+:375.2mg(92.15mval%), Ca++:12.37mg(3.44mval%),
Cl-:108.0mg(16.62mval%), HCO3-:921.4mg(82.55mval%),
H2SiO3:83.13mg, CO2:59.1mg,
(平成6年6月20日)

奈良交通(八木新宮線)・十津川村営バスなどで「十津川温泉」バス停より徒歩2分(130m)
奈良県吉野郡十津川村大字平谷626-2  地図
0746-64-0043

10:00~21:00 無休
300円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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スーパーホテル奈良・大和郡山 湯元飛鳥の湯

2014年07月01日 | 奈良県
 
奈良県の温泉は南部に集中して分布しており、国内外から多くの観光客が集まる北部にも一応存在しているものの、関係者の方には申し訳ないのですが、わざわざ温泉目当てに出かけるほどのものはなく、その殆どは鉱泉を加温循環させているスーパー銭湯です。このため私が奈良県で宿泊する時は温泉の有無をあてにせず、コストパフォーマンス(そして無料駐車場あり)だけで宿を選んでいるのですが、昨年冬の某日に某大手宿泊予約サイトで奈良北部のホテルを探していたところ、金魚の生産で有名な大和郡山にある「スーパーホテル奈良・大和郡山 湯元飛鳥の湯」が気になったので、ここで一泊してみることにしました。
言わずもがなスーパーホテルは全国チェーンのビジネスホテルであり、徹底した合理化で有名ですが、この大和郡山の店舗はチェーン初のロードサイド型なんだそうでして、周囲を田んぼに囲まれた立地といい、2階層の低い建物といい、確かに他地域のスーパーホテルとは趣きを全く異にしています。また各地のスーパーホテルでは温泉浴場を備えた店舗が多いのですが、そのほとんどは別の場所にある源泉からローリーで運搬したものを狭苦しい浴室でグルグル循環させており、正直なところ温泉風情は感じられませんから、私がこちらを予約した時も、ホテル名に温泉の名前が含まれているものの、お風呂に関してはちっともあてにしていませんでした。しかし、実際に宿泊して大浴場に行ってみますと、どうも他店とは勝手が違うのです…。

なおこちらの温泉は残念ながら宿泊客専用となっており、日帰り入浴は不可ですのであしからず(エントランスにもその旨が告知されています)。



私が泊まった客室はこんな感じ。スーパーホテルの他店よりも客室面積が若干広いようであり、またビルではないため容積率に余裕が有るのか、天井が高く確保されていました。ロフト付きやレディースルームなど客室には何タイプかあるらしいのですが、基本的なデザインコンセプトやレイアウトは大体共通しているらしく、大浴場が苦手な方は部屋に付帯しているバスルームを使うことも可能です。
なお部屋のドアは他店同様に暗証番号式であり、また朝食付きなど諸々のサービスも他店と共通です。


 
さて、部屋に備え付けのバスタオルを持参して、1階の大浴場へと向かいましょう。他店の大浴場はちっとも「大」ではなく、館内の片隅にひっそりと佇んでいて完全に名前負けしていますが、こちらは浴室前に立派なホールがあり、入浴の前段階から既に他店とは一線を画す存在感を放っています。


 
脱衣室はそこそこ広くて清潔感があり、ロッカーも大きくて使いやすく、ストレスを感じること無く使えます。スーパーホテルのお風呂といえば窮屈であるという固定概念を抱いていたのですが、先程のホールやこの脱衣室は、その思い込みをすっかり覆してくれました。


 
浴室には消毒臭が漂っているのでちょっと辟易しますが、これは致し方ありません。しかしながら室内面積や主浴槽の大きさは他店舗をはるかに凌駕しており、しかも窓の外側には露天風呂まで設けられているのです。温泉を売りにしている全国チェーンのビジネスホテルといえばドーミーインが有名であり、各店舗とも大きな主浴槽やサウナ・露天風呂を擁していますが、こちらのお風呂はドーミーインと比肩できるかもしれません。


 
洗い場には左右に分かれてシャワー付き混合水栓が8基並んでおり、各ブースはパーテーションで仕切られているため、隣の客と干渉することなく利用することができます。もちろんシャンプー類の備え付けもあり。



石板貼りの内湯は5~6人サイズで、加水は無いものの、加温・循環・濾過・消毒は実施されており、湯口のお湯からは粘膜を刺激する消毒臭が放たれ、槽内の吸込口からしっかりお湯が吸引されています。私は夜中と朝の2回利用したのですが、夜は右側の切り欠けからオーバーフローが見られたものの、朝は一滴残らず循環されていましたので、時間帯や利用状況によって源泉投入率を調整しているのかもしれません。湯船のお湯はほぼ無色透明で、薄い塩味と弱い苦味が感じられ、残念な湯使いながらもれっきとした温泉であることには間違いなさそうです。


 
合理化を徹底しているホテルにもかかわらず露天風呂ゾーンの空間の使い方が意外にも贅沢で、浴槽は岩風呂で5~6人サイズ、内湯と露天浴槽の間には結構な幅があり、その余裕のあるスペースには切株状の腰掛けが置かれてたり、飾りの岩が据えられていたりと、周りを囲む高い塀がもたらす圧迫感を払拭するような配慮がなされており、両腕をおもいっきり伸ばしながらお風呂で火照った体をクールダウンしたって、他のお客さんに迷惑が及ぶことはありません。


 
内湯のお風呂はガッチリ循環濾過しており、掛け流しの温泉を好む私としてはあまり心が惹かれないのですが、露天は様子がちょっと違うんです。内湯同様に加温循環消毒されており、槽内でお湯が吐出されて浴槽右縁の目皿から吸引されているのですが、この他に左隅の湯口からもお湯がチョロチョロ落とされており、その下は焼け爛れたように茶色く染まっているのです。しかもそのお湯は30℃ほどで、薄い塩味とニガリ味に微かな甘味、そして臭素臭とガス臭を足して2で割ったような匂いが感じられるのです。湯船のお湯は薄い黄土色に弱く濁っており、弱いツルスベと引っ掛かる浴感が混在しています。明らかに内湯よりも温泉らしい個性があり、分析表のデータに基いて考えますと、茶色に染まった湯口のお湯は、源泉そのまんまかそれに近い状態なのではないかと思われ、それゆえに露天の湯船では内湯よりも温泉の個性が伝わってきたのではないかと想像されます。どうやらこちらのホテルでは自家源泉を有しているらしく、その源泉をこのホテルの他、奈良駅近くにある同じチェーンへローリー運搬しているらしいのですが、ここは運搬する必要がないため、比較的良い状態の源泉を継続的に落とし続けることができるのでしょうね。

本来この程度の湯使いでしたら拙ブログでは取り上げないのですが、奈良県北部の温泉施設では珍しく源泉のクオリティが保たれている(と思われる)こと、そして大阪の企業らしく合理的で無駄を許さない経営姿勢にもかかわらず、地下からわざわざ動力を用いて汲み上げた源泉を垂れ流しているという意外性が、私には興味深かったので、今回敢えて取り上げてみました。なお大阪・阿波座の「スーパーホテル大阪 湯元花乃井」はここより更に湯使いが良いようですが、まだ利用したことがないので、訪問する機会があればレポートしてみたいと考えています。


飛鳥の湯
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 33.4℃ pH7.7 溶存物質2213mg/kg 成分総計2224mg/kg
Na+:520.0mg(61.36mval%), NH4+:7.3mg, Mg++:43.4mg(9.68mval%), Ca++:195.8mg(26.50mval%),
Cl-:1119mg(86.89mval%), Br-:3.6mg, HCO3-:285.5mg(12.89mval%),
加水なし、加温・循環・濾過・消毒(次亜塩素酸ナトリウム使用)あり

奈良県大和郡山市杉町205-1
0743-57-9800
ホームページ

日帰り入浴不可

私の好み:★★
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湯泉地温泉 泉湯 (および谷瀬の吊り橋)

2010年06月19日 | 奈良県
十津川村・湯泉地温泉にある共同浴場のうち、前回取り上げた滝の湯が観光客向けだとすれば、今回の泉湯は地元向けの浴場といえるかと思います。



国道の路傍に立つ大きな「湯泉地温泉」の看板のところで集落へ伸びる路地に入ります。おそらくこの小路は国道の旧道でしょう。


泉湯は温泉旅館が建ち並ぶ手前、ちょうどNTTの小さな交換局の斜前に位置しています。並びには商店や郵便局もあるので、この辺りが昔からの集落の中心だということがわかります。木造で湯気抜きがあるところがいかにも湯屋って感じ。


入口には湯使いに関するデータが掲示されていました。細かいところまで正直に答えてくれているので好感が持てますね。十津川村のお湯に対する自信が窺えます。なお同様のものは滝の湯にも貼ってありました。


日常的な入浴を目的にして設けられている浴場のため、内部構造はこじんまりとしておりシンプルです。湯あがりに寝っ転がるようなスペースなんか無いので、その点はご留意を。
内湯も4人入ればいっぱいになるサイズ。塩ビのパイプからお湯が掛け流しですが、手で触れないほど熱いために水も一緒に投入されています。だいたい水:お湯=1:4ぐらいの比率でしょうか。1.7kmも離れたところから引湯していながら結構熱いんですね。お湯は滝の湯と同様に1号泉と2号泉の混合で無色透明。タマゴのような硫黄の匂いと味がしっかり感じられます。ただ水で薄めているためか、滝の湯よりは若干知覚が弱めだったように感じられました。つるつるすべすべした浴感は気持ちよいですね。


公衆浴場なのに露天も用意されています。一応十津川の河原に向かって開けているのですが、木の枝が茂っているので、あんまり眺望は期待できません。でも内湯よりは大きな浴槽ですから、のびのび入るにはこちらをチョイスしたくなります。


アルカリ性単純硫黄泉
(1号泉と2号泉の混合)
 1号泉:59.2℃・pH8.6・180L/min
 2号泉:53.6℃・pH8.8・454L/min
 混合:51.4℃・pH8.8 成分総計274.5mg/kg(混合)

奈良県吉野郡十津川村武蔵28-4
07466-2-0090
十津川村観光協会・湯泉地温泉紹介ページ

10:00~21:30(受付は21:00まで) 火曜定休
400円
コインロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★


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・谷瀬の吊り橋

十津川村といえば谷瀬の吊り橋。長さ297.7m、川からの高さ54m、1954年に架けられた日本最長の鉄線の吊り橋です。無料で渡れますが、観光名所だけあって駐車場は有料です。また混雑時には一方通行となり、対岸へ渡ったら村営バス(有料シャトルバス)でスタート地点に戻ってくるルートをたどることになります。


訪問時は連休中で混雑していたため、駐車場がある上野地側からの一方通行でした。みなさん吊り橋の高さを見て驚きの声を上げています。


さぁ渡りましょう。安全面を考慮して、一度に渡れるのは20人まで。橋のたもとには係員がいて、ちゃんと頭数をカウントして、通行人の整理をしています。


橋に掲示された注意書き。しっかり読んで守りましょう。


橋の上から河原を見下ろした様子。やけに河原が広いのは、明治22年に発生した大水害でそれまで川沿いにあった集落や耕地が一気に流されてしまったためです。多くの人が罹災し、生存できた人も生活拠点を奪われてしまったため、集団で北海道へと移住していきました。それが滝川市に近い新十津川村です。

 
渡り終えてスタート地点を振り返った様子。一方通行実施時には通路の上にその旨を知らせる横断幕が張られます。


臨時のシャトルバスでスタート地点に戻ります。大人160円(こども半額)


この吊り橋は今でこそ観光名所ですが、そもそもは地元の方々が対岸との交通を改善するためにお金を出し合って作られたもので、1戸あたり20万円近くも拠出したんだそうです。当時の20万円といったら相当な金額ですね。みんなで私財を投げうって公共のために尽くそうとする村の人々の心意気には頭が下がる思いです。
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湯泉地温泉 滝の湯

2010年06月19日 | 奈良県
約550年前に開湯されたとされる十津川村の湯泉場温泉。私ははじめ「温」泉場温泉と勘違いして読んでしまいました。十津川村の役場周辺には宿や入浴施設が何軒か点在していて、小さな温泉郷を形成しています。共同浴場は2つあり、今回取り上げるのはそのひとつの「滝の湯」です。大半の温泉宿や施設は集落がある川の東岸に立地しているのですが、滝の湯は川の反対側にあるので、国道168号から道の駅と役場に挟まれた信号を曲がって橋を渡り、ちょっと坂を登って到着という道順になります。



訪問時は連休だったので駐車場の外には空車待ちの列ができ、館内も大混雑でした。券売機でチケットを買って中へ。昨年(2009年)の3月に改装してリニューアルオープンしたばかりなので、内部は明るくとてもきれい。入口から内湯まではバリアフリーに配慮された構造になっていました。林業の盛んな地域的特色を活かして、全体的に木材を多用したウッディな内装です。休憩室もあるので湯あがりにゴロンとできますね。


内湯に入ると、壁や天井も用いられている木材の香りとともに、お湯から立ち上るタマゴのような硫黄の匂いがふわっと鼻を突きます。カランはシャワー付き混合栓が5~6基ほど並び、備品の桶や腰掛けも木製。浴槽は石板貼りで、無色透明、熱めのお湯が掛け流されています(この時は混雑しており他のお客さんに迷惑が及ぶため、湯口周りのみの撮影にとどめました)。はっきりとしたタマゴの匂いから想像つきますが、味もタマゴ味。わかりやすく硫黄らしさが出ています。白い湯の花(と思しき浮遊物)もちらほら舞っています。つるすべ系の気持ちよい浴感です。


内湯から階段を下って露天風呂へ。改装前、内湯から露天へ行くには一旦着衣せねばなりませんでしたが、レイアウト変更により今では裸のまま露天へ行くことができます。ただしバリアフリー化のため内湯を1階から玄関と同じレベルの2階へあげたことにより、内湯と露天の間は長めの階段を往復する必要性が発生しました。といっても大したことはありませんが、冬の寒い時期やお年寄りだとちょっと難儀するかも。


露天も石板貼りで、3~4人サイズといったところ。外気に触れるためか内湯よりも湯温が若干低くて、熱いお湯が苦手な方にはちょうどいいかもしれません。こちらのお湯も掛け流し。


滝の湯という名前の由来である滝。湯船のすぐ目の前で沢が落ちて飛沫を上げています。滝の轟きを聞きながらの湯あみは実に気持ちが良いものです。

源泉掛け流しで、内湯も露天もあり、一通りの設備や備品は完備されており、しかも改装したてで使い勝手がよく綺麗ですから、温泉ファンのみならず幅広くいろんな方から好印象を持たれる入浴施設ではないかと思います。係員の方も明るく対応してくださりとても気持ちよく利用することができました。


アルカリ性単純硫黄泉
(1号泉と2号泉の混合)
 1号泉:59.2℃・pH8.6・180L/min
 2号泉:53.6℃・pH8.8・454L/min
 混合:51.4℃・pH8.8 成分総計274.5mg/kg(混合)

奈良県吉野郡十津川村大字小原373-1 地図
0746-62-0400
十津川村観光協会・湯泉地温泉紹介ページ

10:00~21:00 木曜定休
600円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★


※今月(2010年6月)20日~30日まで、十津川村では源泉掛け流し温泉感謝祭と称するイベントが催され、期間中は6つの温泉施設が無料開放されるそうです。今回紹介した滝の湯を含め、十津川温泉や湯泉地温泉の共同浴場などが無料対象となっています。十津川村って太っ腹ですね。
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