温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

2013年の温泉十傑 東日本編

2013年12月31日 | 旅行記
昨日に引き続きまして2013年に私が訪れた約300の温泉の中から、今回は東日本の十傑を、ランキングをつけずに列挙してまいります。なお、前回同様に各温泉名の頭に振っている数字は、あくまで通し番号であって、順位ではありませんので、あしからず。またここでのラインナップは今年訪問した温泉の中から選んでおり、どんなに良い温泉でも今年訪れていないところは選出しておりませんので、その点につきましてもあしからず。


●東日本

 
1 【長野県 湯原温泉 猫鼻の湯】
(当該記事へのリンク)
姫川を臨む清々しい露天風呂は、お湯の質も素晴らしく、アットホームな雰囲気も温かく、常連になりたいお風呂です。ロケーションの良さもさることながら、手造り感溢れる簡易的な建物だからこそ、魅力的なんでしょうね。


 

2 【神奈川県 箱根湯本温泉 平賀敬美術館】
(当該記事へのリンク)
国の有形文化財に指定されている歴史ある建物だけあり、そこここから醸し出される落ち着いた気品には圧倒されました。そして、大理石のお風呂に触れた時の優しく柔らかなフィーリングは、決して忘れることができません。掛け流されているお湯の質感も、建物の気品に相応しい上品なものでした。全域が観光地化されている箱根は、温泉ファンの触手が伸びにくいエリアですが、クオリティに五月蝿いファンでも、このお風呂に入れば誰もが口を噤んでしまうでしょうね。


 

3 【群馬県 上牧温泉 大峰館】
(当該記事へのリンク)
品の良さで言えば、上州・上牧温泉の大峰館で入浴できる自家源泉のお湯も秀逸でした。グリーンタフ型の温泉が多い水上方面のお湯は、その地質的性格から無色透明の硫酸塩泉が多いわけですが、このお湯もその種類にカテゴライズされるものの、湯船に浸かったときに感じられたフィーリングの上品さは、周辺の他温泉では得られないものがあり、とても感激しました。


 

4 【栃木県 塩原温泉(古町温泉) 民宿本陣】
(当該記事へのリンク)
私が今年宿泊した温泉宿でも、こちらは居心地の良さが屈指でした。全ては古き良き昔ながらの応接を身につけていらっしゃる大女将のおかげではないでしょうか。お風呂自体はポリバスなのですが、そこに注がれるお湯の質感が実に上品であり、また芳しい匂いや重曹泉的な清涼感と泡付きもあり、すっかりお湯が気に入って宿泊中は寝る間を惜しんで何度も入浴しちゃいました。


 
5 【福島県 幕川温泉 水戸屋旅館 白濁の露天風呂】
(当該記事へのリンク)
旅館内の内湯や露天風呂はさておき、駐車場の奥にひっそりと佇むこの露天風呂を初めて目にした時には、あまりの神々しい美しさに思わず歓喜の声を上げてしまいました。ミステリアスなお湯の色の美しさもさることながら、実際に入浴した時に感じられたサラサラスベスベな浴感も素晴らしく、できることなら一日中、ずっとここでのんびり過ごしたかった…。



東日本編

十傑紹介の途中ですが、ここでは、十傑には含まれなかったものの、それに匹敵するくらいに良い印象を残してくれた温泉たちをピックアップしていきましょう。

 
【山梨県 玉川温泉(再訪問)】
(当該記事へのリンク)
甲府盆地のモール泉的な温泉はいずれも私のストライクゾーンど真ん中なのですが(トータス・ふかさわ・山口・初花など)、今年入浴したところで挙げるならば、この玉川温泉が筆頭になります。滝のような大量の源泉投入により、浴室全体が常時洪水状態になっている光景は、何度見ても圧巻です。


 

【宮城県 鳴子温泉 農民の家 3号泉】
(当該記事へのリンク)
私が個人的に鳴子温泉の「九龍城」と称している「農民の家」は、増築に増築を重ねた結果、館内構造がカオスと化しており、そんなカオスの中にいくつもの浴室がバラバラに位置しているのですが、その中でも今年入浴した「檜の湯」のお湯に使われている「農民の家3号泉」が神秘的なエメラルドグリーンを呈していたことに驚きました。硫黄のお湯ですので、コロイドの状況によって変色するのは当然だとしても、普段は白濁であるはずのお湯がこんな綺麗な、ドリフのコントで使えそうな、明瞭なエメラルドグリーンに変色しているだなんて、俄に信じられず、その魅惑の色彩にすっかり心が奪われて、体が完全にのぼせ上がるまで、このお湯に浸かり続けてしまいました。


 
【秋田県 下の岱温泉 やまの湯っこ】
(当該記事へのリンク)
いつ行っても湯船は激熱ですし、お風呂自体もいまいち冴えませんが、お湯のヌルヌルは日本屈指であり、中山平温泉のうなぎ湯と双璧を為すといっても過言ではありません。もうちょっと皆さんからフューチャーされても良いと思うんですけど…。


 

【青森県 婆沙羅温泉】
(当該記事へのリンク)
浪岡周辺の温泉はモール泉的な特徴を有していることが多いのですが、とりわけこの婆沙羅温泉は黒湯の濃さが他の追随を許さず、モール泉らしい浴感もはっきり有しており、私は浪岡で一番好きな温泉でした。また金気の強い水風呂も実に爽快でした。しかし、残念ながら年明け早々の2014年1月5日に閉館してしまうそうです。


 
【青森県 鯖石温泉(再訪問)】
(当該記事へのリンク)
この温泉も、何度入ってもその都度感動できちゃう秀逸なお湯の一つですね。お湯の質や投入量も素晴らしいのですが、農作業用のコンテナを浴槽にしているプリミティブな浴室も大きな魅力の一つであります。


 
 
【北海道 鶴居村 鶴居ノーザンビレッジ HOTEL TAITO】
(来年掲載予定)
北海道では十勝川温泉を始め、帯広周辺、白老周辺、千歳周辺、そして釧路湿原縁辺部などでモール泉的な性質を有する温泉(あるいは鉱泉)が湧出していますが、中でも私は釧路湿原縁辺部に点在するモール泉がとても好きです。こちらは日帰り入浴で利用したのですが、お湯のクオリティが良いのはもちろん、浴室や露天風呂の居心地も良く、ここで宿泊しなかったことを後悔しました。ついでに申し上げますと、ここで食べられるソフトクリームは絶品です。



田原俊彦が新幹線車内で歌っている最中に新幹線が出発してしまったところで 再び十傑へ戻りましょう。


 
6 【北海道 磯谷温泉】
(来年掲載予定)
道南・亀田半島の知る人ぞ知る秘湯でありますが、私が行った時には、たまたま先客が浴槽と引湯樋を組み立ててくれていたので、その先客のご好意に甘えて入浴させていただきました。雨に濡れた紅葉を目にしながら浴びる白濁の硫黄泉は最高でした。


 

7 【北海道 標茶温泉 味幸園】
(来年掲載予定)
濃厚で熱いモール泉は最高です。ここに限らず、標茶や鶴居など釧路湿原縁辺に点在するモール泉は、私個人としては北海道遺産に選ばれている十勝川温泉よりもクオリティが高いのではないかと思われます。何しろモール泉の産出基盤となる当地の泥炭は、世界遺産の釧路湿原によって生み出されたものですからね。


 
8 【北海道 からまつの湯(再訪問)】
(来年掲載予定)
養老牛の「からまつの湯」にはもう3~4度目ほど訪れていますが、何度訪れてもここは好きです。管理が行き届いているおかげで、いわゆる他の野湯ほど不衛生ではありませんし、かと言って人の手が過剰に入っているわけでもなく、野趣と人為の絶妙なバランスがとれているように思うのです。湯加減も素晴らしく、お湯の清らかさも文句ありません。もちろん傍を清冽な沢が流れる原生林に囲まれた自然環境も最高です。また先日訪れた時には終始独占できたので、そんな状況もより一層好印象をもたらしたのでしょう。


 
9 【青森県 下風呂温泉 旅館さつき荘(リニューアル後)】
(来年掲載予定)
リニューアル後の「さつき荘」で秋の某日に1泊してまいりました。結論から申し上げますと、今年宿泊した全ての宿の中でベスト1でしたよ。詳しくはここでは語りますまい。来年早々に記事にあげますので、是非そちらを御覧くださいませ。


 
10 【福島県 西山温泉 下の湯(再訪問)】
(来年掲載予定)
300湯に及ぶ2013年の湯めぐりの締めは、雪景色に覆われた会津西山温泉の「下の湯」で迎えました。西山温泉のお宿はそれぞれが個性的で魅力的ですが、私はこの「下の湯」に浸かると非常に心が落ち着くのです。宿のおばあちゃんも、相変わらず耳は遠いものの、昔ながらの実に丁重な接客をしてくださり、身も心も温まりました。

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今年は新潟県や山形県への訪問が少なく、これらの県の温泉は十傑やスポットライトに選出することができませんでしたが、来年はこれらの地域にも足を伸ばして偏重なく巡ってゆくつもりです(できたらいいなぁ…)。

本年もおつきあい下さいまして誠にありがとうございました。
みなさま、良いお年をお迎えください。
コメント (6)
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2013年の温泉十傑 西日本&海外編

2013年12月30日 | 旅行記
2013年ももうすぐオシマイ。今年もまとまりのない入浴記をノンベンダラリと書き綴ってまいりましたが、その数は約250湯にも及び、記事にしていないものも含めれば300を優に超えます。いつも私は一人で巡っているのですが、その数を振り返ってみると、よくもまぁこんなに訪問できたものだと我ながら感心し、同時に呆れ果ててしまいました。飽きもせずに時間をみつけて、今日も明日も明後日も、北海道から鹿児島まで、温泉目指して東奔西走、おかげで社内の評価は下降線を辿る一方、睡眠不足も慢性化、貯金もスッカラカンです。
今回はそんな約300湯から今年のベストを選出してみようと企画してみたのですが、優柔不断な私が順位をつけて十傑や二十傑を選ぶことができませんので、ランキングせずに日本の東西および海外に分けて、それぞれについて10箇所をチョイスし、列挙させていただきました。まず今回は西日本&海外編です。なお各温泉名の頭に振っている数字は、ランキングの順位ではなく、単なる通し番号ですので、あしからず。


●台湾
私は毎年必ず海外の温泉をめぐることにしており、今年は台湾とアメリカ(温泉とは無関係)へ出かけまして、その他にももう1~2ヶ国訪れる計画を立てていたのですが、夏に新車のSUVを衝動買いしてしまったために資金が底をついてしまい、結局温泉めぐりできた海外は台湾のみになってしまいました。そんな台湾からは3つを選ばせていただきましたが、図らずも野湯ばかりになってしまったのは私の趣向の問題であります。


台1 【梵梵温泉】
(当該記事へのリンク)
数ある宜蘭県の野湯(台湾では野渓温泉と称します)の中では、大きさ・湯加減・泉質ともに最高のクオリティではないでしょうか。駐車場から川原をさかのぼり、何度か渡渉して辿り着いたときには、本当に感動しちゃいました。



台2 【清水地熱の中洲に湧く白濁湯】
(当該記事へのリンク)
同じく宜蘭県の野湯です。清水地熱というエリアは文字通り地熱資源の宝庫であり、有名な野湯もあるのですが、その野湯を探している途中、川の中州で偶然発見したのが、この噴気孔から湧いていた白濁湯でありました。ロケーションといい、白濁湯といい、文句なく最高でした。


 
台3 【排骨渓温泉】
(当該記事へのリンク)
存在こそ地味ですが、台湾の野湯にしては比較的辿り着きやすく、足元から湧き出る清らかなお湯が実に印象的でした。湯溜まりの大きさも湯加減も実に良い塩梅。私個人としては梵梵温泉や清水地熱よりも再訪問したい野湯でした。


台湾編

往年のTV番組「ザ・ベスト●ン」的に、惜しくもベスト10に一歩及ばなかったものの、印象に強く残った注目すべき温泉たちもここで取り上げましょう。

  
【小錦屏温泉】
(当該記事へのリンク)
新竹県の山奥。汗だくになりながら険しい山道を延々と登り、そして一気に転がるように谷底へ下りていった先にある、台湾のアウトドア愛好家には名の知れた野湯です。大きな岩がゴロゴロする谷底の川原には、足元湧出の温泉の湯溜まりがいくつかあり、愛好家によってそれらにはテントが張られていて、ここでキャンプをする人もいらっしゃるようです。


  
【大窩温泉】
(当該記事へのリンク)
イチゴで有名な大湖郷で湧出する知る人ぞ知る温泉です。ネット上の情報が少なく、現地にも案内看板が全くといって良いほど無いので、自分で探し当てたときにはちょっと感動しちゃいました。かつては繁盛していたようですが、いまではすっかり荒廃しかかっているものの、一応温泉施設として営業は続けられているようです。アワアワでヌルヌルなお湯は私の好みのストライクゾーンど真ん中なのですが、現状は温泉というより養魚場に近い雰囲気であって、名湯というより珍湯にカテゴライズされる温泉でありますから、一般の方にはおすすめできません。




●西日本
 
1 【鹿児島県 紫尾温泉 旅籠しび荘】
(当該記事へのリンク)
北薩地方の湯めぐりで一泊お世話になったお宿です。ここはなにしろコストパフォーマンスが優れており、あの料金なのにこんなに腹いっぱい美味しいお食事をいただいて良いのかと、客のくせに恐縮してしまいました。もちろんお湯もとっても素晴らしく、就中、内湯左側にある逆台形の天然石で造られた浴槽に入った時の心境たるや、まさに夢心地でした。この浴槽には紫尾温泉でもここでしか入れない下の湯源泉が注がれており、他のお風呂よりも濃いエメラルドグリーンを呈しているそのお湯は40℃程度というぬるめの長湯仕様となっているので、芳しいタマゴ臭に包まれながら、じっくりのんびりと極上の湯浴みを満喫できました。


 
 
2 【鹿児島県 湯川内温泉 かじか荘】
(当該記事へのリンク…「その1 部屋・食事・浴場(大)」「その2 浴場(小)」
多くの温泉ファンから絶大な支持を集めている北薩の名湯であります。2つある浴室の浴槽では、それぞれ足元から大量のお湯が湧出しており、その清らかなお湯は軽やかで優しいフィーリングで以て入浴者を包み、しかもその温度が不感温度帯であるため、時間を忘れていつまでも浸かっていられるのです。訪問した時期は折しもカジカガエルの恋の季節。日が暮れると、沢のあちこちからカジカガエルの美しい歌声が聞こえてきて、メスガエルではなく私が恋に落ちそうでした。尤も私は体形が青空球児・好児の球児さんに近づいているので、「ゲロゲーロ」という声に肉体が勝手に呼応してしまうのかもしれませんが、そんな冗談はともかく、ここは何度でも再訪問したいお湯ですね。


 
3 【熊本県 湯の鶴温泉 きくの湯】
(当該記事へのリンク)
川沿いの古くて小さな湯屋、そしてそこへ向かうための小さな橋…。これらの要素を目にした刹那、ゾッコン惚れ込んじゃいました。しかもその湯屋で湛えられているお湯がこの上なく澄み切っており、お風呂自体も無人施設なのに実に綺麗に維持されているではありませんか。九州に息づく温泉文化の深さと、そこで生活する人々が温泉に対して払う敬意を実感することが出来たお風呂でした。


 
4 【熊本県 湯浦温泉 岩の湯】
(当該記事へのリンク)
建物自体は最近リニューアルされたばかりで、一見するとごく普通の公衆浴場なのですが、その浴槽に張られているお湯が実にブリリアント! 改修前の旧浴場時代から使われているウサギさんの湯口から清らかに澄んだお湯が大量に注がれており、洪水かと見紛うほどドバドバとオーバーフローしているのですが、そのお湯からはタマゴ感がふんわり漂い、浴感も軽やかで、お湯の中では大量に気泡が肌に付着するのです。綺麗なお風呂で且つこんな極上のお湯でありながら、湯銭はたった170円なのですから、もう東京で生活するのがバカバカしくなっちゃいました。私のストライクゾーンど真ん中です。



西日本編

十傑の途中ですが、西日本編でも惜しくも十傑に入らなかったが強く印象に残った温泉たちにスポットライトを当ててみましょう。

  
【宮之城温泉 さがら食堂(さがら温泉)】
(当該記事へのリンク)
わずか100円で入浴できる、食堂に付帯した温泉浴場です。地元の方からは公衆浴場代わりとして愛されているようです。芳醇なタマゴ感を擁する透明なお湯は、ローションを彷彿とさせるはっきりとしたツルスベ浴感が非常に心地よく、病みつきになりそうな程、私の好みに完全にマッチしたお湯でした。


  
【熊本県 平小城温泉 城山公衆浴場】
(当該記事へのリンク)
いかにも地元民向けの共同浴場らしい、長閑な田園風景の真ん中に佇む、古びた公民館のような趣きの小さな浴場なのですが、その湯船に張られている無色澄明のお湯がまどろみを誘う魅惑の力を有しており、ふんわりと香るタマゴ臭を嗅ぎながら、全身に気泡を付着させながらじっくり湯浴みしていると、気づけば瞼が閉じて一寝入りしそうになってしまいました。


  
【熊本県 寺尾野温泉 薬師湯(再訪問)】
(当該記事へのリンク)
今年のベスト10を選出するに当たって、敢えて再訪したところをチョイスするのは如何なものかと躊躇しましたが、良いものは良いのですから「スポットライト」にラインナップさせていただきました。この共同浴場は佇まいもお湯のクオリティも、本当に秀逸なのですよ。湯屋全体が神懸っている、いや、お薬師様のお湯だから仏様のご利益・功徳に包まれていると言うべきでしょうか、ともかくファンタスティック、極楽浄土に昇天したかのような心地です。また再訪問したい一湯であります。


  
【富山県 神代温泉】
(当該記事へのリンク)
哀愁漂う鄙びた建物と、塩辛くて金気も強い濁り湯が実に印象的な温泉でした。その塩分濃度の濃さゆえ、迂闊に長湯してしまうと体力が奪われてしまうこと必至の、とっても凶暴なお湯であります。氷見周辺はこの手のお湯が多いので、湯めぐりも体力勝負になってきます…。



松田聖子が搭乗している全日空機が無事千歳から羽田に到着したところで 引き続き、十傑に戻りましょう。


 

5 【岡山県 般若寺温泉】
(来年掲載予定)
岡山県内陸部の美作地方は、温泉資源にあまり恵まれていない瀬戸内エリアでは貴重な名湯の地でありますが、そんな当地の温泉でも風情や環境といった面で実にcharacteristicなのが、奥津温泉付近に位置する般若寺温泉ではないでしょうか。こちらは事前予約制なので、いきなり行っても入浴は難しいかと思うのですが、幸いにもこの時は訪問2~3時間前に電話したら利用OKでした。茅葺屋根の母屋といい、川岸の崖下にちょこんと佇む自噴湯の露天風呂といい、実に素晴らしいロケーションであり、露天に入浴中は、恰も自分が水墨画の風景に溶け込んだかのような心境でした。


 
6 【岡山県 湯郷温泉 療養湯】
(来年掲載予定)
「療養湯」という施設名が興味をそそりますね。湯郷温泉には有名な日帰り入浴施設「鷺温泉館」がありますが、それに隣接している目立たない浴場がこの「療養湯」です。同じ棟の右半分は地元民専用の「村湯」となっており、外来者が利用できるのは左半分の「療養湯」となるのですが、このお風呂では当地では貴重な完全掛け流しを実現しており、黒い羽根状の湯の華をユラユラ漂わせながら硫黄臭を強く放つ湯郷のお湯は、実に個性的でアトラクティヴなんです。お風呂自体は特筆すべき特徴がありませんが、とにかくお湯が素晴らしい。岡山県で私が最も好きなお湯です。


 
7 【京都府 琴引浜露天風呂】
(当該記事へのリンク)
「京都府イコール温泉不毛の地」という私の固定概念を根底から覆してくれた、素晴らしい露天風呂です。美しい白砂青松の絶景を目の前にしながら、お湯がドバドバ吐出される完全掛け流しの露天風呂に浸かれる喜びといったら、筆舌に尽くしがたいものがあります。


 
 
8 【和歌山県 湯の峰温泉 つぼ湯】
(来年掲載予定)
世界遺産の温泉である紀州熊野の湯の峰温泉。当地にはいくつかの源泉があり、宿・施設によって入浴できるお湯は異なりますが、やっぱりランドマークである「つぼ湯」のお湯が、風情・濁り方・味・匂い・浴感などなどあらゆる面で秀逸ですね。


 

9 【和歌山県某所 簡易風呂桶の温泉】
(来年掲載予定)
場所の特定は控えさせていただきますが、このお湯は本当に素晴らしかった!
2011年に日本を襲った台風12号は紀伊半島各地に大水害をもたらし、川沿いに位置する某温泉施設も泥流に呑み込まれて、もはや復活が不可能なほど被害を受けて惨憺たる状況となってしまいましたが、施設は泥に埋もれても、源泉はしっかり生きており、源泉からホースが引かれて、上画像のような簡易的なお風呂が作られていました。清らかに澄んだお湯は37℃前後の長湯仕様で、お湯に浸かると全身が泡だらけになっちゃうんですよ。しかも湯船の前の見晴らしも良好。今のところ、私個人的には和歌山県ベスト1のお湯かもしれないな…。


 

10 【富山県 高天原温泉】
(当該記事へのリンク)
泣く子も黙る日本最奥の温泉です。高天原温泉への行程は往復で2泊3日の登山を要しましたので、今年私が訪れた温泉の中では最も強い達成感が得られました。しかも台風一過の素晴らしい天候に恵まれたので、道中で眺望した北アルプス最奥部の大パノラマにも心を奪われました。

西日本&台湾編は以上。
大晦日の明日は東日本編です。
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青森県下北半島の某所 2013年10月下旬

2013年12月29日 | 青森県

下北半島の山中を車で走っているとき、3年前に行政の手によって撤去された某所の野良湯(宿泊施設跡の湯船の残骸)のことをふと思い出し、現状はどうなっているのか気になったので、実際にその場所へ行ってみることにしました。かつてはその湯船の残骸には清らかなお湯が湛えられていましたが、果たして今でもお湯は湧き続けているのでしょうか。まずはガードレールが途切れているところから右にそれる杣道へ入ってゆきます。



川へ向かって下ってゆくと、かつて湯船の残骸が存在していた緩やか斜面は、すっかり構造物が撤去されて何もないただの裸地となっていましたが、その地面からは湯気が濛々と立ち上っていました。つまり斜面にはお湯が流れているわけですね。


 
お湯の流れの最上流には、上画像のような小さな祠と人為的に造られた湯溜まりがあり、塩ビのパイプから絶え間なく無色透明の温泉が自噴していました。その湯口に温度計を突っ込んでみたところ、46.9℃という数字がはじき出されました。湯溜まりは直径1メートルにも満たない小さなものですから、足湯でしたら可能ですが、とてもじゃないけど全身浴は無理です。


 
湯口から川へ向かってお湯の流れを辿ってゆくと、撤去されてしまった湯船の跡地に、入浴にお誂え向きな、小さな池のような湯溜まりが2つできているではありませんか。こんなところで僅か3年間の間に池状のものができるはずもありませんので、縁を土留めするなどの措置は施されていませんが、おそらく人為的に掘られたものだろうと推測されます。


 
2つある湯溜まりのうち、最も大きな湯溜まりで温度を測ってみますと41.9℃という絶好の湯加減であることが判明。湯溜まりの大きさ(表面積)も問題なし。一介の温泉ファンとしては、こんな条件が整っていながら、ただ見て帰る訳にはいきません。どうしても入浴したいという衝動に駆られてしまい…



その場で裸になって湯溜まりに浸かってみました。醜い体を晒して申し訳ありません。
湯溜まりを上から見た時には、入浴するに十分な容量があるように思えたのですが、実際に入ってみますと、底には泥や落ち葉がたくさん沈んでいるためかなり浅くなっており、せいぜい腰下がお湯に浸かる程度の嵩しかありませんでした。湯量は豊富ですし、温度も良い塩梅ですから、スコップを持参して湯溜まりの底を浚渫するか、あるいはビニールプールを用意してそこにお湯を張れば、満足できる湯浴みができそうですよ。


野湯につき温泉分析表掲示なし

青森県下北半島の某所(場所の特定は控えさせていただきます)
お湯は常時自噴していますので、工夫次第で楽しい湯浴みができるでしょう。
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薬研温泉 元祖かっぱの湯

2013年12月28日 | 青森県
 

薬研温泉の「かっぱの湯」は、かつては野趣あふれる混浴の露天風呂として有名でしたが、数年前に行政の手により改修工事が行われ、生まれ変わった現在の姿については温泉ファンから賛否の声が上がっているようです。かく言う私は、改修前はもちろん入浴していますが、改修後の姿についてはネット上で画像を見るばかりでしたので、先日実際に現地へ趣き、自分の目で確かめてみることにしました。
駐車場からお風呂へ下ってゆくスロープの入口には利用に際しての注意が案内されていました。かつては自由勝手に入浴できましたが、現在では男女別に時間帯が分かれており、混浴利用ができないようになっているんですね。


 
目隠しの塀に沿って階段を下ってゆくと、立派な脱衣室が用意されていました。時間帯によって男女が分けられていますから、脱衣室はひとつしかありません。


 
脱衣室にも男女別の時間割が掲示されていました。そのタイムテーブルをここにも転記しておきますね。
男性 7:00~9:00、11:10~13:00、15:10~17:00
女性 9:10~11:00、13:10~15:00、
この時間割をご覧になれば一目瞭然ですが、要は10分間の切り替え時間を挟んで2時間毎に男女が入れ替わるわけですね。


 
室内にはロッカーが備え付けられているほか、無人施設ですから非常時のためのインターホンも用意されていました。よりワイルドな雰囲気を楽しみたい方には目障りかもしれませんが、観光客が利用する施設でありますし、お風呂という施設は不測の事態が起きやすい場所でもありますから、私としてはこうした設備を用意した行政の判断を評価したいと思います。



定期的に係員によるチェックも行われているらしく、室内には湯船の温度が書き込まれていたのですが、そこに書かれていた数値はなんと48℃!! 熱すぎじゃねぇか? まぁとにかく入ってみましょうか。


 
露天風呂は基本的には従前のものを流用していますが、頭上には格子状の梁が屋根のように渡されており、その一部からは目隠し用のすだれが下がっていました。あくまで梁のようなものであって屋根ではないので、雨天時であっても空から降ってくる雨粒を凌ぐことはできません。どうしてこんなものを設置したのかよくわかりませんが、開放的な環境であり、近くの橋の上などから覗かれやすい場所でもあるため、「かっぱの湯」ならではの開放感を保ちながら外部からの視線を遮断しようとして、このような形状が採用されたのでしょう。

室内では48℃と書かれていた湯加減ですが、たしかに部分的にはそのくらい熱い箇所もあるものの、大部分ではちょっと熱めの44℃前後となっていました。頭上はこのような構造物で覆われているものの、お風呂自体はかなり大きく、開放感も楽しめました。
なおこのお風呂には洗い場がなく、お湯は直接川へ捨てられるために石鹸やシャンプーなどの使用も不可です。



脱衣室棟のお風呂側には時計やスピーカーが取り付けられています。時間で男女を切り替えるお風呂なので時計の必要性は当然としても、なぜスピーカーがあるのかと言えば、一定時間毎にこれを用いて自動音声案内によってこのお風呂の使用上の注意を喚起するのであります。実際に私が入浴している時にも、辺り一帯の山中に響くんじゃないかと思うほどデカいボリュームで音声が流れ、時間により男女を分けていることや、シャンプー等の使用は禁止であることなどが、日本語と英語によって説明されていました。


 
拙ブログをご覧の方でしたらご存知の方も多いかと思いますが、この「かっぱの湯」は渓流沿いというロケーションが大きなアピールポイントであります。お風呂の川べりではこのお風呂のシンボルであるかっぱの石像が入浴客を見守っていました。



お風呂から県道方向を眺めた様子です。この日は運悪く雨天に祟られてしまったのですが、雨に濡れることによって自然の色彩のコントラストがより鮮明になり、渓流の紅葉が実に美しく映えていました。なおお風呂から身を乗り出せば県道の橋が見えますが、おそらく橋の上からはかろうじて見えないようです。


 
こちらは逆に渓流の上流側を望んだ様子です。目で川岸を辿ってゆくと、コンクリ枡の源泉が見えますね。


 
上画像のように浴槽には幾筋かの小さな溝があり、上流のコンクリ枡からホースで引いてきた源泉は、こうした溝から浴槽へ注ぎ込まれています。この源泉投入の場所をうまい具合に配置しているため、大きな湯船でありながら湯加減のムラが少なくなっているのは大いに評価したいところです。なお湯使いは完全掛け流しです。



ただ、脱衣室から出てすぐのステップそばにも岩に隠れて源泉供給口が設けられており、そのことを知らずにステップを下りて入浴しようとしたら、いきなり熱い湯が流れてきたのでビックリしちゃいました。

お湯は無色澄明で無味無臭の、癖がない優しいお湯です。この日はちょっと熱めでしたので、じっくり長湯するわけにはいかず、湯船に入ったり出たりを繰り返しながら、雨に触れる紅葉を眺めて過ごしましたが、清らかで優しいお湯は掛け値なしで素晴らしく、頭上を構造物で覆われているものの周囲の景色をのんびり眺める環境は保たれていますから、公営でありながら無料でこのクオリティの露天風呂に入れる現状の「かっぱの湯」を、私としてはポジティヴに評価したいところです。
ただ、時間帯により男女を分けるのも一つの方法ではありますし、公衆浴場法上、男女を分けることは必須でありますが、せっかく大きな湯船があるのですから、湯船そのものを男女に分けちゃうことはできなかったのかな、という思いもよぎりました。現状では、例えば夫婦やカップルで訪れた場合は、どちらか一方が入浴できない事態になるわけですし、時間割を知らずに訪れた場合でも、最大2時間は棒に振っちゃう可能性もあるわけです。かといって、以前の混浴に戻してしまうと、温泉ファンならともかく、一般の方にはかなりハードルが高くて実質的には男湯化しちゃいますから、できれば男女両方が同時にお風呂へ入れるような形になれば、下北半島の優良な観光資源としてよりよい方向に進展できる気がするのですが、でも無料で運営するなら現状が精一杯なのかもしれませんね…。ま、そんな独り善がりな愚考はともかく、山の中の川沿いというロケーションですから、夏になると虻の猛襲に遭うこと必至ですから、もしこちらを訪れるのでしたら、春か秋がおすすめです。


温泉分析表掲示なし

青森県むつ市大畑町奥薬研 地図
下北ナビの紹介ページ

入浴時間
男性 7:00~9:00、11:10~13:00、15:10~17:00
女性 9:10~11:00、13:10~15:00、
水曜午前中は清掃
無料
貴重品用ロッカーあり、他備品類なし
石鹸・シャンプー類使用不可

私の好み:★★★
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湯野川温泉 濃々園

2013年12月27日 | 青森県
 
むつ市川内町の寒村にポツンと佇む湯野川温泉。当地の日帰り温泉入浴施設である「濃々園」は、ヒバと漆喰により建てられた建物が、公営でありながらまるで老舗の和風旅館のような落ち着いた雰囲気を醸し出しており、周囲の山や清流と絡めてカメラに収めてみますと、絵葉書のような良い絵柄にまとまります。私は5~6年前に一度こちらへ訪れたことがあるのですが、当時の記憶が薄れつつあったので、下北半島へ旅した先日、改めて湯浴みして記憶を補完すべく立ち寄ってみることにしました。



施設の前を流れる川の対岸にある小さな集落で、源泉井戸と思しき施設を発見。温泉分析表に記載されている源泉の所在地から推測しますと「濃々園」のお湯もここから引かれているものと思われます。


 
玄関を入った正面に設置されている券売機で料金を支払い、左手にある受付のおじさんに券を提出します。受付から浴室へ向かう廊下の壁には、映画「飢餓海峡」にまつわるスチール写真が展示されていました。


 
ウッディーな脱衣室は建物の大きさの割にはこぢんまりしており、棚も9つほどしかありませんが、観光客向けの施設ですから、必要最小限のものは用意されています。なおドライヤーはコインタイマー式です。



壁や浴槽などにヒバ材を多用しており、川を臨む大きなガラス窓が印象的な浴室。


 
室内の左右に分かれてシャワー付き混合水栓が計6基シンメトリに設置されており、また室内手前側にはサウナも設けられています(水風呂はありません)。


 
頭にチビのカエルを載せた石造りのカジカガエルの口からお湯が吐出され、ヒバ造りの湯船には無色澄明のお湯が満たされており、浴槽縁からふんだんに溢れ出ています。ヒバの浴槽におしりを沈めると実に心地よい肌触りです。お湯を吐き出すカエルの口の下部(顎)には白い析出がビッシリ付着していました。館内表によれば内湯のお湯は加水されているそうですが、れっきとした放流式の湯使いとなっており、薄っすらと石膏の味と匂いが感じられるとともに微かな甘味も有していました。また実際に入浴しますと優しいフィーリングが全身を包んでくれ、湯上がりもサッパリ爽快です。


 
内湯浴槽の左脇にあるドアを開けて屋外に出て、澄み切った川と対岸の木々を眺めながら階段を下りると、内湯の下に半分潜るような構造の露天風呂が据えられています。ちょっとした洞窟風呂みたいですね。ヒバの質感を存分に活かした内湯と異なり、こちらは全面的に石のイメージを打ち出しています。なお浴槽の手前側のスペースにも湯船から溢れ出たお湯が浅く浸されており、ここで足の裏を濯いでから湯船へ入るような感じになっています。



露天風呂でもカジカガエルが佇んで入浴客を見つめており、そのカエルの下からお湯が槽内供給されていました。内湯と異なりこちらでは塩素による消毒が行われており、実際にお湯からは鼻を突く塩素臭が放たれていました。また外気の影響か、この日はぬるめの湯加減でした。



露天風呂に浸かりながら景色を眺めると、玉石敷きの向こうに清らかな渓流と紅葉が広がっており、しばし時間を忘れてその光景をボンヤリと眺め続けてしまいました。これでお湯から塩素臭がしなければ最高なんですが…。
ヒバの浴槽の感触といい、お湯の質感といい、ここでは内湯の方が優れているように思えましたので、私は露天ゾーンで体をクールダウンさせる時以外は、ひたすら内湯に浸かっていました。内湯からも大きなガラス窓を通して渓流を眺められますからね。無色透明の優しいお湯は、森林に囲まれた当地の静かな環境と実にマッチしており、木のぬくもりとお湯の清らかさに抱かれながら湯浴みをしていると、心身ともに浄化されてゆくようでした。


湯野川2号泉
アルカリ性単純温泉 54.4℃ pH不明 溶存物質0.680g/kg 成分総計0.680g/kg 
Na+:108.5mg(40.00mval%), Ca++:139.9mg(59.15mval%),
Cl-:84.9mg(20.19mval%), SO4--:437.7mg(76.94mval%),
H2SiO3:69.1mg,
内湯は加水あり(源泉温度が高いため)
露天風呂は塩素系薬剤使用(衛生管理のため)

青森県むつ市川内町湯野川68  地図
0175-42-5136

9:00~19:00 火曜定休
350円
ロッカー(貴重品用)・ドライヤー(10円/2分・有料)あり、基本的な入浴道具販売あり

私の好み:★★

コメント
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