温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

三船温泉 民宿城山

2014年10月30日 | 大分県
今回から大分県長湯温泉やその周辺を巡ってまいります。
まずは長湯温泉と七里田温泉の中間に位置する一軒宿「三船温泉 民宿城山」からスタートです。

 
民宿と言っても、今回利用したのはそのお宿に併設されている公衆浴場です。私が借りたレンタカーのポンコツカーナビはとんちんかんな場所を示していたので、到着できるかどうか不安だったのですが、県道30号線(豊後街道)沿いには「城山」の大きな看板が立っていましたので、このおかげで見逃すことなく辿り着けました。県道から敷地内に入ると、更に「温泉はこちらです」という札が立っていますので、その矢印に従い奥の方へ進むと・・・


 
目的地である公衆浴場棟の前に行き着きました。こちらでは民宿の棟と温泉浴場の棟が完全別箇の離れになっているんですね。湯屋の前には広い駐車場も確保されているので、車でのアクセスも全く心配なし。



湯屋の裏手の一角には、地面からパイプが突き出ている箇所があり、そこからお湯が漏れて舗装された地面が赤く染まっていました。その状況から察するに、ここが源泉なのでしょうか?


 
玄関から中に入ると、右手に無人の番台があり、小さな券売機で湯銭を支払って、券をカウンターに置かれている箱へ置いておきます。番台では監視カメラが回っていますから、無人だからといってズルしてもお見通しですよ。


 
無人の公衆浴場ですが、館内は手入れがきちんと行き届いています。脱衣室はスノコ敷きで、棚やカゴの他、洗面台が1台とドライヤーが1つ用意されていました。


 
三船温泉は数年前にリニューアルされており、かつては鄙びた内湯が一つあるだけだったそうですが、現在は内湯の他、露天風呂も備わっており、内風呂も近年の九州で流行っている木造黒塗りで民芸調の、落ち着いた雰囲気です。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基並んでおり、コンクリの床には滑り止めのスリットが刻まれています。なおカランから出てくるお湯は真湯です。


 

浴槽は5~6人サイズの岩風呂。男女浴室を仕切る塀の下に湯溜まりがあり、ボコンボコンと音を立てながら温泉が湯溜まりへ吐出され、そこから両浴室へお湯が分かれて浴槽へ供給されています。ご近所の長湯温泉と同様に、こちらのお湯も浴槽への成分付着が著しく、槽内の岩は元の色がわからないほどクリーム色に分厚く石灰質がこびりついており、槽内のステップはこの付着によって瘤状の模様が形成されていました。湯船のお湯は2ヶ所の切り欠けから溢れ出ており、完全掛け流しの湯使いとなっています。


 
リニューアル時に増設された露天風呂は、周囲を塀で囲まれているため景色を眺めることはできませんが、坪庭のような趣きに演出されており、庭木の緑が目に鮮やかでした。また全体的に屋根掛けされているのですが、訪問時は沛然とした雨が降り続いていたため、むしろこの屋根のおかげで雨を気にせず露天での湯あみを楽しむことができました。なお露天のお湯は、内湯の湯溜まりからVU管で引かれており、内湯同様に完全掛け流しです。


 
内湯同様に露天も岩風呂ですが、こちらは岩の配置を変えて、日本庭園の池のような感じに構成されており、大きさは内湯より一回り小さく、3~4人サイズといったところでしょう。こちらの槽内も成分付着がすさまじく、湯尻では縁に付着したスケール同士が接近して湯船のキャパを狭めん勢いですし、お湯が溢れ出る切り欠け部分は成分のこびりつきによって、ミルフィーユを重ねたような層ができあがっていました。

お湯は湯だまりにおいてほぼ無色透明なのですが、空気に触れることにより赤みを帯びたベージュ色の粉状沈殿が発生し、湯船では弱くクリーム色に懸濁しているように見えます。濁ると言っても長湯温泉の各源泉のように強く濁ることはなく、浴槽底面が明瞭に目視できる程度の透明度はキープされています。お湯を口に含むと、石灰系の明瞭な土類味および弱い金気の味や匂いが感じられ、重曹味も含まれていました。ご近所の長湯温泉や七里田温泉は遊離炭酸ガスの多さで有名であり、この三船温泉のお湯も一見するとそれらと同類であるように思えますが、分析表によれば遊離炭酸ガスは46.9mgしかなく、その数値が示すように実際にも炭酸らしい知覚はあまり確認できませんでした。見た目から受ける予想通りに、湯船に浸かるとギッシギシに強く引っかかる浴感が得られ、湯上がりにはよく温まり、いつまでも湯冷めせずにポカポカ感が持続しました。

長湯と七里田という温泉ファンにはおなじみの温泉地に挟まれて目立たぬ存在ではありますが、お湯のクオリティーは両者に引けをとりませんし、なにしろ公衆浴場料金であるにもかかわらず、こんな立派なお風呂を利用できるとは、何ともありがたい話です。いかにも温泉天国大分県らしい、素敵なお風呂でした。


マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉 46.4℃ pH不明 溶存物質3963.5mg/kg 成分総計4010.4mg/kg
Na+:491.6mg(36.08mval%), Mg++:245.0mg(41.64mval%), Ca++:170.5mg(17.58mval%), Fe++:1.4mg,
Cl-:183.0mg(10.10mval%), SO4--:521.5mg(21.25mval%), HCO3-:2130.8mg(68.32mval%),
H2SiO3:213.9mg, CO2:46.9mg,
加水加温循環消毒なし

大分県竹田市久住町大字仏原1066  地図
0974-77-2818

6:00~22:00
300円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★★
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湯野浜温泉 漁師の宿 福宝館

2014年10月28日 | 山形県
 
湯野浜温泉での宿泊は、下区公衆浴場(コスパ)の目の前にある「漁師の宿 福宝館」でお世話になりました。客室が5室ほどしかない小規模のお宿なのですが、足湯やロータリー、そしてバス停から至近にあり、海にも面しているため、立地は最高です。なお車で伺う場合は、隣接する駐車場を利用するのですが、どの区画を利用すべきかはお宿の方に伺ってください。


●客室・お食事
 
今回の客室は3階の海側に面する6畳半の和室です。予めチェックインが夕食時間ギリギリになると連絡しておいたところ、到着時には布団を敷いておいて下さいました。清掃が行き届いて綺麗な室内には、冷蔵庫や冷水ポット・お茶セットの他、トイレや洗面台も完備されており、民宿にもかかわらずビジネスホテル並みの設備が調っていました。


 
海側の客室ですから、窓からの眺めは最高です。ちょうど夕暮れ時にチェックインしたのですが、入室時に窓の外を眺めると、日本海に夕陽が沈まんとしていました。



山形県唯一の漁師が経営する民宿なんだそうですが、さすがにお食事は海の幸尽くしで、種類豊富で新鮮な魚介が盛りだくさん。肉よりも魚介が好きな私にとっては天国のようです。上画像は夕食であり、この日の献立は以下の通りでした。
ズワイガニ、子持ちカレイのフライ(タマゴたっぷりで身もプリプリ、サザエの刺身付き)、お造り(ヒラメ・ホウボウ・タコ・マグロ・甘エビ)、カツオのたたきのカルパッチョ、茶碗蒸し、塩辛、なまこ酢…


 
そして、カサゴの煮付け(左(上)画像)とカナガシラのお味噌汁(右(下)画像)です。後者(お味噌汁)は魚の旨味が強く出ていて、あまりの旨さに最後の一滴まで飲み干してしまいました。なおマグロと甘エビ以外の魚介は全てお宿所有の福宝丸で獲れたものなんだとか。実は通常の値段よりかなり安く設定されているお得なビジネスプランで利用させていただいたのですが、これで本当に元が取れるのかと私の方は不安になるほど、ものすごいボリュームで、全てを食べ終えた時にはお腹がはちきれでした。しかも、その全てがお世辞抜きで非常に美味しく、お腹がきつくても箸が止まらず、気づけば全てを平らげていたのでした。



こちらは朝食でして、シャケ・ハムエッグ・各種小鉢などが卓上に並べられています。当然夕食より品数は抑えられているものの、小鉢の数が多いのでご飯が進み、朝からお櫃のご飯を空にしてしまったほどです。なおお食事は夕食・朝食ともに1階の食堂でいただきます。


●お風呂・夕暮れ編
 
海辺の限られた敷地に立地しているためか、建物は縦方向に伸びており、浴室は最上階の4階に設けられていますので、入浴する際には階段で一番上まで上がってゆくことになります。お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂はありません。


 
お風呂は内湯ですが、海に面して大きな一枚窓が設けられており、入浴しながら雄大な海を望むことができます。上述のようにこの日の私は夕食ギリギリの時間にチェックインしたため、お宿としてはすぐにでも食堂で夕食をはじめて欲しかったはずなのですが、お宿の方にお願いしてちょっとだけ猶予をいただき、大急ぎでお風呂に駆け込んで、湯船に浸かりながら、真っ赤な太陽が大海原に沈みゆく様を楽しませていただきました。ひゃーーっ、絶景なり!


●お風呂・青空の朝編
 
宿泊中は3度もお風呂に入っちゃいました。真夜中の入浴も可能です。上画像は早暁に入った朝風呂の様子。夕暮れ時のお風呂は室内まで真っ赤に染まっていましたが、朝のお風呂は海の煌めく波の光を受けて、明るいオーシャンブルーによって占められていました。大きな一枚窓のおかげで、屋内とは思えないほど爽快です。浴室は奥に長い作りとなっており、一番奥の窓下に3~4人サイズのポリバスが設置されています。ポリバスはやや温泉風情に欠ける気もしますが、私個人の勝手な予想ですが、4階に重たい浴槽を設けているため、設計上、可能な限り軽量化を図るべくポリバスにしたのかも。


 
4階にある浴室からの見晴らしは良好。この日は天候に恵まれ、突き抜けるような蒼い空と、果てしなく広がる日本海が眺望できました。またすぐ近くには温泉街の中心部となる足湯のロータリーも見下ろせます。



浴室の手前側には洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が3基並んでいます。なお吐出されるお湯は真湯です。


 
湯口には木の樋が用いられており、そこからアツアツの温泉がチョロチョロと注がれています。お湯は無色透明で、鮮度感は頗る良好ですが、塩化土類を含むお湯にありがちな、白く靄がかかったような極僅かな濁りを呈しているように見えます。はっきりとした塩味と、弱いものの口腔の粘膜にしぶとく残るニガリ味(一種の苦味)が感じられ、匂いは殆ど無いようでした。

前回取り上げた公衆浴場では加水されていましたが、こちらでは加水も無い完全掛け流しであり、熱いお湯の投入量を絞って湯加減を調整しています。そして湯船を満たしたお湯は縁からしっかり溢れ出ていました。湯船に入るとピリッと熱いのですが、身も心もシャキっとして爽快です。

美味しくてボリュームたっぷりのお食事、そしてオーシャンビュー且つ完全掛け流しの温泉に浸かれる、この上なくブリリアントなお宿でした。おすすめ!


湯野浜1号・2号・3号・4号及び5号並びに厚生有限会社・滝乃湯新2号
(南配湯所より配湯)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 57.2℃ pH8.1 溶存物質5005mg/kg 成分総計5006mg/kg
Na+:1303mg(69.76mval%), Ca++:475.9mg(29.33mval%),
Cl-:2792mg(91.58mval%), Br-:12.4mg, I-:1.8mg, SO4--:318.1mg(7.70mval%),
H2SiO3:43.6mg, HBO2:11.6mg,

JR羽越本線・鶴岡駅より庄内交通バスの湯野浜温泉行で湯野浜温泉バス停(終点)下車すぐ
山形県鶴岡市湯野浜1-9-34
0235-76-2936
ホームページ

日帰り入浴が可能か否かは不明
ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
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湯野浜温泉 下区公衆浴場

2014年10月26日 | 山形県

庄内地方きっての温泉地でありながら、なぜか今まで行く機会が無かった湯野浜温泉へ先日行ってまいりました。温泉街の中心部には足湯が設けられ、その周りがロータリーとなっているんですね。


 
足湯の脇には飲泉場もあり、チョロチョロとお湯が落とされています。試しに手でこのお湯を受けてみようと思ったら、かなり熱くてビックリしちゃいました。


 
足湯のロータリー前にそびえるビルは集会所や観光協会などを擁する地域のコミュニティーセンター「コスパ」。名前の由来はよくわかりませんが、少なくともコストパフォーマンスの略ではなく、何かしらの言葉とスパ(SPA)をくっつけているのでしょう。このビルの1階には鶴岡駅へ向かう路線バスの乗り場も内包されています。



当地では次回記事で取り上げるお宿に宿泊したのですが(委細は次回記事にて)、お宿で夕食をいただいた後、日がとっぷり暮れてから温泉街や砂浜を散歩し、一通りぐるっと回った後にコスパへ向かって、このビル1階にある「下区公衆浴場」で汗を流すことにしました。公衆浴場の場所は、コスパ1階のバス乗り場右手から建物の裏側へ入っていった先です。


 
券売機で湯銭を支払い、愛想の良い受付のおばちゃんに券を手渡します。浴室入口の手前には畳敷きの小上がりが設けられていますから、ちょっとした休憩もできますね。


 
脱衣室はそこそこ広く、きちんと清掃が行き届いており、大きな鏡が取り付けられており、洗面台も2台設けられているので、使い勝手は問題ありません。室内にはロッカーがあるのですが、鍵はささっておらず、張り紙によれば、ロッカーを利用したい場合は管理人へ申し出てほしいとのこと。てことは、申し出の際には張り紙の横にあるインターホンを使えば良いのかな?


 
公衆浴場ですから浴室は実用的な造りであり、大きな浴槽が一つと、シャワー付き混合水栓6基がL字形に並ぶ洗い場があるばかりですが、足元には十和田石が敷かれており、歩くたびに快適な感触が足裏へ伝わってきます。浴槽は潰れた台形のような形状で、大体6~7人サイズ。槽内は石板タイル張りで、縁は黒御影石です。常に浴槽縁からお湯が十和田石の床へオーバーフローしており、人が湯船に入ると勢い良く溢れ出て、洗い場をすすぎ流していました。

洗い場の上に掲示されているプレートには「浴槽のお湯の適温は38から40℃です」と記されているのですが、私が訪問した時間帯の湯船は44~45℃という熱めの湯加減で、さすがにこれでは地元の方でも熱いのか、常連のお客さんは水道の蛇口を全開にしてお湯を薄めていました。なお館内表示によれば、源泉温度が高いため加水しているものの、加温循環消毒は行われておらず、放流式の湯使いを実践しているんだそうでして、槽内に吸い込み口らしきものは無く、上述のようにしっかりお湯が溢れ出ていましたので、その説明に偽りはないものと思われます。


 
浴室の窓下から耐熱塩ビ管が、浴槽中央上部にある乳鉢を半分にしたような湯口へ伸びており、パイプに開けられている穴から半円形のお皿にお湯が注がれ、そこから浴槽へと落とされています。パイプにはタオルが巻かれているのですが、これはお湯の中の固形物を濾し取るためのものでしょう。
お湯は基本的には無色透明ですが、夜の混雑時間帯が過ぎた直後(つまりお湯が鈍っていたタイミング)に伺ったためか、あるいは塩化土類を含む泉質由来か、僅かに白く濁って靄が掛かっているように見えました。湯口のお湯をテイスティングしてみますと、塩味と弱ニガリ味、そして弱芒硝味が感じられました。匂いはあまり嗅ぎ取れなかったように記憶しています。

さて、この「下区公衆浴場」をネットで色々と調べてみますと、温泉ファンの多くはあまり良い評価をしていないようです。お湯はしっかり放流式ですし、塩気と塩化土類感を帯びるれっきとした温泉であるにもかかわらず、どうして評価が芳しくないのか考察してみますと、以下のような要因が推測されます。
・いかにも公的施設らしく、無機的で情緒が無い。
・泉質としては珍しくない食塩泉であり、特に面白いお湯ではなく、しかも配湯されている混合泉であって、加水もされている。
・中途半端に古い。10年落ちの中古車は二束三文ですが、20~30年前の車になればヴィンテージカーとしての価値が生まれてくるように、温泉施設も、中途半端に古いといまいち風情が感じられませんが、極端に古かったりぼろかったすると、却ってそれが味や情緒を生み出します。コスパという鉄筋の建物は、まだ味わいを醸し出す段階には至っておらず、実用的な部分ばかりが目立ってしまっている。
・同じ鶴岡の湯田川温泉と比較すると、伝統的な温泉風情は湯田川に軍配が上がってしまうため、相対的に評価が低くなる。
・そもそも湯野浜温泉は日帰り入浴不可の宿が多いため、湯野浜に興味を示す温泉ファンが少ない。
あくまで私個人の印象論にすぎませんので、異論があってもどうか見逃していただきたいのですが、そんな私の愚見や温泉ファンの評価はさておき、この浴場が地元の方に愛されていることは間違いなく、私が利用した夜8時半すぎという遅い時間帯でも、入れ替わりながら常時3~4人の入浴客で湯あみなさっていました。


湯野浜1号・2号・3号・4号及び5号並びに厚生有限会社・滝乃湯新2号
(南配湯所より配湯)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 57.2℃ pH8.1 溶存物質5005mg/kg 成分総計5006mg/kg
Na+:1303mg(69.76mval%), Ca++:475.9mg(29.33mval%),
Cl-:2792mg(91.58mval%), Br-:12.4mg, I-:1.8mg, SO4--:318.1mg(7.70mval%),
H2SiO3:43.6mg, HBO2:11.6mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

JR羽越本線・鶴岡駅より庄内交通バスの湯野浜温泉行で湯野浜温泉バス停(終点)下車すぐ
山形県鶴岡市湯野浜1-1-7
0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)

6:00~7:00、10:00~21:30 第2・4木曜定休
300円
ロッカーあり(利用の際は受付へ申し出)、他備品類なし(タオル・石鹸など販売あり)

私の好み:★★
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由良温泉 由良温泉センター お釈迦さまの湯

2014年10月24日 | 山形県

民家が蝟集する漁村集落の中に、小規模の民宿がモザイク模様に点在している山形県庄内地方の由良温泉。
砂浜の堤防沿いに建っているピンク色の平屋の建物が、今回訪れる当地の公衆浴場「由良温泉センター お釈迦さまの湯」であります。ピンク色だからと言っても、別に林家ペー関連施設ではありません(なんじゃそりゃ)。


 
目の前に白い砂浜と青い海が広がる、まるで海の家のような立地は、関東人の私には静岡県伊豆半島土肥温泉の「屋形温泉共同浴場」を連想させます。外壁には「海水パンツのままでの入浴禁止します」と、当地のロケーションを象徴するような張り紙が掲示されていました。


 
海(路地)に面してサッシが開かれており、一見するとどこが入口なんだかわかりませんが、温泉マークが下っている右側が入口で、左側はオープンな感じの休憩用座敷が設けられています。入口の奥には番台代わりの小さな机があり、そこに座っているアイロンパーマのおじさんに湯銭を支払いました。この番台の手前にはロッカーが用意されています。


 
最近、庄内地方の温泉浴場を巡るとしばしば目にするのが、入浴中の事故防止を啓発するこれら「庄内41℃ふろジェクト(よいふろじぇくと)」のポスターです。なんと庄内地域での入浴事故死は、交通事故死の7倍に及ぶんだそうですよ。入浴事故死の多くは高齢者が熱い風呂に入ることによって起きる心肺停止・脳血管障害・失神・溺死などですから、2枚のポスターではいずれも、高齢者の入浴事故を未然に防ぐべく、デザインこそ異なるものの、脱衣室を暖房で暖めつつ、湯加減はぬるめにし、肩まで浸からず半身浴にしておきましょう、といった内容が訴えかけられていました。
庄内に限らず、東京都健康長寿医療センターによれば「不慮の事故による死亡は(死因の)第5位に位置する。不慮の事故というと交通事故などが多いように思われるが、実際にはその大半が交通事故以外によるものであり、その中でも家庭内での溺水・溺死の増加がめだっている。溺水・溺死は事故に分類されるが、入浴中に起こった心・脳疾患の発作による死亡は病死とされ、これらを含む入浴中の急死は相当数に上るであろうと指摘されてきた」とのこと。毎日の入浴が欠かせない日本の生活文化は、実は死と隣り合わせであったわけです。
参考: 「高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?―特徴と対策―」(東京都健康長寿医療センター公式サイト内)


 
脱衣室にはその日の湯船の温度が記録されており、そこには42℃と記されていました。こちらで使っている源泉の湧出温度は58℃ですから、そのままですと熱すぎてしまい、ぬるま湯の入浴を推奨する庄内地方の方針にも背きますから、42℃まで加水しているのでしょう。なお当浴室においてトドは禁止とのこと。


 
お風呂は男女別の内湯があるのみ。白いタイル貼りの浴室は実用本位で温泉風情はありませんが、海に面して窓が開けられており、白く輝く壁のタイルと窓から降り注ぐ陽光によって、室内は明るい環境が保たれています。浴槽は大凡5人サイズで、縁は赤御影石、槽内は水色タイル貼りです。縁からはお湯が常時溢れ出ていました。


 
浴室の手前側に洗い場があり、左右にシャワー付き混合水栓が2基ずつ(計4基)取り付けられています。カランから吐出されるお湯は真湯です。なおシャワーの一部は最近更新されたのか、ピカピカに輝く新品でした。
この洗い場には石鹸とシャンプーが備え付けられているのですが、シャンプーのボトルにはマジックで「アタマ シャンプー」と手書きされているのがちょっとユニーク。



窓からは格子越しに青い海が臨めました。


 
こちらのお風呂を取り上げる温泉ファンの方が必ずと言って良いほど注目するのがこの湯口。隅っこに据えられた岩からホースが槽内底部へ伸び、先端には濾し取り網の袋が接続されていて、吐出されるお湯によって膨らんでいる袋からお湯が投入されているのですが、袋にはハート模様がプリントされており、お風呂で汗を流す武骨な男たちと、漁師イコール荒々しい男達というイメージとは全く逆ベクトルを示すその模様の両方を同時に目にして、そのギャップに思わず吹き出してしまいました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、少々の芒硝感があったように記憶しています。とにかく味も匂いも弱めです。脱衣室のボードに記入されていた通り、この時の湯船は(私の体感で)42℃前後だったのですが、お湯の知覚が弱めだったのは、温度調整のために実施されている加水の影響もあるのかもしれません。入浴中の肌には、弱いサラスベと硫酸塩泉らしい引っかかりが混在した浴感が伝わってきました。

ちなみに、私が訪れた夕方5時半過ぎには、男湯には先客が4人ほどいらっしゃり、私が湯船に浸かっている間に皆さん次々に退室され、最終的には私一人だけとなりましたが、女湯はその間、全く入浴客がいなかったようで、女湯の入口扉はずっと開けっ放しで、照明も不点灯のままでした。あくまで私の想像ですが、当地には伝統的な生活様式を営む家庭が多いのかも知れず、それならば夕食時の家事を始める前か済んだ後に入る以外、奥様方が湯浴みできる時間はありません。地方の共同浴場は、えてしてこのように、男女で混雑時間帯のピークが異なるケースが見られます。

私より早く出た地元の常連さん達は、湯上がりに番台横のお座敷で車座になって談笑なさっていました。地元の方々の憩いの場なんですね。


香頭源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 58.0℃ pH8.1 蒸発残留物2016mg/kg
Na+:397.8mg, Ca++:219.7mg,
Cl-:141.6mg, Br-:0.5mg, I-:0.3mg, SO4--:1097mg, HCO3-:25.9mg,
H2SiO3:42.7mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

山形県鶴岡市由良2-21-1  地図
0235-73-2915

15:00~20:00(7~9月は13:00~20:00) 火曜定休
300円
ロッカー・石鹸&シャンプーあり、ドライヤーなし

私の好み:★★
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瀬見温泉 薬研湯

2014年10月23日 | 山形県
※今回は小ネタです。期待しないでくださいね★


 
義経や弁慶にまつわる伝説が残る山形県最上地方の瀬見温泉は、公衆浴場の「ふかし湯」が有名ですが、当地にはちょっとした野天風呂があると聞き、どんなものか見学しに行ってみました。まず「ふかし湯」がある公衆浴場と、隣接する温泉管理事務所の隙間を入ってゆきます。


 
両者の間には、「薬研湯 産湯を探して谷川を下った弁慶が、なぎなた『せみ丸』で岩を砕き温泉を発見した場所」と書かれた札が立てられています。この先にその薬研湯とやらがあるのでしょう。河岸の階段で小国川へ下りてゆくと…


 
階段を下りてすぐのところに、このような露天風呂がありました。これが薬研湯ですね。弧状の外縁は、コンクリと石でしっかり固められています。ここを弁慶がなぎなだでエイッと砕いたことによって、お湯が湧きだしたとされているわけです。つまり瀬見温泉発祥の地であります。


 
逆アングル(上流側)から眺めてみます。岸の真上は共同浴場。対岸には民家が立ち並び、国道をひっきりなしに車が行き交っています。ここで裸になって入浴するのは、結構な度胸が必要ですね。


 
外縁こそコンクリで固められているものの、お風呂自体は天然の岩盤であり、岩の隙間から湧きだした温泉が、表面の窪んだところへ溜まっているようです。いや、もしかしたら岩にこっそり配湯パイプが仕込まれているのかもしれませんが、岩から自噴していると信じたほうが義経弁慶伝説の世界観にマッチしますから、敢えてここでは給湯方法に関して深入りしません。

お湯が張られた岩の表面は濃い黄色に染まっています。湯面の上に手をかざしたらかなりの熱気を感じたので、火傷を防ぐべく温度計をお湯に突っ込んでみたところ、58.1℃という数値が表示されました。これではとてもじゃありませんが入浴できません。こんな熱いお湯を本当に産湯に使ったのかな…。


 

岩風呂のお湯がこぼれ落ちて川と混じるところならば入れるかもしれないと、その箇所でも温度を測ってみたのですが、川の水量が多く、また流れも一定しないため、温度計の数値は25℃から35℃の間をいったりきたり。しかも川の勢いも強いので、滑って転倒したら、川に流されちゃうこと必至な状況でした。このためここでの入浴は諦め、見学だけに留めました。

この薬研湯は瀬見温泉の公式ホームページでも紹介されていますから、当地を訪れた際には軽く見学なさってみてはいかがでしょうか。


JR陸羽東線・瀬見温泉駅から徒歩10~15分(950m)
山形県最上郡最上町瀬見温泉  地図
瀬見温泉・公式ホームページ
いつでも見学可能(川の増水時は注意)。

私の好み:評価せず

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