温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

春日温泉 旅舎十二館

2024年04月17日 | 長野県

(2023年5月訪問)
2023年5月下旬に私のパートナーの親戚が集う機会があり、その親類の地元である信州佐久へ出かけた日のこと。親類の多くは佐久地方にある春日温泉「旅舎十二館」で一晩泊ったのですが、翌日に仕事があった私は東京へ戻る必要がありました。でもせっかくだからひとっ風呂浴びて帰りたいと思い、佐久を出る前に「旅舎十二館」でお風呂へ入り、ついでにお宿のお食事もいただいてから東京へ戻ることにしました。
八ヶ岳連峰の北麓に位置する春日温泉の中心部から更に狭い山道を上がった先にあるこちらのお宿。駐車場から玄関へ向かう途中のアプローチには、藤棚で藤が見事に花を咲かせており、強い芳香を放っていました。


さてお邪魔しましょう。


お食事までまだ時間があるとのこと。そこで、さっそくお風呂へ入ることに。
お風呂は玄関の奥へ伸びる狭い通路の先です。


明るく天井が高いお風呂。なお内湯のみで露天風呂はありませんが、山裾の緩やかな傾斜地に建てられているため、大きな窓からの見晴らしがよく、内湯とは思えないほど開放的な雰囲気で湯浴みできます。


洗い場には計5つの混合水栓が設置されています。この洗い場の水栓から出てくるお湯がマニア的には注目なのですが、その理由については後ほど。


浴槽はひとつのみで、その容量は5~6人サイズでしょうか。2面の窓下に据え付けられており、湯浴みしながら窓外の景色を眺められます。源泉温度が25℃であるため温泉は加温した上で湯船へ注がれていますが、ややぬるめの長湯仕様に設定されているため、時間を忘れてじっくりと浸かっていられます。


お湯は無色透明無味無臭で一見すると何の変哲もないのですが、湯船に浸かると誰しもがビックリすること間違いなし。いわゆる美人湯と称されるような温泉をはるかに凌駕するほどの強いツルツル感を有しているのです。まるでローションに浸かっているのではないかと勘違いしてしまうほどのツルツル感で、ヌルヌルという語句を用いて表現しても差し支えないほどです。分析表によればpHが9.6とかなりアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが29.3mgも含まれていますので、こうした影響によるものと思われます。

春日温泉は以前拙ブログで紹介した「国民宿舎もちづき荘」の飲泉できるお湯もツルツル感が素晴らしいのですが、こちらのお湯は飲泉こそできないものの浴感が極上。おそらく同じ源泉かと思われるのですが、湯使いの違いによるものなのでしょうか。
長湯仕様の湯加減と相まって、時間を忘れていつまでも浸かっていたくなるほどの極上湯でした。


なお湯使いについては館内に表示があり、それによれば25℃の源泉を一旦温め、浴槽用とシャワー用をセパレート。シャワー用は当然ながら使いきりで循環しませんが、浴槽用はかけ流しを併用しながら、循環装置を使ってろ過消毒を行っているそうです。とはいえ循環していることなど気にならないほど気持ち良いお湯でした。


上述にて「洗い場の水栓から出てくるお湯がマニア的には注目」と書きましたが、一部を循環させている浴槽用のお湯とは異なり、シャワーから出てくるお湯は加温された源泉100%ですから、完全かけ流し状態のお湯に触れたければシャワーのお湯を浴びれば良いのです。私もこのシャワーのお湯で驚異的なヌルヌル感を存分に堪能させていただきました。

お風呂から上がったところでお食事をいただきました。多くの親類が同席していたため画像は撮っていませんが、こちらのお宿は鯉料理が絶品。佐久と言えば鯉料理ですよね。正直なところ私は鯉があまり得意ではないのですが、「旅舎十二館」でいただいた鯉は、これまでの鯉料理に対する概念が覆りました。鯉ってこんなに美味いのか!
予め席には鯉の洗いが用意されており、まずこれが美味しい。その後、鯉のうま煮(鯉こくより色が淡い)も出されましたが、これもまた美味。気づけば鯉料理をペロっと平らげていました。

お湯佳し料理佳し。実に素晴らしいお宿です。この時は残念ながら宿泊できませんでしたが、次回は是非とも宿泊してゆっくり過ごしてみたいものです。


アルカリ性単純温泉 25.0℃ pH9.6 113L/min(掘削自噴) 溶存物質0.1681g/kg 成分総計0.1681g/kg
Na+:28.3mg(94.17mval%),
OH-:0.7mg, CO3--:29.3mg(74.19mval%),
H2SiO3:93.1mg,
(平成27年9月18日)
加水無し
加温あり(源泉温度が低いため)
循環ろ過消毒あり(かけ流しと併用)

長野県佐久市春日2253-343
0267-52-2019
ホームページ

日帰り入浴の可不可については直接施設へお問い合わせください

私の好み:★★★
コメント (2)
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野沢温泉 新田の湯

2023年11月05日 | 長野県

(2022年6月訪問)
野沢温泉の共同浴場では「熊の手洗い湯」が近年全面改築され、伝統的な趣きを残しながらもすっかり綺麗な姿へ生まれ変わりましたが、同様に最近建て直された共同浴場がもうひとつあります。今回取り上げる「新田の湯」は2018年に全面改築され、入口の破風や高い湯気抜きなど以前の姿の特徴を残しつつ、以前のような白壁ではなく材木の素材感を全面的に活かした総木造の湯屋建築として、完全リニューアルされました。


男女別の浴室へ入ってみましょう。
内部構造としては、野沢温泉の他の共同浴場と同じく、脱衣ゾーンと入浴ゾーンが一体化している伝統的な造りを踏襲しており、壁や天井などに全面採用されている木材の美しさと温かみが優しく湯浴み客を包んでくれることでしょう。
浴槽は横に長い長方形で、3~4人サイズといったところでしょうか。浴槽には無色透明のお湯が掛け流されており、湯中では白い湯の花がたくさん浮遊しているのですが、浴槽縁の黒御影石がビジュアル的な引き締め効果をもたらしており、また白い湯の花との色彩的な対比も成していて、木材の美しさも相俟って、実に心地よい空間です。

引かれているお湯は麻釜で湧出する複数の源泉をメインとする混合泉。無色透明ながらも硫黄感がしっかり得られ、ちょっと熱めながらも心身が冴え、湯上りのさっぱり感もあり、実に良いお湯です。
湯屋を新しくしても伝統的な建築を残そうとしてくださる地元の方々に感謝です。


丸釜・茹釜・竹挿し釜・下釜・御嶽の湯混合
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 77.0℃ pH8.8 湧出量記載なし 溶存物質1.059g/kg 成分総計1.059g/kg
Na+:203.7mg(65.87mval%), Ca++:87.0mg(32.27mval%),
Cl-:86.5mg(17.02mval%), HS-:5.2mg, SO4--:529.0mg(76.78mval%), CO3--:15.0mg,
H2SiO3:104.1mg,
(2014年11月14日)

私の好み:★★★
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野沢温泉 横落の湯

2023年11月02日 | 長野県

(2022年6月訪問)
野沢温泉の共同浴場といえば大湯に代表されるような立派な木造湯屋建築が印象的ですが、肩ひじを張らず周辺の建物と同化しながらひっそりと佇む共同浴場もあります。今回取り上げる「横落の湯」もそんな浴場のひとつ。バスターミナル付近の十字路付近に位置しており、浴場がある建物を表通りから見るとインバウンド向けのお店が目立っているため、どこに浴場があるのかわかりませんが・・・


十字路から坂の下の方へまわってみると、出入口には浴場名が揮毫された扁額がかかっており、ここに至ってようやく共同浴場であることがわかります。


男女別の浴室には、他の共同浴場より若干大きなサイズの浴槽が一つずつ据えられています。黒い御影石の縁により、お風呂が引き締まって見えますね。お風呂そのものの造りは至って質素で、これは他の共同浴場と共通していますね。
引かれている源泉は丸釜・茹釜・竹挿し釜・下釜・御嶽の湯のミックス。つまり麻釜で湧出する源泉をメインにした混合泉ということでしょう。なお以前は茹釜と下釜の2源泉混合だったようですが、現在は上述の6源泉混合となっているようです。湯船のお湯は無色透明で、硫黄感がそこそこしっかり感じられます。ちょっぴり熱いけれども、その分シャキッとする爽快感も得られ、風呂上がりのさっぱり感もしっかり。いかにも野沢という感じの良いお湯です。

バスターミナルから最も近い共同浴場ですので、バスへ乗り込む直前にひとっ風呂浴びたくなったら、こちらを利用してみるのも良いかもしれません。私個人としては、こうした隠れキャラ的な目立たぬ存在の共同浴場に愛着を感じてしまいます。


丸釜・茹釜・竹挿し釜・下釜・御嶽の湯混合
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 77.0℃ pH8.8 湧出量記載なし 溶存物質1.059g/kg 成分総計1.059g/kg
Na+:203.7mg(65.87mval%), Ca++:87.0mg(32.27mval%),
Cl-:86.5mg(17.02mval%), HS-:5.2mg, SO4--:529.0mg(76.78mval%), CO3--:15.0mg,
H2SiO3:104.1mg,
(2014年11月14日)

私の好み:★★+0.5

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野沢温泉 上寺湯

2023年10月25日 | 長野県

(2022年6月訪問)
引き続き野沢温泉の共同浴場を巡ります。今回取り上げるのは、野沢温泉のバスターミナルから「熊の手洗い湯」へ下ってゆく途中にある共同浴場「上寺湯」です。


こちらの浴場の内部構造は、野沢温泉の共同浴場では一般的な、更衣スペースと入浴ゾーンが一体になっているタイプなのですが、ドアを開けたら浴室まで丸見え、という事態を防ぐため、出入口から奥の方まで仕切り塀が設置されています。


浴槽は3人サイズといったところでしょうか。ほぼ無色透明ながらぼんやり霞んだような感じのお湯が張られており、湯中では白い湯の花が浮遊しています。ちょっと熱めの湯加減ですが、肩まで湯船に浸かると心身がシャキッと冴えるので、大変気持ち良いです。


湯口から出てくるお湯を掬って口に含んでみますと、砂消しゴムを思わせるゴムのような硫黄感がそこそこしっかり感じられました。いかにも野沢のお湯という特徴ですね。

ところで、こちらに引かれている源泉に関してですが、浴場内には二つの源泉名が掲示されており、どちらが正しいのかよくわかりません。ひとつは平成9年分析の細かなデータが記載された分析表に書かれている「丸釜源泉」で、もうひとつは令和元年12月に長野県北信保健所が発行した書類に書かれた「上寺湯源泉」です。後者についてはおそらくどこかに細かなデータが記載された分析表が存在しているかと思われますが、私の訪問時には見当たりませんでした。浴場名と源泉名が同じということで、きっと後者の源泉名が正しいような気がしますが、実際のところはどうなんでしょうか。

私の好み:★★+0.5
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野沢温泉 滝の湯

2023年10月20日 | 長野県

(2022年6月訪問)
前回記事では野沢温泉の旅館「げんたろう屋」で一晩お世話になったことをご紹介しましたが、お宿のお風呂に掲示されていた温泉分析表には、源泉名として滝の湯の名前が記載されていました。そこで、今回は同じ滝の湯源泉を使用している共同浴場「滝の湯」を取り上げます。
野沢温泉のシンボル的な存在である「麻釜」から更に急な上り坂を登った先にあり、観光客が訪れるような場所ではないため、野沢温泉の共同浴場の中では比較的目立たない存在かもしれません。とはいえ総木造の伝統的な湯屋はさすが野沢温泉というべき佇まいであり、コンパクトながら実に立派です。


この「滝の湯」は野沢温泉の共同浴場では一般的な、更衣スペースと入浴ゾーンが一体型になっているレイアウトであり、男女別の出入口から中へ入ると、そこはもう浴室です。おっ、さっそく硫黄の湯の香が漂ってきたぞ。


長年使いこまれていると思しきタイル張り浴槽には、綺麗なエメラルドグリーンのお湯が張られていました。浴槽内側に用いられているタイル自体の色は水色なので、お湯は黄色透明なのでしょうか。それにしてもうっとりするほど美しい色合いです。お湯の中では白や黒の湯の華がたくさん浮遊しています。



石が積まれ、お湯の流路が白く染まっている湯口。70℃近い源泉なので、湯口の上から真水を落として加水しています。このお湯を口に含んでみると、硫黄泉らしいタマゴ風味と硫黄臭、そして苦味がはっきりと感じられました。分析表によれば硫化水素イオンが46.6mg、遊離硫化水素が6.1mg、合計すると52.7mgもの硫化水素が含まれており、それゆえに硫黄泉らしい特徴がしっかり表れているのでしょう。おそらくお湯の色も気温や天気、時間などいろんな要因によって変化するものと思われます。

ここでちょっと不思議に思ったのが、前回記事の旅館「げんたろう屋」で紹介したお風呂のお湯の件。上述のように館内掲示の分析表には源泉名として「滝の湯」と記載されており、湧出地として記載されている所在地は、共同浴場「滝の湯」で掲示されている湧出地と全く同じ場所(日影8883-1)でした。ということは共同浴場のお湯もお宿のお湯も同じなはずですが、少なくとも両方を利用した私の実感ですと、両者のお湯には結構な違いがありました。もちろん引湯の過程で変質してしまった可能性は否定できませんが、果たしてお宿のお湯は滝の湯と同じなのか、あるいは自家源泉を謳っていたように滝の湯源泉ではない別の源泉だったのか、疑問が残るところです。
ま、そんな屁理屈はともかく、共同浴場もお宿もお湯は大変良いので、あまり気にしないでお湯を楽しんだ方が良いのかもしれませんね。特にこの共同浴場「滝の湯」は、「真湯」と同等の硫黄感を堪能できるのでおすすめです。ちょっと熱めですが実に気持ち良いお湯でした。


滝の湯
含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉 73.4℃ pH7.9 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質1.150g/kg 成分総計1.175g/kg
Na:270.6mg(80.73mval%), Ca++:50.7mg(17.35mval%),
Cl-:115.4mg(21.24mval%), HS-:46.6mg, SO4--:317.3mg(43.06mval%), HCO3-:244.1mg(26.06mval%),
H2SiO3:85.1mg, HBO2:10.6mg, CO2:18.4mg, H2S:6.1mg,
(平成28年8月25日)

長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷字日影

4~11月→5:00~21:00
12~3月→6:00~23:00

私の好み:★★★
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