温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

中山平温泉 蛇のゆ 湯吉

2019年08月30日 | 宮城県

前回記事の川渡温泉から移動し、今度は中山平温泉へとやってまいりました。地熱資源が豊富であちこちから白い蒸気が立ち上るこのエリアでは、広範囲にわたって中小規模の温泉宿が点在していますが、残念ながら経営に苦しむ施設が多く、暖簾を下ろして廃墟になったり、あるいは完全に更地となってしまった宿もあります。そんな中で、経営者が変わって営業形態を新たにしたお宿が旧「鳴子ラドン温泉」、現「湯吉」です。以前はそば処を要する温泉旅館でしたが、経営者が変わった現在では日帰り温泉施設として生まれ変わりました。
国道から路地に入って坂道を下り、陸羽東線のガードを潜ると、その先では源泉から上がる真っ白な湯気がもうもうと立ち込めていました。この景色は以前の「鳴子ラドン温泉」から変わっていません。唯一変わったことといえば、「東蛇の湯、らどん温泉、藤治朗」と書かれていた看板が、現施設名の新しいものに掛け替えられたことでしょうか。



湯けむり上がる源泉脇の坂を下り、駐車場に車をとめて施設の前へと向かいます。玄関の前には日帰り温泉の幟がはためいていたのですが、その奥にはまだラドン温泉の看板が立っていました。
そういえばこの下には以前「東蛇の湯」もありましたが、かなり前に廃業してしまい、その後更地になって現在もそのままです・・・。



玄関に設置された券売機で料金を支払い、受付のスタッフに券を渡します。さすがに元々旅館でしたから受付前のロビーは広々しており、その奥には寝転がれるスペースが設けられていました。
お風呂は階段を上がって2階へ。



階段を上がってすぐ左手はかつての客室で、いまは時間貸しの個室。一方、右手に折れると浴場がある棟へとつながる渡り廊下です。

その廊下を歩いていると、左手の窓の外に何やら不気味な残骸を見かけました。これはラドン温泉時代の露天風呂の跡ですね。使われなくなった今はすっかり荒れていますが、むしろ私が気になったのはその左右の外壁にぶら下がっている配管類。元客室に設置されていたエアコンの配管なのですが、それらがブラブラと垂れているのです。お金がかかるのは百も承知ですが、見た目が宜しくないので、できれば早めに撤去した方が良いかと思います。



浴場がある棟ではお座敷が開放されており、お風呂上がりのお客さんが横になって休んでいらっしゃいました。



お座敷の片隅にはドライヤーが置かれていました。脱衣室には備え付けが無いので、必要でしたらここで髪を乾かすことになります。なお脱衣室は簡素で狭く、小さい流しと扇風機があるだけで、メインの浴室に付随している脱衣室とは思えません。一応鍵つきのロッカーが設置されていますが、いわゆる居抜き物件ですからこうした備品も古いままであり、半分近くが施錠できない状態でした。



露天風呂が閉鎖された現在、お風呂は男女別の内湯のみですが、浴室はそこそこ広くて天井も高く、屋内ながら明るくてノビノビできる入浴環境です。川側には大きな窓がありますが、窓の外にはロビーがある隣の棟が立ちふさがっているので、残念ながら景色を愉しむことはできず、実質的に大きな明かり採りと化していました。



男湯の場合、入口を入って右手に洗い場が配置されており、シャワー付きカラン3つ並んでいます。一方、その反対側にはかつてラドン浴室だったと思しき空間があるのですが、現在は単なる物置になっており、ガラス戸には目隠しが施されていないので中の物(薬品やアメニティの補充品)が丸見えでした。できればバックヤードの物は客の目に触れない状態にしていただきたいなぁと思うのですが(せっかくの温泉気分が損なわれてしまいます…)。



浴槽はヨットの帆というかナイフの刃というか、片方が直線でもう片方は緩やかなカーブを描いている形状をしています。おそらく10人以上は余裕で入れる容量があり、私の訪問時、湯船は透明でエメラルドグリーン色を帯びるお湯を湛えていました。なお後述するようにこのお湯は日によって姿を変えます。
浴槽縁の直線とカーブが交わるところにオーバーフロー用切り欠けがあるのですが、湯温調整のため投入量を絞っているので、そこから溢れ出るお湯の量はあまり多くありません。でも循環などは行っておらず、れっきとした掛け流しの湯使いです。



湯口からは90℃以上の非常に熱いお湯がチョロチョロと注がれていました。その湯口には布が被せられ、配管にはトゲトゲとした析出がびっしりこびりついています。温泉配管の隣には加水用の配管がありますが、この日は使われておらず、湯量を絞ることによって湯加減が調整されていました。

線路際で白い湯けむりが上がっている辺りでははっきりとしたイオウ臭が感じられるのですが、感覚がマヒしてしまうためか、湯船に入る時には特に匂いを感じることがありませんでした。とはいえ湯口に鼻を近づけるツーンと鼻孔を刺激するイオウ泉らしい香りをはっきりと嗅ぎ取ることができました。また湯口のお湯をコップに一旦溜め、少し冷ましてからテイスティングしてみますと、茹ですぎたゆで卵のような味や焦げたような味、そして口腔粘膜を痺れさせるような苦味が感じられました。上述のように私の訪問時のお湯はエメラルドグリーンの透明でしたが、寒い日などは白く濁るようです。これもまたイオウ泉らしい特徴です。そして中山平温泉の特徴でもあるヌルヌル感がはっきりと肌に伝わり、入浴中は自分の肌を何度も擦ってヌルヌルツルツルの非常に滑らかな浴感を楽しませていただきました。このヌルヌル感をもたらすと思しき炭酸イオンの含有量68.6mgは、他の温泉ではなかなか見られない驚異的な数値です。

古い温泉旅館の建物を居抜きで日帰り入浴にしたため、どうしても建物の草臥れた部分が目立ってしまいますし、おそらくそれをカバーするだけのマンパワーや余裕も不足しているのかもしれませんが、お湯はとても良いので、ヌルヌル湯が好きな方は入る価値がありそうです。新しく生まれ変わってまだあまり経過していませんから試行錯誤の繰り返しかと思いますが、歴史ある蛇の湯の名が途絶えないよう、是非とも頑張っていただきたいものです。応援しています。


1号地A3号・白須8号泉・6号地G1号泉・6号地G2号泉・6号地G3号井 混合泉
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉 pH9.0 91.1℃ 溶存物質1187.9mg/kg 蒸発残留物939.2mg/kg
Na+:255.7mg(92.90mval%),
Cl-:62.5mg(13.71mval%), HS-:18.3mg, S2O3--:1.3mg, SO4--:132.6mg(21.50mval%), HCO3-:327.8mg(41.82mval%), CO3--:68.6mg(17.83mval%),
H2SiO3:277.9mg, HBO2:18.7mg, H2S:0.8mg,
(平成21年6月8日)
加水あり(源泉が高温のため)
加温・循環・消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉星沼6-1
0229-87-2323

10:00~17:00 火曜定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



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川渡温泉 玉造荘

2019年08月24日 | 宮城県
※2022年12月末を以て閉業します。


宮城県の鳴子温泉郷は複数の温泉地から成り立っていますが、その中でも川渡温泉は私が大好きなエリアのひとつ。2019年春の某日、その川渡温泉にある「玉造荘」で日帰り入浴を楽しんできました。拙ブログで以前取り上げたことのある「板垣旅館」の奥に位置しており、国道からはわかりにくい場所ですが、奥まった立地の割には規模の大きな施設です。そしていかにも昭和の公共施設らしい雰囲気が強く漂ってきます。
なおこちらは公立学校共済組合のお宿ですから、公立学校の教職員の方でしたらお安く利用することができるほか、私のような教職とは無縁な零細企業のしがない勤め人でも一般料金で宿泊や入浴といった各サービスの利用が可能です。一般料金でも他の宿に比べて安く泊まれるためか、駐車場では県外ナンバーの車が目立っていました。



表側(駐車場側)からは見えませんが、建物の反対側にまわると、池を擁する庭が広がり、そして開放感あふれるパークゴルフ場が設けられています。緑豊かなお庭やパークゴルフ場は綺麗に整備されており、眺めているだけでも気分爽快です。



さて玄関から中へと入りましょう。玄関にはスリッパが備え付けられていたので私は律儀に履き替えたのですが、他のお客さんは土足のまま入館している様子。履き替えるのと土足のまま、どちらが正しいのかしら…。そんなことに戸惑いながら受付で日帰り入浴をお願いしますと、スタッフの方は快く受け入れてくださいました。こちらの日帰り入浴に関しては、11:00~16:00は大広間の休憩が付いて平日800円・土日祝1000円ですが、各曜日とも14時以降は休憩無しで400円という料金設定も利用でき、二つの料金体系が重複する14:00~16:00はどちらかを選択することになります。今回私は後者の安い料金プランで利用させていただきました。



受付前の物販コーナーを抜け、廊下をまっすぐ進んだ突き当たりに浴室があります。途中の中庭(坪庭)には、鳴子らしくこけしが飾られていました。



また浴室手前の左側には上画像のような休憩室があり、マッサージチェアーや瓶牛乳などの自販機が設置されています。



館内には本館の内湯と別館の露天風呂がありますが、日帰り入浴客に開放されている浴室は本館の男女別内湯のみです。
浴室の内装は全体的にホワイト基調で、窓にはガラスブロックが採用されており、目隠しと採光を両立させています(なお脱衣室の窓もガラスブロックです)。残念ながら屋外の景色は見られませんが、窓の外は上述したお庭なので、やむを得ず目隠ししないといけないわけです。

浴室へ入って右側に浴槽、正面向かい側と左側の窓下に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基ほど(正確な数は失念)設置されており、馬油のシャンプー類が用意されています。



浴槽は大小1つずつ。左側の大きな浴槽(8~10人サイズ)は一般的な温泉槽で、右側の小さな槽(2~3人サイズ)はジャグジー槽です。両者は仕切りの中ほどに開けられた穴でつながっており、湯口から落とされたお湯はまず左側の浴
槽を満たし、穴を通じて右側浴槽へと流れていきます。両浴槽の縁には切り欠けがあり、そこからお湯がしっかりと溢れ出ていました。

湯口から滔々と落とされているお湯は、自家源泉の1号泉と2号泉をミックスさせたもの。純然たる掛け流しであり、加温や加水も行われていません。お湯の色はジャスミン茶のような色合いと表現すればよいのでしょうか、あるいは出涸らしのお茶みたいに緑色が退色して褐色になったような色と言うべきでしょうか。底まで透き通って見えるほどの透明度はありつつも、若干緑掛かった黄色を呈しているのですが、鶯色の美しいお湯で知られる川渡温泉の他の源泉に比べると、やや薄い色合いであるように思われます。色のみならず、味や匂いも大人しく、湯口でほろ苦い味が感じられるほか、茹ですぎたゆで卵のような匂いと味が得られますが、やはり近所の他源泉に比べるとマイルドであるような気がします。同エリアの他源泉の泉質が含硫黄重曹泉などであるのに対し、こちらの源泉は単純硫黄泉ですから、お湯に溶けている成分の量が若干薄いわけです。でも重曹泉型の単純泉ですから、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感があり、しっかり温まるのに湯上がりはさっぱりします。やや薄いとはいえ川渡の湯の特徴はしっかり現れていますから、個性の強いお湯が苦手な方にはむしろオススメかもしれません。

また、日帰り入浴に関して言えば、お昼過ぎに入館すれば安くなり、また受付時間も他施設に比べると遅くまであいているので、外湯かわりとしても重宝するでしょう。私が訪れた日も常時5~6人のお客さんが出入りしていました。上述したように別館には宿泊者専用の露天風呂もありますから、次回訪問の際には泊って露天にも入ってみようかと思っています。


玉造荘1号・2号混合泉
単純硫黄泉 45.2℃ pH8.1 溶存物質990.4mg, 蒸発残留物691.6mg/kg
Na+:183.7mg(76.53mval%), NH4+:2.0mg, Ca++:31.1mg(14.85mval%),
HS-:12.8mg, SO4--:145.1mg(27.53mval%), HCO3-:422.0mg(63.08mval%),
H2SiO3:152.7mg, CO2:14.8mg, H2S:1.5mg,
(平成30年4月27日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字川渡62
0229-84-7330
ホームページ

日帰り入浴
①11:00~16:00 平日800円(土日祝日1,000円)
②14:00~20:00 平日休日とも400円
ロッカー有料(100円)、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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土湯温泉 公衆浴場 中之湯

2019年08月20日 | 福島県
前回に引き続き、福島県土湯温泉を取り上げます。




土湯温泉は長い歴史を有しますが、温泉街の象徴とも言うべき公衆浴場は現在「中之湯」の1軒しかありません(※)。その「中之湯」も数年前までは四角くて小さい、見るからに地味なコンクリの小屋でしたが、震災による負の影響から立ち直るべく一旦解体され、2018年4月26日に完全リニューアルされました。今年(2019年)の春、私が実際に現地へ赴いてみますと、かつての湯小屋はすっかり無くなり、同じ川沿いに和風の立派な建物が建てられていて大変驚きました。以前は地元の方でないと入りにくい雰囲気でしたが、リニューアルした現在はむしろ観光客がすすんで入りたくなるようなモダン和風の明るい施設に生まれ変わっています。
前回記事では同じ土湯温泉の「御とめ湯り」で宿泊したことを紹介しましたが、この「御とめ湯り」に泊まると朝風呂に入れないため、一番風呂に入るべく、朝いちばんで「中之湯」に向かったのでした。
(※以前は温泉街からちょっと離れた高台にある「サンスカイつちゆ」にも公衆浴場が設けられていましたが、残念ながら)2019年3月に施設そのものが閉鎖されてしまいました。



施設の前にはモニュメントや足湯が設けられ、地元の方のみならず観光客がふらっと気軽に立ち寄れるような雰囲気が作られていました。

入浴する客は玄関より入館し、まず下駄箱に靴を収めます。なお下駄箱にはクリップ付の番号札がありますので、それを利用して自分の靴を管理します。そして湯銭は受付前に設置されている券売機で支払います。

お風呂は受付の前から玄関もしくはエレベータで1フロア下ります。新しい公共施設ですからバリアフリー対策は万全です。階段を下って左手が女湯、右手が男湯です。なお女湯側と男湯側の両サイドには貸切風呂が1室ずつ(計2室)あります。またロッカーは脱衣室内には無いものの、1階の受付横に一ヶ所(貴重品用の小さなもの)、そして階下の女湯手前に1ヶ所用意されています(女湯手前のロッカーは大きいサイズです)ので、必要に応じてどちらかをお使いください。
脱衣室内はさほど大きくないものの、まだ新しいだけあって明るく綺麗。洗面台は3面ほどあり、ドライヤーも2台用意されています。



旅館の内湯と見まがうほど立派で綺麗な浴室には、源泉の異なるお湯を張った浴槽が大小1つずつ。しかも露天まであるのです(詳しくは後述します)。和風の設えなので落ち着いた雰囲気です。



浴槽の左側には洗い場が配置され、シャワー付きカランが5基並んでいます。なお最左のブースだけ仕切り板が取り付けられていました。なお石鹸類などの備え付けはありませんので、持参するか受付で購入することになります。



2つある浴槽のうち、左側の小さな浴槽(1~2人サイズ)は、以前の「中の湯」の湯船にも注がれていた重曹泉が張られています。一見すると薄そうなお湯ですが、浴槽縁の湯面ライン上には小さな庇状の析出が早くも出現しており、塩化土類泉的な特徴がしっかりと表れています。ちょっと黄色掛かっているお湯で、湯口からは若干のアブラ臭(焦げたような匂い)が漂い、口にするとほろ苦い味がします。そして弱めながらもツルスベ浴感があります。

旧施設時代の「中の湯」をご存知の方なら覚えていらっしゃるかもしれませんが、このお湯は箆棒にかなり熱いので、いきなり入ることは躊躇われます。しかしながらリニューアルに伴い加水設備が取り付けられ、浴槽のお湯を掻き混ぜることによりセンサーがそれを感知し、自動的に加水されて、比較的入りやすい温度まで下がるようになる仕組みが採用されました。でも誰も入らないで掻き混ぜない状態が続くと、センサーが働かず(つまり加水されず)熱いままになってしまうため、脱衣室や浴室などには入る前に掻き混ぜてほしいという旨が呼びかけられています。なぜこんな面倒くさい構造にしたのかよくわかりません。



一方、右側の浴槽(主浴槽)は5~6人サイズで、一般湯と称し、前回記事で取り上げた「御とめ湯り」など周辺の宿泊施設にも引かれている源泉(混合泉)が供給されています。お湯は微かに薄ぼんやりと白く濁っており、黒や茶色の湯の花が浮遊しています。お隣の熱い重曹泉より若干劣るかもしれませんがツルスベ浴感があり、適温なので気楽にのんびり湯浴みできました。



上述のように、新しい「中之湯」は公衆浴場なのに露天風呂があるんですよ。
露天の浴槽は4人サイズで、こちらにも一般湯と同様に混合泉が注がれています。



露天風呂は川側に位置していますが、高い塀が視野を遮っているため景色を眺めることはできません。川岸に背の高い旅館の建物が建っていますから仕方ありませんね。でも露天スペース自体は広く確保されていますから、決して閉塞的ではなく、対岸の山や空を見上げながらのんびり湯浴みすることができますし、体が火照ったらクールダウンすることも可能です。

なお各浴槽とも掛け流しの湯使いですが、湯温調整のため加水することがあります。特に重曹泉は上述したように自動的に加水されます。



お風呂上がりにゆったりしたい方は、一旦1階へあがってください。受付の右奥には無料で使える休憩用座敷が用意されています。大きな窓から川を見下ろす綺麗なお座敷です。

リニューアルされて使い勝手が格段に向上した「中之湯」。復興に努めている民間施設とともに土湯温泉を盛り上げる要の存在として、これからも大活躍してくれることでしょう。


不老・長寿の湯
ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉 51.3℃ pH7.4 溶存物質1496mg/kg 成分総計1562mg/kg
Na+:297.6mg, Ca++:68.4mg,
Cl-:132.1mg, Br-:0.4mg, I-:0.3mg, SO4--:173.8mg, HCO3-:628.2mg,
H2SiO3:124.9mg, HBO2:31.0mg, CO2:66.0mg,  
(平成30年2月16日)
加水あり(源泉温度が高い為)

2号泉・16号泉・17号泉・18号泉の混合泉
アルカリ性単純温泉 65℃ pH8.55 溶存物質0.5756g/kg 成分総計0.5756g/kg
Na+:112.8mg, Cl-:75.0mg, S2O3--:0.3mg, HS-:1.3mg, OH-:0.1mg, SO4--:126.1mg, HCO3-:33.0mg, CO3--:16.8mg,
H2SiO3:158.6mg,
(平成29年7月28日)
加水あり(源泉温度が高い為)

福島県福島市土湯温泉町字上ノ町1
024-595-2217
ホームページ

9:00~21:00 火曜定休
500円
ロッカー、ドライヤーあり

私の好み:★★★
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土湯温泉 御とめ湯り

2019年08月13日 | 福島県

3.11により大きなダメージを受けた福島の奥座敷、土湯温泉。あれからいくつもの旅館が志を奪われて意気消沈し、温泉街全体が沈みかけようとしていましたが、元のように立ち直って土湯の灯を消さないようにと願う、地元の方々を中心にした不撓不屈の精神により、いろんな形で新しい試みが行われています。



土湯温泉では震災により閉鎖に至ってしまった旅館を新しい営業形態で再開させようという動きがあり、実際に複数の施設で数年前から新たなスタートを切っています。今年(2019年)の春に私が訪れた「御とめ湯り」もそのひとつ。土湯温泉街の入口にあたる高台に位置しており、以前はホテル観山荘の別館「樹泉」でしたが震災後に残念ながら廃業。しかし、モダン和風な雰囲気に改装して2017年に日帰り施設として復活し、今年(2019年)1月には宿泊営業も開始しました。



玄関を入った先は土足厳禁。下足は玄関に用意されている黒い布の袋に入れて持ち歩きます。
日帰り入浴の場合は受付でロッカーキーを受け取り、料金は退館ときに支払います(つまり後払い)。
ちなみに今回私は宿泊利用でした。大手宿泊予約サイトから予約しました。以前は上述のように以前こちらは旅館でしたが、現在は日帰り入浴施設として営業しており、宿泊営業はあくまでその副営業形態という位置付けで、旅館というより簡易的な宿泊施設といった感じです。具体的に、宿泊利用の場合は以下のような流れとなります・・・



まず受付でチェックイン。宿泊中に使うタオルのセットと一緒に渡されるのが↑のプリントです。ここに宿泊利用に関する注意の全てが記載されています。
宿泊棟は旧従業員寮。エレベータはありません。一旦受付から外に出て、建物の端っこに階段で上がります。各部屋のドアは暗証番号式のオートロックとなっており、チェックインの際に、受付で渡される説明のプリントへその番号が記入されます。番号式のロックなので、鍵は手渡されません。



今回私が利用したのはシングルルーム。いかにも昭和の従業員寮にありそうな間取り1Kのお部屋です。でも寝室は綺麗かつシンプルに改装されており、現代風の体裁を保っています。テレビは無いものの、wifiは飛んでいますしエアコンも設置されていますから、居住性に問題はありません。床はフローリング風のリノリウムです。お部屋にトイレはありますが、シャワールームやバスルームはありませんので、お風呂は後述する大浴場を利用することになります。浴衣など館内で着る衣類のほか、タオル類や歯ブラシなどのアメニティ関係の用意もありません。必要なものは持参するか、あるいは購入するか(タイルは有料レンタル可能)のいずれかです。



一方、キッチンまわりはかつての寮時代のままでしょうか。でも冷蔵庫や電子レンジが自由に使えるので、街のコンビニでお弁当を買ってきて、ここで食べれば食事代を安く上げられますね。
なおチェックアウト受付を経ず、いきなり退出して構いません。というか、10時にならないと受付が開かないので、チェックアウトの手続きをせず勝手に出るシステムになっているのです。鍵を暗証番号式にしているのも、そうしたシステムゆえなのかもしれません。一般的なホテルにあるサービスや備え付けなどを極力削ることにより、限られた労働力でお部屋のセットアップを可能にし、かつ廉価な宿泊料金を実現させているのでしょう。



さて、お風呂に入るため受付前のロビーへ戻ってまいりました。こちらでは軽食をいただくこともできます。



館内の食事は19時頃まで。購入できるハンバーガーやパンなどは部屋へ持ち込むことができます。実際に私もライスバーガーとデニッシュを買ってみました。というか、買わざるを得なかったのです。私は当地へ18時過ぎに到着したのですが、既に温泉街の飲食店は暖簾を片付けており、付近にコンビニも無く、かといってその時間から市街地へ移動すると大幅なタイムロスになるため、館内で提供される軽食を夕ご飯にするしかなかったのです。でもライスバーガーは美味しく、またパンはお風呂上がりに合わせてスタッフの方が焼いておいてくれたので、結果的にはこれで良かったのかもしれません。パンの件しかり、総じてスタッフの対応が親切でした。



お風呂は廊下を進んだ先です。なお廊下の上の方は貸切の休憩室があるようですが、今回は使っておりません。



廊下の先の階段を下ると休憩用の大広間です。こちらは日帰り入浴施設としての営業がメインであり、この時も大広間には風呂上がりで寛ぐお客さんがたくさんいらっしゃいました。



元々旅館のお風呂だったためか、脱衣室は広くて天井も高く開放的です。リニューアルによりシックな色調の壁紙に張り替えられたようです。なおロッカーは受付で指定されます(鍵を渡されます)。洗面台の数が多く、ドライヤーも複数台用意されていました。



お風呂も広くて天井高く、のびのびとした環境で湯浴みが楽しめます。インターネット上の情報によれば、この大浴場はリニューアル前の旅館時代と基本的に変わっていないようです。男湯の場合、入って右手に洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が計8基並んでいます。
大きな窓の下に主浴槽が設けられています。目測で6m×2.5mといったサイズ。縁には木材が用いられ、浴槽の内部はタイル貼りです。湯口からお湯が滔々と注がれ、露天風呂出入口近くの切り掛けよりオーバーフローしています。万人受けするちょうど良い湯加減でした。



浴室内にはサウナ跡がありますが現在は使われていません。またその前にはジャグジーか水風呂の跡も残っているのですが、現在はそこを埋めて畳を敷き、休憩スペースにしていました。



露天風呂は日本庭園風のしつらえ。目の前に2本の巨木が立ち、その巨木越しに温泉街を見下ろす、見晴らしの良いロケーションです。露天風呂は屋根掛けされており、四角形で4〜5人サイズでしょうか。



木枡の湯口からお湯が投入され、浴槽を満たしたお湯は縁下の穴から外へ流れ出ていました。私の利用時は内湯より若干ぬるめの湯加減でしたが、それゆえ長めにじっくりと浸かることができました。

さて、お湯に関するインプレッションですが、こちらに引かれている源泉は土湯温泉の混合泉です。湯船でわずかに白く霞み、湯中では茶色い羽のような湯の花がたくさん舞っています。湯面ではパルプのような匂いが漂い、木材のような香りや、重曹のほろ苦さ、そして僅かに砂消しゴムのような風味が感じられます。トロトロなお湯の中に浸かるとツルツルスベスベの浴感が得られるのですが、でも浴槽の大きさに対しお湯の湯量が少ないようであり、お湯の鮮度感がいまいちだったように記憶しています。館内表示によれば掛け流しの湯使いであり、源泉の質を損なわないよう最低限の加水で温度調整しているようですが、となれば、加水と投入量の増減によって温度調整をしているのでしょうから、中継槽から65℃でやってくる熱い源泉の投入量を絞るのも仕方がないのかもしれません。なお以前の旅館時代は消毒した上でかけ流していていたようですが、現在のお湯からは特に消毒臭は感じられませんでした。

旅館のお風呂となれば、深夜まで、あわよくば夜通し入れるものですが、上述のようにこちらは日帰り入浴営業がメインであり、宿泊はそのオマケみたいなものですから、ビジネスアワーも日帰り入浴営業に即しています。というのも、なんとお風呂に入れるは20時頃まで。しかも翌朝は入れないのです。もっとも、営業開始時間である午前10時以降でしたら、宿泊者用の特別料金500円を支払えば入浴できるそうですが、それにしてもお風呂の利用時間に関しては不便と言わざるを得ません。特に朝風呂は入れないことは残念でした。

リニューアルオープンに際して、できるだけ人件費をかけず、余計なサービスなどを削ってコストを下げる形で、宿泊営業の再開にこぎ着けたのでしょう。その姿勢や発想は大いに理解できます。たしかに安く旅した方には大変重宝するかと思いますが、温泉に泊まりながら夜8時以降、翌朝もお風呂に入れないのは玉に瑕。お客さんからの賛否もあることでしょう。宿泊営業はまだ開始して間もないので、今後試行錯誤を重ねてブラッシュアップされてゆくことを期待しています。そして土湯温泉の再生を担う希望の星になっていただきたいものです。

偉そうに屁理屈をこねてしまった私ですが、実は朝風呂に入れないことを想定しておりましたので、そんなこともあろうかと、私は翌朝温泉街の中心部へと向かったのでした(次回記事に続く)。


2号泉・16号泉・17号泉・18号泉の混合泉
アルカリ性単純温泉 65℃ pH8.55 溶存物質0.5756g/kg 成分総計0.5756g/kg
Na+:112.8mg, Cl-:75.0mg, S2O3--:0.3mg, HS-:1.3mg, OH-:0.1mg, SO4--:126.1mg, HCO3-:33.0mg, CO3--:16.8mg,
H2SiO3:158.6mg,
(平成29年7月28日)
加水あり(源泉温度が高い為)

福島県福島市土湯温泉町字見附32-1
024-563-7373
ホームページ

10:00〜21:00(受付2030まで) 不定休
850円(宿泊は素泊まり専門・シングル3500円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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不動湯温泉 2019年4月再訪

2019年08月08日 | 福島県
※2021年10月17日を以て長期休業。再開の予定はありません。委細は公式サイトでご確認ください。

2019年春の某日、福島県福島市郊外にある不動湯温泉へ向かいました。
土湯温泉街から細い山道を進んでいった先にある不動湯温泉は、昔から多くの人に愛されてきた秘湯ですが、2013年8月29日、非常に残念ながら業火に見舞われて烏有に帰してしまいました。以前拙ブログではまだ火事に遭う前の姿を記事にしておりますので、よろしければご覧ください(当時の記事は「前編」「後編」に分かれています)。


しかしながら「国破れて山河あり」ならぬ「宿失せて源泉あり」とでも申しましょうか、建物は跡形もなく焼けてしまったものの、源泉はしっかりと残っていたらしく、その後関係者の皆様の努力が結実し、3年後の2016年に残った露天風呂など一部の施設のみを活かして、営業日限定の日帰り入浴施設として営業再開に漕ぎ着けました。その報を知った私は早く行きたくて仕方なかったのですが、なかなかタイミングが合わず、ようやく今年(2019年)の春に訪問する機会に恵まれましたので、朝いちばんで伺うことにしました。



まずは土湯の温泉街から細い道に入り、どんどん進んで行って、上画像の看板のところで左折し・・・



林道へ入ります。不動湯温泉へ行ったことがある方なら、誰しもがこの林道に苦労した経験を持っていらっしゃるはず。途中までは単なる未舗装路なのですが、次第に道が荒れ始め、やがて凸凹が連続する坂道となって、運転する者を苦しめるのです。



でも苦あれば楽あり。急な坂を下りきった先には、不動湯温泉のゲートがお出迎え。このゲートは火事に遭わず残ったんですね。



ゲートをくぐり、階段を下りて左手にあるこの建物が、現在の不動湯温泉の受付です。
かつては旅館の建物に帳場がありましたが、上述のように焼失してしまったため、かつて倉庫として使っていた小屋を改築して受付小屋兼休憩所にしています。私が訪ねると和服姿の女将が出迎えて、丁寧に対応してくださいました。日帰り入浴のみとなった現在でも、きちんと着物姿でお客さんに接しようとする姿に、老舗旅館の女将としての矜持を強く感じます。



女将に湯銭を支払い、一旦外に出ます。この日は私が最初の客とのことで、一番風呂にあり着ける喜びを胸に抱きながらお風呂に向かって歩いてゆくと、右手に小さな祠が鎮座していましたので、まずは神様にご挨拶。この祠は私も前回訪問時に見覚えがあります。神様の力が炎から祠を守ったのでしょうね。



かつて旅館が営業していた頃には瓶入りのラムネなど各種飲料を冷やしていた水の鉢。
これも火事から残り、今でも山の清水を受けていました。



可憐な花々もみちのくの春を謳歌するように咲いていました。



でも、かつて旅館が建っていたところはご覧のありさま。基礎の石垣だけが残るこの荒涼とした光景を目にし、しばし言葉を失ってしまいました。亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。



さて、改めて歩き始めましょう。
以前と同様、長くて急な階段を下ってお風呂へと向かいます。以前は屋根に覆われていましたが、焼失してしまったため、はじめのうちは屋根のない屋外の階段を下ることになります。この急な階段には以前と同様に途中踊り場があり、腰掛も用意されているので、階段の上り下りに自信が無い方でも、休み休み動けば大丈夫です。



階段を下る途中には、このような物が残っていました。建物だけでなく、周囲の木々も焼き尽くすほどの酷い火勢だったのでしょう。



階段は途中から新しく掛けられた屋根の下をくぐります。白木が美しいですね。



階段を下りきると小屋の中へ導かれます。この小屋は以前もありましたから、さすがの業火もここまでは及ばなかったのかもしれません。でも小屋の使われ方が以前とは変わっており、以前は通路の左側に「羽衣の湯」、右側に「御婦人風呂」がありましたが、現在「羽衣の湯」は閉鎖され、右側のお風呂が「檜風呂」として改称されました。



お風呂の構造自体は以前とほとんど変わっていません。
女将の話によれば、営業再開に際して露天だけでスタートしようと考えていたところ、保健所から「内湯も設けるべし」という指導が入ったため、旧「御婦人風呂」を「檜風呂」として名前を変えて女性限定を解除し、新たな内湯にしたそうです。
総木造の湯小屋の角2面に大きなガラス窓がはめられ、その下に2~3人サイズの浴槽が据えられています。質素ながらも趣きがあり、静かにゆっくりと湯浴みできる環境です。室内にはシャワーが設置されています。後述する露天には洗い場が無い為、体をしっかり洗いたい場合はこの内湯を利用しましょう。また露天の開放的な環境が苦手な方への配慮として、この内湯は女性優先となっています。



「檜風呂」の小屋を抜け、更に階段を下って沢の畔を目指します。




沢の畔にあるのが、不動湯温泉の名物である露天風呂。
この露天風呂も、以前のままの姿を保っていてくれました。



掘っ立て小屋の下でお湯を湛える、岩を穿ちモルタルで固めたような質素な作りの露天風呂。2人入ればいっぱいになっちゃいそうな、実にかわいらしいお風呂です。湯口は浴槽内にあり、トポトポという感じで少しずつ源泉が注がれています。お風呂の容量はそんな源泉湧出量に見合っているのでしょうね。
お湯は無色透明ですが湯中には白い大きめの湯の花たくさん浮遊しています。湯加減も実に良い塩梅。
周囲は山の新緑。小鳥も楽しそうに囀っていました。時間を忘れていつまでも浸かっていたくなる名湯です。



お風呂上がりには受付小屋へ戻って、女将とお話ししながら、おつけものと冷たい麦茶をいただきました。
窓から眺められる吾妻連峰の山並みが美しく、また付近では山桜も咲いていて、実にうっとりするひと時でした。



小屋では黒柴のコロンが愛想を振りまきつつ、マイペースに動いたり、座布団の上でお休みしたりと、一挙手一投足がかわいらしい。私も以前黒柴を飼っていたので、つい今は亡き愛犬を思い出し、その愛くるしい様に思わず目尻が下がってしまいました。
悲しみから立ち上がり再出発を果たした不動湯。既に3年が経とうとしています。旅館としての矜持を忘れない着物姿の女将からは、この歴史ある名湯を守り続けようとする強い意志が伝わってきました。宿泊営業の再開までには難しい問題が立ちはだかっているかと思いますが、いま私たちができる支援は、日帰り営業時間帯に積極的に利用することかと思います。
小さなお風呂ですから、お客さんで混雑すると待ち時間が発生してしまいますが、そのあたりは女将が適宜案内してくださいますから、小屋に入ってお喋りしながらゆっくりと時間を過ごして待ってみるのも宜しいかと思います。


不動湯(露天)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩温泉 46.9℃ pH7.4 1.8L/min(自然湧出) 溶存物質1161mg/kg 成分総計1182mg/kg
Na+:287.9mg(80.98mval%), Ca++:39.7mg(12.81mval%),
Cl-:148.2mg(29.15mval%), HS-:0.8mg, SO4--:148.5mg(21.55mval%), HCO3-:418.0mg(47.77mval%),
H2SiO3:51.2mg, HBO2:40.1mg, CO2:21.2mg, H2S:0.3mg,
(平成22年5月31日)
完全掛け流し

福島県福島市土湯温泉町字大笹25
024-595-2002
公式ホームページ

※2021年10月17日を以て長期休業。再開の予定はありません。委細は公式サイトでご確認ください。
土日祝のみ営業(ただし臨時営業する平日もあるので、詳細は公式サイトでご確認を)
10:00~17:00(最終受付16:30)
700円
内湯にシャンプー類あり、休憩所にドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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