温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

横瀬温泉共同浴場

2016年11月29日 | 鹿児島県

霧島市の旧牧園町上中津川地区にある共同浴場を目指し、レンタカーを走らせて地区内の某所へやってまいりました。その浴場には自身の存在を知らせる看板類が一切無いので、あらかじめ存在を知らないと見つけることができません。事前の情報によれば、川沿いに湯小屋が建っているらしいのですが・・・。
とある橋の上から集落を眺めていると、周囲の民家に潜むような感じで、屋根に湯気抜きを戴く建物を見つけました。


 
付近の路肩に車を止め、歩いて丹色屋根の建物へとやってまいりました。間違いなくこれが温泉浴場ですね。



湯小屋の近くでは小さな水車が回っていました。実用的には見えませんから、集落を飾るために設置されたのかもしれません。


 
湯小屋の右手には小さな祠が祀られており、その裏手に源泉井と思しき構造物がありました。いまから入るお風呂には、ここで湧いた温泉が注がれているのかな。


 
温泉名が記された扁額が掲げられている玄関を潜って内部へお邪魔します。玄関ホールの壁には、寄付者の札がたくさん提っていました。この浴場は多くの方々から愛されているんですね。


 
寄付者の名札の下には、かつての共同浴場を写したセピア色の写真が飾られていました。旧施設時代のプリミティヴな浴場にも入ってみたかったなぁ。


 
この共同浴場は無人で、お風呂はきちんと男女別に分かれています。フローリングの脱衣室は清掃がよく行き届いており、無人とは思えないほど綺麗です。室内に料金箱が取り付けられていますので、私もこちらへ100円玉を2枚投入しました。なお都度の支払いをする必要が無い地域住民の方は、室内に括り付けられている札入れに利用証を入れて入浴するようです。


 
管理が行き届いた脱衣室からもわかるように、この共同浴場を管理なさっている方は几帳面な性格でいらっしゃるらしく、そんな一面が垣間見えるのが、館内に張り出されている様々な掲示物です。たとえば、その中のひとつが湧出量の推移。平成2年から毎年10月に計測した湧出量が数値と棒グラフで示されています。これによれば、平成5年から12年にかけて湧出量が減ったものの、翌13年から急激な回復を見せ、その後は多少の増減を繰り返しつつも、全体的には年々増加の傾向にあることがわかります。急激な減少は地震が原因であり、お湯がほとんど枯れてしまったため、源泉を掘り直して湧出量を回復させたんだそうです。わざわざこうした数値を明示してくれる共同浴場なんて滅多にお目にかかれません。
この他、湯銭箱に納められた収入の推移も明らかにされていました。こちらには平成19年度から23年度の計5年にわたって男女別に集計した年間収入が表示されており、この5年間のおける年間平均収入は約10万円とのこと。湯銭は一人200円ですから、年間500人、一日1〜2人の外来客が利用していることになります。10万とはいえ、浴場の維持管理にはそれをはるかに上回るコストを要しますから、やっぱり地元や有志の方々による支援が重要になってくるのでしょう。


 
浴室はシンプルで装飾性がなく、実用的な浴槽と洗い場があるだけで、洗い場と言っても水道の蛇口が3つあるにすぎないのですが、共同浴場にしては広い空間が確保されており、浴槽も二つ設けられていました。ただ、左側の浴槽は空っぽで、右側だけにお湯が張られていました。なお浴室の床は水はけを良くするため、中央部が山形に盛り上がっていました。


 
実用本位の浴場らしく、浴室内には風呂道具置き場が取り付けられていました。こうした小さな配慮にも管理なさっている方のお人柄が表れているようです。室内で思わず笑ってしまったのが「洗わない お尻は危険」と書かれた張り紙。言わずもがなですが、入浴中に体を洗っているとどこからともなく巨漢プロレスラーがやってきてヒップアタックを仕掛けてくるのではなく、悪い菌類が繁殖するので浴槽の中でお湯を洗ってくれるな、ということなのでしょうね。


 

お湯が張られている右側の浴槽は(目測で)2.5m×2mの四角形で、7〜8人は同時に入れそうなキャパを有しています。ほんのり赤みを帯びた潮汁的な濁りを呈しており、43.8℃というちょっと熱めの湯加減でした。湯船を満たしたお湯は縁の切り欠けよりふんだんに溢れ出ていました。


 
トゲトゲに覆われた湯口から吐出される温泉の温度は45.8℃。この湯口には加水用のバルブもあるのですが、加水など一切することなく自然冷却で43〜44℃に落ち着いていましたので、この時は加水せずそのままの状態で入浴させていただきました。お湯を口に含むと、赤錆系の金気感、甘味を伴う石膏感、清涼感を有するほろ苦味、そして弱い炭酸味が感じられ、弱い金気臭と土気臭が嗅ぎとれました。湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、毛穴の一つ一つに砥粉が入り込んでくるような感覚が得られ、そして全身に毛布が掛けられているようなホールド感に包まれます。湯上がりのホコホコ感も長い時間にわたって持続します。味や匂い、そして浴感などその全ての特徴は、重炭酸土類泉(あるいは塩化土類泉)の典型例と言って良く、妙見や塩浸など新川渓谷温泉郷の各温泉地と同じような部類に属する温泉だと思われます。

わかりにくい場所にありながら外来者にもオープンで、しかも広くて管理の行き届いた環境のもと、自家源泉の温泉がしっかり掛け流されているのですから、温泉ファンにとって利用価値が高い共同浴場と言えるでしょう。


ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 50.5℃ pH6.1 54L/min(自然湧出) 溶存物質1.557g/kg 成分総計2.077g/kg
Na+:167.3mg(41.96mval%), Mg++:54.7mg(25.94mval%), Ca++:94.3mg(27.15mval%),
Cl-:126.2mg(20.90mval%), SO4--:94.0mg, HCO3-:701.3mg(67.47mval%),
H2SiO3:259.5mg, HBO2:27.1mg, CO2:520.8mg,
(平成21年8月21日)

鹿児島県霧島市牧園町上中津川(場所の特定は控えさせていただきます)

7:30〜22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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九州最大の某野湯 2016年5月

2016年11月28日 | 鹿児島県
※今回取り上げる場所は地熱活動が活発であるため、火傷や硫化水素ガス中毒となる恐れがあります。もしこの場所へお出かけになる場合は、自己責任でお願いします。なお場所の特定などお問い合わせには応じませんので悪しからずご了承ください。

 
今年(2016年)5月某日。自分にとって記念すべき日を迎えた私は、自分で自分にささやかなお祝いをすべく、雲ひとつない真っ青な五月晴れの中、九州某所の林道をテクテク歩いていました。


 
この山は人工植樹による針葉樹が多いのですが、ところどころに九州らしい常緑樹も見られ、また路傍の日当たりが良いところでは、ミヤマキリシマが自生しており、綺麗な花を咲かせていました。


 
林道の途中から踏み跡へ逸れ・・・


 
林の中の斜面を下ってゆくと・・・


 
急に視界が開けて、目の前に白く濁った川が流れる河原にたどり着きました。今回の目的地に到着です。
ここは温泉ファン、とりわけ野湯愛好家の方にとっては超有名であり、九州のみならず西日本最大の野湯地帯と言っても過言ではないでしょうから、今回の記事で地名を秘匿したところで、当記事をご覧の方はもう既に「あそこだな」とお気づきのことと思います。


 
 
この広い河原では全体的に活発な地熱活動が露呈しており、あちこちで真っ白な蒸気と火山性ガスを噴き上げながら、熱湯をフツフツと煮えたぎらせています。


 
いくつもある熱湯湧出箇所のひとつに温度計を突っ込んでみたら、88.8℃という末広がりのゾロ目が表示されました。これは目出度いぞ。なお水素イオン濃度はpH2.44ですので、ここで湧く温泉は酸性硫化水素泉といえるでしょう。結構な高温ですから、卵を持参したら温泉卵が作れるでしょうね。


 
川が白く濁っているのは、硫黄泉の温泉が川水に混じっているため。場所によっては川水と熱い温泉が混じってちょうど良い天然の湯船が出来上がっていますので、適当なところを見つけて野湯を楽しむことができるんですね。実際に、この地熱地帯の川下で十分な深さを有する湯たまりに遭遇したので、そこで入浴してみました。ウヒャーッ、最高だ!


 
今度は川を遡って上流方へ行ってみたところ、もっと入浴に適した湯だまりを発見。手で石を移動させて湯だまりを深くし・・・


 
もちろんその湯だまりでも湯浴みしました。当地は前々日に記録的な大雨に見舞われた影響なのか、川の水かさが多く、この湯だまりも水の流入が多くて34.7℃というぬる湯だったのですが、抜けるような青空が広がっているこの日はポカポカ陽気で絶好の野湯日和ですから、むしろこのくらいの温度の方が気持ち良いんです。しかも適度な風が吹いていたので、硫化水素ガスの滞留も心配無用。あまりに極上であるため、この湯だまりで1時間ほど長湯してしまいました。

九州の大地の恵みを思う存分楽しむことができる、記念日を祝うに相応しい素晴らしい野湯でした。



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妙見温泉 きらく温泉(後編 露天風呂)

2016年11月26日 | 鹿児島県
前回記事「妙見温泉 きらく温泉(前編 客室・内湯)」の続編です。

●露天風呂
 
内湯で汗と垢を落とした後は、建物の裏手にある露天風呂にも入ってみることにしました。旧館2階のキッチン脇から新館へ向かう通路に出て、途中で案内に従い左に曲がり、犬走りを裏山に向かって進んでステップを上がります。


 
ステップを上がったところが露天風呂。左側が女湯、右側が男湯です。目隠しを兼ねた更衣小屋は至って質素。


 
更衣小屋の向こう側で、大きな露天風呂がお湯を湛えていました。麗しい山の緑に囲まれた開放的なロケーションです。大変広々としているので、子供だったら泳ぎたくなる衝動に駆られること請け合いでしょう。なおこの露天風呂に洗い場は無いので(一応石鹸は備え付けられていますが)、利用の際は予め内湯で体を洗っておくと良いかと思います。


 
内湯と同様に、お風呂の縁にはカルシウムを主体とする温泉成分が分厚くこびりついており、湯面上では庇のような形状をなし、その周囲ではトゲトゲやイボイボなど様々な形となって現れていました。こうした現象は、新川渓谷温泉郷に多い重炭酸土類泉や塩化土類泉でよく見られる典型的な特徴です。


 
山吹色を帯びた淡いグリーンに濁るお湯は内湯と同じ源泉です。この露天に注がれるお湯は、カエルの置物をかすめながら、岩肌を舐めるように流れています。外気の影響を受けるため、内湯よりもぬるい40〜41℃であり、熱いお風呂が好きな方にとってはちょっと物足りないかもしれませんが、ぬる湯で長風呂が好きな方にとっては絶好の状態かと思います。
私が泊まった日はたまたま他の宿泊客が少なかったため、夜も朝もこの露天風呂を独占状態で楽しむことができました。加水の影響なのか、妙見温泉の他源泉よりも若干薄いような印象を受けましたが、れっきとした放流式の湯使いであり、時間制限もありませんから、宿泊中は思う存分掛け流しの温泉を堪能できます。

かなり安い設定のお宿でしたから、正直なところ、訪問するまで不安を抱かずにはいられなかったのですが、実際に宿泊してみたら、そんな不安はたちどころに払拭され、むしろコストパフォーマンスに優れた良宿であるという満足感が強く印象に残りました。九州は安くて良い温泉が多いですね。


妙見24号
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 55.4℃ pH6.5 溶存物質2374mg/kg 成分総計2580mg/kg
Na+:297.4mg(49.80mval%), Mg++:62.0mg(19.63mval%), Ca++:139.8mg(26.85mval%), Fe++:1,8mg,
Cl-:143.6mg(14.42mval%), SO4--:92.7mg, HCO3-:1348mg(78.68mval%),
H2SiO3:237.8mg, CO2:206.7mg,
(平成20年11月21日)
加水あり(温度調整のため)
加温循環消毒なし

国分駅・隼人駅から鹿児島交通(路線バス)の「霧島いわさきホテル」行に乗車、もしくは鹿児島空港から温泉バス(隼人駅行もしくは立花上行)で「妙見温泉」バス停下車すぐ。
(バスの時刻は「九州のバス時刻表」で検索してください)
鹿児島県霧島市隼人町嘉例川4385  地図
0995-77-2337
ホームページ

日帰り入浴11:00〜19:30(19:30で受付終了)
内湯300円・露天風呂500円(いずれも1時間)
備品類なし

私の好み:★★★
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妙見温泉 きらく温泉(前編 客室・内湯)

2016年11月25日 | 鹿児島県
 
大隅地域で湯めぐりをした日は霧島市へ戻り、新川渓谷温泉郷のひとつである妙見温泉へ向かって、素泊まり専門のお宿「きらく温泉」で一晩お世話になりました。


●客室
 
客室は新館と旧館を選択できるのですが、今回は一晩を越すだけですので、リーズナブルな旧館の部屋をチョイスしました。大手宿泊予約サイトを通じて予約したのですが、一泊の料金はなんと3,000円未満。今回通されたお部屋は4畳半の和室で、いかにも湯治向きといった風情なのですが、古いながらもきちんと清掃されていますし、室内にはテレビ・ポット・ちゃぶ台などひと通りの物が揃っており、浴衣やタオルも用意されていますから、ビジネスホテル並みの居住性が確保されているといっても良いでしょう。しかもお宿の方はとても丁寧に案内してくださいました。親切な接客といい必要十分な設備・備品といい、金額をはるかに上回るホスピタリティに思わず感激しちゃいました。


 
旧館は湯治部と称されているように、館内のキッチンで自炊が可能です。私はレンタカーで移動しましたので、夕食は国分の市街地で摂りましたが、朝食はその晩に買っておいたコンビニの弁当を電子レンジで温めていただきました。


●内湯
 
旧館の1階には「うたせ大浴場」と名付けられた内湯がありますので、まずはこちらを利用してみることにしました。


 
旧館の玄関には昭和44年の古い分析書とともに、うたせ湯の様子を描いたイラスト看板が掲げられていました。色褪せているそのイラストで湯浴みしているのはみんな裸婦。昭和という時代を感じさせますね。


 
昔ながらの湯治宿風情というべきか、板の間の脱衣室は棚とベンチ、そして扇風機があるだけで、至って簡素。壁には宿の長い歴史がもたらしたヒビがたくさん走っており、くすんだシミも随所に見られました。


 
浴室もかなり年季が入っており、日中でも薄暗い室内は温泉成分の付着によってベージュ色や赤茶色が目立っていて、湯気とともに温泉由来の金気臭や土類臭が漂っていました。浴室の半分近くは浴槽が占めているのですが、窓側には浴室名にもなっている打たせ湯が設けられ、床にお湯が叩きつけられる音が湯気のこもった室内に木霊していました。


 

このお風呂で面白いのは、洗い場のカランの代わりに、温泉が注がれている長方形の槽が設置されていること。つまりここから手桶でお湯を汲んで掛け湯するわけです。県内ですと入来温泉の「柴垣湯(現在は湯之山館)」にも同じものがありますね。なおこの長方形の掛け湯槽は高いセッティングされているため、備え付けのスツールに腰掛けるといい感じです。


 
浴室出入口の一角には備え付けの桶や腰掛けと一緒に、ハエたたきが用意されていました。自然豊かな場所柄、そして炭酸ガスが比較的多い泉質ゆえ、夏にはアブが紛れ込んでくるのでしょうね。


 
 
浴槽はヨットの帆というか三徳包丁というか、緩やかな曲線と長方形をくっつけたような形状をしており、曲線部分がはじまる辺りで2分割されています。お湯は奥に位置する四角形の浴槽に注がれ、仕切りを通じて手前側の扇型の浴槽へ流れており、そして包丁の先端に当たる部分から床へオーバーフローしていました。このような流れになっていますから、必然的に四角形の浴槽の方が熱く、扇型の浴槽はそれより若干ぬるい湯加減となっているのですが、でもお湯の投入量が多く、絶え間なくお湯が流れているため、あくまで私の実感ですが、両者の間で湯加減の差は少なかったように感じられ、おおよそ42〜3℃で安定しているようでした。
石積みの湯口まわりは、カルシウムをメインとする温泉成分のこびりつきにより、サンゴ礁のようなトゲトゲやイボイボが密集しています。湯船に張られたお湯は山吹色を帯びた笹濁りで、お湯をテイスティングしますと赤錆系の金気感や甘みを伴う石膏系の土類感、焦げたような風味、そして弱い炭酸味が感じられました。そして湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、しばらく湯に浸かっていると、まるで布団に包まれているようなドッシリとした感覚に抱かれました。


 
床も石灰で分厚く覆われており、場所によって千枚田になっていたり、あるいは焼肉のセンマイを思わせるような状態になっていたりと、長年に及んでこびりついた温泉成分が室内で様々な模様を描いていました。


 
浴室内はおろか玄関先まで音を轟かせている打たせ湯。壁の高いところから温泉の太い流れが勢い良く落とされています。当然ながらその周辺には温泉が広範囲にわたって飛び散るのですが、飛沫が湯船へ飛ぶのを防ぐ石積みの壁にも、トゲトゲでびっしり覆われていました。

お風呂はこの内湯のみならず露天風呂も利用できるのですが、この内湯から離れたところにあるため、露天風呂に関しては次回記事にて取り上げさせていただきます。

後編に続く

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古里温泉 桜島シーサイドホテル

2016年11月23日 | 鹿児島県

鹿児島のシンボル桜島でも、海岸線に沿って温泉施設が点在していますが、今回はその中でも南側の古里地区にある「桜島シーサイドホテル」で日帰り入浴してまいりました。この地区には中規模のホテルが国道に沿って数軒並んでいますが、潮風が直撃する上、目の前で噴き上がる降灰の影響もあり、どの施設も一般的な建物より幾分草臥れているように見えます。


●男女別浴室

フロントで入浴料金を支払った後、階段かエレベーターで1フロア下へ移動し、案内に従って廊下を進んでゆくと、浴室が並ぶエリアにたどり着きます。こちらには男女別浴室のほか、家族風呂、そして混浴露天風呂「海辺」があるのですが、まずは男女別浴室から利用することにしました。


 
ほぼ全面がタイル張りの浴室。昭和の基準で建てられたホテルですから、浴室の天井が低いのは致し方ないところ。でも海を望む窓から燦々と陽光が降り注いでいますので、室内は照明なしでも明るく、床面積もそこそこ広いので、大浴場に期待される非日常的空間としての条件は十分満たしているかと思います。
室内の海側に浴槽がひとつ据えられ、手前側の左右両側に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付きカランが計4基設置されていました。


 
床面から数十センチほど高い位置に湯面がある浴槽は、目測で2m弱×3.5mほど。窓側で立ち上がっている湯口よりお湯が滔々と注がれており、浴槽の縁から間断なく溢れ出ていました。


 
窓から屋外に出ると、錦江湾を臨む高台の露天風呂です。こちらのお風呂も床面から高い位置に浴槽が設けられています。海側には柵が立っているのですが、湯船に浸かったときに眺望の邪魔にならないよう、視線にあたる部分だけ柵がくりぬかれているのがユニークです。


 
露天風呂でも内湯と同じ濁り湯が注がれており、しっかりとオーバーフローしていました。ただ、外気の影響を受けるため、内湯よりも若干ぬるめです。


 
海辺の高台に位置しているため、入浴しているときに楽しめる眺望が抜群。お風呂の南側に錦江湾が広がっていますので、海に向かって左側が大隅半島、右側が薩摩半島になります。薩摩半島の山並みを辿って行くと、円錐形が美しい開聞岳も明瞭に眺められました。


●家族風呂

男女別浴室の出入口と並んで、廊下の最も手前にあるドアは家族風呂のものです。


 
家族風呂は一室のみ。室内には小さな浴槽がひとつ設けられていますが、小さいとはいえ、複数人入れそうなキャパがあり、こちらでも温泉がしっかりと掛け流されていました。温泉成分の付着により室内の床などは赤茶色に染まっています。
なおこちらの窓から屋外に出ると、男湯の露天風呂とつながっています。


●露天風呂「海辺」
 
さてこちらのホテルご自慢の露天風呂へと参りましょう。男女別の浴室に付随している露天風呂のほか、波打ち際にも別個の露天風呂があるんですね。一旦服を着てから、廊下の突き当たりにあるドアを開け、階段を下り海辺へと向かいます。


 
階段を下り切ると、波打ち際の露天風呂「海辺」の浴槽が濁り湯を湛えていました。
男女別浴室の露天風呂は高台からの眺望が特徴的でしたが、こちらの露天は海水面と近いため、あたかも海と同化しているかのような感覚が楽しめます。なお浴槽はひとつしかないので混浴です。浴槽の向こう側に小屋がありますから、そちらで着替えます。


 
お湯は山側に組まれた岩から流されていました。浴槽自体は無機質なコンクリでやや浅いつくりなのですが、景色が素晴らしいのでそのあたりは目を瞑りましょう。むしろその浅さを活かし、うつ伏せで湯浴みするととっても良い感じです。
お湯は内湯と同じもので、モスグリーンを帯びた山吹色に濁っており、透明度は15〜20cmといったところです。薄い塩味と弱い金気味のほか、弱い炭酸味が感じられ、湯面からは弱い金気臭と土気臭が漂っていました。前回取り上げた近所の海潟温泉とは全く異なる泉質であり、近隣の温泉地で表現するなら妙見や安楽など新川渓谷沿いの温泉に近いタイプのお湯と言えるでしょう。湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、肌の皺一本一本にお湯の濁りが染み込んでくるような感覚が得られます。そして湯上がりは大変よく温まり、しばらくは汗が止まりませんでした。

桜島がもたらす大地の恵みと、錦江湾のパノラマを一度に楽しめる、素晴らしい温泉でした。


ナトリウム-塩化物温泉 46.8℃ pH6.0 溶存物質3765mg/kg 成分総計4126mg/kg
Na+:983.3mg(72.85mval%), Mg++:105.4mg(14.77mval%), Ca++:87.8mg(7.46mval%), Fe++:8.0mg,
Cl-:1609.0mg(79.18mval%), SO4--:210.7mg(7.66mval%), HCO3-:451.5mg(12.91mval%),
H2SiO3:191.9mg, CO2:360.8mg,
(平成8年6月21日)

桜島港から鹿児島交通(路線バス)の桜島口行か垂水港行で「文学碑前」バス停下車すぐ
(路線バスの時刻は「九州のバス時刻表」で検索してください)
鹿児島県鹿児島市古里町1078  地図
099-221-2121

日帰り入浴11:30〜20:00
500円
ボディーソープ・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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