温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

甲府市 山宮温泉

2018年11月28日 | 山梨県
 
甲府市街から昇仙峡へ向かって伸びる県道を北上していると、住宅地の中にいきなり現れる温泉旅館が今回取り上げる「山宮温泉」です。旅館とはいえ、実際には地元にお住いの方が銭湯兼居酒屋食堂として愛用なさっており、ローカル色の強い温泉と言えるでしょう。

県道沿いに細長い造りをしているこの温泉は2015年にリニューアルされたばかり。新しい建物の1階が入浴施設で2階が食堂となっており、棟続きで昇仙峡側に並ぶ建物がどうやら宿泊棟のようです。駐車場は周囲に点在しているので、もし施設に近い場所に空きが無くとも、案内表示を頼りに、他の駐車場を探しましょう。



引き戸を開けて玄関に入り、湯銭と一緒に下足箱のキーを番台に預けると、引き換えに黄色い番号札(リストバンド)が手渡されます。入浴のみならこのバンドを使う機会はないのですが、館内で飲食など各種サービスを受けるときは、このバンドで退館時に一括精算します。
お風呂は番台の右手の廊下を進んだ先にあります。2つある浴室は男女入れ替え制となっており、私が訪問した日は手前側(廊下右側)のお風呂が男湯、奥が女湯でした。脱衣室のロッカーはコイン不要で任意の場所を使えます。室内にはドライヤー・扇風機・エアコンなど各種設備が完備されており、やや狭いが綺麗なので、気持ち良くに使えます。



(館内写真はパンフレットより転載させていただきました)
お風呂は内湯のみで、露天はありません。ウナギの寝床のような建物の外観から想像できたものの、正直なところあまり広くなく、建物の形状に沿って奥に長い浴室内は、その日の汗を流そうとするお客さんで大変混雑していました。それだけ人気の温泉なのですね。

入って右側の壁沿いに洗い場が配置され、シャワー付きカラン7基が一列に並んでいるほか、入口すぐ右側には、ぬるめの源泉を用いた掛け湯も用意されています。カランのお湯もおそらく源泉かと思われ、明らかに水道水とは違う質感、具体的には温泉由来と思しき味がしっかり感じられました。

浴室入って左手の窓側には各種浴槽が並んでいます。手前から順に、サウナ、一人分の水風呂、源泉浴槽、加温浴槽の順です。最も奥の加温浴槽は4~5人サイズで、42℃くらいまで加温されており、お湯は完全な循環仕様で底部よりしっかり強力吸引されています。お湯からは塩素の臭いも放たれていました。
一方、源泉(非加温)浴槽は7~8人サイズで、加温槽との仕切りの上に湯口があり、加温・源泉非加温それぞれに対してお湯が注がれています(加温槽には循環加温湯、源泉槽には非加温源泉湯をそれぞれ投入)。この源泉槽は人気があり、特に訪問時のような夏の夜は、ぬるくて爽快なので人気集中。しかも皆さん長湯傾向にありますから、回転が悪いので余計に混んでしまいます。でも一度源泉浴槽に入れば誰しもが長湯したくなってしまうはず。なお私が訪問した日曜夜7時には常時5~6人が源泉槽に入っていました。

なお館内掲示されている分析書には湯使いに関する表示はありませんが、私の推測ですと、源泉浴槽は非加温で加水循環消毒の無い完全掛け流し、加温浴槽は循環消毒も行われているようでした。



(館内写真はパンフレットより転載させていただきました)
なお、私の訪問日に「女湯」だったもう一つの浴室はこちらです。こちらのお風呂は結構広そうですね。
どうやらこちら側は外に出られ、屋外には壺湯が設けられているんだとか。

お湯の見た目は無色透明。分析書には「無味無臭」と記載されているのですが、実際には食塩泉らしい知覚的特徴を有しており、具体的にはほんのり微かに塩味や、硬水のような味が得られました。またカランの湯からはわずかにモール泉のような臭素感(特に香り)も感じられました。湯中では印象的ではないもののしっかりとしたツルスベ浴感があり、また源泉槽では泡付きも確認できました。なお、この泡が源泉由来なのか、あるいは単に投入時の勢いによるものかは不明です。

いや、下手な屁理屈はどうでも良いのです。36℃前後の非加温源泉は、単に不感温度帯のぬる湯であるばかりでなく、実に滑らかな浴感も持ち合わせているので、入浴時の体への負担が軽く、心身が非常に落ち着くのです。副交感神経によるリラックス効果が期待できるでしょう。決して広くないお風呂であるにもかかわらず、浴室全体で12人前後は常に利用していました。洗い場も時々埋まっているような状況です。それだけこの温泉は地元の方から人気なのです。



お風呂のみならず、食堂も賑わっていました。私はお風呂上がりに2階の食堂で夕食をとったのですが、店内には座敷もあればテーブル席もあり、老若男女が食事を楽しんでいらっしゃいました。
甲府市民に愛される大人気の温泉でした。


ナトリウム-塩化物温泉 36.9℃ pH7.6 湧出量未測定(動力揚湯) 溶存物質1411.9mg/kg 成分総計1411.9mg/kg
Na+:420.6mg(81.30mval%), Ca++:76.7mg(17.01mval%),
F-:6.8mg, Cl-:745.0mg(92.68mval%), Br-:2.4mg, I-:0.4mg, HCO3-:74.5mg,
H2SiO3:55.0mg, HBO2:17.9mg,
(平成21年4月27日)

山梨県甲府市山宮町2532−1
055-251-4263
ホームページ

10:00~22:00 第1水曜定休(祝日の場合は営業)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (10)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

増富温泉 増富佼成寮

2018年11月21日 | 山梨県
今回記事から山梨県へ移ります。

 
ラジウム温泉として名が知られ、古くから文人墨客にも愛されてきた山梨県の増富温泉。その温泉街へ向かう一本道を真っ直ぐ進んでゆくと、温泉街へ入る手前に小さな看板が現れます。その看板にへ導かれるように左折して路地に入ると・・・


 
すぐに今回の目的地である「増富佼成寮」に辿り着きました。その名の通り立正佼成会の施設なのですが、信者ではなくても誰でも利用できます。いかにも寮らしく質実剛健というべきか、療養保養施設のような無機質な印象の外観からは、豪華さや非日常性といった要素は伝わってきませんが、建物自体は綺麗であり、しかも積極的に日帰り入浴をアピールしていますので、今回入浴のみの利用でお邪魔することにしました。


 
玄関の下足場には黒い大きなボタンがあり、それを押すとスタッフの方が出てくるので、その人に入浴料を支払って中に入ります。玄関に置かれたガラスケースの中には、温泉の配管から採ったと思しき大きなスケールが展示されていました。後述しますが、こちらの温泉は炭酸やカルシウムが多いため、配管内はすぐに炭酸カルシウムで詰まってしまうのでしょうね。



玄関を上がって真正面に進んだ突き当たりに浴室の暖簾がさがっていました。私の訪問日、女湯は右側、男湯は正面でしたが、その日の宿泊客の状況によって暖簾を替えるようです。ドアを開けて中に入ると病院みたいなカーテンが掛けられており、その向こうが脱衣室となっていました。


 
タイル貼りのお風呂は内湯のみ。正面の窓下に浴槽が据えられており、その手前左右に洗い場が配置されています。なお右側にはシャワー付きカランが2個と高い位置に設置されたシャワーが1つ、左側にはシャワー付きカランが3つ並んでいます。


 
浴槽は(目測で)4m×1.8m程の大きさ。湯船に張られたお湯は緑色を帯びた黄金色にしっかり濁っており、底面どころかステップすら目視できないほど強く濁っていました。また浴槽周りのタイルは、元の素材がわからないくらいに茶色い炭酸カルシウムがコーティングされ、鱗状の模様もしっかりと付着していました。

こちらでは放流式の湯使いを実践しています。浴槽縁の切り欠けから溢れ出るお湯は少なく、殆どは浴槽右奥から湯面に突き出ているオーバーフロー管より排出されています。またお湯を口に含むと、塩辛くはないものの明瞭な塩味が口の中に広がるほか、金気味、しっかり炭酸味、焦げたような(燻したような)匂いや風味、そして金気の匂いが感じられました。また炭酸ガスの量が多いためか、湯口に顔を近づけるとゴホゴホと咽てしまいました。

湯加減は40℃未満(38℃前後?)というぬるめの長湯仕様。私の訪問時、先客のお爺さん二人は、ともにじっくりと長湯をご堪能。また私とほぼ同じタイミングで入ったお爺さんは、私によく話しかけてくれた上に、1時間以上延々と入り続けていらっしゃいました。「爺さんずいぶん長湯だね」と心の中でつぶやいてしまったのですが、実際に入浴したところ、眠りたくなるほどの気持ち良い湯加減に、私もついつい1時間ほど長湯してしまいました。はぁ、俺もジジイの仲間入りかな。
なお源泉は48℃近くあるので、おそらく冷ましているもの(あるいは加水)と思われます。私が湯船の中に入ると肌に細かな泡が付着し、またキシキシと引っかかる浴感に包まれました。



お湯は自家源泉です。浴槽中央に設けられた湯口からお湯が注がれているのですが、そこから単純に落とすのみならず、湯口にホースを突っ切んで、空気に触れることなく浴槽内部までお湯を供給する方法も併用しています。これにより酸化して変色などしやすいお湯の変質や温度低下を抑えているのですね。お湯を大切にする工夫に感心しました。

ぬるめの湯加減ですが炭酸パワーと食塩泉効果のため非常によく温まり、いつまでもポカポカします。宗教関係施設なので心理的なハードルが高いのですが、温泉街の入浴施設「増富の湯」はいつも混んでいますから、混雑を回避したい場合に利用したい穴場的施設です。


立正佼成会増富佼成寮源泉
含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物温泉 49.2℃ pH6.6 35.3L/min(掘削自噴) 溶存物質11.298g/kg 成分総計12.064g/kg
Na+:3053.7mg(79.92mval%), Mg++:38.5mg, Ca++:326.2mg(9.80mval%), Fe++:7.4mg,
Cl-:4382.3mg(73.22mval%), Br-:9.3mg, I-:4.2mg, HS-:0.7mg, SO4--:587.9mg(7.25mval%), HCO3-:1992.9mg(19.34mval%),
H2SiO3:166.4mg, HBO2:237.1mg, CO2:763.4mg, H2S:2.1mg,
(平成27年3月31日)

JR中央本線・韮崎駅より山梨交通バスの増富温泉行で「増富佼成寮」下車すぐ
山梨県北杜市須玉町小尾5579-1
0551-45-0062
ホームページ

日帰り入浴11:00~19:00
550円
ロッカー(無料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★




コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

栗駒・駒の湯温泉 2018年の営業日は残りあと僅か!

2018年11月17日 | 宮城県
 
拙ブログで応援しております宮城県栗駒の「駒の湯温泉」。
みちのくの山中に位置していますから、冬になると辺りは深い雪に覆われます。そして雪のシーズンが近づくとその年の営業を終え、来春の再オープンまでしばしのお休みとなります。
今年の夏は毎日狂ったような猛暑が日本全土を襲いましたが、11月に入るとそんな猛暑を忘れてしまうような肌寒さに包まれるようになり、街中では外套を羽織る人の姿も見られるようになりました。

駒の湯温泉は水道管が凍結するタイミングで、今年の営業を終了します。天気予報から推測しますと、2018年の営業はどうやら来週中頃の11月20日か21日頃までのようです。気象状況によって最終営業日が変わりますので、詳しくは駒の湯温泉公式サイト内のブログFacebookなどでご確認ください。

少なくとも17日(土)18日(日)は営業していますから、お時間のある方は是非どうぞ!
10時~17時まで営業しますよ。

シーズンオフですから、ゆっくりお過ごしできるかと思います。


朝からおそばもお出しできますので、是非召し上がってくださいね。
湯守さんが丹精込めて手打ちした美味しいおそばです。


怒涛の如く注がれる大量掛け流し、極上ぬる湯にゆっくり浸かって、心身を癒しましょう!
今週末が年内に駒の湯で入浴できる実質的なラストチャンスです。
この機会を逸することなかれ!


営業期間:4月下旬~11月上中旬(冬期休業) 
※2018年は11月20日か21日頃までかと思われますが、前後する可能性もありますので、詳しくは公式サイト内ブログFacebookでご確認ください。

定休日:毎週水曜日および第2・4木曜日(ただし祝日の場合は営業、翌日休業)

営業時間:10:00~17:00(16:00頃に受付を終了しますが、状況により前後します)
入浴料金:大人500円(中学生以上)、小学生以下300円
(注1)備え付けの石鹸やシャンプー等はありません。
(注2)収容人員が限られた小さな湯小屋ですので、週末や連休など繁忙期には、入浴までお待ちいただくことがあります。





宮城県栗原市栗駒沼倉耕英東
公式サイト
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥蓼科温泉郷 渋・辰野館 後編(森の温泉)

2018年11月13日 | 長野県
前回記事の続編です。
「信玄の薬湯」で心身を癒し、さっぱり爽快になったところで、もう一つのお風呂である「森の温泉」にも入ってみることにしました。

 
一旦服を着てから「信玄の薬湯」を出て、歩いてきた廊下をちょっと戻り、ヒーリング音楽が流れる廊下の分岐点へとやってきました。なぜ静寂な白樺の森の中で音楽を流すのか、そのセンスにちょっと小首を傾げたくなりますが、ま、それはともかく、ここで案内表示が支持する方向へと逸れて更に奥へと進んでいきます。


 
若干曲がっている廊下の突き当たりに紺と紅の暖簾が下がっており、両者の間には神棚が祀られていました。神々しいお風呂なのかしら。コンパクトな脱衣室に備え付けられているのは棚と籠だけ。至ってシンプルです。


 
総木造の「信玄の薬湯」と異なり、こちらのお風呂の建物はコンクリ打ちっぱなしですが、内湯に洗い場が無い点は同様であり、しかもこちらの内湯は加温の浴槽が1つあるのみです。浴槽は木製で1.8m四方で4人サイズ。薬湯と同じく深さ90cm。壁からチョロチョロとぬるい源泉が落とされており、薬湯ほどではありませんが、お湯は白く濁っていました。そして底には若干沈殿が溜まっていました。


 
薬湯と決定的に違うのは露天風呂が用意されていること。白樺の木立の中という清々しい環境の中にある露天風呂には、内湯と同じく1.8m四方の木造浴槽(足元はコンクリ)が設けられており、コンクリ建物の上から薬湯と同じ冷鉱泉が、薬湯と同じく滝のように落とされています。



こちらのお風呂では内湯で温まり、露天で冷たい薬湯に入る・・・その往復を何度も繰り返しました。
私が訪れたのは残暑厳しい9月の某日でしたが、木立の中では爽やかな風が吹き抜け、空を見上げると青い空と白樺の緑、そして木の幹の白が美しいトリコロールを生み出していました。なんて爽やかな環境なんでしょう! お蔭様で街の暑さを完全に忘れることができました。



「信玄の薬湯」の源泉非加温浴槽には大量の沈殿が溜まっていましたが、こちらはかなり少なく、ごっそり掬えるような量はありませんでした。清掃のタイミングの問題なのかもしれません。「信玄の薬湯」も「森の温泉」も同じ源泉が使われています。湧出時は無色透明ですが、加温したり空気に触れたりすると白濁し、沈殿が発生するのでしょう。口に含むと明礬の味と少々の明礬の匂いが感じられるほか、炭酸味がはっきり感じられ、特に冷鉱泉は炭酸水の味そのものでした。つまり炭酸泉と明礬泉をミックスしたような冷鉱泉と表現しても差し支えないでしょう。繰り返し申し上げているように湯上がりは非常にさっぱり爽快。とっても気持ち良く、湯上りの肌はスベスベです。
昔から湯治客を癒してきた歴史ある冷鉱泉ですが、複数日数宿泊して湯治せずとも、短時間入浴するだけで心身がすっかり癒されました。武田信玄の名に負けない、素敵な鉱泉です。


渋鉱源泉
単純酸性冷鉱泉 21.2℃ pH2.71 湧出量記入無し(自然湧出) 溶存物質592.4mg/kg 成分総計1106.3mg/kg
H+:2.0mg(26.00mval%), Na+:69.5mg(39.39mval%), Mg++:6.7mg, Ca++:14.7mg, Al+++:6.8mg,
Cl-:142.1mg(46.87mval%), HSO4-:14.1mg, SO4--:210.0mg(51.13mval%),
H2SiO3:96.8mg, CO2:511.5mg, H2S:2.4mg,
(平成21年5月22日)

長野県茅野市豊平4734
0266-67-2128
ホームページ

日帰り入浴11:00~16:00
1500円
フロント前にロッカーあり、大浴場にドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥蓼科温泉郷 渋・辰野館 前編(大浴場・薬湯)

2018年11月08日 | 長野県
八ヶ岳西麓の奥蓼科温泉郷は、一軒一軒が個性的且つ魅力的なお宿ばかりですが、そんな中でも創業100年を超える老舗宿「渋・辰野館」はいわゆる「信玄の隠し湯」として有名です。私個人としては10年以上前に訪問したことがありますが、それからご無沙汰だったので、先日久しぶりに日帰り入浴利用で再訪してみることにしました。

 
白樺の森の中に構える威風堂々たる木造建築。いかにも老舗宿らしい佇まいです。
帳場で日帰り入浴したい旨を申し出、料金を支払って館内に入ります。そしてロビーの階段を上がって吹き抜け2階の廊下を左に進んで奥へと進んでいきます。なお貴重品用ロッカーはフロント前の下足場付近に設置されています。


●大浴場
 
廊下をどんどん進んでゆくと、やがて食事処の前を通り過ぎ・・・



やがて浴室ゾーンとなります。館内には3種類のお風呂があり、それぞれが廊下でつながっているのであります。まずはじめに現れるのは「大浴場」。いわゆる男女別の内湯です。ちょっと入ってみましょう。


 
浴室内はいわゆる一般的な宿泊施設の浴場であり、全面タイル貼りの現代的な設えです。
大きな窓から陽光が降り注ぎ、また窓外には白樺の林が広がっているので、室内とはいえ清々しい入浴環境と言えそうです。



館内に3種類ある浴室のうち、ちゃんとした洗い場があるのはこの大浴場のみ。他のお風呂は湯治することに主眼が置かれているようですから、体を洗う場合はまずこのお風呂に入りましょう。洗い場にはシャワー付きカランが5基設置されており、ボディーソープやシャンプーなども備え付けられています。


 
浴槽は洗い場より低い窓の下に設置されています。大小一つずつあるのですが、私の訪問時、右側の小さな浴槽は空っぽで、左側だけに透明のお湯が張られていました。なお、このお風呂のお湯は鉱泉ではなく、真湯の沸かし湯ですから、温泉(鉱泉)を目当てに訪れた方にとってはちょっと肩透かしかもしれませんが、汗や垢を洗い流すという実用的な意味でこのお風呂は重要な役割を果たしていますので、あまり落胆なさらず、寧ろここできちんと体を綺麗にしてから、他のお風呂へと向かいましょう。なお脱衣室にドライヤーの備え付けがあるのもこの大浴場のみです。


●信玄の薬湯
 
大浴場を出て廊下を更に奥へと進みます。途中、次回記事で取り上げる予定の「森の温泉」へつながる廊下が分岐しますが、まずは直進して「信玄の薬湯」へ向かうことにしました。



廊下の最奥(突き当たり)にある引き戸を開けると、イオウの香りと一緒に東北の湯治宿のような渋い風情が漂ってきました。期待に胸が膨らみます。壁には薬湯なのであまり長く入らないでという注意書きや、武田信玄の云われの由来など、諸々の説明が掲示されていました。



シックな色合いの総木造浴室では、飛沫を上げながら滝のように太く大量に落ちる鉱泉の響きが轟いていました。この浴室には鉱泉が張られている槽が3つあります。



予め申し上げておきますと、各浴槽とも深さが90cmもあります。迂闊に入ると深すぎて足がつかずに溺れちゃうかもしれませんから、深さをしっかり確認し、慎重に湯船に入りましょう。



手前の脱衣室側には、非加温の鉱泉が注がれていますが、こちらには入れません。桶が並べられていましたから、掛け湯するお湯を汲むことを目的としているのでしょう。掛け湯といっても、20℃未満ですからかなり冷たく、後述する非加温鉱泉浴槽に全身入浴する前に、鉱泉の冷たさに体を慣らすためのものかもしれません。


 
一方、窓側の浴槽は入浴に適する温度(40℃前後)に加温されています。加温の影響で綺麗な乳白色に濁っており、また底には白い湯の花の沈殿が溜まっています。浴槽の大きさとしては3~4人サイズでしょうか。殆どの方は非加温の冷鉱泉にいきなり入れないでしょうから、まずはここで体を温めましょう。


 

立派な木の幹を刳りぬいた太い樋から、滝のようにドバドバと鉱泉が大量に落とされている中央の浴槽こそ、このお風呂のメインである非加温源泉槽です。お湯は濁っているものの透明度が比較的高く、全体的に青白く見えます。


 
この浴槽の底には足首まで潜るような5センチ近い大量の沈殿が積もっており、桶で掬うと豆腐のようにごっそり採れちゃいました。すごい!



参考までに加温槽(左)と非加温槽(右)との比較です。温度が違うだけでこんなに濁り方が異なるのですね。実に面白い。湯治する場合はこの非加温浴槽で鉱泉の滝に打たれながら入浴するようです。20℃以下なので入りしなは確かに冷たいのですが、一度肩まで入ると爽快感が全身を走り、非常に気持ち良いのです!
私は冷鉱泉と加温湯を繰り返し入って、信玄の薬湯を存分に楽しませていただきました。
夏向きの非常に爽快なお風呂です。

次回記事では、もう一つのお風呂「森の温泉」について述べてまいります。


次回記事に続く。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする