温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

坂井温泉 湯本館

2022年08月21日 | 愛知県

(2021年11月訪問)
窯業の街、常滑市へとやってまいりました。南北に長い常滑市の海岸沿いを南に向かって進んでゆくと、長閑な海水浴場である坂井海岸に行き着きますが、この坂井の砂浜に面して建っているのが今回訪ねる坂井温泉「湯本館」です。


目の前には伊勢湾の砂浜が広がっており、実に気持ちが良いロケーションです。以前この砂浜では潮干狩りができたそうですが、資源激減のため近年は禁止されているんだとか。私が訪ねた11月下旬は、砂浜でハンググライダーや波乗りなど潮風を受けて楽しむ方がいらっしゃいました。また沖にはセントレアが浮かび、飛行機が頻りに離発着していました。


辺りは静かで鄙びきっており、あたかも世間から忘れられたような寂しい海岸の観光地。「湯本館」はどうやら一軒宿のようなのですが、当地には他に宿があるのでしょうか。なお現在の建物は鉄筋コンクリの5階建てなのですが、その右隣には老朽化が進んで使われなくなった旧館が残っています。


さて今回は日帰り入浴で訪問しました。フロントで声を掛けますと、奥から杖をついたお爺様が現れて少々不安を覚えたのですが、すぐに若い男性が出てきて、明るく親切に対応してくださいました。なおフロントがある1階のロビーはかなり家庭的な雰囲気なので、正直なところ好き嫌いが分かれるかもしれません。浴場は最上階の5階にありますので、エレベータで上がります。


エレベーターを降り、廊下を歩いてステップを数段上がると浴場です。中央の休憩スペースを挟んで手前が男湯、奥が女湯というような配置になっており、休憩スペースにはロッカーが用意されています。この休憩スペースには漫画本のほか昭和の家庭的な布の被せられたソファーが置かれていて、その独特な雰囲気や昭和的な感覚に少々戸惑ってしまいましたが、好きな方にはたまらない環境なのでしょうね。
なお脱衣室はそこそこ広く、棚にはロッカーらしきものが付いているのですが、どうやら鍵が使えないようで、それゆえ上述の休憩スペースに置かれているロッカーを使うことになるのでしょう。


タイルを多用した浴場は明るくて広く、非日常を期待する旅館のお風呂に相応しい造りです。非日常といえば、上画像の手前側に移っている主浴槽で、信楽焼のタヌキがお風呂に入っていますね。これだけでも十分非日常なのかもしれません。なおお風呂は内湯のみで露天はありません。


さすがに海浜沿いの5階という位置だけあって、お風呂からの眺めは素晴らしく、湯あみしながら真っ碧な伊勢湾を眺めていると飽きることなく、時間を忘れてしまいそうになります。


洗い場は左右に分かれており、それぞれシャワー付き混合水栓が3つずつ。
吐出圧力は良好なのですが、前回記事で取り上げた半田市「ごんぎつねの湯」と同じく、水道水から泥臭さが感じられるのです。やはり知多半島エリアにおける上水道の水源が長良川河口堰になったことによるものなのでしょう。嗅覚は慣れてしまうと気づかなくなるため、ご当地で生活なさっている方は当たり前になってしまっているのかもしれませんが、私のような他所者には気になって仕方がなく、ご当地の方に何かしらの意健康被害は及んでいないのだろうか、なんて余計な心配を抱いてしまいました。


閑話休題、信楽焼のタヌキが入浴している主浴槽は非鉱泉の白湯(真湯)。5~6人は入れそうな大きさを擁していますが、私の目的である鉱泉ではないため、当記事での説明は省きます。


浴場内には小さな部屋みたいにパーテーションで区切られている一角があり、そこに冷鉱泉を沸かした浴槽が設けられています。3人サイズほどの湯船ですが、ここに入ることが今回の目的です。


大きく口を開けた古代ローマ調の不思議な石像からお湯が吐出されていますが、湯使いは完全循環仕様でオーバーフローは一切見られません。真っ赤なお湯はビジュアル的にインパクトが強く、信州の浅間温泉天狗山荘を髣髴とさせますが、その印象的な見た目とは裏腹に、味・匂い・浴感ともにこれといった特徴が感じられず拍子抜けしてしまいました。鉄分と食塩を多く含み、しかも溶存物質が8317.4mgもありますので、源泉では相当濃くてインパクトのある味や匂いがあるはずなのですが、入浴へ供する段階で相当薄められているのではないかと思われます。赤錆のような味や塩辛さはほとんど感じられませんでした。
冷鉱泉にはよくあることですが、湧出量が少ないと、限られた資源を有効活用するために薄めた上で循環させるので、結果的に源泉湧出時の特徴が霧消してしまうのでしょうね。致し方ないことかと思います。
とはいえ、温泉とは縁が無さそうな場所でこのようなビジュアル的に特徴のある鉱泉に入浴できること自体が貴重ですし、また日帰り入浴の門戸を開けてくださっていることも有難いので、一浴の価値はあるかと思います。


坂井温泉2号泉
含鉄(Ⅱ)-ナトリウム・カルシウム-塩化物冷鉱泉 18.9℃ 溶存物質8317.4mg/kg 成分総計8618.1mg/kg
Na+:1766mg(52.35mval%), NH4+:9.2mg, Mg++:325.2mg(18.23mval%), Ca++:718.4mg(24.43mval%), Fe++:165.9mg(4.05mval%),
Cl-:4839mg(93.85mval%), Br-:17.0mg, SO4--:373.0mg, HCO3-:59.0mg,
H2SiO3:11.9mg, CO2:300.7mg,
(平成28年12月1日)
加水消毒なし
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環濾過あり(温泉資源の保護のため)

愛知県常滑市坂井西側1
0569-37-0006
ホームページ

日帰り入浴 平日16:00~20:00、土日祝11:00~20:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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半田市 ごんぎつねの湯

2022年08月13日 | 愛知県

(2021年10月訪問)
今回と次回は愛知県知多半島の温泉を取り上げます。醸造業と新美南吉の街である愛知県半田市には、アツアツの温泉がかけ流されている温泉施設があるので、2021年秋の某日に行ってみることにしました。半田中央インターの目の前という好立地にあり、駐車場も広く収容台数も多いので、車社会のご当地では至極便利な施設と言えるでしょう。とはいえ付近に鉄道の駅は無く、バス停からもやや離れているので、公共交通機関で旅をしている方にはちょっとアクセスにしくいかもしれません。


名古屋界隈の温泉施設といえば大規模なスーパー銭湯を連想しますが、こちらの施設は入浴に特化しており(※)、それゆえ建物はさほど大きいわけではなく、全体的に日本旅館のようなの雰囲気を大切にしているようで、上画像の玄関廻りもこぢんまりした旅館にお邪魔しているかのような感じでした。
この玄関を入るといきなり右側が下足場で左側が受付というレイアウト。靴を下足箱に預けて鍵を掛け(100円リターン式)、上り框を上がったところに設置されており券売機で料金を支払って、券と鍵の両方を受付へ差し出すと、引き換えに脱衣室のロッカーキーを手渡してくださいます。受付から右へ進むと女湯、左へ向かうと男湯です。
(※)入浴に特化していたのは私の訪問時の話で、今年4月には食堂が開業したそうですから、入浴のほか食事も楽しめるようになりました。

なお受付があるスペースの奥には飲料自販機とマッサージチェア、そして細かな段を流れ落ちる滝を眺める休憩スペースがありますが、いずれも狭いので、大人数で集うことはできません。私は利用していませんが、左側の渡り廊下を進んだ先に休憩室があるようですから、お風呂上がりのひと休みはそちらを利用した方が良いでしょう。

脱衣室はそれほど広くないものの、ロッカーの数はそこそこ多く、また室内にある階段を上がった2階にも更衣室があるらしいので、混雑時にもあまり窮屈な思いをしないで済みそうです。明るくきれいで、エアコンも設置されていて、使い勝手はまずまずです。


入浴ゾーンに足を踏み入れると、これまた和の雰囲気たっぷりで、上屋は木造、床は石材という落ち着いた造りです。
入ってすぐ右側に小さなかけ湯があり、その並びに立って使うシャワーが2つ、それぞれ独立したブースになって設けられています。また反対側(左側)にはサウナと水風呂が並んでいるのですが、水風呂は1人か2人しか入れない小さなものなので、夏には後述する内湯浴槽がまるごと水風呂に変身することもあるようです。
上述の立って使うシャワーの裏手へぐるっと回ると洗い場があり、シャワー付き混合水栓が10基設置されています。シャワーの水圧が強めで気持ち良いのですが、水道の水がなんとなく泥臭い感じがしたのは気のせいでしょうか。あるいはこのエリアの水道水源が明治用水から長良川河口堰に切り替わった影響なのでしょうか。後者が原因だとしたらご当地の皆さんが気の毒でなりません。私が暮らす東京の水道水だって褒められたもんじゃありませんが、東京よりはるかに宜しくない知覚的違和感を感じたのでした。

建物の窓際にある内湯は石板張りの長方形で、10人以上入れそうな大きさを有していますが、温泉ではなく普通の白湯です。どうやらこの施設の内湯に温泉は無いんですね。

内湯に温泉がない代わり、露天ゾーンには複数の温泉浴槽が用意されています。まず左手に温泉の歩行湯があり、底には足裏を刺激する石が埋め込まれていて、実際にその足湯へ入って歩いてみたところ、歩みを進める度に足裏のいろんなツボが刺激され、その痛気持ち良さにはまってしまい、思わず出かかってしまう唸り声を懸命に押し殺しつつ、3周ほどグルグル足湯を歩き回ってしまいました。

内湯の建物のまわりに沿ってぐるっと右手奥に進むと、温泉のお湯が落とされている2本の打たせ湯(温泉)が設けられ、露天ゾーンの中央には主浴槽がお湯を湛えています。この大きな主浴槽はごく普通に全身浴するところが大部分ですが、一角には打たせ湯へ向かう橋(通路)がかかっていて、その通路の内湯側主浴槽は寝湯になっています。また主浴槽の右奥は洞窟湯になっていて、この洞窟湯の山側の石積みの壁から新鮮源泉の熱い温泉が注がれています。なお主浴槽の湯口からはふんだんにお湯が出ているのですが、これは循環のお湯でしょう。


主浴槽とは区切られたちょっと小高くなっているところへ、上の方から50℃以上の源泉が滝のように落とされています。この直下の滝つぼは2~3人入れる大きさがあり、完全かけ流しのお湯を堪能することができるのです。
温泉の滝は焼けただれたような色をしており、うろこ状の析出も表れています。私が滝つぼで入浴している時にちょうど見回りのスタッフの方が滝つぼの湯温を計測しに来たので、何度だったか聞いてみますと、曰く46℃とのこと。道理で熱いはずだわ。とにかくこの滝つぼのお湯は熱いので、熱湯に耐性があるお客さんしか入れませんが、でも私が出るのを見計らって入りに行くお客さんもいらっしゃいましたから、意外と熱いお湯を好む方が一定数いるようです。なお滝つぼのお湯は全て主浴槽へオーバーフローしています。先ほど主浴槽の湯口は循環のお湯だと申し上げましたが、洞窟部分から新鮮源泉が注がれているほか、この滝からの全量オーバーフローも受けているため、主浴槽のお湯は循環メインながらも意外と新鮮源泉投入率が高いのかもしれません。

さてお湯に関するインプレッションですが、見た目は無色透明ながら僅かに潮汁のような濁りを呈しており、浮遊物もちらほら見受けられます。非常にしょっぱく出汁味もあり、まるで濃縮液体白だしの原液を口にしているかのようです。湯の滝やその周辺が赤い割に金気味はそれほど感じられず、その一方でカーボン的な匂いというかアブラ臭のような匂いが感じられました。湯中ではツルスベの滑らかな浴感がしっかりしていて、とっても気持ち良いのですが、塩分が濃いために、さかむけや傷口などがかなり沁みます。
塩辛いお湯なので力強く温まりすぐ逆上せてしまいます。つまり湯あたりしやすいお湯です。私も温泉の滝つぼに入っているとすぐに全身が真っ赤になり、辛抱して入り続けていたら、軽くフラフラしてしまいました。でもこの熱い滝つぼに入りたいオジさんたちが、近くのべンチに座りながらじっと様子を伺い、滝つぼが空くのを今か今か待っているのです。熱いので回転は早く、おじさんたちの順番はすぐに回ってくるのですが、世の中には熱いお風呂が好きなマゾヒスティックな同士が多いことに驚かされました。「ごんぎつね」ゆかりの地ですから、湯の滝の左側には石のきつねが飾られているのですが、そのキツネがいささか軽蔑の眼を我々に向けていたように見えたのは、単なる被害妄想でしょうか。
それはともかく、火山に縁もゆかりもない知多半島の中央部で、非加温なのに50℃以上の温泉が湧くとは実に意外ですね。わざわざ訪問する甲斐がある温泉でした。


ナトリウム-塩化物強塩温泉 59.2℃ 溶存物質26.33g/kg 成分総計26.39g/kg
Na+:9530mg(98.26mval%), NH4+:16.0mg, Mg++:46.6mg,
Cl-:13800mg(91.20mval%), Br-:28.2mg, I-:1.5mg, HCO3-:2230mg(8.57mval%), CO3--:5.5mg,
H2SiO3:45.9mg, HBO2:517.0mg, CO2:56.2mg,
(平成28年3月8日)
循環あり(掛け流し浴槽を除く)
加温する場合あり(入浴に適した温度にするため加温することがある)
循環あり(気温の高い期間のみ入浴に適した温度にするため循環)
消毒あり
加水なし

愛知県半田市平和町5-73-2
0569-27-8878
ホームページ

10:00~22:00(受付21:00まで) 月曜定休(祝日の場合は火曜休業)
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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蒲郡市 ラグーナの湯

2021年03月01日 | 愛知県
※残念ながら2021年3月末で閉館します。


前回記事では蒲郡市の複合リゾート施設内にある「ホテルラグーナヒル」に泊まり、その客室内にあるユニットバスで自家源泉の温泉に入ったことをご紹介しました。ホテルに隣接する日帰り温泉施設「ラグーナの湯」は自家源泉を有しており、その一部がホテルの客室に供給されているんですね。今回記事では湯元と称すべき「ラグーナの湯」に入ったときのことを書き綴ります。「ホテルラグーナヒル」の宿泊客は無料で利用することができるのです。客室のお風呂は気兼ねなく、しかも放流式のお湯を楽しめるのですが、せっかくでしたら大きなお風呂で足を伸ばして湯あみしたいものです。そこで、リゾート施設内で夕ご飯を食べ、シャトルバスでホテルへ戻ってから、この「ラグーナの湯」を訪ねてみました。

リゾート内の各施設に比べてかなり小さい造りをしているため、うっかりすると見落とすかも。控えめな玄関から館内に入り、受付カウンターでスタッフの方に宿泊している旨を告げると、笑顔で手際よくレンタルタオルのセットを手渡してくれました。なお一般入浴の料金にもバスタオルとフェイスタオルの貸与が含まれていますので、お金さえ用意すれば手ぶらでお風呂に入れます。


内湯はヨットハーバーを一望するロケーション。大きな窓に面して主浴槽が据えられています。その窓からは、日中なら三河湾の彼方に渥美半島が、夜間はラグーナテンボスの観覧車が眺められるでしょう。湯加減もちょうどよく、のんびりゆったり浸かることができました。
なお、窓(海)と反対側に位置している洗い場にはシャワー付きが6つ設けられており、シャンプー等のアメニティもしっかり用意されています。


内湯の奥にあるドアから屋外に出ると、コンパクトな露天風呂がお出迎え。もちろんこの露天からも眺望を楽しめますが、左右の視界が狭められているため、思いのほか開放感は今一つなのですが、でも潮風を体に受けながらの湯あみは実に気持ちよく、お湯で火照った体をクールダウンさせるにも最適です。なお私の訪問時、露天風呂の湯加減は内湯よりも熱めにセッティングされていました。潮風の影響で温度が下がりやすいのでしょうね。


こちらで使われているお湯は前回記事で紹介した「ラグーナの湯」源泉。館内表示によれば、加水されていないらしく、たしかに内湯・露天とも浴槽にはしょっぱいお湯が張られています。しかしながら加温はもちろんのこと、濾過・消毒は行われており、各浴槽から消毒臭がしっかり感じられたのが残念なところ。限られた資源を有効活用するには仕方ありません。お湯の見た目は無色透明で湯の華などの浮遊は見られません。循環されているとはいえ、しょっぱいお湯ですからパワフルに温まります。迂闊に長湯すると逆上せてしまいますので要注意です。

さて前回記事でも触れましたが、この「ラグーナの湯」と「ホテルラグーナヒル」、そしてホテルに付属するタラソテラピー施設は、残念ながら2021年3月末を以て閉館してしまいます。施設の方や愛好なさっている常連の方々には申し訳ないのですが、正直なところ(私の感覚では)宿泊者特典が無ければ利用を躊躇した浴場であり、手ぶらで利用できるとはいえ、広さやお湯の質を考えると1050円という料金設定は少々高いように思うのですが、でも閉館まであと1ヶ月を切ってしまい、今後再びこの源泉に入ることができるか全くわからないので、アーカイブとしての意味を込めまして、今回記事をアップさせていただきました。


ラグーナの湯
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 36.6℃ 溶存物質10.980g/kg 成分総計10.980g/kg
Na+:1702mg(38.33mval%), Ca++:2369mg(61.20mval%),
Cl-:6315mg(94.39mval%), Br-:20.8mg, I-0.5mg, SO4--:471.7mg(5.20mval%),
H2SiO3:25.2mg, HBO2:14.3mg,
(平成24年11月29日)
加水無し
加温・循環・ろ過・消毒あり

愛知県蒲郡市海陽町2-8
0570-097-117
ホームページ

※残念ながら2021年3月末で閉館します。
7:00~22:30
1050円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★+0.5

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蒲郡市 ホテルラグーナヒル

2021年02月22日 | 愛知県

(2020年2月訪問)
拙ブログでは久しぶりに東海地方の温泉を取り上げます。しかも今回記事は約10年ぶりの愛知県三河地方です。
H.I.Sやトヨタなどが出資している蒲郡市の複合リゾート施設「ラグーナテンボス」には2つのホテルがあります。一つはH.I.Sが運営するチェーンの「変なホテル」で、もう一つが今回取り上げるラグーナテンボス直営の「ホテルラグーナヒル」です。ちょうど一年前の2020年2月にこの「ホテルラグーナヒル」で一泊お世話になりましたので、その時の記録を書き綴らせていただきます。
表玄関はご覧のようにこぢんまりとしており、質素で控えめな印象を受けるのですが、建物自体は三河湾を臨む岸の上に立地しているため・・・


海からホテルを見ると上画像のようになるんですね。実に素晴らしいロケーションです。


客室はご覧の通り。広くてゆったり。手入れもしっかり行き届いています。新東名をひたすら飛ばしてきた私は、部屋に入ると途端に疲れが出てしまったので、部屋に備え付けのネスカフェバリスタでホッとひと息。


お部屋には海に面したベランダがあり、ヨットハーバー越しに渥美半島まで一望できました。時間を忘れてずっと眺めていられます。


朝食は1階のレストランで、海を眺めながら優雅に美味しくいただきました。


私が宿泊した時にはバッフェ形式で、選り取り見取りの中から好きなものを選べましたが、現在はCOVID-19感染予防のため、定食スタイルが採用されているようです。

さて、ここからが本題。
私がこの「ホテルラグーナヒル」に泊まった理由は二つあります。一つは大きな施設でタラソテラピー(海洋療法)を楽しむこと。都内にもタラソテラピーを謳う施設はあるのですが、みんなテナントビルの中で営業するエステの一種としてのサービスであり、大きなプールを擁するタラソテラピー施設は2020年時点で関東地方に無く(私調べ)、なぜか東海地方に集中して複数営業しているので、宿泊施設を伴っているこのラグーナテンボスまでわざわざやってきたのでした。

そしてもう一つ大きな理由は、ここに泊まらないと入れない温泉があるからです。
といっても、ホテル内に大浴場があるわけではありません。


温泉に入れるのは、各客室内にあるごくごく普通のユニットバス。でもバスタブの上をよく見ると・・・


浴槽上の壁からは独立した水栓が取り付けられています。水栓の上を見ると「ラグーナの湯の源泉がここから出ます」と書かれているではありませんか。そう、今回の目的はこの水栓に他なりません。「ラグーナの湯」とはホテルに隣接している日帰り入浴施設のことで、たしかにそこでは独自源泉の温泉に入れるのですが、しっかり加温加水循環消毒されているため、申し訳ないのですが、あまり温泉マニアの心を揺さぶってくれるものではありません。
しかし、このホテルでは同じ源泉のお湯を引いており、加温・濾過されているものの、この水栓から非加水非循環(※)の温泉をバスタブへ注ぐことができるのです。
(※)非循環といっても一般的なホテルと同様に、給湯系統内では貯湯タンクと配管内で温泉を循環させているはず。ここでの非循環とは、浴槽内で使いまわしていない、という意味です。


ということで、さっそく温泉専用の水栓を全開!


全開したにもかかわらず、吐出圧があまり強くないため、浴槽を満たすまで結構な時間がかかりました。指をくわえながら1時間弱は待ったでしょうか。ホテルなどの中央式給湯設備(貯湯槽でお湯をストックしてお湯を循環させながら各部屋へお湯を供給する方式)では、貯湯槽で60℃以上、末端の給湯水栓で55℃以上を保たねばなりませんから、勢いは弱いながらもかなり熱く、やむを得ず多少加水しながら入浴に十分な嵩までお湯を満たしました。

濾過されているお湯ですが、磯の香りがしっかりと漂い、塩味と苦汁味、石膏味、そしてサルフェート的な微収斂が感じられます。湯中ではキシキシと引っかかる浴感と、食塩泉的なツルスベ感が拮抗しながら、肌にシットリと馴染んでくれます。とにかく強い味が印象的で、お湯の鮮度感もまずまず。ユニットバスなので風情はありませんが、お湯の質としてはなかなか良い方ではないでしょうか。しかもお湯を使いまわさない放流式の湯使いには違いありませんので、湯使いにこだわる方にも満足していただけるでしょう。
この「ラグーナの湯」はおそらくご近所の三谷温泉と同じような泉質と認識して良いかと思いますが、三谷温泉は歴史ある温泉街にもかかわらず、ほぼ全ての旅館でかけ流しのお風呂は無いかと思いますので(間違っていたらごめんなさい)、この客室で入れる温泉は当エリアでは非常に貴重な存在と言えましょう。

ところで、この「ホテルラグーナヒル」ですが、コロナ禍の影響により残念ながら2021年3月末を以て閉館してしまうそうです。ホテルのみならず、付帯しているタラソテラピー施設や日帰り温泉施設も同時に閉館するとのこと。
上述しましたように、三谷温泉エリアでかけ流しに近い状態のお湯に入れるお風呂はおそらくここだけではないかと思われますので、関心ある方は是非お急ぎください。


ラグーナの湯
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 36.6℃ 溶存物質10.980g/kg 成分総計10.980g/kg
Na+:1702mg(38.33mval%), Ca++:2369mg(61.20mval%),
Cl-:6315mg(94.39mval%), Br-:20.8mg, I-0.5mg, SO4--:471.7mg(5.20mval%),
H2SiO3:25.2mg, HBO2:14.3mg,
(平成24年11月29日)

愛知県蒲郡市海陽町2-8
0570-097-117
ホームページ

私の好み:★★+0.5
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尾張温泉 湯元別館

2012年01月03日 | 愛知県
愛知県・蟹江の尾張温泉と言えば、馬鹿デカい入浴施設である「尾張温泉東海センター」がまず思い浮かぶでしょうね。温泉不毛地帯の愛知県では珍しく掛け流しの温泉が楽しめる稀有な施設ですが、私の実体験から申し上げますと、この東海センターは館内で毎日開催される歌謡ショーや大衆演劇の方が目立っており、中高年の加齢臭がムンムンとしているような雰囲気に戸惑ってしまい、浴室内でもお年寄りのお客さんが非常に多くてじっくりお湯を楽しめる環境ではありませんでした。でもお湯だけは良かったので、ここ以外でどこかのんびりと尾張温泉に浸かれる場所はないかと探していたときに見つけたのが、今回取り上げる「湯元別館」であります。尾張温泉には日帰り専門の「東海センター」や棟続きの「観光ホテル」の他、料理旅館の「湯元館」、そしてその別館である「湯元別館」があるのです。尾張温泉は東海ラジオの子会社(東放企画)が全面的に運営管理しており、「湯元別館」も「東海センター」も経営母体は同じかと思われますが、昭和風情という大雑把な括り以外は全く異なる佇まいなので、その対照的なコントラストが面白く思いました。


 
近鉄蟹江の駅前には尾張温泉の歓迎ゲートが立てられています。でもここから温泉までは2km弱離れているんですけどね。


 
「湯元別館」はかなり地味な外観で、注意しないと民家と勘違いして通り過ぎてしまいそう。
まさかここで日帰り入浴できるとは想像できません。事前の調査では日帰り入浴開始時間は午前11時かららしいので、実際に11時に訪れてみると門は固く閉ざされており、電話で確認してみたら「12時からですけど」とのこと。仕方ないので、近所のピアゴ(スーパーマーケット。旧ユニー)でコーヒーとパンを口にしながら時間を潰して待つはめに…。


 
12時きっかりに伺ったら、門扉が開けられていたので一安心。庭園のような敷地内に受付・食堂・客室など全てが別戸の離れになって分散しているのですが、どの建物が受付なのかわからず、内部から声が漏れ聞こえる左手の建物へ「ごめんください」と声をかけてみたら、すぐに男性の方が現れて、お風呂へと案内してくださいました。


 
幾棟か建ち並ぶ平屋のちいさな建物のうち、一番右奥が浴場棟でした。勝手口のような小さく狭い入口を上がると、目の前に女湯の暖簾が下がっており、廊下の奥に男湯を確認。下足棚を見る限りでは、まだ誰も中へ入っていないようです。やった! 一番風呂だぁ。


 
浴室は男女別の内湯が一室ずつ。人工芝が敷かれた脱衣室は全体的に古びた作りですが、よく手入れされており、気持ち良く利用できました。浴室内にはボディーソープやシャンプー類などの備え付けが無いのですが、脱衣室内には専用台に置かれた石鹸が2つほどあり、利用者はおそらくこれを使っても良いのでしょう。


 
渋い装いの浴室には、窓際に据えられた岩風呂風の浴槽がひとつ。4人サイズといったところでしょうか。



洗い場のカランは、古典的な蛇口(湯と水のセット)が3基と、シャワー付き混合栓が2基、それぞれ互い違いに設置されています。このうち、古典的な蛇口から出てくるお湯は源泉なのですが、吐水の勢いが弱く、しかも配管が長いのか、かなりぬるめでした。一方シャワーの方のお湯は真湯なのですが、水道水が悪いのか泥臭さが気になってしまいました。


 
湯口は浴槽の底の左右両側にあり、塩ビVP管の先から泡と共に手のくわえられていない源泉が投入されていました。湯口が浴槽の中なので源泉投入量がわかりづらいのかと思いきや…


 
オーバーフロー量を見れば一目瞭然。浴槽の容量のわりには源泉投入量が多いようでして、常時ふんだんに縁から流れ出て川を形成しており、私が浴槽に入ると排水が追い付かずに床が洪水状態になるほど、ザバーっと音を立てながら勢いよく大量に溢れ出ていきました。加水加温循環消毒が一切ない完全掛け流しなんですから天晴れです。


常時オーバーフローしている床の流路はお湯の色によって茶色に染まっていました。


 
「東海センター」と同じ源泉を引いているはずなのですが、めちゃくちゃデカい浴槽のあちらと違って、こじんまりとした湯船へたくさんのお湯が注がれているこちらの方が、お湯の新鮮さや質感がはっきりと伝わってくるような気がします。

見た目は薄い茶褐色で透明、ほろ苦みと弱い金気味、弱いモール臭と弱い金気臭に鉱物油臭とアンモニア臭が感じられ、これらの知覚がひと段落自分の感覚神経を刺激した後から、弱めのタマゴ臭と味が時間差で遅れて伝わってきました(タマゴ的な匂いと味は蛇口で特に明瞭)。総じて薄い知覚ですが、薄いながらもはっきりとした主張を有する個性的なお湯です。そして特筆すべきはしっかり気泡が付着すること。加水されていないのでちょっと熱めの湯加減なのですが、その熱さを身を慣らしながらお湯にじっくり浸かっていると、肌全体の気泡がビッシリと付着するのです。モール的なお湯ですし、炭酸水素イオンも陰イオンの主役になっていますから、この気泡は炭酸ガスなのかもしれませんが、でも熱いお湯は炭酸ガスの飽和量が減ってしまって大気中に逃げてしまうので、炭酸ガスではなく窒素などその他のガスである可能性もあります。ま、いずれにせよ気泡が付着して全身がアワアワになることには変わらず、その泡のおかげでとってもツルツススベスベ爽快な浴感が楽しめました。

「東海センター」よりも(私の実感として)鮮度の良いお湯が堪能できるにもかかわらず、さすがにここで入浴できることを知っている人が少ないからか、あるいはわざわざ金を払って小さいお風呂に入ろうと思わないためか、訪問時(年末の昼12時)は一番風呂であったのみならず、1時間近くひたすら独占できてしまいました。そして独占できた喜びとお湯の良さにどっぷり嵌り、すっかりこのお風呂が気に入ってしまいました。
ここは永和温泉と並んで、愛知県屈指の名湯ではないでしょうか。お湯のみならず宿泊の評価も高いようですので、次回は宿泊で利用してみたいものです。


尾張温泉1号泉・2号泉・4号泉(混合泉)
単純温泉 50.3℃ pH不明 溶存物質0.6204g/kg 成分総計0.6239g/kg
Na:156mg(91.75mval%),
Cl:100mg(37.20mval%), HCO3:285mg(61.62mval%)

近鉄名古屋線・近鉄蟹江駅より徒歩20分(1.7km)
愛知県海部郡蟹江町源氏3-59  地図
0567-96-2552

日帰り入浴時間:要問い合わせ
(日によって変動するみたいです。私の訪問時は12:00~でした。20:00までという情報あり)
500円
備品類なし(室内の石鹸は使っていいのかしら?)

私の好み:★★★
コメント (13)
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