温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

浅虫温泉 椿館

2015年04月30日 | 青森県
 
私は年に何度か津軽地方を訪れる機会があるのですが、五所川原や鰺ヶ沢等といった所謂「西北五地方」(※1)が拠点となるため、青森市の市街を抜けた先の、津軽のほとんど東端と言っても差し支えないような場所にある浅虫温泉には、あまり足を運ぶ機会がありません。でも、たまにはちょっと遠回りしてみるのも良いかと考え、昨年の秋に予定をやりくりして当地をじっくり湯めぐりしてみることにしました。道の駅にある観光協会で「麻蒸湯札」(※)を購入し、それを手にしてまず向かったのが、棟方志功ゆかりの老舗旅館「椿館」です。
(※1)西津軽郡・北津軽郡・五所川原市の頭文字をとった地域名。津軽地方の北西部にあたり、大雑把に表現すれば津軽半島の西半分。
(※2)いわゆる湯めぐり手形のこと。1,500円で3軒の協賛施設に入浴可能。最近1,000円2軒という湯札も発売されるようになった。詳しくは浅虫温泉観光協会公式サイトをご参照あれ。



  
正面玄関には不動明王の小さなねぶたが、そして玄関左手に広がる駐車場の一角には、「名誉市民」の提灯を手にする巨大な棟方志功のねぶたが展示されていました。前者は単なる飾りでしょうけど、後者は実際に運行されたことあるのかな。あるいはただのハリボテかな。生前の氏は仏教などを題材とした多くの作品を残していますが、まさか自分がこんな形で造形化されるとは、想像だにしていなかったことでしょう。禿頭と縁の厚い眼鏡以外、あまり似ていない気がしますが、まぁこれもご愛嬌。青森市の名誉市民には他に淡谷のり子や三浦雄一郎といった著名な面々がいらっしゃいますが、私個人としては、棟方志功と同じく「削る」アーティストであるナンシー関も是非その一員に加えてほしいなぁ、なんて思っています(無理だろうけど)。


 
帳場で「麻蒸湯札」を提示して入浴をお願いしますと、とても丁寧に対応してくださいました。さすが老舗旅館だと感心しながら、浴室へと続く廊下を進みます。廊下の壁には棟方志功を写した写真がたくさん展示されており、ちょっとした博物館状態です。廊下の突き当たりに男女別の浴室出入口があり、その間には温泉水を冷やした飲水のサービスが実施されていました。


 
 
木目やそれに準じた和の色調で統一されている脱衣室は、隅々まで清掃が行き届いており、清潔感が漲っています。棚の角には神様が祀られており、単に綺麗にするだけでなく、伝統的な習慣を大切に守っているところは、いかにも老舗らしい姿です。いまでこそボーリングすれば新たな源泉を求めることができますが、そもそも温泉は天からの恵みであり、神様を怒らせてお湯が止まってしまったら、宿を続けることができませんからね。
こちらで使われている源泉「椿の湯」は、現在ではあと一歩のところで数値が足りずに単純泉となっていますが、室内に掲示されている古い分析表の数値から推測するに、以前は含芒硝-石膏泉を名乗れるほどの成分を有していたようです。尤も、現在の源泉のデータだって、ほとんど含芒硝-石膏泉と同じですけどね。なお、飲泉に関して、飲泉許可受けているのは玄関にある17号泉であるから、浴室のお湯は飲んじゃダメという注意が喚起されていました。ということは、浴場のお湯とは別に、飲泉用の源泉があるってことか…。


 
浴室に入った途端、はっきりとした芒硝臭とともに、磯の香のようなツーンと来る香りが微かながら漂ってきました。嫌が応にもお湯への期待に胸が膨らみます。脱衣室同様に、とてもよく整頓された綺麗な浴室内は、ブラウン系やチャコールグレーのタイルが多用されており、淡いミントグリーンの明るい浴槽とのコントラストが大変鮮やかです。
浴室の左手奥と右手手前に洗い場が配置されており、設置されているシャワー付きカランは計10基。カランから出てくるお湯はおそらく温泉かと思われます。


 
室内にいくつかある浴槽のうち、主浴槽は目測で9m×4mという大きなキャパを有し、中程の柱に取り付けられている石造りの投入口より温泉が落とされています。この湯口で既に加水されており、この塩梅が絶妙であるため、湯船では万人受けする42℃前後の湯加減が保たれていました。そして浴槽の縁から洗い場へ、惜しげも無く溢れ出ていました。脱衣室の注意書きによれば、浴槽のお湯は飲泉に適さないとのことですが、喉を通さず口に含む程度なら問題ないだろうと、湯口のお湯を手にとってテイスティングしてみますと、芒硝味と石膏味(硬水のような重たい味。エビアン系)の他、微かな塩気があり、芒硝臭と弱い臭素的な香りが嗅ぎ取れました。浅虫温泉では多くの施設で共同管理された混合泉を引いていますが、こちらでは9本の自家源泉をブレンドした「椿の湯」というお湯を使っているんですね。


 
主浴槽の隣にはぬるい打たせ湯が並んでおり、その吐出口は2本あるのですが、私が訪れた日は1本のみの使用でした。一方、脱衣室寄りに設けられているのは寝湯(右(下)画像)で、打たせ湯より若干湯温が高い程度のぬるいお湯が張られており、じっくり長湯できる仕様となっていました。


 
 
浴室の最奥から屋外へ出ますと、小ぶりな日本庭園の中に岩造りの露天風呂がお湯を湛えていました。裏庭のような佇まいであり、周りは垣根で囲まれ、すぐ目の前に椿などの庭木が立ちはだかっているため、屋外にもかかわらず閉塞感は否めません。でも屋号になっている椿は、きっと花の季節になると彩りを添えてくれるのでしょう。この小さな世界を、狭いと捉えるか上品と理解するかは個々人の感覚によるかと思います。お湯は槽内のパイプから投入されており、オーバーフロー管によって排湯されていました。加水の有無やその程度によるのか、内湯よりもやや熱く、味や匂いも若干はっきりしているように感じました。逆に言えば、内湯は加水によって薄まっているのでしょうね。湯中ではマイルドなツルスベ浴感があり、しっとり潤って、湯上がりはモチモチ肌になりました。


 

お風呂あがりに、玄関前の飲泉所で飲泉してみることに。掲示されている分析表は浴場と同じものですが、実際にこの飲泉所では17号泉という別の源泉が引かれているんだとか。蛇口の先には白い析出がコンモリこびりついており、指先で触れてみたところ、今すぐにでも浴槽に溜めて入浴したくなるような、絶妙な湯加減でした。しかもお湯からは石膏臭とともにふんわりとしたタマゴ臭が感じられ、味覚面でも明瞭な石膏味とタマゴ味が口の中に広がりました。明らかに浴場のお湯より主張の強く、しかも温度も素晴らしいので、できればこの17号泉に入浴してみたいものですが、飲泉用としてチョロチョロ流しているということは、湯量的に難しいのかな。
老舗の風格を感じながら、他のお宿とちょっと違う質感のお湯が楽しめる、上品で素敵なお風呂でした。


椿の湯(1・2・3・4・5・6・7・8・9号泉の混合泉)
単純温泉 74.5℃ pH8.0 292.7L/min(動力揚湯) 溶存物質0.969g/kg 成分総計0.969g/kg
Na+:153.5mg(48.00mval%), Ca++:139.4mg(50.00val%),
Cl-:122.4mg(25.67mval%), Br-:0.3mg, SO4--:456.2mg(70.69mval%), HCO3-:16.8mg, CO3--:5.4mg,
H2SiO3:65.6mg,
加水あり(源泉温度が高いため地下水を通年加水)

青い森鉄道・浅虫温泉駅より徒歩7分(550m)
青森県青森市浅虫字内野14  地図
017-752-3341
ホームページ

日帰りは「麻蒸湯札」を利用(6:30~8:00、13:00~15:00)
貴重品はフロント預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント (6)
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町居温泉 平賀観光温泉

2015年04月29日 | 青森県
今回からはしばらく青森県や秋田県の温泉を連続して取り上げてまいります。といっても昨年の秋に訪問した際の内容です。いつもながら鮮度感に欠ける内容で申し訳ございません。

 
津軽平野には「犬も歩けば温泉に当たる」と言っても過言ではないほど高密度で温泉浴場が存在していますが、今回はその中でも旧平賀町の町名を冠した温泉銭湯「平賀観光温泉」へと向かいました。県道の路傍に立つ看板を、隣接する特養老人ホームと共有しているので、おそらく両者は同じ経営母体なのかと思いますが、観光という名前とは対照的に、浴場自体は渋くて古風な佇まいであり、家庭的な雰囲気すら漂っています。玄関前にはベゴニアのプランターが段をなしてたくさん並べられており、それらは扉の前の半分を埋め、ほとんどバリケードと化していました。よほどお花が好きなオーナーさんなのでしょう。


 

玄関を入って左前方にある番台で湯銭を支払います。番台には手芸のタペストリと並んで、台湾の蝶の標本が飾られていました。どなたか関係者にこの手の趣味者がいらっしゃるのでしょうか。番台と反対側は、ソファーやテレビが置かれた休憩スペースです。


 
脱衣室はごくごく普通の公衆浴場スタイルで、番台のような何もないカウンターが、男女両室の境に設けられています。こうした構造の脱衣室って、津軽地方の温泉銭湯を巡ったことのある方にとっては、ものすごく既視感のある光景ではないでしょうか。温泉浴場の構造は、地方によって独特の特徴があるものです。


 
レンガ色のタイルが敷かれた浴室は、天井の高さのおかげなのか、かなり広々とした空間であるように感じられます。好天に恵まれたこの日は、浴槽の湯面が窓外の木々の緑を映しており、床の色合いと補色関係になって、なかなか美しい色彩美が見られました。浴槽手前は洗い場ゾーンであり、左右の両壁と中央の島に、計14基のシャワー付きカランが設けられていました。カランから出てくるお湯は、おそらく温泉だろうと思われます。


 
浴槽は大小の2つに分かれています。大きな浴槽は五角形で、窓側の長辺(左右の幅)は約5m、奥行きは広いところで約4mといったところ。ざっと見ても10人以上は余裕で同時入浴できそうな大きさです。カラフルな模様の色ガラスが嵌められた仕切り塀の隅っこに、石膏の天使が佇んでおり、その足元からお湯が浴槽へと注がれています。この湯口に指先を突っ込んでみますと、内部の左側から冷たいものが流れ込んでいたので、この湯口内で加水が行われているらしく、それゆえに万人受けする丁度良い湯加減(42℃前後)が保たれていました。


 
一方、その右側の小さな槽は4~5人サイズで、浅い造りながら、槽内のお湯は大変熱く、まともに入れそうではなかったので、今回こちらの入浴は遠慮させていただきました。お湯は塩ビ管から落とされており、加水は行われていないようです。熱さにおののく私を嘲笑うかのように、浴槽縁では2匹のカエルが徳利を片手にニヤニヤした表情を浮かべていました。かつてはこのカエルの下からお湯が投入されていたのかな。女湯との仕切り塀に嵌められているカラフルな模様のガラスといい、天使の石膏像といい、この素っ頓狂な面持ちをしたカエルの置物といい、昭和40~50年代の中央線沿線(杉並区)でチラホラ見られたようなメルヘン調のお店に通じるセンスがところどころに散りばめられており、それらを眺めながら入浴していると、得も言われぬ不思議な気分に包まれました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭なのですが、よくよくテイスティングしてみますと、弱い芒硝感や微かな樹脂っぽい風味、そしてごく僅かな苦味が含まれているようでした。pH8.6という数値が示すように、弱いながらもアルカリ性泉らしいニュルっとした感覚を伴うツルスベ浴感が心地良く、それでいてお湯自体はアッサリしているので、癖のある温泉はどうも苦手という方におすすめの優しいお湯です。また、津軽地方を温泉巡りをしていて、この界隈に多く湧出する火照りの強い食塩泉に飽きてしまったら、ワンクッション置くためにここを訪れるのも良いかもしれません。ほとんど癖が無いので、アッサリサッパリ湯浴みできるのが嬉しいところです。もちろん、両方の浴槽とも放流式の湯使いであり、縁から洗い場へふんだんに溢れ出ていました。お湯に癖は無いものの、飾り等にちょっとした個性が見受けられる、ある意味でユニークな施設でした。


アルカリ性単純温泉 49.4℃ pH8.6 150L/min(動力揚湯) 溶存物質0.710g/kg 成分総計0.710g/kg
Na+:165.8mg(92.08mval%),
Cl-:47.3mg(17.85mval%), Br-:0.1mg, SO4--:204.9mg(57.32mval%), HCO3-:56.8mg(12.48mval%), CO3--:21.6mg(9.67mval%),
H2SiO3:191.8mg,

弘南鉄道・平賀駅より徒歩30分強(2.5km)、あるいは同駅から平川市循環バスの新屋・尾崎線で「町居東口」バス停下車すぐ
青森県平川市町居山元259-1
0172-44-8585

6:30~21:00、12/31と8/13の午後休み
300円
ドライヤー(有料)、他備品類なし(番台で各種入浴道具の販売あり)

私の好み:★★
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郡山市 のんびり温泉 後編(大浴場)

2015年04月27日 | 福島県
前回記事の続編です。

●大浴場

「パノラマ大展望風呂」からバックヤードの如き質素な長い通路を戻り、多くのお客さんで賑わう「大浴場」へと向かいます。男女両浴室入口の間にはマッサージチェアが4~5台設置されており、私が入ろうとした時には、全てのチェアが湯上がりのオバサン達で占拠されていました。「女三人寄れば姦しい」と言いますが、首にタオルを巻いた4~5人のオバサンは、みなさん一言も発することなく静かに瞑目して、揉み玉の動くがまま体を細かく揺らしています。普段は賑やかなはずのおばさん達を黙らせてしまったのは、マッサージ機の性能が良いためなのか、はたまた温泉のパワーによるものなのか…。

脱衣室にはグレーの事務用スチールロッカーが、ズラリと沢山並んでいました。不思議なことに、郡山界隈の各温泉施設では、脱衣室にこの手のオフィスロッカーを採用する傾向にあるのですが、これって何か特別な事情でもあるのでしょうか。ただこちらの場合は室内面積の割にロッカーの数が多く、時と場合によってはちょっと狭く感じることもありました。尤も、任意のところが使えるので、他のお客さんとの干渉が嫌ならば、使用中のロッカー(リストバンドの鍵がない箇所)を避ければ良いのですけどね。


 
大きなガラス窓からの充分な採光によって爽快な明るさと広さを有する浴室は、手入れが行き届いているため清潔感もあって、利用客の多さが気にならないほど気持ちよく使えました。大きな窓の下には温泉が張られた主浴槽の他、ジャグジー槽と水風呂が配置されており、脱衣室寄りにはサウナや洗い場などが並んでいます。洗い場にはシャワー付きカランがL字形に6基設置されています。

サウナの右側にある2つの槽(右(下)画像)は、水風呂とジャグジー槽です。前者に張られた冷水は薄っすらと黄色を帯びているので、単なる水道水ではなく何らかの成分を含んだ鉱泉ではないのかと思われます。一方、後者には温泉が放流式の湯使いで用いられているのですが、投入量を絞っている上、気泡の影響を受けるためか、(私の体感で)後述する主浴槽より1℃ほど低めの湯加減(41~2℃)となっていました。私が訪れたのは厳冬期でしたから、体をしっかり温めてくれる熱い風呂が好まれるのかと思いきや、じっくり長湯できるこのぬるめのジャグジーが殊の外人気を集めており、せっかく大きな主浴槽があるのに、常連さんはこの小さなジャグジー槽に集まって、肩を寄せ合いながら談笑に興じていらっしゃいました。


 
2方向が窓に面している明るい主浴槽は、目測で5m四方というかなり悠々とした容量を有しています。この浴室に入ると誰しも目を奪われるのが、頭上でうしろ手を組んでいる艶かしいブロンズの裸婦像でしょう。男性入浴客を挑発しているようにしか思えないこの裸婦像の直下に湯口があり、ドバドバとふんだんに温泉が投入されています。そして波立たせながら湯船を満たしたお湯は、赤御影石の縁の上を絶え間なく溢れ出ており、排水口である床の目皿では、そのお湯がグルグル渦を巻いていました。
容量の大きな浴槽であるにもかかわらず、投入量が充分であるためにお湯の鮮度は実に良好であり、温度も冷めることなく、43℃というちょっと熱めの湯加減となっていました。


 
大浴場を右手に見ながら屋外に出ると、一帯の風景を見下ろせるテラスとなり、そこから木製のステップを下ってゆくと露天風呂です。この「のんびり温泉」では、着替えと移動の手間さえ厭わなければ、2つの露天風呂が楽しめるんですね。でも視界が高い分だけ、この「大浴場」に付帯している露天の方が、見晴らしは優っているような気がします。



斜面の途中に設けられた露天風呂は、よくある日本庭園風のレイアウトなのですが、丘下の田んぼへとつながる斜面の松林を借景にしており、頭上に屋根などの視界を遮る構造物が無いので、実際の面積よりはるかに広い開放感が得られました。内湯ほどではありませんが、岩造りのお風呂もそれなりの容量を擁しており、10人程度なら余裕で同時に入れそうな感じです。また、縁に並べられている岩の凸凹の塩梅が良く、入浴中に仰向けになりながら岩に頭をのせると、上手い具合フィットしてくれたので、これを枕代わりにすることによって安定した寝湯も楽しめました。


 
夜の露天風呂もなかなか良い雰囲気でした。先程述べたように、岩の隙間に頭を載っけて寝湯のように入浴していると、キンと冷えきった夜空に皓々と輝く月が浮かんでおり、闇が深くなるに連れて満点の星が瞬くようになりました。施設の名称の通りに、私はこの露天で夜空を見上げながら「のんびり」湯浴みさせていただきました。


 
露天の湯口に裸婦はおらず、先っちょにネットが被せられた塩ビ管があるばかりです。そういえば前回記事で取り上げた「パノラマ大展望風呂」の湯口にもネットが巻きつけられていましたが、こちらで使っている源泉は固形物が混入しやすいのでしょうか。この管からは内湯同様に豊富な湯量が吐出されており、そのかげで冬季の屋外にもかかわらず、あまり湯冷めしないで内湯と大して変わらないほどの湯加減がキープされていました。湯量が豊富であることは溢れ出しを見てもわかることであり、手前側のステップからはドバドバと惜しげも無く排出されていました。

温泉を引いている各槽は同じ源泉を用いており、お湯の見た目は無色透明で、お湯を手に掬って口に含んでみますと、弱い芒硝的な味と匂いとともに微かなミシン油っぽい香りが鼻に抜け、口の中にペパーミントを思わせるようなスーッとする清涼感も得られました。pH9以上の比較的高いアルカリ性を有しているだけあり、含食塩-芒硝泉という泉質名から想像できないツルツルスベスベ浴感が強く、あたかもローションの中に浸かったかのような、滑らかなフィーリングにびっくりします。また内湯の主浴槽や露天風呂ではお湯のフレッシュ感も素晴らしく、少々の熱さも相俟って、シャキッと蘇るような爽快感が全身を走りました。先程マッサージチェアで静かに横になっていたおばさん達は、お風呂でホコホコに温まったことに加え、自分の肌が滑らかになったことにウットリして、本能的に更なる健康効果を求めたくなったのかもしれません(なんてね)。なお湯中における泡付きは見られず、湯口や槽内などには硫酸塩泉でよく見られる析出も現れていませんでした(後者に関してはこまめな清掃によるものかもしれませんが)。


 
脱衣室の洗面台にはドライヤーが完備。同室内には酪王牛乳のベンダーも設置されていましたので、湯上がりには福島県のソウルドリンクとでも言うべき「酪王カフェオレ」を一気飲みし、郡山の恵みを満喫しました。風呂上がりのコーヒー牛乳は本当にうまい!
大きな施設なので、あまりお湯に期待していなかったのですが、予想を覆す浴感と鮮度感の良さには大いに驚かされました。


ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 49.1℃ pH9.3 溶存物質1.088g/kg 成分総計1.088g/kg
Na+:313.3mg, Ca++:30.9mg,
F-:5.1mg, Cl-:134.9mg, OH-:0.4mg, SO4--:522.9mg, CO3--:18.0mg,
H2SiO3:39.2mg, HBO2:21.5mg,

福島県郡山市三穂田町山口山崎山11-1
024-953-2611
ホームページ

7:30~22:00
800円(平日600円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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郡山市 のんびり温泉 前編(パノラマ大露天風呂)

2015年04月25日 | 福島県
 
 
郡山南インター付近にはいくつもの温泉浴場があり、私が車で東京方面へ戻る際には、界隈でひとっ風呂浴びてサッパリしてから、東北道を南下することがしばしばです。今回はインターから西へ向かった郊外の小高い丘の上にある「のんびり温泉」へ立ち寄りました。個人的には7年ぶりの再訪です。
丘の上に設けられた駐車場からは、盆地西端の水田地帯やその彼方に広がる稜線が見渡せます。この景色を眺めながら深呼吸し、胸いっぱい空気を吸い込んでから館内へ入りました。界隈でも屈指の規模を有するこちらの温泉施設は、以前拙ブログで取り上げたことのある高湯温泉「のんびり館」と同じ経営母体であり、他に県内の信夫温泉や沼尻温泉でも同系の施設が営業中です(ちなみに本社は茨城県にあるんだとか)。
券売機で料金を支払い、フロントに券を手渡します。なお下足場の鍵はフロントに預けず自分で管理します。広いホールには物販品がたくさん並んでおり、その奥にある休憩用のお座敷では湯上がりのお客さん達が、丸太のような図体を横にし、浜辺のトドのように寝っ転がっていました。


●パノラマ大露天風呂
 
 
こちらの施設にはメインである「大浴場」の他、「パノラマ大露天風呂」と称する離れの露天風呂があり、両者はちょっと離れているのですが、利用客はどちらでも入浴が可能です。今回訪問したのは誰もが汗を流したくなる夕刻であり、駐車場にはたくさんの車が止まっていたので、館内は混雑しているだろうと見当はついていたのですが、「大浴場」の中をちらっと覗いたら、案の定、洗い場が全て埋まるほど混んでいたので、そちらは後回しにして、まずは「パノラマ大露天風呂」から入ることにしました。
「大浴場」の入口前には案内が掲示されていましたので、その矢印に従って奥へ奥へと進んでいったのですが、カラオケの個室群を右に見ながら厨房の勝手口と思しき出入口を出ると、その先は明らかにバックヤードとなってしまい、「ここって客が進入しても良いの?」と不安になるほど殺風景な連絡通路を歩くのでした。もしここで誰かとすれ違ったら「こんにちは」ではなく「お疲れ様です」と口にしてしまうそうな雰囲気です。連絡通路はやがて緩やかな下り階段となり、その先に離れの小屋が接続されていました。


 

フローリングの休憩室にはマッサージチェアや自販機の他、ソファーマットがいくつも並べられています。しかしながら、お客さんで大賑わいだった「大浴場」とは対照的に、こちらは人っ子一人の気配も感じられません。この休憩室の左右両側に男女浴室の入口があり、男湯側には天狗、女湯側にはおかめのお面が飾られていました。なんだか意味深…。
脱衣室には郡山エリアの温泉浴場にはよくある事務用スチールロッカーが設置されています。設備としては、次回記事で取り上げる「大浴場」の脱衣室よりも簡易であり、ドライヤーなど他の備品類はありません。


 
脱衣室を出た先に広がっていたのは、大露天の名に恥じない広くて立派な露天風呂でした。でも、ひと気が感じられないどころか、本当に誰もいません。一応洗い場はあり、シャワー付きカランが3つ並んでいるのですが、いくら屋根に覆われているとはいえ、冬の寒風にさらされる屋外ですから、わざわざ寒い中でシャワーを浴びようとする人もいないのでしょう。


 
てっきり露天風呂だけかと思いきや、上画像のような小さい内湯も併設されており、中にはシャワー2基とポリバスが一つ設置されているのですが、造りが簡易的であり、しかも槽内は空っぽで、水栓のハンドルも抜き取られていたため、お風呂として利用できる状態にありませんでした。この内湯はあくまで「オマケ」としての位置づけなのでしょう。


 
 
浴槽はおおよそ6.5m×10mの大きな四角形(完全な四角形ではなく部分的に変形しています)。基本的にはコンクリ造ですが、表面には化粧の石が埋め込まれており、槽の中央や湯口付近には日本庭園をイメージさせるような大きな岩が据えられています。頭上は屋根で覆われているため、広さの割に開放感に乏しく、私が訪れた夕暮れ時には、屋外なのに薄暗さを覚えました。でも、屋根を設けないと悪天候時には利用できませんし、湯船の温度管理も難しくなってしまうのでしょうから、一人の利用客として、大きな湯船の上を屋根掛けする必要性も理解できるところです。一方、大きさと並んでこの露天風呂の売り文句である「パノラマ」ですが、樹々の間から丘の下に広がる盆地や山々の稜線が眺められるものの、目の前の木立によって視界が遮られてしまい、パノラマという言葉から期待できるほどの眺望は得られませんでした。あくまで私の個人的な感想ですが、次回記事で取り上げる「大浴場」の露天の方が、開放感や眺めは優っているように思います。


 
この広大な露天風呂にお湯を注ぐ湯口は2つあり、ひとつは岩から突き出たパイプよりお湯が落とされています。パイプの口には湯の華など固形物を濾し取るためのネットが被せられていますが、ここからの供給量は少なく、チョロチョロといった程度で、大きな湯船を満たすだけの量には及びません。もう一つの湯口は脱衣室側の浴槽縁に設けられた木のボックスで、箱からお湯が垂直にドバドバと落とされており、明らかにこちらがメインの投入口となっていました。槽内にお湯の吸引口などは見られず、ほぼ全量が男女両浴室の仕切り下にある切り欠けから排湯されているようでしたから、放流式の湯使いなのだろうと推測されます。

表面積が広くて冷めやすいためか、私の体感で41℃あるかないかといった湯加減ですから、じっくり長湯できるものの、真冬の夕暮れ時にはぬるくて肌寒く感じてしまいました。常連のお客さんはこうした事情をご存知なので、わざわざ通路を歩いて、この離れの露天風呂まで来ようとしないのでしょう。でも、夏でしたら直射日光を受けずに湯浴みできますし、程よく温度が下がっているならば暑い季節でも長湯できますから、冬以外でしたら存分に露天入浴を愉しめるのではないかと想像します。
お湯の熱さが物足りなかったので、この露天風呂は早々に切り上げ、「大浴場」へと戻ります。

後編につづく
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中ノ沢温泉 花見屋

2015年04月23日 | 福島県
 
同じ温泉地の内にあるご近所同士のお宿を節操もなくハシゴしてしまう私の湯めぐり。前回取り上げた中ノ沢温泉「大阪屋」に続いて立ち寄ったのは、庭園露天風呂がご自慢の「花見屋」です。「大阪屋」の露天風呂は幻想的な蒼さと濃厚な白濁を呈しておりましたが、記事の中で述べたように、濃厚白濁はイレギュラーな状態ですので、他のお宿でも同様の現象が見られるのか確かめるべく、こちらへ伺ったわけです。
左右に長いフロントにて日帰り入浴をお願いしますと、手際良く対応してくださいました。私のように入浴のみの利用客も多いのでしょう。


 
フロント左手から伸びる廊下を進んで、その奥にある浴室へと向かいます。途中にいくつかある業務用出入口には、会津葵の暖簾が下がっていました。


 
廊下の突き当たりの丁字路を左に折れると女湯、右に曲がると男湯。女湯の更に奥には貸切風呂もあるようです。両浴室の入口にはロッカーが設置されていますので、見た目ばかり大きくて中身が空っぽな財布をそこへ預け、「殿の湯」の暖簾をくぐりました。


 
画像では伝わりにくいのですが、フローリングの脱衣室にはガラス窓が多用されており、とても明るく安閑でのびのびとした室内環境です。また中央に洗面台を設けるレイアウトもユニーク。建物自体の古さは否めませんが、手入れが行き届いており、また抜群な採光や独特な配置によって 経年劣化によるビジュアル的マイナス面が打ち消されているように見えます。設計者の先見の明とでも言うべきでしょうか。


 
浴室には湯気とともにふんわりと明礬臭が篭っていました。脱衣室同様にこちらも採光が宜しく、窓越しに降り注ぐ陽光を受け、湯船の青白いお湯は皎然と煌めいていました。明るさをもたらす窓の下には、シャワー付きカランが5基並んでいます。浴槽は先端の欠けた台形のような形状をしており、槽内には強酸性のお湯からお風呂を守るべく、オフホワイトの耐蝕塗装によるコーティングが施されています。この塗装によって湯船のお湯は淡い水色を帯びてるように見えます。前回記事の「大阪屋」の内湯には湯の華がたくさん沈殿しており、かき混ぜるとあっという間に透明度が失われて青白い濃厚な濁りが発生しましたが、こちらの内湯では、微細な白い湯の華がたくさん舞うものの、著しい濁りを見せることはなく、透明度も大して変化しませんでした。この姿こそ中ノ沢温泉のいつもの姿であります。


 
岩積みの湯口からはアツアツの温泉が注がれており、それと並んでVP管から温度調整目的の冷水も落とされていました。湯加減は体感で43~44℃の熱めでしたが、熱さと酸の刺激によってピリッと身が引き締まるので、私にはかえって爽快に感じられました。
湯口に上にはコップが置かれていたのですが、強酸性のお湯を飲泉するってことかな? 秋田・玉川温泉のお湯も水で希釈して飲泉しますから、中ノ沢温泉(沼尻元湯)のお湯も飲めないことはありませんが、めちゃくちゃ酸っぱいので口の中が大混乱しちゃいそう…。


 
 
広々とした日本庭園を臨む、お宿ご自慢の庭園露天風呂。抜群の開放感はもちろん、美しい植栽や立派な石灯籠など、雄大な安達太良山を借景にしたお庭はなかなかの見応えです。浴槽は目測で6.5m×4mの四角形で、内湯と同じく白い耐蝕塗装が施工されているのですが、この手の塗装は滑りやすいので、スリップ防止用のマットが随所に敷かれていました。湯船の表面積はとても大きいのですが、なぜか浅い造りであるため、若干寝そべらないと肩までお湯に浸かれません。またその浅い構造と表面積の広さに影響されてか、後述するように投入されるお湯は熱くて量もたっぷりなのに、湯船では40℃に届かないほどぬるくなっていました。陽気が良ければ長湯にもってこいなのですが、なにしろこの日は氷点下の冷え込みでしたから、ぬる湯に長居できず、短時間の入浴に済ませ、暖を取りに内湯へ戻るはめに…。冬の温泉って、管理するのも利用するのも、一筋縄ではいきませんね。
露天から見るガラス張りの内湯を露天側から見ると、花卉栽培の温室みたいですね。なお女湯と男湯を隔てる大和塀の下は仕切りがなく、浴槽自体は男女双方がつながっているようです。


 
湯口からは熱い温泉がふんだんに注がれており、浴槽の切り欠けから惜しげも無く溢れ出ていました。槽内の塗装により、湯船のお湯はライトグレーを帯びているように見えます。内湯と同じく、こちらの湯中でも白い微細な湯の華が大量に舞っていたものの、極端な白濁を呈することはなく、どれだけ撹拌させてみても、底がはっきり視認できる透明度(弱い白濁)が保たれていました。この状態が中ノ沢温泉の平時ですから、「大阪屋」で見られた湯の華の湯泥やそれに伴う濃厚白濁は、おそらく一時的なものであり、事態そのものは私の訪問時には収束しつつあり、こちらのお風呂において、大量の沈殿は既に洗い流された後だったのかもしれません(あるいはストレーナーが設けられているのかもしれませんが)。
お湯は中ノ沢温泉の他のお宿と同じく沼尻元湯からの引湯。明礬臭を漂わせるお湯はとても酸っぱく、強い酸性の温泉によく見られる、ヌメリを伴うツルスベ浴感が気持ち良く肌に伝わりました。

明るくてピリッと熱い内湯、広々としてのんびり入れる庭園露天、その両方がとても爽快で、掛け流しのお湯も心地よい、入り応えのあるお風呂でした。


沼尻元湯
酸性・含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 68.3℃ pH2.1 13400L/min(自然湧出) 溶存物質2.662g/kg 成分総計2.761g/kg
H+:7.9mg(19.11mval%), Na+:113.7mg(12.07mval%), Mg++:74.5mg(14.97mval%), Ca++:231.5mg(28.20mval%), Al+++78.8:mg(21.39mval%), Fe++:8.6mg,
F-:18.4mg, Cl-:582.5mg(39.38mval%), Br-:3.0mg, HSO4-:274.5mg(6.78mval%), S2O3--:6.1mg, SO4--:1025mg(51.15mval%),
H2SiO3:155.4mg, HBO2:26.1mg, H2SO4:5.5mg, H2S:98.7mg,
(平成26年7月2日)

磐越西線・猪苗代駅より磐梯東都バスの達沢・高森方面行で「中ノ沢温泉」下車
福島県耶麻郡猪苗代町蚕養沼尻山甲2855-103  地図
0242-64-3621
ホームページ

日帰り入浴時間不明
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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