温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

オーストリア バート・イシュル ユーロ・テルメ・リゾート(旧カイザーテルメ)

2009年10月31日 | オーストリア


オーストリア・ザルツブルクの東に位置するバート・イシュル(Bad Ischl)は、アルプスに連なる山懐に抱かれた小さな町で、古くから岩塩と温泉で知られています。まず16世紀に岩塩鉱、そして塩田が開かれて、19世紀になって湧出する食塩泉が療養目的に利用されるようになると、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世がこの町に避暑の別荘を建て、それ以来当地は温泉保養地として名を馳せ現在に至っています。今回目指すはその食塩泉の温泉です。

ザルツブルク中央駅から14:15発・150番のポストバスに乗車。観光地を走る幹線路線だけあって、日本のバスの1.5倍はありそうな長尺車体、その甲斐あってか車内には余裕がありました。バスが走るザルツブルクの南東に広がる標高500~800mの高地、かつてハプスブルクが管轄する塩の御料地だったことからザルツカンマーグートと呼ばれており、この車窓が実に素晴らしく、まるで絵画の世界を走っているかのようで、バート・イシュルまでの約1時間半は全く退屈しません。高地には大小様々な湖が点在し、それを包み込むかのように2000m級の峰々が連なり、湖水と山塊が織り成す風光明媚な景色の中を、150番バスが東西に貫いて走るのです。途中、フシェル湖やザンクト・ギルゲン、ヴォルフガング湖などザルツカンマーグートの代表的景勝地を経由するので、時間がある方はそれらで下車して散策するのもよいかと思います。

 
ザルツカンマーグートの美しい車窓。この景色の中をバスが走ります

 
左:ザルツブルク中央駅前を出る150番のポストバス
右:バート・イシュル駅


さてバスはバート・イシュル駅の脇にあるターミナルへ定刻(15:50)ぴったりに到着。食塩泉に入れるユーロ・テルメ・リゾート(旧カイザーテルメ)は駅の真正面に建っています。事前に調べておいた情報によれば、正面入口は湯治療養目的の人のためのもので、日帰り入浴客は裏手へ廻って専用カウンターで受付を済ますと書かれていましたが、それは旧カイザーテルメ時代の話のようで、改装されてシステムも変更になった現在は日帰り客も堂々と正面入口から入場できます。
窓口で料金を支払うと引き換えに腕時計型のリストバンドが手渡され、これで入退場とロッカーを管理します。入口ゲートからまっすぐ歩くと、すぐにロッカーがズラっと並ぶ更衣室につながっており、ここはドイツ文化圏なので男女共用。ロッカーは空いているところを使えます。

内部は温泉というより完全にプールですが、リゾートを名乗る施設だけあり、ガラスを多用したデザインはお洒落で開放的。とても綺麗で、手入れが行き届いており、優雅な気分に満たされること間違いありません。プールに満たされている無色透明の温泉水は、湯温がちょっとぬるめの32℃、さすが岩塩の街に湧く湯だけあって、とても塩辛く、表示によれば3%の高度があるそうです。ということは標準的な海水の塩分濃度とほぼ同じであり、お湯の中で体が容易に浮くことからもその濃さを実感できるはずです。
温泉プールにはジャグジー等がある方形の屋内プールと円形の屋外プール(露天風呂、34℃)があり、訪問日は天気がよかったからか、露天風呂に人気が集まっているようでした。ヨーロッパ人にとって温泉は療養のためのものというイメージが強いためか温泉槽に浸かる人はみな老人ばかりですが、ここには温泉のみならず普通の水のプールもあって、特に流れるプールは若者の歓声が飛び交っていました。

 
左:主槽となる屋内温泉プール
右:円形の屋外温泉プール。皆さんプールの縁にしがみついてプカプカ浮かんでいます


子供や若者に人気の流れるプール


ここユーロ・テルメ・リゾートにはドイツ文化圏の他の温泉施設同様、サウナも設けられています。そして、やはりドイツ文化圏の他のサウナ同様、全裸かつ男女混浴で利用します(とはいえ、ここはバスローブの着用が原則のようです)。プールとサウナは別料金で、両ゾーンの境にはゲートが設けられており、ゲートの向こう側のサウナゾーンは、サウナは勿論のこと、休憩室やお風呂、プール、多種のシャワーなど、多くの設備が設けられていて、とても広い空間が確保されています。
サウナには何種類かの部屋がありましたが、当日は暑い陽気で、わざわざ汗をかこうとする人が少ないのか、それとも単にメンテナンス中なのか、半分近くの部屋はドアが開けっ放しにされて室内に熱気が篭っておらず、全く機能していませんでした。それどころか、ちゃんと熱くなっているサウナにも、そして全裸で泳いだり浸かったりするプールやお風呂にも人影は見当たらず、ほとんどのお客さんは外部からの視界が遮断された屋外の庭で、すっぽんぽんの状態で芝生の上やデッキチェアーに寝そべって日光浴をしており、さながらヌーディストビーチのようでした。


 
サウナゾーンに設けられたお風呂とプール


ザルツブルクからバス150番で約1時間半、終点バート・イシュル駅前下車すぐ
(バス片道8.80ユーロ)
所在地:Voglhuberstraße 10, A-4820 Bad Ischl 地図
電話:6132-204-0
ホームページ

9:00~24:00 原則無休
13.50ユーロ(4時間以内・プール(温泉)のみ)
20.50ユーロ(全日・プール&サウナ)

私の好み:★★
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オーストリア バーデン・バイ・ウィーン レーマーテルメ

2009年10月30日 | オーストリア


オーストリアの首都ウィーンから南へ約26km、電車に乗れば1時間弱で行くことのできるバーデン(・バイ・ウィーン)は、古くから温泉保養地として名を馳せてきました。19世紀前半にはハプスブルク家の夏の離宮が置かれ、これに伴い貴族や芸術家が訪れるようになり、作曲家ベートーヴェンもこの地をこよなく愛したそうです。彼が「歓喜の歌」で有名な交響曲第9番を書き上げるために滞在した家(ベートーヴェンハウス)もこの街に残っています。

街の名称は一般的にはバーデン(Baden)ですが、単にバーデンだけですとドイツ語圏で似たような地名(バーデン・バーデンやヴィースバーデンなど)があって混同しやすいために、ウィーンの近くにあるバーデンという意味で、後ろに(バイ・ウィーン)と付して称することも多いようです。

バーデンへ行く電車は、ウィーンの国立オペラ座の交差点を挟んだ斜め前にあるOper電停から乗車します。市内では路面電車網の一角を成しているため、途中までチンタラ走ってイライラしますが、乗車してから30分を過ぎる頃になるとようやく力強く走ってくれ、車窓には美しい畑も広がり、このまま快走してくれと思うまもなく、終点のBaden Josefsplatz電停に到着。

郊外の保養地らしく、色とりどりの建物が街並みを彩り、かといってリゾート地にありがちな騒々しさは皆無であり、静かで落ち着いた心地よい雰囲気が街を包んでいます。街の中心広場を抜けて生鮮野菜を扱う市場を通り過ぎ、下車してから5分ほどで正面広場の花壇とお濠のように周囲を取り囲む人工池が目に鮮やかなレーマーテルメ(Römertherme)に辿りつきます。古い建築物が建ち並ぶバーデンにあって、このレーマーテルメはいかにも現代建築らしく、方形で壁一面ガラスばりの特徴的な建物です。

 
左:ウィーン中心部のOper電停から発車するバーデン線の電車
右:終点Baden Josefsplatz電停

 
バーデンの街並み


窓口で入場料を支払うと、腕時計のような形状のリストバンドが手渡され、これによって入退場は勿論のこと、場内での買い物や飲食なども現金を用いることなく利用することができます(事後清算)。更衣室は男女共用で、これはドイツ文化圏にある温浴施設共通のスタイルです。私は以前ドイツのヴィースバーデンで温泉に入ったことがあったのですが、温泉入浴は全裸で混浴、更衣室も男女共用で、老若男女が同じところで何の躊躇いも恥じらいもなく堂々とすっぽんぽんになって着替えているところに遭遇して目を丸くした記憶がありますが、更衣室に関してはここも同様でした。でも他人の目が気になる人には、ちゃんと試着室のような更衣スペースが設けられていますのでご安心を。ロッカーは空いているところが自由に使えますが、鍵に関してはリストバンドを用いず、2ユーロのコインを投入して施錠します(鍵を開けるとコインはリターンします)。


男女共用のロッカールーム。とても綺麗に整備されています


更衣室からシャワールームを経て屋内プールへ。天井が全面ガラス張りで非常に採光のよいこのプールは、中央を横切る通路により前後に二分されていて、手前側は小さな子供でも遊べる浅いソーンと、自由に泳いだり浮いたりできるゾーンがあり、奥側はコースロープが張られて真剣に泳ぐ人ためのゾーンが設けられています。またプールの各所にはジャグジーや滝のように水が出てくるところなど、水の流動性を生かして楽しめる設備があって、予め決められたタイムスケジュールに従ってそれぞれが作動するようになっています。

 
左:ガラス張りの天井からたっぷりの陽光が降り注いで明るい屋内プール
右:ジャグジー等の作動時間を表示したタイムスケジュール。5分作動して5分休むパターンを繰り返します


この屋内プールは普通の水。お目当ての温泉は屋外にありました。屋内から屋外へ出るところには"Schwefel-becken"、つまり硫黄槽と書かれた看板が立っていました。またこの看板には「入浴は20分まで」「34~36℃」とも書かれています。温泉入浴に時間制限を設けるのはヨーロッパ共通ですが、34~36℃とはちょっとぬるい。無色透明のお湯からは弱い硫黄の匂いが、そして石膏泉のような味が感じられました。恐らく源泉そのままではなく、加水やら加温やら循環やら、相当手が加えられていそうです。
というのも、この浴槽の目の前には男の口から32℃ぐらいのお湯がチョロチョロ出ている泉があって、このお湯からは強い硫黄臭とたまご味が感じられたのです。本当ならばこのお湯に浸かりたいのですが、お湯溜まりは非常に浅くて入れるようなものではなく、あくまでオブジェであり、実に悔しい思いがしました。温泉槽は先に述べた"Schwefel-becken"のひとつのみで、屋外にはもうひとつ浴槽"Kleeblatt-becken"があるのですが、そちらは普通のお湯(30~32℃)でした。

 
左:屋外にある硫黄泉浴槽
右:硫黄泉浴槽の前には、源泉そのままと思われるお湯がチョロチョロ出ている泉がありますが、これはあくまでオブジェであり、入浴できません


もうひとつの屋外浴槽は普通のお湯。たくさん打たせ湯があって、マッサージ効果バツグン


訪問したのは7月上旬の平日だったのですが、お客さんはリタイヤした老人が多く、あたかも介護施設の様相。プールサイドでは皆さんデッキチェアーに寝そべって、日光浴を楽しんでいらっしゃいました。またバスローブを羽織っている方が多いのも特徴的で、けだし施設内のサウナに入るためと思われます(ドイツ文化圏のサウナではバスローブの着用を求められることが多いようです。なお私は今回サウナには入りませんでした)。

ちゃんとした温泉を思い描いて訪れると期待はずれに終わるかと思いますが、ウィーンから近い距離にあるので、時間のあるときに足を伸ばしてプールに入り、リフレッシュしてみるのもいいかもしれません。



ウィーン中心部のOper電停からバーデン線で約45分、終点Baden Josefsplatz電停下車、徒歩約5分
所在地:Brusattiplatz 4, 2500 Baden 地図
電話:02252-45030
ホームページ

10:00~22:00
€9.50(2時間)、1時間超過毎に€1.70 

水着着用
ドライヤーあり

私の好み:★
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