温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

仁賀保 かみの湯温泉

2024年11月01日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
さて私は羽後本荘駅から羽越本線の普通電車に乗って仁賀保駅へやってまいりました。仁賀保駅といえば駅の真裏にTDKの大きな工場がありますね。昭和世代の私は、学生時代にTDKのカセットテープやビデオテープをたくさん買って録音や録画を繰り返しましたので、青春時代の記憶にはTDKの存在が色濃く残っています。高校生の頃、青春18きっぷで東北を旅している際に、車窓から仁賀保駅裏手に広がるTDKの工場を目にした時には、遠い秋田の地と自分の毎日が知らぬ間に結びついていたことに気づいて驚いたものです。


そんな旅の思い出がある仁賀保駅を出て、海の方へ向かって歩いてゆくと、やがて今回の目的地である「かみの湯温泉」に到着です。付近には平沢漁港があるためか、周辺は漁師町のような独特の雰囲気が漂っています。


裏手にはお湯を沸かすための廃木材がたくさん。いかにも銭湯って感じですね。
 

さて中へ入りましょう。銭湯の割りには妙に狭い下足場で靴を脱ぎ、金属製の松竹錠が刺さった下駄箱へ靴を収めてから、番台のお姉さんに湯銭を支払います。なお浴場内はボディーソープやシャンプーなどのアメニティ類が無いので、もし必要なものがあれば事前に番台で買っておきましょう。レンタルタオルもありますので、予算にこだわらなければ手ぶらでの入浴も可能です。

お風呂は露天風呂がある「長寿の湯」と、露天風呂は無いけど電気風呂やジェットバスがある「元気の湯」があり、奇数日は「長寿の湯」が女湯で「元気の湯」が男湯、偶数日はその逆という形で暖簾替えを行っています。私が訪ねた日は奇数日だったため、「元気の湯」に男湯の暖簾が掛かっていました。このため、以下は「元気の湯」について説明致します。また、私が訪ねた16時半頃は地元の爺様で大賑わいだったため、館内の画像はございません。ご了承ください。

脱衣室はまさに昭和の銭湯そのものといった雰囲気。室内には使いこまれた開放的な棚の他、無料のロッカーも用意され、お好きな方を使えます。室内にエアコンはありませんが扇風機は取り付けられていますので、湯上がり後のクールダウンも大丈夫。なお備えのドライヤーは1つです。

お達者クラブと化していた浴室へ入った途端、鼻孔を突くような弱い刺激臭が感じられました。無論爺様たちの加齢臭ではありません。温泉由来のヨード臭です。ということは、こちらの温泉も前々回の記事で取り上げた「安楽温泉」同様、日本海沿岸に点在する鹹水の温泉(鉱泉)かと思われます。この付近ですと象潟の「道の駅」にも(同じではないが)似たような泉質に入れる温泉施設がありますね。

「元気の湯」は、場内の右手及び左手奥に洗い場が配置され、昭和の銭湯にはおなじみの壁固定式シャワー(一部はホース付き)と押しバネ式(宝式)カランの組み合わせが十数セット並んでいます。なお水栓から出てくる水は源泉そのままの茶色い冷鉱泉で、お湯は加温された鉱泉です。なお水栓から出てくる鉱泉は後述する浴槽のお湯より鉱泉の良さや持ち味が出ており、個人的に気に入りました。特に冷鉱泉はコンディションが良く、桶に冷鉱泉を注ぐと芳ばしい香りが放たれ、麦茶色の水が泡立ちます。

メイン浴槽は左手にあり、歪な五角形もしくは六角形のような形状をしたタイル張りで、ジェットバスや電気風呂など仕掛け風呂が浴槽の半分近くを占めています。浴槽に張られたお湯はちょっと熱めに加温されており、濃く出しすぎた麦茶みたいな色を帯呈しています。そのお湯はしょっぱく、同時に清涼感のあるほろ苦みを伴い、ヨード臭や臭素臭のほか、鉱物油感も少々含まれているようでした。湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感をはっきりと感じられます。とはいえ、その心地よい浴感に惹かれて長湯するのは禁物。しょっぱいお湯ですからパワフルに火照り、場合によっては湯当たりするかもしれませんので、あまり長湯せず適当なところで湯船から出ましょう。

余談ですが、私が湯船に浸かって滑らかな肌触りを楽しんでいると、場内にいる爺さんたちが奥へ奥へと続々吸い込まれてゆく光景を目の当たりにしました。一体何が起きているのか、催眠術にかけられているのか、黄泉の国へ召喚されているのか、果たして私も奥へ導かれて良いものか、不安を覚えつつ湯船から出て勇気をもって奥へ行ってみると、そこにはサウナと水風呂があったのでした。地域を問わず皆さんサウナが大好きなんですね。


温泉の目の前は渺茫たる日本海です。お風呂上がりの脱衣室は常連さんで混んでおり、扇風機に当たるスペースもあまり無さそうだったので、サクッと着替えて海岸に出て、潮風に当たってクールダウンしたのでした。


体の火照りが落ち着いた後に歩いて仁賀保駅へ戻り、「特急いなほ」新潟行に乗車しました。羽越本線の秋田~酒田間は本数が年々減少しており、特にこの区間を走る特急は風前の灯火。いずれ全廃されるのではないかしら。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 19.5℃ pH8.0 溶存物質3871.8mg/kg 成分総計3884.8mg/kg
Na+:1229mg, NH4+:17.6mg,
Cl-:1498mg, Br-:8.5mg, I-:5.3mg, HS-:0.4mg, HCO3-:940.0mg,
H2SiO3:63.6mg, HBO2:16.6mg, CO2:13.0mg,
(平成20年11月13日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(温泉資源保護と衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため)

秋田県にかほ市平沢字家の後2番
0184-35-3178
ホームページ

13:00~22:00 毎週月曜・火曜定休(祝日は営業して翌日休業)
400円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5





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旧大内町(由利本荘市) かすみ温泉

2024年10月25日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
現在は由利本荘市に合併されてしまった秋田県旧山内町の山里に、浴感が魅力的な鉱泉があるらしいので、鉄道の旅の途中、レンタカーを借りて行ってみることにしました。由利本荘の市街地から芋川に沿って国道105号を東へ進み、早坂トンネルを潜る手前の十字路を右折。あとはひたすら道なりに長閑な田園地帯を進めば良いのですが、途中から人里を離れて山間部に入り、しかもどんどん坂を上がってゆくのです。「こんなところに本当にあるのか」と不安を覚えながら車を進めてゆくと、突如目の前に一軒の鉱泉宿が現れました。これが今回の目的地である「かすみ温泉」です。昭和30~40年代から時計の針が停まっているかのような外観で、営業しているのか心配になりますが、比較的新しい観光の幟が立っているところを見ると、今でもちゃんと営業している模様。駐車場は玄関の前を通り過ぎた先の奥にあります。


こちらが玄関。今回は日帰り入浴利用です。
ドアを開けて入浴をお願いしますと、女将のおばあちゃんが快く受け入れてくださいました。外観と同様、館内も昭和の懐かしい雰囲気が横溢しています。


お風呂は帳場の右側にあります。昭和な建物だからと侮るなかれ、トイレは洋式も用意されており、綺麗で快適に使えます。


山あいの鉱泉宿らしく、脱衣室はシンプルながらきちんとお手入れされており、ドライヤーも用意されていて、問題なく使えます。なおロッカーは無いので、貴重品は車の中に入れておいた方が良いかも。


お風呂も奇をてらわない、シンプル・イズ・ベストな構造。
向かっておくの窓下に浴槽がひとつ据えられ、その手前の左右両側にシャワーが1個ずつ取り付けられています。なおシャンプー類の備え付けも有ります。


浴槽は3人も入ればいっぱいになってしまう程度の大きさです。冷鉱泉なので当然ながら加温されており、循環も行われています。窓下の側面に設けられた2つの吐出口から循環したお湯が出ており、右側の側面にはお湯の吸引口もあります。


されマニア的に注目したいのが、浴槽の左側にある2つの水栓。右側からは加温された鉱泉が、左側からは非加温の鉱泉(源泉)が出てきます。
加温循環している鉱泉のお湯ですから、湯船のお湯や浴室内に漂う湯気からは、循環湯らしい独特の臭い(語弊を承知で申し上げると埃っぽい臭い)がするのですが、非加温冷鉱泉の水栓を開けると、芳しいタマゴ臭とともに鉱物油のような香りも一緒に放たれ、鉱泉を口に含んでみるとタマゴ味のほか、ゴムみたいな味や焦げたような味も同時に感じらるのです。

この鉱泉で特筆すべきは極上のニュルニュル浴感。とにかくツルスベ感が凄く、水栓から出てくる冷鉱泉を指先で触っただけでもその滑らかさがはっきりと分かります。源泉そのままの冷鉱泉のみならず、加温循環された湯船のお湯でも同様で、ウナギ湯と称しても決して過言ではありません。分析表によると炭酸イオンが55.7mg含まれ、且つpH9.6というはっきりとしたアルカリ性でもありますので、こうした要因がウナギ湯と称したくなるほどの強いニュルニュル感をもたらしているものと思われます。

訪問時は湯船の加温が強かったため、ニュルニュル感を楽しんで長湯しているうちに逆上せそうになってしまいましたが、火照った体をクールダウンすべく、桶に冷鉱泉を汲んで頭から浴びたら最高に気持ち良く、心身がシャキッと蘇りました。
物価高騰の昨今、過疎地に湧く冷鉱泉を沸かし続け、しかも400円という安さで営業しているだなんて、ちょっと信じられません。この冷鉱泉は入る価値があり、わざわざ来た甲斐があった。


ちなみに、お宿の名前の由来は、建物裏手にある秋田県の天然記念物「かすみ桜」。
樹齢400年という老木で、幹周り5メートル、樹高約14メートルという大木でもあり、それゆえ枝ぶりが大変立派。
きっと春にはすばらしく綺麗なのでしょう。
お風呂の窓からも「かすみ桜」が見えますので、その季節になればまさに天国のようなお風呂になりそうです。


いわゆる規定泉(総硫黄の項により温泉法が規定する鉱泉に適合) 11.9℃ pH9.6 溶存物質0.5854g/kg 成分総計0.5854g/kg
Na+:177.2mg(97.72mval%),
OH-:0.7mg, HS-:0.9mg, S2O3--:0.4mg, HCO3-:279.5mg(57.97mval%), CO3--:55.7mg(23.54mval%),
H2SiO3:16.6mg,
(平成30年12月12日)
加水なし
加温・循環・消毒あり

秋田県由利本荘市葛岡字落合43
0184-66-2418
紹介ページ(由利本荘市観光協会公式サイト内)

日帰り入浴時間不明
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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由利本荘市 安楽温泉

2024年10月18日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
由利本荘市の本荘城から望む鳥海山。
その秀麗な姿に心を奪われてしまいました。ずっと眺めていても飽きません。今回の記事とは関係ありませんが、この時の景色が忘れられず、私はこの3ヶ月後に鳥海山に登って、頂上から麓の景色を見下ろしたのでした。


さて今回は本荘の城下町に湧く温泉「安楽温泉」を訪ねます。市街地南部にある温泉一軒宿で、昭和一桁の頃から営業している老舗なんだとか。一時は源泉が枯れてしまったようですが、掘り直したら現在使用している源泉が湧いたそうです。
駐車場は広いので停めやすいかと思います。県道に沿って建っている建物はレストランや宴会場のようで・・・


お風呂がある旅館はその奥です。土足のままフロントの前へ上がって日帰り入浴したい旨を伝え、湯銭を支払います。スタッフの方から入浴のポイントカードを作りませんかと勧められたほど、日帰り入浴に積極的のようです。本館の裏手から建物を一旦出て、その先の階段を上がったところに浴場を擁する宿泊棟があります。この宿泊棟を入ったところで靴を脱ぎます。


中庭を見ながら左側の廊下をまっすぐ進んでゆくと・・・


その突き当たりが浴場です。2つの浴場を男女暖簾替えで使っており、私の訪問時は右側のお風呂に男湯の暖簾が掛かっていました。脱衣室はそこそこ広く、エアコンや扇風機が設置されており、洗面台やドライヤーも複数台用意されているので、使い勝手は良好です。なお脱衣籠のそれぞれの棚には小さな貴重品用ロッカーが付いています。日帰り入浴客のみならず宿泊客も自室の鍵を保管するのに便利ですね。


ここから先、浴場内の画像は公式サイトより借用しています。
着替えて内湯に入った途端、刺激を伴うヨード臭がプンと鼻孔を突いてきました。この個性的な香りが、濃厚なお湯に入れる期待を高めてくれます。私が利用した右側の浴室の場合、入って右手前に水風呂とサウナ、その奥に洗い場が配置され、シャワー付き混合水栓が計8ヶ所設けられています。一方、窓がある左側に内湯の浴槽があり、大きさは失念してしまいましたが、なかなか広く、お湯がしっかりかけ流されていました。


露天風呂は周囲の木々に囲まれた静かなロケーションで、右側には落葉樹、左側には竹林が植わり、これらの木々を見上げながら東屋の下で湯船に入ります。露天浴槽の大きさは目測で2m×3m程でしょうか。こちらもしっかり温泉がかけ流され、浴槽のまわりは成分付着により赤く染まっていました。

こちらの源泉はいわゆる鹹水の温泉で、非常に塩辛く、ヨードや臭素なども多く含んでいます。おそらく源泉湧出時点では天然ガスも相当含まれているのではないかと想像します(浴用へ供する段階でガス抜きされるはずですが)。この手の温泉は能登半島以北の日本海側に多く、氷見・中条・男鹿・積丹・豊富など広い範囲にわたって分布しており、一部では実際に鹹水から天然ガスやヨードを取り出して生産しています。湯船のお湯はモズグリーンを帯びた山吹色(ベージュ?)に濁り、湯中では湯の花が大量に浮遊しています。特に内湯浴槽の底はベージュ色の細かな湯の花が大量沈殿しており、私が湯船に入ったところ、それらが一気にボワっと舞い上がって全身にまとわりついてきました。上述のように露天のオーバーフローにより浴槽まわりが赤く染まっている他、内湯露天ともに湯口周りは濃いベージュ色に染まっていました。なお館内表示によれば塩素消毒を実施しているそうですが、温泉に含まれる刺激を伴う臭素臭やヨード臭が強いため、消毒臭はほとんどわかりませんでした。
湯中では滑らかなツルスベ浴感がしっかりと感じられるのですが、加水していないので成分が非常に濃く、特に塩分濃度が高いため強烈に火照ります。このため長湯は禁物です。適度に出たり入ったりを繰り返しながら、体に無理させない入浴が肝要です。

公式サイトによれば敷地内の源泉から毎分200L湧出しているんだそうです。綺麗なお風呂で濃厚なかけ流しの温泉を楽しめる幸せ。実に素晴らしい。市街地とは思えないとても良いお湯でした。


含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉 49.6℃ pH7.6 溶存物質21.24g/kg 成分総計21.25g/kg
Na+:7594mg(9301mval%), Ca++:274.1mg,
Cl-:12420mg(98.79mval%), Br-:64.9mg, I-:23.7mg, HS-:0.1mg, HCO3-:196.8mg,
H2SiO3:152.1mg, HBO2:145.4mg, CO2:16.5mg,
(令和2年6月21日)
加水加温循環無し
消毒あり(県条例で規定する水質基準を満たすため塩素系薬剤を使用)

秋田県由利本荘市大堤下4
0184-22-0637
ホームページ

日帰り入浴12:00~20:00 月曜・火曜は休み場合あり
700円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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秋田市 天然温泉こまち(ホテルこまちに宿泊)

2024年10月11日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
趣味の乗り鉄を兼ねた初夏のみちのく一人旅で、私は秋田駅にて列車を下り、25年以上前から私が秋田へ寄るたびに利用する大好きな居酒屋「無限堂」で郷土の料理と稲庭うどんを食べ、ほろ酔いになったところで駅前からタクシーに乗り込んで、いざ向かったその晩の宿は「天然温泉こまち」の宿泊施設「ホテルこまち」です。
遠くからでも目立つ大きな看板が目印のこの施設は、交通量が多い国道13号の沿道に位置しており、卸団地と呼ばれる周辺エリアには大きなロードサイド店舗が建ち並んでいるため、昼夜を問わず比較的にぎやかな立地と言えるでしょう。


こちらがエントランス。頻繁にお客さんが出入りしており、人気に高さが窺えます。


受付カウンター付近の様子。いわゆるスーパー銭湯ですので、こちらを利用するお客さんの多くは入浴目的ですが、私のように宿泊利用客もおり、その場合のチェックインも同じ受付カウンターで行います。チェックイン時にスーパー銭湯の館内着とタオルセットを受け取るのですが、そんなところもホテルというよりスーパー銭湯を利用しているみたいな気分にさせます。


宿泊者限定「夜鳴きそば」サービスなんてあるんですね。私は利用しませんでしたが、なんだか某大手ホテルチェーンみたい。


館内図をご覧いただいても分かるようにとても大きな施設で、温泉浴場やホテルのほか、食事処や24時間営業のフィットネスジムなど、様々なサービスを内包しています。たしか宿泊客はフィットネスジムを利用できるとのことで、食べ過ぎにより摂り過ぎたカロリーを燃焼したかったのですが、相応の服装を持ち合わせていなかったため残念ながら利用していません。
今回は後述するように私はホテルの客室に宿泊したのですが、ネットカフェみたいな簡易的な個室(カジュアルスペース)もありますので、廉価で夜を越すこともできます。

ちなみに1階フロントから宿泊ゾーンへ行くには、まず1階廊下の奥まで進み、24時間ジムの看板を潜ってから階段を上がることになります(他にもルートはありそうですが…)。まさかそんな構造になっているとは思わず、最初はちょっと面食らってしまいました。


ホテルのお部屋にはセミダブルやツインなどいくつかの種類がありますが、今回利用した客室はDXダブルベッドのシングルユーズ。広いベッドなので寝相が悪い方でも思う存分寝返り打てちゃいます。


ビジネスホテルのような感じで備品類もひと通り揃っており、快適に過ごすことができました。なお、お部屋の水回りはトイレと洗面台の他にシャワールームがあります。バスタブはありませんが湯船に入りたきゃ温泉浴場へ行けば良いのですから、そのあたりは問題ないでしょう。


浴場入口は1階です。各階の移動には階段の他にエレベータもありますので、あまり動きたくない方はエレベーター、私のように日ごろの運動不足が気になる人は階段、という使い分けもできますね。
暖簾をくぐった先にある脱衣室は奥に長い構造で、二段式ロッカーがたくさん並んでいます。なお入館後の受付カウンターで精算用チップがついたロッカーキーを受け取りますので、その番号のロッカーを使用することになります。


(露天風呂の画像は公式サイトより借用)
浴場内は典型的なスーパー銭湯で、広くて天井の高い室内にいろいろな設備が備わっています。男湯の場合、入って右手前に洗い場があり、シャワー付きカランが約20ほど取り付けられています(うち半数には各ブースを仕切るパーテーションを設置)。内湯の浴槽類は、窓側に並ぶ3つの浴槽のほか、小さなジェットバス、ジャグジー付き寝湯と座湯、そしてシアターサウナやミストサウナ、水風呂など、とにかく多種多様。窓側に並ぶ三つ浴槽は右から、「わらしっこ風呂」、真湯、源泉槽という順番で、「わらしっこ風呂」はその名の通り子供向けのお風呂、真湯の浴槽は非温泉が張られたごくごく普通のお風呂です。そして真湯槽に隣接する源泉槽は内湯で唯一温泉が使用されている浴槽であり、その大きさは横5m弱✕奥行2メートルほどで、浴槽内の材質が黒く、お湯の色あいも相俟って、湯船のお湯がドス黒い石油みたいに見えちゃいました。なお内湯の床には十和田石が採用されていますが、源泉槽の周辺だけ温泉成分の付着によりベージュ色に染まっています。

温泉槽が一つしかない内湯とは対照的に、露天は温泉使用の浴槽がメインとなっています。中央に主浴槽の丸い岩風呂が、その手前に浅い岩風呂(足湯?)が据えられ、いずれも温泉使用です。また脇に設けられた2つの壺湯も温泉が張られており、特にそのうち1つはぬる湯仕様で、そこへ入った私はつい微睡んでしまいました。この他、テレビが設置されている真湯浴槽、そして多くの人が寝転がっている「ねまり湯」や「ごろりん広場」があります。

こちらの温泉は、東北地方の日本海側に点在している塩辛いタイプの温泉で、化石海水のようなしょっぱさと苦汁味、そしてヨード臭が感じられます。またオレンジ色とモスグリーンを混ぜたような色に暗く濁り、湯中では浮遊物も見られます。湯船に浸かるとツルツルスベスベの大変滑らかな浴感が得られますが、浴感が良いからといって長湯すると湯当たりしやすいタイプの泉質ですので、長湯はなるべく避けましょう。どの浴槽でも加温循環消毒が実施されており。かけ流しの浴槽は無いようです。
こうした塩辛い温泉は、夏には汗が引きにくくなるものの、冬に本領を発揮して体の芯までパワフルに温めてくれますから、秋田の厳しい冬には心強い味方になるでしょう。


地元の方の利用が多いようですが、予算に合わせた宿泊利用もできますので、当地を訪ねた旅行者や出張の方々にも便利かと思います。朝食付きのプランもありますし、夕食だって館内のレストランが利用できますから、なかなか便利な施設です。なお鉄道利用の場合、秋田駅から路線バスやタクシーに乗る他、羽越本線の羽後牛島駅から徒歩15分弱でアクセス可能です。実際に私は翌朝、ホテルこまちから歩いて羽後牛島駅へ向かい、そこから普通電車に乗り込みました。


含ヨウ素-ナトリウム-塩化物温泉 27.8℃ pH7.7 成分総計11.478g/kg
Na+:4063mg(94.51mval%), NH4+:26.8mg, Ca++:62.3mg,
Cl-:6020mg(92.26mval%), Br-:36.3mg, I-:13.8mg, HCO3-:824.8mg,
H2SiO3:98.2mg, HBO2:111.6mg,
(平成26年7月30日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(衛生管理のため)
消毒あり(県条例基準を満たすため塩素系薬剤を使用)

秋田県秋田市卸町1-2-3
018-865-0001
ホームページ

日帰り入浴5:00〜24:30
5:00~7:00及び21:00以降→600円
7:00~21:00 平日730円、土日祝850円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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女川温泉 ゆぽっぽ

2024年10月04日 | 宮城県

(2023年6月訪問)
車で出かけることが多いとはいえ、たまには列車に揺られて旅をしながら長閑な車窓を眺めたくなるもの。そんな衝動に駆られた私は、某日みちのくへ出かけて、石巻線普通列車の窓枠に頬杖をつきながらのんびりとした旅時間を過ごしていました。列車は終点の女川駅に到着です。


震災の被害を受けた女川駅は復興事業により場所が内陸へ200メートルほど移動すると共に、坂茂氏の設計により鉄骨造3階建に木造屋根を載せた形で建て替えられました。左右に広がる大きな屋根はウミネコが羽ばたく様子をイメージしているんだとか。


今回はこの駅舎内にある温泉施設「ゆぽっぽ」を訪ねます。日本全国に駅前温泉は数あれど、駅ナカ温泉はかなり稀少ですよね。
なお「ゆぽっぽ」は震災の前にもあり、当時は駅舎に隣接する形で営業していました。震災前に訪ねた「ゆぽっぽ」に関しては拙ブログで取り上げたことがないので、当記事の後半で触れます。震災後の新しい「ゆぽっぽ」を利用するのは今回が初めてです。


後述するように震災前の旧「ゆぽっぽ」には足湯がありましたが、現在の新しい施設にもちゃんと足湯があるんですね。


さて改札や出札の目の前にある入口から中へ入り、靴を魚形のキーホルダーがついた下駄箱へ収め、その鍵と券売機で買った入浴券を受付に差し出しますと、引き換えにロッカーキーが渡されます。お風呂は物販コーナーを抜けて階段を上がった先の2階です。


この建物を設計した坂茂氏といえば、紙管のシェルターなど、紙からできた素材を建材にしたシェルターや仮設住宅を世界各地で作り、難民の救済や災害支援に取り組む建築家として有名。この建物でも踊り場のベンチや天井には坂茂氏らしくボール紙のロールが用いられています。
踊り場ベンチの脇には家族風呂が1部屋設けられており、貸切で入浴することが可能です。また、ベンチと家族風呂の間には、発災3日後に出された石巻日日新聞の手書き壁新聞(実物)が保存掲示されており、津波によりあらゆるものが失われた中で避難者たちに情報を伝えようとする記者たちの熱意が伝わってきます。


階段を上がったところの休憩室は、天井が高くて窓も大きいため、明るく広々としてスタイリッシュ。


休憩室の脇を通り、駅通路の真上を通って浴場へ。
脱衣所内の内装は白色と木目で統一されており、明るくて使い勝手良好です。


(浴室内の画像は公式サイトより借用)
お風呂は内湯のみで露天はありません。天井は木材を井桁に組んで緩く撓ませることによりドーム状となっており、窓からの採光と相まって高く明るく気持ち良い入浴空間を生み出しています。壁は白いタイルが用いられており、奥には青い鹿の絵(当地が牡鹿郡だから?)、手前側には青い富士山のような絵がそれぞれ描かれています。男女両浴室を仕切る塀の上部には、後述する震災以前の旧ゆぽっぽを記録した写真が並べられています。洗い場は浴室の左右に分かれて配置されており、シャワー付きカランが計10個取り付けられています。浴槽は2つあり、手前側のオーバルを半分にしたような青い豆タイルの浴槽には真湯が張られていました。


(浴室内の画像は公式サイトより借用)
一方、奥にある四角いタイル張りの浴槽が温泉浴槽。その大きさは目測で奥4m✕幅3.5m程かと思われます。浴槽に張られた温泉はやや黄色みがかっている透明で、塩味と苦汁味がしっかりと得られ、消毒臭もはっきりと感じられます。この浴槽の洗い場側にあるステンレス製の湯口から鉱泉が投入されている他、浴槽内からも投入しており、これによって浴槽内の湯加減が均一になるよう図られているようです。源泉の湧出温度は25.3℃ですので、温泉法の規定によりギリギリのところで鉱泉ではなく温泉を名乗れるラインをクリアしていますが、この温度のまま入れるはずもなく、また湧出量も少ないことが推測されますので、浴用に際しては加温循環消毒が行われています。泉質名には「含硫黄」の文字が含まれ、分析表によれば総硫黄が3.1mgも含まれていますので、おそらく源泉湧出時にはかなりはっきりとした硫黄臭が嗅ぎ取れるはずですが、加温や循環などを経る中で硫黄はすっかり飛んでしまい、湯船で硫黄らしさを感じることはできません。またpH9.0とアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが9.6mgも含まれているのでツルツル滑らかな浴感なのかと思いきや、実際に肩まで湯船に浸かってみると寧ろキシキシと引っかかる浴感が強く、これはカルシウムイオンを1589.0mgも有しているためではないかと思われます。ま、小難しいことはともかく、硫黄が多かったりしょっぱかったりと、内湾性の化石海水温泉にありがちな特徴を有しており、港町女川ならではの温泉と言えるでしょう。綺麗且つ快適な浴場で旅の汗を流す気持ち良さは大変ありがたく、この場所に再び温泉施設を設けてくれた女川の関係者の方々には感謝です。


さてお風呂上がりに、駅前から海に向かってまっすぐ伸びる商店街「シーパルピア女川」でお土産や・・・


ランチのお寿司を購入。安くて美味い!


ついでにホタテの浜焼きをその場で食べ・・・


震災遺構「女川交番」を見学。横倒しになった建物を見て津波の脅威を知り・・・


そして女川の美しい海を眺め、再び女川駅から石巻線の列車に乗り込んだのでした。


【以下、2008年8月撮影】

拙ブログでは取り上げてこなかった震災前の「ゆぽっぽ」も、ここで簡単にご紹介します。
上画像は2008年8月に撮影した女川駅です。


同じタイミングで撮影した旧「ゆぽっぽ」。現在は駅の建物に内包されていますが、当時は駅舎に隣接する形で別棟となっていました。そして施設の前には足湯も設けられていました。


浴室内部の様子。お風呂は檜風呂と岩風呂があり、男女日替わりで使い分けられ、この時は檜風呂に男湯の暖簾がかかっていました。当時もお風呂は内湯のみ。主浴槽の前には大きなテレビが設けられ、この時のお客さんは湯浴みしながらバラエティー番組を見ていました。主浴槽のほか、サウナなどもあったはずです。
また画像には残していませんが、館内には信号機があり、石巻線の出発時刻が迫ると信号が青から黄色にかわり、出発直前になると赤が点灯する、という面白い試みが実施されていました。


館内にはちゃんとした休憩室があるほか、石巻線のホームに面した場所には本物の鉄道車両キハ40を改築した休憩所も用意されていました。当時の私のメモによれば、車内ではカラオケができる、と書かれています。ただ車内の画像が残っていないので、車内がどのようになっていたかは分かりません。
以前の私は「温泉かけ流し原理主義」に囚われていたのでこの旧「ゆぽっぽ」を取り上げてこなかったのですが、最近はそのような呪縛から解放されていますので、今回新しい「ゆぽっぽ」を取り上げる機会に旧「ゆぽっぽ」の画像も掲載させていただくことにしました。


含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 25.3℃ pH9.0 溶存物質7925.3mg/kg 成分総計7925.3mg/kg
Na+:1448.0mg,(43.87mval%), Ca++:1589.0mg(5523mval%),
Cl-:4671.0mg(97.74mval%), Br-:16.5mg, HS-:1.4mg, S2O3--:1.7mg, CO3--:9.6mg,
H2SiO3:21.0mg,
(令和5年2月13日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
塩素系薬剤使用(衛生管理のため)
フィルター設置(水酸化鉄緩和のため)
.
宮城県牡鹿郡女川町女川2-3-2
0225-50-2683
ホームページ

9:00~21:00(最終受付20:30)
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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