(2023年6月訪問)
さて私は羽後本荘駅から羽越本線の普通電車に乗って仁賀保駅へやってまいりました。仁賀保駅といえば駅の真裏にTDKの大きな工場がありますね。昭和世代の私は、学生時代にTDKのカセットテープやビデオテープをたくさん買って録音や録画を繰り返しましたので、青春時代の記憶にはTDKの存在が色濃く残っています。高校生の頃、青春18きっぷで東北を旅している際に、車窓から仁賀保駅裏手に広がるTDKの工場を目にした時には、遠い秋田の地と自分の毎日が知らぬ間に結びついていたことに気づいて驚いたものです。
そんな旅の思い出がある仁賀保駅を出て、海の方へ向かって歩いてゆくと、やがて今回の目的地である「かみの湯温泉」に到着です。付近には平沢漁港があるためか、周辺は漁師町のような独特の雰囲気が漂っています。
裏手にはお湯を沸かすための廃木材がたくさん。いかにも銭湯って感じですね。
さて中へ入りましょう。銭湯の割りには妙に狭い下足場で靴を脱ぎ、金属製の松竹錠が刺さった下駄箱へ靴を収めてから、番台のお姉さんに湯銭を支払います。なお浴場内はボディーソープやシャンプーなどのアメニティ類が無いので、もし必要なものがあれば事前に番台で買っておきましょう。レンタルタオルもありますので、予算にこだわらなければ手ぶらでの入浴も可能です。
お風呂は露天風呂がある「長寿の湯」と、露天風呂は無いけど電気風呂やジェットバスがある「元気の湯」があり、奇数日は「長寿の湯」が女湯で「元気の湯」が男湯、偶数日はその逆という形で暖簾替えを行っています。私が訪ねた日は奇数日だったため、「元気の湯」に男湯の暖簾が掛かっていました。このため、以下は「元気の湯」について説明致します。また、私が訪ねた16時半頃は地元の爺様で大賑わいだったため、館内の画像はございません。ご了承ください。
脱衣室はまさに昭和の銭湯そのものといった雰囲気。室内には使いこまれた開放的な棚の他、無料のロッカーも用意され、お好きな方を使えます。室内にエアコンはありませんが扇風機は取り付けられていますので、湯上がり後のクールダウンも大丈夫。なお備えのドライヤーは1つです。
お達者クラブと化していた浴室へ入った途端、鼻孔を突くような弱い刺激臭が感じられました。無論爺様たちの加齢臭ではありません。温泉由来のヨード臭です。ということは、こちらの温泉も前々回の記事で取り上げた「安楽温泉」同様、日本海沿岸に点在する鹹水の温泉(鉱泉)かと思われます。この付近ですと象潟の「道の駅」にも(同じではないが)似たような泉質に入れる温泉施設がありますね。
「元気の湯」は、場内の右手及び左手奥に洗い場が配置され、昭和の銭湯にはおなじみの壁固定式シャワー(一部はホース付き)と押しバネ式(宝式)カランの組み合わせが十数セット並んでいます。なお水栓から出てくる水は源泉そのままの茶色い冷鉱泉で、お湯は加温された鉱泉です。なお水栓から出てくる鉱泉は後述する浴槽のお湯より鉱泉の良さや持ち味が出ており、個人的に気に入りました。特に冷鉱泉はコンディションが良く、桶に冷鉱泉を注ぐと芳ばしい香りが放たれ、麦茶色の水が泡立ちます。
メイン浴槽は左手にあり、歪な五角形もしくは六角形のような形状をしたタイル張りで、ジェットバスや電気風呂など仕掛け風呂が浴槽の半分近くを占めています。浴槽に張られたお湯はちょっと熱めに加温されており、濃く出しすぎた麦茶みたいな色を帯呈しています。そのお湯はしょっぱく、同時に清涼感のあるほろ苦みを伴い、ヨード臭や臭素臭のほか、鉱物油感も少々含まれているようでした。湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感をはっきりと感じられます。とはいえ、その心地よい浴感に惹かれて長湯するのは禁物。しょっぱいお湯ですからパワフルに火照り、場合によっては湯当たりするかもしれませんので、あまり長湯せず適当なところで湯船から出ましょう。
余談ですが、私が湯船に浸かって滑らかな肌触りを楽しんでいると、場内にいる爺さんたちが奥へ奥へと続々吸い込まれてゆく光景を目の当たりにしました。一体何が起きているのか、催眠術にかけられているのか、黄泉の国へ召喚されているのか、果たして私も奥へ導かれて良いものか、不安を覚えつつ湯船から出て勇気をもって奥へ行ってみると、そこにはサウナと水風呂があったのでした。地域を問わず皆さんサウナが大好きなんですね。
温泉の目の前は渺茫たる日本海です。お風呂上がりの脱衣室は常連さんで混んでおり、扇風機に当たるスペースもあまり無さそうだったので、サクッと着替えて海岸に出て、潮風に当たってクールダウンしたのでした。
体の火照りが落ち着いた後に歩いて仁賀保駅へ戻り、「特急いなほ」新潟行に乗車しました。羽越本線の秋田~酒田間は本数が年々減少しており、特にこの区間を走る特急は風前の灯火。いずれ全廃されるのではないかしら。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 19.5℃ pH8.0 溶存物質3871.8mg/kg 成分総計3884.8mg/kg
Na+:1229mg, NH4+:17.6mg,
Cl-:1498mg, Br-:8.5mg, I-:5.3mg, HS-:0.4mg, HCO3-:940.0mg,
H2SiO3:63.6mg, HBO2:16.6mg, CO2:13.0mg,
(平成20年11月13日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(温泉資源保護と衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため)
秋田県にかほ市平沢字家の後2番
0184-35-3178
ホームページ
13:00~22:00 毎週月曜・火曜定休(祝日は営業して翌日休業)
400円
ロッカー・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5