温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

かしはら温泉

2013年06月19日 | 鹿児島県
 
宮之城温泉と宮之城市街地のちょうど中間地点にあたる、さつま町柏原地区。辺り一面見渡す限りだだっ広い畑です。あぜ道の立って周囲を見回していると、ちょうどトラクターが畑を耕している真っ最中でした。


 
そんな長閑な田園地帯の細い農道を進んでゆくと、やがて「かしはら温泉」の小さな看板を発見。生垣の間から路地へと入ってゆきます。



かしはら温泉はこちらの民間公衆浴場1軒のみで、この場所で営業している水道設備会社が運営なさっているようです。



敷地内の建物は幾棟かに分かれており、料金は母屋に設けられてる受付の小さな窓口で支払います。訪問時はおばちゃんが受付にいらっしゃいました。


 
入浴前に敷地内をちょっと探索。
母屋の向かいには氏神・水神・湯神の三神が祀られているお社があり、その傍の源泉井戸では日立のベビコンが唸りをあげていました。エアリフトポンプによる揚湯なんですね。



お社と棟続きになっているこちらは家族風呂で、個室が3室並んでいます。田園の質素な公衆浴場にも家族風呂が設けられているんですね。しかも500円なんだとか。九州の温泉は個室風呂を利用できる施設が多く、しかもリーズナブルなので、関東人の私にとっては羨ましい限りです。


 
私が家族風呂をカメラにおさめていると、番犬のメリーちゃんがけたたましく吠え立ててきました。自分では認識していないのですが、私は余程怪しい容貌をした人間なんでしょうね。犬小屋の脇を抜けて真裏に出ると、コンクリの真新しい堤防が左右に伸びており、その向こうで川内川が悠然と流れていました。普段は明媚な景色をつくり、流域に潤いを与えているこの川も、いざとなれば忽ち大暴れするのですから、水害って本当に恐ろしいものです。



さて浴場へ。赤いトタンの屋根が目を引く平屋の湯屋には男女別の内湯が設けられています。画像ではいまいち伝わりにくいのですが、相当ボロい湯屋です。(関係者の方へ。こんな表現をしてごめんなさい)


 
脱衣室も外観同様にかなり草臥れており、薄汚れた室内には棚やカゴなど必要最低限のものが用意されているばかりです。低い天井には扇風機が取り付けられているのですが、金具は錆びており、羽根のカバーがなく、なぜか「強」運転しかできないという代物。実際に回してみたのですが、いつ羽根がすっ飛んでくるかわからないので、身の危険を感じて数秒運転させただけで止めてしまいました。またこの時は辺りに肥やしの臭いが漂っていたのですが、窓を全開にしていた脱衣室にもその臭いが入り込み、むしろ室内空間で逃げ場を失い滞留して、より臭みが濃くなっているようでした。
壁に掲示されている分析表の内容も心もとなく、陽イオンが記載されていなかったり、陰イオンについても、炭酸水素イオンはHCC、炭酸イオンはCCなど、化学のテストだったら×をもらっちゃうような誤記が目立っていました。一応等ページの下部にデータを転記しましたが、その数値が正しいかどうかはわかりません。


 
浴室はブルーのタイル貼りで、女湯との仕切りの上には大きなボール状の照明が2つ取り付けられています。浴槽はかなり大きくて10人は同時に入っても問題無さそうな容量を有しており、長靴を横にしたような形状をしており、ちょうど踵にあたる部分に石積みの湯口が設けられています。


 
洗い場は浴室の左右に分かれて計4基の水栓が取り付けられています。一見するとごく普通のシャワー付き混合水栓なのですが、よく見ますとなぜか水と湯のコックが逆になっていますね。単に赤と青を付け間違えただけかと思っていたのですが、右側の赤い印の栓を開けるとちゃんとお湯が出て来ました。配管まで一般的な施工とは逆に接続されているのです。どうして水とお湯をテレコにしているんでしょうか。なお水栓から出てくるお湯は源泉です。


 
お湯の投入量はかなり豊富であり、ドボドボと音を立てて落とされたお湯は大きな湯船を満たした後、長靴のつま先にあたるところからオーバーフローしていました。お湯が溢れ出る部分だけは浴槽の縁の色が他と異なっています。加水などが無い完全掛け流しです。
お湯は無色透明ですが、湯中では膜がちぎれたような淡い橙色の小さな湯の花がたくさん浮遊しているため、わずかに濁って見えます。湯口に置かれたコップで飲泉してみますと、ほんのりと甘い塩味と重曹的な清涼味が感じられました。匂いは特にしなかったように記憶しています。界隈には宮之城温泉や紫尾温泉など硫黄感を有する温泉が点在しているにもかかわらず、ここの温泉からは硫黄感が得られないというのも面白いところです。一方で、その両温泉にも負けないような(いや、多少は負けるかな…)ツルスベ浴感はしっかりと肌に伝わり、41~2℃という絶妙な湯加減とその気持ち良い浴感が相俟って、いつまでも浸かっていたくなるような入り心地が楽しめました。また湯上りの爽快感も良好です。

私が入浴しているときに常連のおじいさんとお話する機会があったのですが、そのお爺さんは、建物はガタピシだけれど、100円で掛け流しのお湯に入れるんだから立派なお風呂だよ、と誇らしげに語っていらっしゃいました。なるほど、100円で利用できる温泉は鹿児島県内にも余多あれども、これだけ広い浴槽に入れるお風呂は珍しいかもしれませんね。潔癖症の方にはあまりおすすめできませんが、コストパフォーマンスを重視する方や渋い浴場が好きな方には向いている温泉かと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(※) 45.5℃ pH8.1 蒸発残留物1.208g/kg
Cl-:221.6mg(31.63mval%), HCO3-:674.2mg(55.92mval%), CO3--:68.4mg(11.54mval%),
館内表示の分析表には陽イオンのデータ記載なし
(昭和61年8月11日)
(※)泉質名は私の推定です。館内表示では「炭酸水素塩泉」と表記されています

鹿児島県薩摩郡さつま町柏原1323  地図
0996-59-8672

8:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★
コメント
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