温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

西宮市 浜田温泉

2024年04月25日 | 兵庫県

(2023年2月訪問)
前々回記事から続く関西シリーズの続編になります。まずは阪神電車を乗り継いで久寿川駅で下車。


久寿川駅から徒歩6分程で、今回の目的地である「浜田温泉」に到着です。なお甲子園からも徒歩圏内にあるそうですので(甲子園駅から徒歩15分)、野球の観戦帰りに立ち寄るもの良いかもしれませんね。
こちらは下町風情漂う街並みに溶け込んでいる昭和35年開業の銭湯なのですが、施設名に「温泉」とあるように、2001年に温泉掘削に成功して温泉を提供するようになり、2004年に現在のスタイルへ改装して現在に至っています。上画像には写っていませんが、銭湯のシンボルである煙突には「天然温泉」の文字がしっかりと表記されています。


この温泉でマニア的に嬉しくなるのが、玄関の向かい設置された源泉が落ちるモニュメント。
地下900メートルの源泉から汲み上げたお湯をそのまま垂れ流しており、自由に触れることができます。実際にここでお湯を汲む人もいらっしゃいました。


下駄箱は昔ながらの木の松竹錠ですが、番台は現代風のカウンター式。湯銭を払って中へ入ると、脱衣室は至って普通の銭湯らしい佇まいです。

なお私の訪問時は浴場内が大混雑していたため、お風呂の写真はございません。文章のみでご説明して参ります。
内湯は限られた空間に洗い場や各種浴槽などいろんな設備を詰め込んでいる印象を受け、また混雑時に利用してしまったため、ちょっと窮屈な印象を受けました。記憶が曖昧で申し訳ないのですが、内湯にはたしか6~7か所の浴槽があり、うち1つは水風呂で4つは真湯となっており、残る2つが温泉浴槽です。男湯の場合は浴場に入って右前方に2人サイズの小さな浴槽が2つ背中合わせのような形で設置されており、純然たるかけ流し状態なのですが、何分にも小さな浴槽であるため常に客が入っており、しかも周囲には順番を待つお客さんもいるために、残念ながら私は入れませんでした。


(上画像は公式サイトより借用)
男湯の場合、サウナと水風呂の間を抜けた先に露天風呂が設けられています。露天といってもアパートと民家、そして塀に四方を囲まれた立地なので景色も何もありませんが、でも銭湯にもかかわらず露天風呂に入れることは嬉しいですよね。しかも源泉かけ流しの温泉なのですから、文句なんて言ってられません。むしろ有難く思わなきゃ。

内湯の温泉浴槽はいずれも小さなものでしたが、露天の温泉浴槽には6〜7人サイズの比較的大きな岩風呂と、その奥に2人サイズの岩風呂がありますので、こちらの施設で温泉に入りたいなら露天を利用した方が良いかと思います。手前側の大きな岩風呂には岩の上から滝のように温泉が落とされており、成分付着により岩が黒く染まっています。またこの他にもう一つ湯口があり、2方向からお湯を供給することで湯加減の均衡を図っているようです。
一方、奥の小さな岩風呂は底面から温泉が供給されていました。

内湯露天ともに、温泉が供給されている浴槽ではいずれも加温加水循環消毒ろ過無しという純然たるかけ流しの湯使いが実践されています。毎分600リットルという豊富な湧出量がそのような贅沢な湯使いを可能にさせているのでしょう。分析表によれば溶存物質1.060g/kgなので、辛うじて(ギリギリのラインで)ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉という泉質名を名乗れているのですが、とはいえそんな数値とは裏腹になかなかしっかりとした知覚的特徴を有しており、実際はもっと成分が濃いのではないかと分析結果を疑ってしまいたくなるほど。お湯の見た目は薄っすらジャスミン茶のような色を帯びた透明で、床タイルや岩などオーバーフローが流れる流路は赤黒く染まっています。お湯を口に含むと金気風味と薄い塩味、やや遅れてほろ苦味、そして有機肥料のような風味が感じられ、湯中ではしっかりとしたツルスベ浴感と泡付きが得られます。特に露天奥の小さな浴槽では源泉が底面投入されているためか、湯中で残存する気泡が多く、入浴するとたちまち全身が気泡で覆われます。

阪神間にはアワアワが多い重曹泉の温泉が点在しており、拙ブログでもこれまでいくつも具体例をご紹介してまいりましたが、この「浜田温泉」もその典型例と言えましょう。私個人としてはアワアワの重曹泉が大好きなので、こちらの温泉は非常に気に入りました。次回は空いている時間を狙って再訪してみたいと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 43.5℃ pH7.4 600L/min(動力揚湯) 溶存物質1.060g/kg 成分総計1.073g/kg
Na+:257mg(88.90mval%),
Cl-:107mg(23.62mval%), HCO3-:577mg(74.02mval%),
H2SiO3:70.7mg, CO2:13.0mg,
(2011年2月4日)

兵庫県西宮市甲子園浜田町1-27
0798-26-7088
ホームページ

15:00~24:00 毎週水曜定休
490円
ドライヤー20円有料。

私の好み:★★+0.5

.
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尼崎市 蓬莱湯

2018年04月22日 | 兵庫県
 
前回記事の「クア武庫川」を出た私は、再び阪神電車に乗って梅田方面へ向かい、今度は尼崎センタープール前駅で下車しました。駅名にプールとありますが、人間が泳げるプールではなく競艇場の池を指しているんだとか。実際に高架の駅の目の前には漫然と水を湛える大きな競艇場を見ることができますが、ということはレース開催日になるとガラの悪いオジサン達が集まって、駅前は一種独特の雰囲気に包まれるはずです。ただでさえ尼崎という街に対して抱くネガティブな先入観に加え、その先入観を駄目押しさせるギャンブルという要素が重なると、柔な関東人である私はその様子を想像するだけで怖気付いてしまい、電車を降りて改札を出るときには、自分の身を守ろうと妙に緊張してしまいました。


 
警戒心が解けぬまま、昭和の下町風情が強く漂う街中を歩くこと数分で、旅館を思わせるシックなファサードの銭湯にたどり着きました。今回の目的地である「蓬莱湯」です。ここだけ見ると尼崎とは思えません。昔ながらの銭湯をモダン和風にリノベーションしたのかもしれませんね。



建物の裏手には銭湯のシンボルである煙突が天高く屹立しています。


 
また建物の脇には温泉スタンドのほか、温泉を使ったペットシャワーと称する珍しい設備も設けられていました。


 
暖簾をくぐって中へ入ってみます。玄関には「地湧の湯」と記された札が立てかけられていました。こちらで使っている源泉の名前です。番台というよりフロントと称したくなるような受付で、ちょっとご機嫌宜しくないようなおばちゃんに湯銭を支払います。館内はいかにも現代的な、温もりある色調と明暗のコントラストをはっきりさせたモダン和風な内装が施されており、近隣の銭湯とは一線を画す上品な雰囲気を感じ取ることができます。また決して広くはないものの、旅館の応接空間のような休憩室が設けられていて、これまた下町の銭湯とは思えない趣きです。

私が訪問した時の場内は混雑していたため、以下文章のみでご紹介します。悪しからずご了承ください。
小綺麗な脱衣室を抜けて浴場へ。
浴場内のレイアウトこそ銭湯そのものですが、大理石のような風合いのタイルを多用することで、非日常的かつ上質な雰囲気を醸し出していました。
中央の主浴槽や副浴槽を挟む形で左右に洗い場が設けられています。設置されているカランの数は計16。いずれもシャワー付き混合栓です。もしかしたらシャワーから出てくるお湯は温泉だったかもしれませんが、記憶が定かでないので、はっきりとしたことは申し上げられません(ごめんなさい)。奥の方には(左から)真湯浴槽・水風呂(2人サイズ)・ガラス張りのスチームバス・温泉使用の座湯(2人用)の順に並んでいます。

中央の主浴槽や副浴槽には温泉がふんだんに使われており、浴槽の縁から惜しげもなくお湯が溢れ出る光景を目にすると、本当にここが尼崎の街中なのかと我が目を疑いたくなりました。主副は前後に隣り合って並んでおり、手前側(脱衣室側)は主浴槽。目測で1.8m×2.5mほどの5~6人サイズ。一部は泡風呂になっており、泡風呂ではない部分はちょっと深くなっています。槽内の湯口より温泉が噴き上がっており、42℃前後の適温のお湯が張られていました。
副浴槽は主浴槽から流れてくるお湯を受けており、3人サイズで湯加減は40~41℃くらいのぬるい設定。この副浴槽からお湯が豪快にオーバーフローしており、見ているだけでも豪快な気分を味わえます。

お湯はやや濃いめのジャスミンティー色。薄いベージュや褐色の浮遊物がチラホラ確認できますが、懸濁は見られず、浴槽の底ならはっきりと見える透明度を有しています。浴槽全体がゴールド色に染まっているのですが、これはおそらく温泉成分の付着によるものでしょう。お湯からは淡い金気味と清涼感を伴うほろ苦さ、弱い金気臭とモール泉のような香りが感じられます。主浴槽に入ると肌への泡付きがみられましたが、これは温泉由来なのか或いは泡風呂の泡なのか、そのあたりは判然としません。とはいえツルツルスベスベの滑らかな浴感は素晴らしく、しかも完全かけ流しなのですから、ありがたいことこの上ありません。繰り返しますが尼崎の街中なのです。にもかかわらずかけ流しの温泉が楽しめるのですから、湯に浸かればまさに蓬莱の境地に至れることでしょう。私のような湯めぐりを趣味とする面倒な唐変木も、舟券を外してオケラになったおじさんも、こちらのお湯に肩まで浸かれば、みんな等しく幸せになれるはずです。
前回記事の「クア武庫川」はしょっぱくてカルシウムが多い濁り湯でしたが、そこから大して離れていないにもかかわらず、こちらはあっさりとした淡いモール泉のようなタイプの温泉なのですから、阪神間の温泉は実に多種多様。以前拙ブログでも申し上げましたが、阪神沿線は隠れた温泉郷と言えそうです。


湯元 蓬莱 地湧の湯
単純温泉 43.0℃ pH8.0 603L/min(動力揚湯) 溶存物質0.467g/kg 成分総計0.469g/kg
Na+:110mg(90.64mval%), Ca++:4.9mg,
Cl-:2.9mg, HCO3-:276mg(89.55mval%), CO3--:12.0mg,
H2SiO3:54.7mg,
(2011年5月30日)

阪神・尼崎センタープール前駅より徒歩5分
兵庫県尼崎市道意町2-21-2  地図
06-6411-0567
ホームページ

15:00~23:30(受付23:00まで) 金曜定休
420円
ロッカーあり、ドライヤー有料貸出(50円)、各種販売あり

私の好み:★★★
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西宮市 クア武庫川

2018年04月19日 | 兵庫県
今回から数回連続して関西の温泉を取り上げます。
大阪神戸間の阪神沿線は、知る人ぞ知る温泉の宝庫。庶民的な下町の街中には、いまだに昭和の風情を色濃く残す銭湯が多く営業していますが、その中には天然温泉を汲み上げているところがあり、温泉ファンも唸る名湯に出会えることもしばしばです。拙ブログでもそんな阪神間の温泉をいままで取り上げていますが、今回ご紹介するのは西宮市にある「クア武庫川」です。


 
まずは阪神武庫川線に乗って東鳴尾駅で下車。土手の下にある小さな無人駅です。


 
駅から西に向かい、突き当たった小さな川に沿って北へ向かうこと約5分で、今回の目的地である「クア武庫川」に到着です。お盆休みの夕方4時頃に訪れたのですが、駐車場も駐輪場も埋まっており、多くのお客さんで賑わっていることが窺えました。



正面玄関の左手では、温泉がボコッボコッと音を立てて噴き上がっていました。茶色く染まったその設備は、温泉の析出が分厚くこびりついています。しかもそのお湯はとても熱いのです。この手の析出は、山奥の温泉地で時々目にしますが、まさか市街地の真ん中でお目にかかれるとは思いませんでした。

訪問時は多くのお客さんで混雑していたため、館内の様子については、文章のみで述べてまいります。ご了承ください。

松竹錠の下足箱に靴を預け、券売機で湯銭を支払って、券をカウンター式の番台に差し出します。カウンターの右が女湯で、左が男湯。脱衣室は銭湯そのもので、ここまで特に温泉があるような気配は感じられません。
浴場も都市部の銭湯でよくあるようなレイアウト。東京の銭湯とちょっと違うところは、浴室に向かって大きなテレビが設置されているところ。お盆という時期柄、ABC(朝日放送)の甲子園中継が映され、入浴客は試合の動向に釘づけになっていました。このように昼間は高校野球、夜はタイガース戦の中継が映されるのでしょう。
浴室の様子を具体的に述べると、奥へ長い室内の両サイドに洗い場が配置され、それらの挟まれる形で、手前側から上がり湯・泡風呂(ジェットバス)・電気風呂・熱めの浴槽、という順に浴槽が並んでいます。また、そこから更に奥へ入ったところに、スチームサウナ・サウナ(別料金)・水風呂がコの字に配置されており、実に多様な浴槽を楽しむことができます。でもこれらの浴槽に温泉は使われていません。

男湯の場合、浴室の左斜め前に露天のような一角があり、そこへ設けられているひとつの浴槽に温泉が張られています。一応屋外なのでしょうけど、その猫の額のような空間は高い塀に囲まれているので、屋外とはいえ開放感は得られません。でもここの浴槽は明らかに他と異なる姿を見せているのです。
浴槽は8人サイズ。角の一部が狭くなっており、その最奥にある岩積みの湯口からお湯がボコボコと音を立てながら吐出されています。湯口周りは赤黒く染まっているのですが、そこだけでなく浴槽の複数個所からも温泉が供給されており、その全量が掛け流されているのです。温泉を受ける浴槽、そしてオーバーフローが流れる床は、温泉成分によってベージュ色に分厚くコーティングされており、まるで象の肌のように深い皺を刻みながらコンモリと盛り上がり、かつゴツゴツとした表面を私たちに見せてくれます。とても街中とは思えない析出には、本当に驚かされました。

お湯はオレンジ色に濁り、透明度は15~20cmほど。とてもしょっぱく、ほろ苦みがあり、金気味や炭酸味も確認できます。また炭酸ガスが吐き出されるためか、湯口付近にいると、時折咽ることがあります。お湯からは金気臭のほかハロゲン系の匂い(臭素か)や磯のような匂いが漂っています。湯中ではギシギシと引っかかる浴感が得られ、パワフルに火照り、迂闊に長湯すると容易に湯あたりを起こしてしまうほど凶暴なお湯です。夏に入ると汗が止まりません。有馬温泉に似たような、濃厚で強烈な個性を有するお湯です。こんな個性的な温泉が街中で湧いているのですから、本当に驚いてしまいます。
土地柄、倶利伽羅紋々を背負ったお客さんが多いようですが、それでもお湯は逸品。阪神間の温泉の面白さを改めて認識しました。


ナトリウム-塩化物強塩泉 58.2℃ pH6.54 溶存物質27.8g/kg 成分総計28.6g/kg
Na+:8790mg(79.9mval%), Mg++:479mg(8.24mval%), Ca++:940mg(9.81mval%), Fe++:15.2mg,
Cl-:15900mg(96.2mval%), Br-:37.1mg, HCO3-:1050mg,
H2SiO3:93.4mg, HBO2:249mg, CO2:714mg,
(平成5年4月8日)

阪神武庫川線・東鳴尾駅より徒歩5分
兵庫県西宮市笠屋町3-10
0798-47-8565

15:00~24:00 木曜定休
420円
ロッカーあり、各種販売あり、ドライヤー有料(20円/2分)

私の好み:★★+0.5









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有馬温泉 ミント・リゾートイン・アリマ

2014年08月27日 | 兵庫県
 
あくまで個人的な見解ですが、温泉と庶民生活との距離が短い九州や、農閑期の湯治文化がある東北などと異なり、温泉宿泊をハレの時間を捉える傾向にある関西エリアでは、手頃な料金で泊まれる温泉旅館が少なく、一人客を受け入れてくれる施設となるとかなり限られてしまいます。関西屈指の温泉地である有馬温泉はその典型例であり、一人客OKな宿でも当たり前のように1泊で5桁に達してしまいますから、それなら神鉄で神戸市街に戻ってビジネスホテルに泊まった方が安上がりだな、と吝嗇家な私としては考えてしまうのですが、そんな有馬にあって温泉街からちょっと離れたところにある「ミント・リゾートイン・アリマ」は、リゾートと銘打っているものの、ビジネスホテルのように気軽でリーズナブルに宿泊できる一人旅の強い味方ですので、今回有馬へ立ち寄ったついでに一泊利用してみることにしました。
ホテルは隣接する病院が経営しているらしく、その病院の敷地内にあり、カタカナの名前から抱くイメージとは裏腹に、企業の保養所のような地味な建物です。三角形のアーチを潜って玄関へと向かいます(ハレーションが入り込んだ見難い画像で申し訳ございません)。


 
こちらのホテルは神鉄・有馬温泉駅から川沿いに約700メートル下ったところにあり、親柱にレトロ調な外灯が立てられてる乙倉橋を渡った先に病院とホテルが建ち並んでいるのですが、ここにはかつて国鉄有馬線の終点である有馬駅があったんだそうです。つまり乙倉橋は駅正面への架け橋を担っていたのであり、駅の跡地に病院とホテルが建てられているわけですね。
この有馬線は昭和18年に不要不急路線として休止されて以来、復活せずに現在に至っているのですが、橋の上から川の上流を向かって撮った上画像の左側に写っている空き地は、いまでもJR西日本が管理しているだとか。



今回予約した客室はツインの洋室で、ひと通りの備品は揃っており、トイレ付きユニットバスも設けられていますが、冷蔵庫の備え付けは無く、廊下に置かれている共用のものを使うことになります。


 
浴室は1階フロントのすぐ左側です(男湯の場合)。宿泊客の入浴可能時間は15:00~23:00、6:30~8:45です。源泉を加温した上で浴槽へ供給している都合上、真夜中の利用はできないのでしょう。脱衣室はこぢんまりしているものの、清掃はよく行き届いており、ハンガー付きロッカーの他にカゴの備え付けもあったり、無料で使えるドライヤーが用意されていたりと、使い勝手はまずまずです。


 
室内には温泉の配管内に付着したスケールが展示されていました。説明文によると、有馬でも珍しい自家源泉であり、裏山にある源泉(地下800メートル)から湧出している金泉である、とのこと。


 
お風呂は男女別の内湯のみで、壁に飾り付けられているステンドグラスが印象的な浴室には、後述する金泉浴槽の他、キャパ2~3人のポリバス真湯槽が1つ、そしてシャワー付き混合水栓が4基設けられています。


 
金泉浴槽は元々白いタイル貼りだったと推測されるのですが、濃厚なお湯の成分付着によってすっかりオレンジ色に覆われており、浴槽のお湯も味噌汁を連想させるような色に強く濁っていました。容量としては4~5人サイズといったところ。濁りが強くて槽内の様子がまったく見えませんから、入浴の際は手すりに掴まって慎重に足を入れましょう。なお、窓下の浴槽縁には丸太が枕のような感じでセッティングされているのですが、位置が高くて頭を上手く載せることができませんでした。


 
槽内ではジャグジーが作動しており、この手の物が苦手な私としてはちょっと騒々しく感じられるのですが、こんな濃くてスケールが忽ちこびりついてしまうようなお湯でジャグジーのような装置を運転させて、果たして故障が頻発しないのでしょうか。浴槽縁には石灰質が分厚く層をなしてこびりついており、とりわけこのジャグジー周りでは浴槽の容量を明らかに狭めるほど、コンモリ盛り上がっていました。そしてその表面には千枚田のような鱗状の模様が形成されていました。


 
浴槽の中程に円筒形の湯口が立ち上がっており、漬物石のような重い蓋が載せられていて、蓋の隙間からぬるいお湯が、チョロチョロと円筒の外側を伝って浴槽へと注がれていました。この蓋を開けてみますと、まるでセサミストリートのキャラクターみたいな、パックリ口を開けたモンスターのような格好になってしまったのですが、この内部からは槽内の濁り方とは異なる、白っぽく微濁した鉱泉が底の方から上がっていました。またこのモンスター円筒とは別に、窓下から槽内へ塩ビ管が伸びており、その先からは加温されたお湯が吐出されていました。館内表示によれば入浴に適した温度にするため熱交換で加温し、循環を行いつつ源泉投入も行う放流一部循環式の湯使いを採用しているそうですから、状況から想像するに、モンスター円筒から上がってくる鉱泉は生源泉なのでしょうね(でも分析表記載の湧出温度より遥かに高い40℃弱はあったので、断言はできません)。なお排湯に関してはよくわかりません。

浴槽のお湯は明るいオレンジ色に強く濁り、透明度は殆どありません。いかにも有馬の金泉らしく、鉄錆味や苦味の他に強い塩辛さを有しているのですが、前々回や前回記事で取り上げた温泉街に湧く高温の天神(「上大坊」)や愛宕山泉源(「かんぽの宿」)と比べて塩っぱさは幾分マイルドであり、強烈な塩分による口腔粘膜への刺激はあまり感じられませんでした。その一方で、ホテル名と関係しているかわかりませんが、ミント(ハッカ)のようなスーッとする清涼感がわずかながら伝わってきました。湯中では食塩泉らしいツルスベと、カルシウムや金気の多い温泉らしいギシギシ浴感が混在しています。湧出温度が25℃未満ですから浴用に際しては加温されていますが、とても濃い金泉ですから体がお湯に負けてしまって長湯ができず、優しい真湯の存在がとてもありがたく思えます。また湯上がりには肌にベタつきや引っ掛かりが残りますが、それほど嫌味な感じはせず、温浴効果は抜群で、いつまでも汗が引かずに体の芯からよく温まります。
手軽な料金で自家源泉の金泉に入ることができる、旅人の味方というべきホテルでした。


乙倉谷源泉
ナトリウム-塩化物強塩冷鉱泉 23.3℃ pH6.5 100L/min(動力揚湯)
加温あり(入浴に適した温度にするため熱交換で加温)
循環あり(濾過はしていない)
加水・消毒なし

神戸電鉄・有馬温泉駅より徒歩7分(700m)
兵庫県神戸市北区有馬町188-23  地図
078-903-0023
ホームページ

日帰り入浴13:00~17:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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有馬温泉 かんぽの宿 有馬

2014年08月26日 | 兵庫県

ホテルや旅館の規模と温泉の湯使いの良さは、往々にして反比例する関係にあり、同じく規模と日帰り入浴の歓迎度も反比例する傾向があります。特に有馬温泉は限られた温泉資源を多くの施設で分けあっているため、貴重なお湯を大切に使うべく、多くのお宿で循環などが行われており、しかも日帰り入浴のハードル(時間や料金面)が高く設定されています。そんな環境にありながら、当地の「かんぽの宿」はこの常識に反して自家源泉を加水した上での掛け流しを実践しており、しかも日帰り入浴ウェルカムですので、私のように温泉をハシゴする人間にとっては非常に有り難い存在です。
坂道が続く温泉街のメインストリートをどんどん登って奥へ進み、炭酸泉源公園から更に急坂を登って六甲山の登山口へ向かってゆくと、その手前右側に大きな建物が目に入ってきます。


 
エントランスを入って広々としたロビーからフロントへ向かおうとすると、その手前に券売機が立っていました。日帰り入浴を積極的に受け入れていることが窺えます。日帰り入浴客はこれで料金を支払い、フロントを経由することなく、入浴券を手にしたまま浴場のある4階へエレベーターで直接上がります。



4階でエレベータを降り、右折して通路を進むと浴室入口の前にカウンターがあるので、そこにいるスタッフに券を手渡します。


 
この通路には有馬温泉に関する説明プレートの他、「かんぽの宿」で使っている自家源泉の写真が展示されていました。公共色の強い施設でありながら、自家源泉を有しているとは意外です。



源泉にはちゃんと湯守りの方がいらっしゃり、こまめに管理なさっているそうです。通路に置かれたショーケースには引湯に用いる配管が並べられており、まっさらな使用前からわずか7日で配管内にスケールが付着して目詰り状態になってしまう様子が、ひと目でわかるように展示されていました。何週間や何ヶ月といったスパンではなく、わずか数日で配管を交換しなくてはいけないのですから、関係者の方々のご苦労たるや相当のものかとお察しします。にもかかわらず日帰り入浴が平日700円(週末1000円)で利用できるのですから、本当に有り難いものです。


 
中央にベビーベッドが据えられた脱衣室は、オレンジ色のロッカー扉や木目の壁など暖色系でまとめられており、手入れも行き届いていて明るく綺麗です。3台並ぶ洗面台には2台のドライヤーが備え付けられており、強い出力のおかげでスピーディーに髪を乾かせました。また室内に設置された扇風機2台と床置型のエアコンによって強力なクールダウン体勢がとられており、有馬の濃厚なお湯によって火照ってフラフラになっても、素早く体を冷却することができました。


 
お風呂は内湯のみで、窓に面して真湯浴槽と源泉浴槽がひとつずつ設けられており、床には柔道場や剣道場で用いられるような化繊畳が敷き詰められていました。その広さは目算で27畳前後です。真湯浴槽からはプールの如き強烈な塩素臭が放たれており、槽内で稼動しているジャグジーによる振動が、塩素臭の拡散を余計に助長しているようでした。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が12基、コの字形に並んでいます。


 

源泉浴槽は結構広く、きちんと数えてはいませんが、軽く15人は入れちゃいそうなキャパがあります。お湯の濁りが強く、槽内のステップが見えませんから、湯船に入る際には壁に掲示されている注意書きを参考に、手すりに掴まりながら慎重に足を運びましょう。
この湯船のお湯を桶に汲んでみると、濁りの濃さがよくわかります。ご覧の通り有馬温泉の金泉なのですが、同じ有馬温泉でも、取り上げた「上大坊」の天神泉源は茶色が濃いブラウン系で、カレーで例えるならビーフカレーのような色合いでしたが、こちらのお湯は明るいオレンジ系で、チキンカレーを連想させてくれます。


 
湯口からは直に触るのが躊躇われるほど熱いお湯が落とされており、窓下の切欠より排水されています。加水されているものの放流式の湯使いとなっています。有馬の金泉らしく、赤錆臭を放つお湯は非常にしょっぱく、鉄味・苦味なども含まれているのですが、あまりに塩辛いために他の味が摑めなくなってしまうほどで、正直なところ味覚的な分析に自信はありません。加水を必要最小限に抑えるためか、投入される源泉の量が絞られており、その甲斐あってどなたでも入れる湯加減となっていたのですが、浴槽の大きさに対して如何せん投入量が少なく、私の訪問時には幾分お湯が鈍っているように感じられました。源泉が非常に高温ですので、入浴に適した温度に下げるため何らかの措置をとらねばならないわけですが、有馬のお湯は酸化しやすいため、貯湯すると質の劣化が著しく、かといって安易に加水すると折角の濃厚さが味わえませんから、従って投入量を絞る他に術はないのでしょう。実に難しいところです。
そんな状況でも横綱級のパワーを持つ有馬の金泉であることに変わりなく、適温であるにもかかわらず2~3分も続けて湯船に入っていられず、すぐに真湯や水のシャワーを求めたくなってしまいました。私以外の他のお客さんも、皆さん長湯できず早々に湯船から上がって、縁に座ってぐったりしたり、あるいは脱衣室へエスケープして扇風機に当たるなど、凶暴なお湯の洗礼を受けていました。湯船が熱かろうが適温だろうが、金泉から受ける身体的衝撃に大差は無さそうですから、濃厚なお湯に慣れていない方は、こちらのお風呂のように適温の湯船に入った方が、難なくお湯のパワーを実感できるかもしれません。
有馬にしては手頃な料金で日帰り入浴ができ、しかも実にパワフルな本物の温泉を掛け流しで楽しめるという、湯巡りする上で実に貴重な施設でした。


愛宕山泉源
含鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉 98.5℃ pH6.45 50L/min(掘削自噴) 溶存物質49.55g/kg 成分総計49.58g/kg
Na+:13500mg(72.2mval%), Mg++:27.0mg, Ca++:2760mg(16.9mval%), Sr++:56.9mg, Ba++:42.7mg, Mn++:40.7mg, Fe++:63.9mg,
Cl-:29400mg(99.8mval%), Br-:53.1mg, HCO3-:60.8mg,
H2SiO3:273mg, HBO2:406mg, CO2:36.2mg, H2S:0.32mg,
加水あり(源泉が高温・高濃度のため)

神戸電鉄・有馬温泉駅より徒歩15分(1.1km)
兵庫県神戸市北区有馬町1617-1
078-904-0951
ホームページ

日帰り入浴10:30~20:30(受付20:00まで)
平日700円、土日祝(および年末年始・GW・お盆期間)1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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