温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

シェアサイクルで巡る大阪市営の渡船 後編

2024年05月06日 | 京都府・大阪府・滋賀県
前回記事の続編です。
今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。


今回の記事でも引き続き、シェアサイクルで大阪市営の渡船を巡った旅の記録を書き綴ります。
前回記事では甚兵衛渡船と千歳渡船に乗りました。その続きです。

●千本松渡船

千歳渡船の「鶴町乗り場」を8:47に出発。
次に目指すは「千本松渡船」の「南恩加島乗り場」。グーグルマップによれば自転車で約12分。8:47の12分後は8:59。
頑張って自転車を飛ばせば9:00発の便に乗れるかもしれない、と期待を抱きながら、港湾部の真っ平らな道をひたすら飛ばして・・・


グーグルマップの計算より1分早い8:58に「南恩加島乗り場」へ到着。


画像では見難いのですが、岸壁へ下るスロープには乗船待ちのお客さんが並んでいました。私もこの列に加わります。


ちなみにこの青い建物が「南恩加島乗り場」の待合所。
なお時刻表によれば、平日の日中や土日は15分毎の運航です。


ゲートが開くと、お客さんが自転車を押しながら次々に乗船していきます。


頭上には通称「めがね橋」こと「千本松大橋」が高い位置に架かっており、その下を船がゆっくりと進みます。


船は木津川の下流を横切って西成区へ。


2分のショートトリップを経て、9:02に対岸の「南津守乗り場」へ到着。


「南津守乗り場」でお客さんを乗せた渡船は、とんぼ返りで「南恩加島乗り場」へ戻っていきました。
さてこれにて自転車で巡る渡船の旅は一旦終了。あとは自転車を電車の駅付近にあるポートへ返却するだけです。


この時は次の目的地が南海電車の沿線だったため、天下茶屋駅を目指すことにしました。
「南津守乗り場」から天下茶屋駅まで自転車で15分程度。


さすがにこの界隈になると俄然交通量が増えますので、安全運転に留意しながら、急がず無理せず漕ぎ進め、9:17に駅付近のポートへ自転車を返却。
無事に南海電車の天下茶屋駅に到着しました。


●天保山渡船

さて、自転車で渡船を巡った翌日の朝、今度はJR桜島線の終点である桜島駅にて下車しました。一つ手前の駅はUSJ最寄りのユニバーサルシティ駅ですが、この桜島駅はUSJに勤めるスタッフさんが通勤で使う駅らしく、ユニバーサルシティ駅ではいかにもといった感じの観光客が下車し、終点桜島駅ではいささか憂鬱な面持ちを浮かべるスタッフと思しき人の群れが働き蟻のような行列をなして、駅から従業員入口へ続々と吸い込まれていきました。同じ電車に乗り同じ目的地を目指す乗客の中に、ハッキリとした陰陽が生まれていたのでした。


私は駅から西へ向かって歩きます。
USJからわずか100~200メートルしか離れていないとは思えないほど地味な街並み。いささか草臥れた住宅街の奥には広大な倉庫が広がっています。


駅から5分程度で天保山渡船の乗り場に到着です。


真上に阪神高速湾岸線を仰ぐ立地。車は阪神高速で安治川の対岸へ渡れますが、徒歩や自転車は国道43号まで橋が無いため、この位置にある渡船は非常に貴重な存在であり、天保山とUSJを結ぶ唯一の公共交通機関でもあります。


USJも対岸の天保山も華やかなイメージがありますが、そんなイメージとは対照的に地味な造りの待合所。それでも他の渡船場に比べればしっかりした造りのように見えます。


さて、乗船です。他の渡船と同じく自転車利用の地元民が多くみられるほか、明らかに観光客と思しき方々が利用する点も、この渡船の特徴でしょう。


対岸には天保山の大観覧車。


自転車を乗せる前提で作られているためか、船の内部はとってもフラットで、天井に握り棒が設置されています。また一部にガラス窓がはめられている以外は吹きさらしです。


2~3分の短い船旅を終えて天保山側に到着。


渡船を下りたところには、「明治天皇観艦之所」と表記されたオベリスクが建っています。慶応4年1月に鳥羽伏見の戦いで旧幕府軍が負けちゃうと、その時大坂城にいた徳川慶喜は天保山から船に乗って江戸へ逃げますが、その2か月後の3月にはこの地でまだ十代半ばの明治天皇が各藩の軍艦を観艦したんだそうです。どうやらこの時の観艦は日本最初の観艦式なんだとか。オベリスク自体は昭和の初期に建てられたようで、この碑の大きさから天皇への忠誠を求められた当時の時代背景が見て取れます。


そのオベリスクの下には、「日中友好 彰往察来」と刻まれた低い石碑が。
こちらは戦時中に中国から連れてこられて過酷な労働を強いられた果てに犠牲となった中国人を追悼するもの。
天保山には観覧車や海遊館など華やかなイメージを偉大居ていたのですが、同時に戦前戦中の歴史も背負っている場所なんですね。


天保山と言えば日本一低い山として有名であり、その標高は4.53メートル。
とはいえ現在では仙台の日和山が日本一低い山らしく、天保山は2位なんだとか。


さて、天保山公園から歩いて5分くらいで地下鉄中央線の大阪港駅に到着。


地下鉄中央線の電車に乗って、次の目的地へと向かったのでした。

連続して取り上げてきた関西シリーズはここで一旦お休み。
次回からは別のエリアを取り上げ、後日改めて関西シリーズを再開します。
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シェアサイクルで巡る大阪市営の渡船 前編

2024年05月04日 | 京都府・大阪府・滋賀県
今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。

東京の街並みからほとんど消えてしまった一方で、大阪にまだ残っている乗り物といえば、公共交通機関としての渡船ではないでしょうか。
かつては東京にも隅田川の「佃の渡し」など複数の渡船がありましたが、現在では江戸川の「矢切の渡し」のみ。これに対して大阪市では数こそ減らしているものの、まだ8ヶ所で市営の渡船事業が続けられており、誰でも無料で利用することができます。澪標(みおつくし)を市章にしている「水の都」大阪には、船が浮かぶ水辺の光景が良く似合います。

船が大好きな私は以前から大阪市営の渡船を利用してみたかったのですが、どの渡船場も鉄道の駅から離れており、また路線バスですと行動時間が制約されてしまうため、長い間二の足を踏んでいました。しかしながら近年はシェアサイクルが普及しており、とりわけ平坦な地形が広がる大阪は自転車の有用性が高いため、2023年2月にそのシェアサイクルを利用した渡船巡りを実践したのでした。


上の地図は、大阪市湾岸部の地図に市営渡船場の場所をプロットしたものです。
8ヶ所あるうち、今回は赤い印でプロットした天保山・甚兵衛・千歳・千本松の4ヶ所を巡りました。なお天保山渡船のみ自転車ではなく徒歩で利用し、他3ヶ所をシェアサイクルで巡りました。今回巡れなかった落合上・落合下・船町・木津川はまた今度機会を見つけて訪ねることにしましょう。
徒歩で利用した天保山はひとまず脇に置いておくとして、甚兵衛・千歳・千本松の3ヶ所は以下のコースで巡りました。

弁天町駅付近でシェアサイクルを借りる
 ↓ (自転車移動)
甚兵衛渡船
 ↓ (自転車移動)
千歳渡船
 ↓ (自転車移動)
千本松渡船
 ↓ (自転車移動)
天下茶屋駅付近でシェアサイクルを返却

この翌日の朝には、JR桜島駅→(徒歩移動)→天保山渡船→(徒歩移動)→地下鉄大阪港駅、というルートで天保山渡船にも乗船していますので、併せて今回書き綴ってみます。

●甚兵衛渡船・千歳渡船

朝7:55頃、JR環状線の弁天橋駅で電車を下車。


駅付近にあるシェアサイクルのポートで自転車をピックアップ。
なお今回利用したサービスは「HUBchari」です。利用に際しては事前にアプリをダウンロードして、必要事項を登録した上で、利用したいポートへ向かっております。


グーグルマップによれば、弁天町駅から甚兵衛渡船の船着き場まで自転車で10分強とのこと。
朝8:10頃に出発しました。


なるほど、たしかに駅から10分強の8:20過ぎに甚兵衛渡船の船着き場へ着きました。尻無川の北岸(右岸)にあるこの乗り場は「甚兵衛渡船福崎乗り場」と言うんだとか。


渡船には自転車ごと乗船できるため、船が着岸する岸壁へはスロープが設けられています。というか、渡船を使うお客さんの多くは、自転車に跨って船着き場までやってくるようでした。


岸壁の手前にはこのような簡易的な待合所があり、時計や時刻表、各種案内が掲示されています。
渡船場により運航時刻が異なり、市の公式サイトには各渡船の時刻表が掲載されていますので、もし渡船巡りをする際には事前に確認しておくことをおすすめします。なおこの甚兵衛渡船は、朝夕の通勤通学時間帯には10分毎に(あるいはもっと頻繁に)運行され、平日データイムや土日祝は15分毎です。

各渡船の時刻表とも片方の乗り場の時刻しか表記されていませんが、船は両岸にある船着き場のどちらか一方に停泊しており、その常時停泊している船着き場の出航時刻が時刻表に記載されているわけです。その出航時刻の1~2分後には対岸に着き、対岸の乗客を乗せたらすぐに出発して、常時停泊する船着き場へ戻ってきますので、もし時刻表に記載されていない船着き場から乗船したければ、時刻表に記載されている時刻に2~3分足した時刻が出航時刻だと考えて良いかと思います。


私が乗ろうとした船は、対岸の「泉尾乗り場」を8:30ちょうどに出航。わずか1分半でこちら側に到着しました。船にはたくさんのお客さんが乗っており、みなさんが下船し終わったところで、我々が乗船します。


これが対岸の「泉尾乗り場」。目と鼻の先と言っても過言ではない程度の短い距離です。


8:32に「福崎乗り場」を出航。渡船に乗って短い船旅を楽しみましょう。
こちらは下流側の景色。


こちらは上流側。
船旅を楽しむ間もなく、約1分後の8:34、あっという間に「泉尾乗り場」です。


次に目指すは「千歳渡船」の「北恩加島乗り場」。
グーグルマップによれば「泉尾乗り場」から「北恩加島乗り場」まで自転車で5分とのこと。土日日中の千歳渡船は20分毎なので、1便逃すと何も無いところで20分待たねばなりません。できれば5分後の8:40発に乗船したい。果たして間に合うのか・・・。


猛スピードで自転車を漕ぎまくったら、ギリギリ間に合った!
スタッフの方が笑顔で私の乗船を待って下さいました。ありがとうございます。


「北恩加島乗り場」8:40発の便に乗って対岸の「鶴町乗り場」へ向かいます。頭上には「千歳橋」がかかり、その下を大きな運河が水を湛えています。


どの渡船も基本的な船の構造は似通っており、自転車と一緒に乗船することを前提としているためか、船内の腰掛けは最小限に抑えられ、駐輪できるよう広くスペースがとられています。また屋根こそあるものの窓などは無い吹きっ晒しです。それゆえ乗船中は潮風を感じられて気持ち良いですよ。


先程の「甚兵衛渡船」はわずか1分で対岸へ着いてしまいましたが、さすがにこの運河の対岸までは距離があり、「鶴町乗り場」まで約3分ほど要しました。お蔭で船旅風情をしっかり味わえましたよ。


「鶴町乗り場」に上陸。


上画像の左側に写っているのが、いま乗ってきた「千歳渡船」の船。


客を降ろした船はすぐに戻っていきました。
水面に浮かぶ船の後ろ姿を見送っていたら時間をロスしてしまい、気づけば予定より若干オーバーの8:47になっちゃった。


次に目指すは「千本松渡船」の「南恩加島乗り場」。グーグルマップによれば自転車で約12分。8:47の12分後は8:59。
頑張って自転車を飛ばせば9:00発の便に乗れるかな。

後半へ続く。



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堺市 御陵天然温泉亀の湯

2024年04月30日 | 京都府・大阪府・滋賀県

(2023年2月訪問)
日本最大の古墳である仁徳天皇陵の近くに掛け流しの温泉施設があると聞き、実際に行ってみることにしました。
その施設があるエリアは鉄道の駅が多いため、現地までの道程にはいろいろなルートが考えられるのですが、どうやら「黒土口」というバス停の目の前にあるらしいので、JR阪和線と南海高野線がクロスする三国ヶ丘駅から路線バスに乗車することにしました。と言っても三国ヶ丘駅から「黒土口」バス停までわずか数分。駅から歩いても全く問題ないような距離でした。


施設の看板には「源泉かけ流し」と書かれており、期待に胸が膨らみます。


今回訪ねる「御陵天然温泉亀の湯」は幹線道路(大阪中央環状線)沿いに立地しており、ここには以前パチンコ屋があったそうですが、いつの頃からか現在のような温泉施設(いわゆるスーパー銭湯)に生まれ変わり、利用客に癒しをもたらしながら現在に至っているようです。土日は早朝7時から営業しており、私が訪ねた日曜の午前10時には既に多くのお客さんで賑わっていました。


券売機で支払い・・・


受付カウンターで下駄箱の鍵と券を差し出し、ロッカーキーを受け取ります。


いかにもスーパー銭湯らしく、浴場までのアプローチには食品を中心とした物販コーナーが設けられているのですが、サウナ全盛のご時世らしく、各種サウナグッズの品揃えも多いようです。


受付の先方右へ曲がって浴場へ。

浴場の画像は用意してございません。お風呂の様子をご覧になりたい方は、お手数ですが公式サイトにてご確認ください。
ガラス窓を介して中庭に面している脱衣室は明るくて広さもまずまず。窓の向こうには露天風呂が見えます。
浴場内も広々していて開放的。洗い場のカランも十分な数が確保されています。内湯には真湯のジェット風呂や電気風呂、2種類のサウナ、水風呂のほか、窓に面して源泉使用の温泉浴槽が設けられているのですが、残念ながら循環ろ過の影響で本来の温泉の個性が失われている感がありました。でも後述する露天風呂の各浴槽は源泉の持ち味を活かすために敢えてぬるめに設定されているため、温泉のお湯でしっかり温まりたければ、この内湯の温泉浴槽を利用することになります。

この施設で注目すべきは露天風呂でしょう。はっきり言って私は露天風呂の各浴槽以外ほとんど利用しておらず、とにかく露天風呂のお風呂に入らなければこの施設を訪ねた意味が無いと言っても過言ではありません。男湯の場合、手前から加温掛け流しの壺湯が2つ、かけ流しの寝湯、高濃度炭酸湯、マッサージ浴槽(いわゆるジェットバスの類)、温泉の岩風呂、そして屋根に覆われた掛け流しの岩風呂、といったように様々な浴槽が配置されており、炭酸湯とマッサージ浴槽以外には温泉が供給されています。毎分400リットルという豊富な湧出量が複数の浴槽におけるかけ流しの実現を可能にしているのでしょう。


温泉のお湯は薄い麦茶色を帯びており、湯中では薄い褐色やベージュの浮遊物がたくさん浮遊しています。お湯を口にしてみますと、ほろ苦みを伴う薄い麦茶のような味のほか、モール泉の芳香とは微妙に違うものの、モール泉を薄めたような、深い地層から組み上げる重曹泉にありがちな独特の匂いがほんのりと感じられました。

かけ流しの浴槽はどこでも良好な浴感が得られるのですが、とりわけ屋根に覆われた掛け流しの岩風呂は、加温による微妙な変質を避けるためか、40℃で湧出した源泉のお湯をあまり加温せずに(もしかしたら非加温のまま)浴槽へ落とし込んでおり、私が利用した時には39℃という不感温度に近いぬるま湯状態になっていました。人により好みが分かれるところかと思いますが、私はこうした35~40℃の湯加減が大好きで、この時も湯船で30分ほどウトウト微睡んでしまいました。下手に源泉に手を加えていないためお湯の鮮度感も良く、大変気持ち良い湯あみを楽しむことができました。


単純温泉 40.3℃ pH8.0 400L/min(掘削動力揚湯)  溶存物質0.467g/kg 成分総計0.473g/kg
Na+:108.5mg(92.48mval%),
Cl-:7.6mg, HCO3-:286.2mg(94.31mval%),
H2SiO3:52.8mg, CO2:5.9mg,
(平成29年8月25日)

大阪府堺市北区黒土町2264-3
072-252-4126
ホームページ

10:00(土日は7:00)~25:00(受付24:30まで) 年中無休
平日850円(土日祝900円)

私の好み:★★+0.5
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堺市 トキワ温泉 2023年6月頃閉業

2024年04月12日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年2月訪問)
前回記事に続いて閉業してしまった温泉施設の記事となってしまい申し訳ございません。

前回記事の「弥生の里温泉」は訪問前から閉業することはわかっていましたが、今回ご紹介する堺市の銭湯「トキワ温泉」はこの度ブログで記事にするまで閉業の事実を知らず、記事を書くにあたって事実関係を確認すべくネットを調べたら2023年6月下旬に閉業していたことを知ってビックリした次第です。近年は温泉施設が相次いで閉鎖していますので、行きたい温泉があれば「また今度でいいや」ではなく、可及的速やかに訪問日程を立てるべきでしょう。後悔先に立たず。この言葉ほど温泉巡りにピッタリな教訓はありません。


さて、2023年2月に堺市を訪問した私は、阪堺電車に乗って神明町電停で下車。
電停から数ブロック歩いてゆくと・・・


目的地である「トキワ温泉」に到着です。この時は銭湯のオープン時間(13時)に合わせて訪ねたのですが、まだシャッターが閉まっており、玄関の前ではたくさんの爺さん婆さんが列を作って開店を待っていました。


やがて上半身裸のおじさんがせわしない感じで現れてシャッターを開けてくれました。開店準備に時間がかかっていたのでしょう。施設の方々が日々汗を流して準備してくださることで我々は気持ち良いお風呂に入れるわけですから、そのご苦労には心から感謝しなければなりません。


入浴券は下足場に設置された券売機で購入します。面白いのが、普通の入浴料490円のほか、黙浴450円という料金設定があること。コロナ禍の時期に導入されたものと思われますが、40円余計に払えば喋っても良いということなのか、あるいは細かな金銭感覚を持つ関西の方は40円を惜しんでみんな黙浴しようとするのか、いずれにしても面白い試みですね。私は根っからの関東人ですが、ついつい40円の安さにつられて黙浴の入浴料を購入しちゃいました。

内部は典型的な昭和の銭湯といった佇まいで、下足箱は木板の松竹錠で施錠する昔ながらのスタイル。男女別の入口を過ぎてすぐのところに番台があったり、脱衣所のロッカーも松竹錠だったり、牛乳が飲めたり・・・まさに昭和の銭湯そのものです。なおドライヤーは無料で使えたのですが、脱衣室内に設置されているサウナは別料金とのこと。

(浴室内は混雑していたため画像はございません。文章のみでご説明致します)
浴室内もこれまた昭和の銭湯さながら。入ってすぐ目の前にはかけ湯があり、男女両浴室を仕切る塀に沿って洗い場が設けられ、宝式水栓(いわゆる押しバネ式水栓)と壁直付けシャワーが8セット並んでいます。また右手前に水風呂が、右奥にはジェットバスがそれぞれ配置されています。
男湯の場合は中央から右隅にかけての位置に主浴槽となるL字形の浴槽が上下二段に分かれて据えられており、湯口から直接注がれる上段の浴槽は熱く、その下流にあたる下段は適温となっていました。そして湯口は温泉成分の付着によるためか焦げ茶色に染まっていました。

浴槽のお湯は無色透明で、湯口の熱いお湯を手に汲んでみますと、ほんのりとした金気の味と香り、そして有機肥料のような風味が感じられました。マニアの方しかわからない表現になってしまいますが、青森県の津軽平野や三八上北地方に多く見られる温泉に近い風味と言ったら良いのかもしれません。上段の浴槽に入ると全身に気泡が付着するほか、上下段ともに湯中ではサラサラスベスベの軽やかな浴感があり、熱いながらの粗熱の抜けは良いため、湯上がりには意外にも全身がスッキリとした爽快感に包まれました。

なおネット上ではこちらのお湯についてイオウ臭がするとの記載が散見されたのですが、私はまったく感じられませんでした。花粉症で嗅覚が鈍っていたのが原因かしら。分析表を見ても硫黄らしさはほとんどないので、その硫黄臭がどこから来ているのか、残念ながら私にはよくわかりませんでした。


館内には「当浴場のお湯は全て温泉です」と掲示されており、浴槽の身ならずシャワーも源泉使用なんだとか。また「溢れたお湯の再利用などは一切ございません」と書かれているように、各浴槽とも完全かけ流しでしっかりオーバーフローしており、湯使いの素晴らしさにも感心しました。市街地にもかかわらず44℃の温泉が毎分575Lも汲み上げられるのですから、加温加水循環消毒が無い状態で掛け流せる贅沢な湯使いが可能なんですね。素晴らしい!

このようにお湯が大変良いためか、訪問時は昼にもかかわらず洗い場が埋まるほど混雑しており、地元ご老人の憩いの場となっているようでした。私も再訪してこのお湯の良さを再度堪能したいと思っていたのですが、まさかその数か月後に閉業してしまうとは想像だにしませんでした。憩いの場を失ってしまった地元ご老人も相当悲しんでいらっしゃることでしょう。お湯を汲み上げるポンプの故障が原因とのこと。その修理もしくは交換には多大な費用を要するため、閉業をご決断なさったものと思われます。残念ですが仕方ありません。


単純温泉 44.5℃ pH7.61 575L/min(動力揚湯) 溶存物質609mg/kg 成分総計609mg/kg
Na+:160mg(91.15mval%),
Cl-:160.0mg(55.40mval%), HCO3-:220mg(44.26mval%),
H2SiO3:54.2mg,
(令和2年4月27日)

大阪府堺市堺区神明町西3-1-29

2023年6月か7月頃に閉業してしまいました

私の好み:★★+0.5
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弥生の里温泉 2023年2月閉館

2024年04月08日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年2月訪問)
いつも1年以上前の訪問記を記事にしている情報鮮度感ゼロな拙ブログですが、今回はそれどころか既に閉館してしまった施設を取り上げます。入れない温泉を紹介することになり申し訳ございません。過去帳入りした温泉のアーカイブとしてご覧下さいますと幸いです。

今回取り上げる「弥生の里温泉」は大阪南部の和泉市にあり、阪和線信太山駅から徒歩1~2分という便利な立地で営業していたのですが、残念ながら私が訪ねた2023年2月の末に閉館してしまいました。


上述のように、電車でアクセスするならば阪和線を利用するのが最も便利なのですが、生来のへそ曲がりである私は敢えて阪和線に乗らず、南海高野線から分岐する泉北高速鉄道に乗車し、終点の和泉中央駅で下車して、和泉市のコミュニティーバスに乗り換え、「信太山駅前」バス停で下車しました。バス停からもすぐに着けます。


こちらが施設敷地の入口。右側がこれから利用する温浴施設の建物(2023年2月末閉館)で、左手が別棟の宿泊棟なのですが、宿泊棟旨もその後閉業してしまったようです。


なかなか大きな建物ですね。壁面には2020年9月19日に営業再開する旨が大きく掲示されていますが、それから約2年半で閉じてしまうことになるとは。コロナ禍の影響でしょうか。残念です。


玄関前には源泉の足湯と、源泉のお湯汲み場が設けられていました。お湯に触れる部分が思いっきり赤茶色に変色しており、それだけでもお湯の濃さが窺い知れます。お湯汲み場のお湯を手に汲んで口に含んでみますと、はっきりとした塩味とともに金気味や炭酸味、そして土気味が感じられました。色も味も相当濃い温泉のようです。


こちらはポンプですね。おそらく源泉を汲み上げる設備かと思われます。


さて入館しましょう。


玄関を入ったところには、閉館のお知らせが掲出されていました。


吹抜けになっているエントランスホールに受付があり、ここで入湯料を支払うとロッカーキーが手渡されるので、それを手にしてエレベーターで浴場がある3階へ。


奥へ細長い構造をした更衣室を抜けて浴場へ。
内湯にはいろいろな浴槽があり、窓側には温泉の浴槽が並んでいました。奥の方には約2.5m四方の浴槽が2つ(奥がぬるめでその手前がやや熱め)、手前側には桧か何かの木材で作られた5〜6人サイズの浴槽があり、いずれも自家源泉の温泉なのですが、加水ろ過循環しているため、浴槽のお湯はわずかに黄色く底に若干の沈殿が見られる程度で、またほんのりとした薄塩味が感じられるばかりで、玄関の足湯やお湯汲み場から得られたような源泉の特徴は大幅に消えていました。なお浴場内の洗い場は半分ほど使えない状態でした。閉館を目前に控えていたため、修理を断念していたのでしょう。


一方、露天ゾーンには岩風呂と2つの壺湯があり、いずれも源泉掛け流し(加温循環併用)とのこと。たしかに岩風呂はかけ流しと循環を併用しているような感じでしたが、(あくまで私の体感ですが)2つのつぼ湯は循環のない加温掛け流しだったのではないかと思われます。


さすがに循環していない源泉のお湯を注ぎこんでいるだけあって、浴槽では源泉の特徴が良く表れていました。湯船のお湯は黄土色に濁り、湯中では赤茶の浮遊物が目立っています。湯口のお湯からは明瞭な塩味や金気、弱い炭酸味、土気味が感じられ、浴槽まわりには塩化土類泉的な析出がこびりつき、成分付着により赤茶色に染まっています。湯船に浸かるとキシキシと引っかかりつつ皮膚の皴へ入り込んでいくようなしっとりとした浴感が得られ、特につぼ湯はぬるめの湯加減であるため長湯するとお湯の良さを存分に実感でき、最高に気持良い湯あみを楽しむことができました。海辺やグリーンタフの温泉にありがちな火照りやすいパワフルな温泉です。


ナトリウム-塩化物温泉 38.5℃ pH7.0 湧出量記載なし(動力揚湯) 溶存物質2836.7mg/kg 成分総計2888.4mg/kg
Na+:709.7mg(68.27mval%), Mg++:57.0mg, Ca++:170.9mg(18.86mval%),
Cl-:1271.4mg(81.65mval%), Br-:1.2mg, HCO3-:486.4mg(18.15mval%),
H2SiO2:67.2mg, HBO2:30.4mg, CO2:51.7mg,
(2009年3月18日)
加水無し
加温あり
露天風呂はろ過無しの放流式だが循環加温装置使用。
内湯の温泉浴槽は循環ろ過装置使用
塩素系消毒剤使用(条例の基準を満たすため)

大阪府和泉市池上町1-696-1

2023年2月末に閉館しました

私の好み:★★+0.5
.
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