温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

高原町 湯之元温泉(後編 浴場)

2016年12月21日 | 宮崎県
前回記事の続編です。


客室に備え付けの下駄を履いて、お宿ご自慢の浴場へと向かいました。なお、浴場内での撮影はご遠慮くださいとの張り紙が掲示されていましたが、その理由は「他のお客様の迷惑になるので」ということでしたので、宿泊した翌日早朝(宿泊客専用時間帯)の全く誰もいない状況でササッと撮らせていただきました。


 
材木と石材が良い塩梅で使い分けらえている浴室は落ち着いた佇まい。後述するように複数の浴槽が窓側に設けられているほか、その反対側には洗い場が配置され、計7基のシャワー付きカランが並んでいます。洗い場にボディーソープの備え付けはないため、立ち寄り入浴の場合はお風呂道具を持参しましょう(宿泊の場合は客室に用意されています)。


 
男湯の場合、浴室の右端にサウナと水風呂が配置されていました。


 
内湯の主浴槽は冷鉱泉を入浴に適した温度まで加温したものが張られています。湯口から吐出される時点で既に色づいており、湯船のお湯は槽内の様子が全く見えないほど濃いオレンジ色に濁っていました。なお湯使いは加温した上での放流式と思われ、湯船のお湯は窓側の溝に向かってオーバーフローしています。


 
主浴槽には飲泉場が設けられています。湯口のお湯と異なり、飲泉場の鉱泉は濁りのない無色透明ですね。湯船の濃いオレンジ色との対比が鮮明です。


 
内湯にあるもう一つの浴槽こそ、泣く子も黙る「高濃度炭酸泉」。飲泉場の鉱泉が全く手付かず状態、つまり100%生源泉がそのまま注がれています。前夜には若干の濁りが見られましたが、まだ誰も入っていない朝は無色透明に澄んでおり、特にはじめのうちは浴槽へ何らの刺激が加えられていないため、水面に酸化皮膜が発生していました。浴槽が静かな状態を保っていないとこの現象にはお目にかかれないでしょう。この酸化皮膜が流れ去ると、今度はクリアで綺麗な無色透明の鉱泉が姿を見せました。
檜風呂という名称の通り、縁には檜が用いられていますが、浴槽内は黒い石板貼り。鉱泉の成分がこびりつくため、全体的に赤黒く変色しているように見えます。


 
水温20℃前後なので、まだ肌寒い朝に入るにはちょっとした気合が必要でしたが、いざ実際に入ってみますと、これが実に気持ちよい。前回記事でも申し上げましたように、ここの鉱泉は天然のサイダー水ですから、水面では炭酸の泡がシュワシュワと弾けており、浴槽の中に脚を入れると、脛や腿にその刺激が伝わってきます。冷たさをこらえて肩まで入ると、全身がシュワシュワし、忽ち大粒の気泡に包まれました。サイダーのコップの中に入っている氷やストローになった気分です。あまりに泡つきが激しいため、皮膚が薄かったり弱かったりする部分ではチクチクするような刺激を覚えたほどです。なお鉱泉が酸化しないよう、投入口は浴槽内に設けられており、その投入量も多く、ふんだんにオーバーフローしています。


  
露天ゾーンは日本庭園のような広いスペースが確保されているものの、浴槽は3人サイズの岩風呂「中濃度炭酸泉」が庇の下にちょこんとあるばかり。あくまで邪推ですが、鉱泉という限られたリソースを活かすための措置なのでしょうね。


 
こちらには誰でも入れる温度まで加温された鉱泉が張られており、パイプから加熱された鉱泉が間歇的に吐出されていました。炭酸飲料がぬるくなると気が抜けちゃうように、この鉱泉も加温するほど炭酸が飛んでいってしまいますが、この露天風呂では気が抜け切らないギリギリの温度が維持されており、ぬるいものの、入浴すると細かな気泡がしっかりと肌に付着します。加温に伴い気が若干抜けてしまうため「中濃度」という表現が使われているのでしょうね。また加温の影響で少々の濁りも発生しており、浴槽内は金気のこびりつきで赤茶色に染まっていました。
このお風呂は加温の塩梅が絶妙。不感温度帯の湯加減であるため、ついつい長湯したくなっちゃいます。水風呂みたいに冷たい「高濃度炭酸泉」が苦手な方でも、こちらのお風呂で感動的な泡つきを体感できるはず。ぬるめですが、じっくり入れば体の芯からしっかり温まります。

飲泉してみますと、金気味と強い炭酸味が口の中に広がり、金気の匂いがプンと漂ってきます。浴槽の中に入ると、槽内に触れた自分の肌(手足やおしりなど)がオレンジ色に染まり、特に加温槽ではそれが顕著です。もちろんその色はシャワーで洗ったりタオルで拭えば取り除けますが、その代わりタオルが染まってしまいますので、ここで入浴する際には捨てても良いタオルを持参すると良いかもしれません。なお、お風呂から上がった後もしばらくは肌に金気臭が残り、砥粉を塗したようなパウダリーな感覚に包まれました。

兎にも角にも、炭酸の泡つきが凄すぎて、入浴中はひたすら興奮しておりました。気泡の夥しさに呼応して、けだし私の体内でも大量のアドレナリンが分泌されていたことでしょう。アワアワなお風呂が好きな方は訪問必須な鉱泉宿かと思います。また、同じ源泉でも温度によって色合いや濁り方が全く異なってくるという好事例でもありますから、温泉や鉱泉をより深く知りたい方にもオススメですね。


含二酸化炭素-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩冷鉱泉 20.4℃ pH6.2 自噴・自然湧出(間欠泉) 溶存物質1.626g/kg 成分総計2.806g/kg
Na+:133.7mg(30.57mval%), Mg++:89.4mg(38.65mval%), Ca++:96.9mg(25.42mval%), Fe++:11.7mg,
HCO3-:1111mg(96.60mval%),
H2SiO3:128.1mg, CO2:1180mg,
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
(平成22年2月12日)

宮崎県西諸県郡高原町大字蒲牟田7535  地図
0984-42-3701
ホームページ

日帰り入浴10:00~22:00 第一水曜定休(祝日の場合は翌日)
500円
ロッカー(10円有料)・ドライヤーあり、

私の好み:★★★
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高原町 湯之元温泉(前編 客室・食事)

2016年12月20日 | 宮崎県
 
初代天皇の神武天皇が誕生したという伝説が残っている宮崎県高原町。私が当地をドライブしていると、霧島連山にかかる雲の隙間から、一筋の陽光が麓の田んぼをめがけて差し込んできました。神話の地だからか、その淡いながらも鋭い光には、どこか神々しいものを感じます。
そんな高原町の田園風景の中に佇む歴史ある鉱泉宿「湯之元温泉」で一泊してまいりました。


 
左(上)画像は正面玄関。私は宿泊利用ですので、この玄関から館内に入り帳場でチェックイン手続きをしたのですが、立ち寄り入浴や鉱泉の持ち帰りなどでの利用は、正面玄関の右手にある専用の小窓で受付を済ませます。


●客室

客室は本棟のほか、後述する鉱泉汲み場の前に数部屋を擁する離れがあり、今回はその離れの客室へ案内されました。


 
離れの客室は6畳+3畳という広さの和室で、清掃が行き届いており綺麗で快適。室内にはトイレ・洗面台といった水回りのほか、冷蔵庫・エアコン・テレビなどひと通りの備品も備わっており、快適に過ごすことができました。


●鉱泉汲み場など
 
温泉とはいうものの、湧出時点では25℃未満ですので、温泉法の規定に従えば温泉ではなく冷鉱泉となりますね。約220年前の天明4年(1784年)、新田開発の中で発見されたと言い伝えられるこの冷鉱泉は、長い歴史を有するだけでなく、炭酸ガスがたっぷり溶け込んだ天然のサイダー。すっごくシュワシュワするのです。私が泊まった離れの小屋前には鉱泉汲み場があり、有料で汲んで持ち帰ることができます。実際にタンクを持ち込んでいるお客さんが結構な数いらっしゃいました。


 
おたまがいくつもぶら下がっている鉱泉汲み場。コックを開くと天然のサイダーが出てきました。鉱泉汲み場の奥にあるコンクリートの構造物が源泉なのでしょうね。飲むと消化器疾患や痛風・肝臓病・便秘などに効能があるんだとか。


 
汲み場の前にはかつての「湯之元温泉」を捉えた写真が飾られていました。左(上)画像は昭和21年に撮影された湯治棟の様子。敗戦からまだ1年しか経っていないのに、鉱泉の力で英気が養われるのか、客たちが湯治棟の前で明るく陽気に踊っている光景が残されていたのでした。一方、右(下)画像は「温泉までの唯一の交通手段」というキャプションが付された馬車の写真。昭和初期の撮影とのこと。高原駅から宿までこの馬車に揺られて凸凹道を往来したのでしょう。


 
昔の写真が掲示されている建物の正面に回ると、庇の下にドアが二つ仲良く並んでいることに気づきました。現在この建物は使えわれていないようですが、この構造から推測するに、かつては浴場だったのかもしれませんね。


●食事
 
夕食は本棟の1階にある別室でいただきます。
主な献立は、鯉のあらい、焼きえんどう豆、焼きマテ貝、和え物、魚のあんかけ、ホタテの焼き物(グラタン風)、ホッキ貝などの酢の物、そして…


 
牛肉と野菜の陶板焼き、おそば…


 
九州ではおなじみの麦味噌汁、当地で湧くシュワシュワの炭酸泉で炊いたご飯、そしてデザートです。この画像ではわかりにくいのですが、湯之元の鉱泉で炊いたこのご飯は、何らの添加物を入れていないにもかかわらず、ほんのりと褐色に色付いており(上に白ゴマが振りかけられていますが…)、もち米じゃないのかと勘違いしちゃうほどモッチモチしているのです。このご飯をおにぎりにするなどして時間が経つと、色が褐色からヨモギ色に変色し、色合いも濃くなってゆきます。ただの鉱泉なのに、どうして着色し、なぜ時間の経過とともに変色してゆくのか、実に不思議ですね。
今回は追加でお宿名物の「炭酸泉カルピス」を注文しました。その名の通り、自前の炭酸泉で割ったカルピスであり、早い話がカルピスソーダなのですが、市販のカルピスソーダとは全然違う。もちろんシュワシュワするのは同じなのですが、金気を含む炭酸泉ですから、わずかに金気があり、そしてちょっとした甘酸っぱさも含まれ、独特の美味しさが口の中に広がりました。これは一飲の価値あり。


 
朝食は前夜に夕食を摂った個室前のホールでいただきました。
焼き鮭、サラダ、小鉢、レンコンとひじきのきんぴら、温泉卵、納豆などといったバランスの良いラインナップを、女将さんとお喋りしながらいただいているうちに、全部平らげてしまいました。

さて、肝心のお風呂に関しては次回記事で取り上げます。

次回(後編)につづく
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恵の湯 神の郷温泉

2016年12月18日 | 宮崎県
 
温泉不毛と言われる宮崎県でも、霧島連山の北麓にあたるえびの・小林エリアは地熱の恵みを受けており、のどかな田園風景の中に温泉浴場が点在しています。今回はそんな温泉の中でも湧出量が多いことで知られる「神の郷(かんのごう)温泉」へ立ち寄ってみました。こちらは比較的規模の大きな温泉旅館ですが、日帰り入浴も積極的に受け入れており、また大衆演劇の公演も行われているので、中高年の憩いの場として大いに賑わっているようです。私が訪れた時も、駐車場にはたくさんの車が止まっていました。



玄関の右側には飲泉所が設けられており、石灯籠から筧が伸びてお湯が落とされています。石灯籠や筧の周りには結晶化した温泉成分がビッシリとこびりついており、お湯が触れるところはオレンジ色に染まっていました。このお湯は自由に汲んで良いんだとか。お湯の味などに関しては後ほど。



広い敷地には大きな本棟のほか、浴場棟、ログハウス、野菜直売所など様々な建物が分かれていました。
本棟からちょっと離れたところには貸切風呂があったのですが、今回私は利用しておりません。


 
一般の日帰り入浴利用の場合は、正面玄関から入り、目の前にあるフロントを通り過ぎ左手に進んで、日帰り入浴専用の受付へと向かい、券売機で料金を支払って小さなカウンターへ券を手渡します。男女別の入口手前には小さな休憩スペースが設けられ、マッサージチェアが備え付けられていました。まるで体育館みたいに広くて天井の高い脱衣室を抜けて浴場へ。



明るく広々とした大浴場。大きな窓に面して主浴槽と副浴槽が据えられているほか、サウナや水風呂もあります。地域を問わず一般的に、サウナを備え付けている浴場では、湯船よりもサウナに人気が集まる傾向があるのですが、ご多聞に漏れずこちらでも同様であり、私が観察していた限りでは、せっかくの広い温泉浴槽はカラスの行水でサッと済ませ、サウナでじっくり長時間粘るお客さんが多かったようでした。
なお、窓と反対側に洗い場が配置され、計16基のシャワー付きカランが設置されていました。カランから出てくるお湯は真湯です。


 
窓に面した浴槽は、適温(41℃前後)の主浴槽と、ちょっと熱め(43℃前後)の副浴槽の2つ。主浴槽(大きな方)はおおよそ3.5m×6.5m、副浴槽(小さな方)はおおよそ3.5m×3mで、両者が接する部分は大きな円形が食い込んで欠けているような形状になっています。そしてその境界線上に両浴槽共通の湯口があり、下から噴き上がったお湯は左右へと流れ落ちていました。この湯口は飲泉所を兼ねていますので、試しにコップ半分ほどのお湯を飲んでみますと、石灰を思わせる味とほろ苦み、そして炭酸味が口の中に広がりました。

飲泉できるということは、とてもフレッシュな状態であり、実際に湯口に噴き上がってくるお湯は無色透明なのですが、まるでプールのように広い湯船へ落ちたお湯は、モスグリーンを帯びた山吹色(ベージュとアイボリーの中間のような色合い)に淡く濁っています。そして浴槽の縁や浴場床など、温泉と常に触れている箇所は炭酸カルシウムがこんもりと付着してベージュ色に染まっていました。湯使いは放流式です。


 

ドアから屋外に出ると露天風呂。出てすぐのところに据えられている7〜8人サイズの楕円浴槽には、内湯と同じような色合いに濁った温泉が張られていました。湯加減は41℃前後という長湯仕様。お風呂の周囲に岩を並べて庭園風にあしらわれていますが、浴槽自体はコンクリ造であり、温泉成分の付着により全体がベージュ色に染まっていました。岩を穿って作られた湯口では、下からお湯が噴き上がっており、豊富な湯量を活かしてふんだんに投入されています。内湯同様に、配管から出てきた瞬間のお湯は無色透明ですが、外気に触れた瞬間濁り始め、内湯よりも外気や温度変化の影響を受けやすいためか、この露天の方が強く濁っているように見えました。


 
日本庭園のような誂えの露天ゾーンには、ステップを下った先にもL字型の浴槽があり、そちらでも温泉が張られていました。こちらは造りが浅く、実際に入浴してみますと、浴槽の形が腰にフィットして、いい塩梅の半身浴になりました。わかりやすい塩化土類泉ですから、お湯に浸かるとギシギシと引っかかる浴感が肌にしっとりと染み込んできます。湯船によって様々な湯加減ですが、熱かろうとぬるめであろうと、湯上がりはしっかりと温まり、汗がなかなか引きませんでした。湯量豊富な温泉を活かす大きな施設で、掛け流しの温泉を存分に楽しめる素敵なお風呂でした。


第1源泉
マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 40.1℃ pH6.5 486.9L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.553g/kg 成分総計3.028g/kg
Na+:239.7mg(33.45mval%), NH4+:14.0mg, Mg++:128.2mg(33.84mval%), Ca++:149.7mg(23.96mval%), Fe++:1.6mg,
Cl-:113.9mg(10.00mval%), SO4--:148.8mg, HCO3-:1574mg(80.29mval%),
H2SiO3:113.0mg, CO2:475.1mg,
(平成21年10月16日)

小林バスセンター(もしくは小林駅から徒歩5分弱の「本町」バス停)から小林市コミュニティバス「種畜牧場循環線」で「竹山入口」下車。なお「種畜牧場循環線」は月・木・土曜運転(祝日運休)で1日3便。時刻などは小林市公式サイト内の案内ページをご覧ください。
宮崎県小林市細野5373-19  地図
0984-23-1526

立ち寄り入浴500円
7:00~22:00
(貸切風呂は10:00~22:00、平日1500円・土日祝2000円 / 60min)

私の好み:★★+0.5

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コスモス温泉

2016年12月16日 | 宮崎県
 
霧島連山の北麓に広がる宮崎県の生駒高原へとやってまいりました。秋になると100万近いコスモスの花が咲き誇るこの高原には、熱い風呂として温泉ファンに有名な日帰り入浴温泉施設「コスモス温泉」がありますので、どれほど熱いのか体感すべく立ち寄ってみることにしました。湯屋は老人福祉施設に囲まれていますので、おそらくその運営母体がこの温泉も兼業しているのでしょう。


 
正しくは「ふれあい交流センター」という名称を冠しているのですね。中華圏の三合院みたいに棟がコの字型に繋がっているのですが、その中でも最も奥まっている屋根の低い棟に玄関がありました。玄関の内側で靴を脱ぎ、通路を歩いて湯屋側へと向かいます。



廊下の先に受付があり、そこに設置されている券売機で料金を支払います。受付の前には休憩用のお座敷が設けられており、私が訪問した時には、地元の方がのんびりと寛いでいらっしゃいました。普段着感覚で気軽に湯浴みするのどかな湯屋です。


 
共同浴場を思わせる鄙びた木造の浴場は、湯水がかかる床や腰部はタイル張りで、奥に後述する浴槽が2つ並び、手前右側に総木造の水風呂が一つ据えられていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが計6基設置されており、またその中央にはベンチが置かれていました。このお風呂では浴槽の縁に腰掛けることが禁じられているため、このようなベンチが用意されたのでしょう。こちらのお風呂はとっても熱いので、湯船に入った後はどうしても体がグッタリしますから、体を休めるためにはこうした腰掛けが欠かせないんですね。



洗い場には袖板のようなものが側壁から出っ張っているのですが、現在洗い場として使われている空間は、元々何か別の設備が設けられていた形跡なのでしょうか。この出っ張りのところには排水のためのグレーチングがあり、シャワーの排水のほか、湯船のオーバーフローもこちらへ流れ込んでくるのですが、オーバーフローが流れるところとそうでないところでは、タイルの色が全然違うことも興味深い点です。それだけ濃いお湯なのでしょうね。


 
浴槽は熱い槽と中温槽の二つに分かれており、今回男湯の暖簾が掛かっていた北側の浴室では、左側の熱い浴槽に石積みの湯口が設けられています。焼け爛れたように赤茶色に染まったその湯口からは、ゴボッゴボッと泡を立てて音を響かせながら、アツアツのお湯が噴き上げられていました。湯口における温度は46.8℃ですから、決して触れないような熱さではないのですが、投入量が多く、浴槽も大きいため、湯口に近づくだけでもひと苦労。肌を真っ赤にしてピリピリする刺激に堪えながら、湯口に近づいて温度を計測し、そのついでに傍に置かれてコップで飲泉してみますと、金気味や土類味、薄出汁味、そして明瞭な炭酸味が感じられました。そして鉄錆系の金気臭がプンプン香ってきました。洗い場のタイルを赤茶色に染めていたお湯は、湯口から出てくる時点でクリアな無色透明ですから、空気に触れたり減圧されたりするうちに、徐々に濁って色が表れてゆくのでしょう。


 

湯口のお湯がダイレクトに注がれる熱い浴槽。大きさは(目測で)2m×3mでしょうか。訪問時の温度は45.2℃でした。熱いでしょ。水入れ禁止ですので、熱い風呂が苦手な方はここに入れませんね。先客のおじさんは澄ました顔をしながらこの湯船に肩まで浸かっていましたが、常連さんのみんながここに入れる訳ではないらしく、次に述べる中温槽だけに入って、そのままお風呂を出て行く方もいらっしゃいました。また熱い湯船に浸かるお客さんは、洗い場のベンチでうなだれたり、水風呂に入ってクールダウンしたり、あるいは洗い場の床でトド寝をしたりと、それぞれのスタイルで火照りを解消していました。


 

熱い浴槽の隣は中温風呂。お隣から流れてくるお湯を受けています。中温といっても(訪問時は)44.0℃という熱さなので、やっぱり人によっては耐えられないかもしれませんね。もし熱くて入れなくても、こちらは加水が可能ですから、常連さんの機嫌を損ねない程度で、水で薄めちゃいましょう。いかにも塩化土類泉らしく湯中ではギシギシと引っかかる浴感が得られ、ただでさえ熱い湯加減なのに、この手のお湯ですから湯上がりも火照りが抜けにくく、まるで全身に真っ赤に熱せられた石炭が埋め込まれたかのように、いつまでもホコホコし続け、発汗もしばらく続きました。



湯口で無色透明だったお湯は、圧力の低下、空気との接触、そして温度低下などにより、急激に濁りを呈しはじめます。2つの浴槽のお湯を比較してみますと、熱い浴槽のお湯は槽内のステップがはっきりと目視できる程度の透明度を有していますが、中温風呂では、同じ深さにあるステップがほとんど見えないほどモスグリーンを帯びた山吹色にはっきりと濁っていました。1〜2℃しか違わないだけでもこれだけ色合いが異なるんですね。温泉は鮮度が命ということがよくわかります。
のどかで渋い湯屋ですが、そこで湧くお湯は熱くて個性的。高原の爽やかな風に吹かれながら、大地のパッションと格闘できる、面白い浴場でした。


小林温泉ふれあい交流センター(コスモス温泉)
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉 47.4℃ pH6.7 60L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.759g/kg 成分総計3.146g/kg 
Na+:260.3mg(33.61mval%), Mg++:124.8mg(30.49mval%), Ca++:167.7mg(24.85mval%), Fe++:1.6mg,
Cl-:254.6mg(20.33mval%), SO4--:375.8mg(22.15mval%), HCO3-:1239mg(57.49mval%),
H2SiO3:196.1mg, HBO2:17.9mg, CO2:387.0mg,
(平成21年10月16日)
加水あり(中温槽のみ。源泉温度が高いため)
消毒あり(衛生管理のため。県条例の基準を満たすため。次亜塩素酸ナトリウムを使用)

宮崎県小林市南西方1130-79  地図
0984-22-7085

9:00〜23:00 無休
350円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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白鳥温泉 上湯

2012年02月02日 | 宮崎県

えびの高原からえびの市街へ下る県道30号線「霧島バードライン」は、私が持っているロードマップでは細い線で描かれていたので、初めて通ろうと計画したときには「離合困難な狭隘路なのではないか」と警戒していましたが、実際に通ってみると、運悪く名前になっている鳥の姿こそお目にかかれなかったものの、終始1.5~2車線が続くごくごく普通の道で、山裾には加久藤盆地が、そしてその向こうに聳える矢岳高原が車の窓いっぱいに広がり、雄大なパノラマが眺められる爽快なワインディングでした。途中で車を停めつつ「綺麗だなぁ」なんて眺望に見とれながら山道を下っていたら、いつの間にやら今回の目的地である白鳥温泉に到着です。


 
白鳥温泉に温泉街はありませんが、数百メートルを隔てて上湯と下湯に分かれており、いずれも公営の施設として運営されています。運動公園やロッジなどと一体になった「下湯」と異なり、今回取り上げる「上湯」はロードサイドの宿泊施設兼食堂というべき色彩が強く、道の駅みたいな趣の施設といってよいかと思います。


 
入口からすぐに階段を上がった2階に当たるレベルに受付ロビーがありました。ログハウスのようなロビーでぬくもりが伝わってくる心地よい館内です。受付の方も明るく接してくれ、その際に「蒸し風呂はとっても気持ち良いので、ぜひ入っていってくださいね」と薦めてくださいました。どうやら温泉熱を利用した蒸し風呂のようです。スチームバス好きな私としては体験しないわけにはいきませんが、はやる気持ちを抑え、まずはお風呂に入って温泉入浴を楽しむことにします。脱衣所はそんなに広くありませんが、よく手入れされています。


 
全体的に赤っぽいイメージが印象に残る浴室は、四角い浴槽1つに洗い場が設けられているシンプルな構造ですが、その湯船は大きなガラス窓に面しており、窓からは雄大な眺望が見晴らせます。といっても、窓のすぐ前には露天風呂が横たわっているので、下方の視界には限界があり、じっくり眺望を楽しむならやっぱり露天がいいかもしれません。ここに限らず、内湯という場所はお湯に専念する場所なんですね。



シャワー付き混合栓が4基設置されています。カランから出てくるお湯からは少々の酸味と金気が感じられましたが、源泉を利用しているのでしょうか? 分析表によれば湧出量はそんなに多くないから、上がり湯にまで回せないように思うのですが、単に分析表の数値が違うだけなのか、あるいは私の知覚がおかしいだけか…。


 
シャコ貝のような形状の湯口からは激熱の源泉がチョロチョロと注がれていました。加水されているのかもしれませんが、それでも相当熱く、それゆえ投入量を絞っているのかもしれません。循環などは行われておらず、浴槽の切り欠けからしっかりと排湯されていました。

お湯は無色透明ながら金気がとても強く、浴槽内はもちろんのこと、お湯が触れるところは悉く赤銅色に染まっており、特に浴槽内はまるで鍍金を施したかのように綺麗に輝いていました。お湯からは刺激のある硫化水素臭に鉄錆の臭いが漂い、さらにはゴムタイヤが焼けるような匂いも少々混在しているように感じられます。また味覚面では弱い酸性の収斂味と赤錆味が舌にはっきり残りました。泉質名こそ単純温泉で、実際に溶存している物質量の数値も小さいのですが、そんな泉質名や数値からは想像もできないほど個性的であることに、ちょっと感動してしまいました。



「上湯」のお風呂は、個性的なお湯もさることながら、すばらしいロケーションに設けられた露天風呂が愁眉です。お風呂は岩風呂で、屋根は隅っこにちょこんとあるだけですから、非常に開放的。「サルと○○は高いところが好き」と言いますが、まさに○○な私はもちろん、そうでない立派な皆様でも、この眺めを目にしたら感嘆の声をあげること間違いなし。眺望だけで考えたら、九州屈指ではないでしょうか。温泉ファンの方々が高く評価するのも納得です。



内湯と同じく、浴槽内の岩は赤銅色に染まっており、いかにも金属のような鈍い光を放っていました。お湯はややぬるめでしたが、訪問日は気温が一桁に下がるほど寒い日でしたから、おそらく外気の影響でぬるくなってしまったのでしょう。でも、そのお蔭でのぼせることなく、大パノラマの展望にすっかり心を奪われながら、時間の経過を忘れてじっくり湯あみを楽しむことができました。


 
さて、次に受付の方がすすめてくれた「蒸し風呂」に行ってみます。別途料金は不要ですから、利用しなきゃもったいないですね。場所はちょっと離れたところにあるので、一旦着替えてから専用の玄関でスリッパに履き替え、看板に従って3~40メートルほど歩きます。


 
山の木々に覆われるようにして建っている小屋が蒸し風呂。注意書きには「一人で入るのは絶対やめてください」と書かれていましたが、私は一人旅ですから、仕方なく一人で入ります。尤も、これはここが係員の監視が行き届きにくい無人の離れ小屋で、しかも体調の崩しやすい高温の蒸し風呂であることが理由なのでしょうから、お年寄りやお子さんや高血圧の方でなければ、問題ないでしょう。本棟とは対照的に、この小屋はエラく質素で、脱衣所も狭くて棚しかありません。なんだか山村の鄙びた共同浴場みたい。



脱衣所を出ると小さな露天風呂みたいなものがありますが、これは水風呂。何も知らずに「うわーっ、露天だぁ」と勢い余っていきなり飛び込んじゃうと、とんでもない目に遭っちゃいますね。ここはあくまで蒸し風呂が主役なので、温浴槽は無いのです。



蒸し風呂入口の脇にはブルーのパケツがたくさん重ねてありました。これで水を汲んで室内へ持っていき、室内で水をバラ撒いて湯気を立てるようです。私が利用した時は十分な湯気が籠っていたので使いませんでした。



こちらが蒸し風呂のお部屋。脱衣小屋とは別棟です。内部は薄暗い上に湯気が立ち込めていたため撮影していません。全体がスノコのような作りになっている木組みの室内には、温泉熱による蒸気、そしてゴムのような匂いと金気臭が充満しています。ものすごい湯気と熱のためにあまり長居はできませんが、でも熱源が自然由来だからか、ここのミストサウナは他施設と比べて体への負担が少なく、熱くとも優しい蒸気に包まれて心地よく利用することができました。300円で大展望の露天風呂と蒸し風呂の両方を利用できるのですから、かなりお値打ちではないでしょうか。



ちなみに蒸し風呂エリアでのお湯はこの蛇口だけ。蒸し風呂エリアでは、湯船にドボンと入ることはできません。蒸し風呂を出てから水風呂に入った後に体を温めたかったら、このお湯を桶に汲んで体に掛けるか、あるいはすばやく着替えて浴室に戻るかのいずれかになっちゃいます。



蒸し風呂の小屋の手前に「地獄」と書かれた看板が立っていました。矢印に従って裏手の山を3~4分ほど登ると…


 
目の前に噴気帯が現れました。ここが温泉の源泉かつ熱源なんですね。それほど大きな噴気帯ではありませんが、地熱マニアとしては見逃せない光景であります。


 
湯上がりに隣接している食堂でカレーをいただきました。おすすめメニューの「黒豚カツカレー」です。美味なり!



単純温泉 65.5℃ pH3.9 66L/min(自然湧出) 溶存物質0.166g/kg 成分総計0.210g/kg
H:0.3mg(18.27mval%), Na:4.2mg(13.45Mval%), NH4:3.4mg(13.80mval%), Mg:2.4mg(14.54mval%), Ca:6.1:mg(22.42mval%),
SO4:65.1mg(94.14mval%),

宮崎県えびの市末永1470  地図
0984-33-1104
えびの市ホームページ内での紹介

7:00~20:00 第1火曜定休
300円
ロッカーあり(100円有料)・ドライヤーあり、シャンプー&石鹸あり

私の好み:★★★
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