温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

畑毛温泉 誠山

2023年02月23日 | 静岡県

(2022年3月訪問)
前回記事に引き続き静岡県伊豆半島の付け根にある畑毛温泉を巡ります。今回訪ねる「誠山」は畑毛温泉を南北に貫くメインストリートから東側へ入った細い道に面しているので、初見だとちょっとわかりにくいかもしれません。以前別の名前の老舗旅館でしたが、2018年にリニューアルして現在の名前で営業が再開されました。


午前中の比較的早い時間に訪ねたところ、女将さんが丁寧に対応してくださいました。こちらのお宿は日帰り入浴を積極的に受け入れており、日帰り専用のスタンプ帳を用意しているほどです。私が入館した時点(2022年3月)では、コロナ対策として、所定の用紙に住所・名前・電話番号の記入を求められました。
なお下駄箱と脱衣室ロッカーの2ヶ所が100円式リターン式ロッカーになっていますので、日帰り入浴利用の際には、入浴料とは別に100円玉2枚を用意しておくと良いでしょう。


料金支払い後は宿の方の案内に従って進むと、1階廊下の先に浴室がありました。お風呂は男女別の他に貸切風呂も設けられているようです(今回貸切風呂は利用していません)。脱衣室はコンパクトですが綺麗に整えられており、エアコンも設置されていますので快適です。なお室内には飲料水も用意されていますので、入浴の前後に水分を補給することをおすすめします。


(公式サイトより画像をお借りしました)
床や壁の下半分など伊豆青石を多用している内湯。左側に洗い場が配置され、シャワーが4つ並んでいます。
一方、右側には浴槽が3つ並んでおり、それぞれ温度が異なっています。手前側の浴槽は41℃に加温されており、中央の浴槽も加温されているものの35℃という中程度に抑えられています。手前側・中央ともに大きさは2.5人サイズで、中央にはジェットバス装置が稼働しています。これらに対し、最奥の浴槽は手前2つに比べてちょっと大きな5人サイズで、ジェットバス装置が2本稼働しているのですが、最大の特徴は源泉湧出温度とほぼ同じ30℃というぬる湯状態が保たれていることでしょう。畑毛温泉は古くからぬる湯に長く浸かることによって様々な温浴効果を得るタイプの温泉ですから、源泉とほぼ同じ温度の湯船に長く入浴することこそ、畑毛温泉に行く意味があるわけです。訪問時はまだ外の空気が冷たい3月でしたが、このぬる湯に入ると、入った直後こそ冷たさを感じるものの、すぐに体が慣れてしまい、寧ろ時間を忘れていつまでも入っていたくなるほど非常に気持ち良く、軽く微睡んでしまったほどです。


以前の老舗旅館時代には露天風呂はあったかどうか存じ上げないのですが、現在利用できるこの露天風呂は見たところ新しく、いかにも増設しましたという感が強いので、おそらく「誠山」として再開業する際に新設されたのではないでしょうか。塀で囲われた広い空間に38~9℃の浴槽がポツンと設置されています。塀が立ちはだかるとはいえ、周囲の山の緑はちゃんと眺められますし、何もない空間がそこそこ確保されているため圧迫感は無く、外の風を受けて適度にクールダウンしながら、静かな空間でのんびりとぬる湯を楽しむことができるかと思います。

こちらのお宿で使われている源泉は前回記事で取り上げた「大仙家」の「韮山湯」と同じ韮山温泉土地第3号泉。無色透明無味無臭で、これといった特徴はあまり無いような気がするのですが(私が鈍感なのでお湯の個性を受け止められないだけなのかも)、最も熱い浴槽でも41℃なので、温度面で体への負担が軽く、それゆえ湯当たりしにくい状態でお湯を堪能できるのが嬉しいところ。各浴槽とも循環ろ過と塩素消毒が行われているようであり、無人状態の浴槽からお湯が溢れることはありませんが、内湯の浴槽はお客さんが一人でも入ればその分しっかりオーバーフローします。露天風呂ではオーバーフローは見られませんでした。

個人的に気になったのは、湯船の温度が低くなればなるほど浴槽内の伊豆青石が黄色く染まってゆく傾向にあることで、41℃槽は元々の素材と同じく青いままだが、奥の非加温槽は明らかに黄色く変色しており、何がこのような変色をもたらすのか、ご存じの方がいらっしゃったら教えていただきたいなぁと思っております。

ぬる湯の名湯として知られた畑毛温泉において、源泉湧出温度とほぼ同じ湯温の浴槽に日帰り入浴できるという事実はとても大切であり、手軽にぬる湯に入れる施設は意外と少ないので、そういった意味で利用価値が高い施設と言えるでしょう。
.

韮山温泉土地第3号泉
アルカリ性単純温泉 29.2℃ pH8.7 609L/min(動力揚湯) 溶存物質0.213g/kg 成分総計0.213g/kg
Na+:44.7mg(79.51mval%), Ca++:9.5mg(19.26mval%),
HCO3-:72.4mg(49.17mval%), SO4--:34.5mg(29.75mval%), Cl-:12.3mg(14.46mval%), CO3--:4.8mg,
H2SiO3:33.6mg,
(平成22年11月26日)
加温あり(源泉が低温のため)
循環ろ過殺菌あり(衛生管理のため)

静岡県田方郡函南町畑毛244-4
055-978-3661
ホームページ

日帰り入浴9:30~22:00
600円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

畑毛温泉 大仙家

2023年02月16日 | 静岡県

(2022年3月訪問)
今回記事から日本国内の温泉へ戻ります。静岡県伊豆半島の付け根に当たる函南町と伊豆の国市の境界付近には、200年近い歴史を有する畑毛温泉(奈古谷温泉)があり、現在は数軒の旅館が営業しています。今回はその中でも規模の大きな「大仙家」のお風呂に入ってきましたのでレポート致します。
路線バスが通るメインストリートに面したこちらの旅館は大正時代に創業し、平成5年に全面改築して現在に至っています。外観からして上品且つスタイリッシュであり、駐車場に止まるお客さんの車もみな高そうな車種ばかり。私のような下賤の客は門前払いを食らうのではないかと緊張しながらエントランスを入り、フロントのスタッフさんに日帰り入浴したい旨を伝えると、豈図らんや丁寧に対応してくださいました。なお普段は日帰り入浴を受け付けていないそうですが、今回は特別な条件により受け入れてくださいました。


高い天井のロビーはリゾートホテルを思わせる雰囲気でラグジュアリー感たっぷり。感心した私は、頭の悪いガキンチョのように口を開けたままホールを見上げたところ、涎が垂れそうになり、一層お宿に似つかわしくない客になってしまいました。あぁ情けない。


お風呂はロビーから右手の廊下を進んだ先です。途中で上画像のようなギャラリーを通過するのですが、ガラスケースに収められた品々の時価はいくらなのかしら、などと下賤な発想を抱いてしまう私は、やはり客として相応しくないのかもしれません。


温泉ゾーンは3棟の八角堂から成り立っています。手前側の1棟はまるごと更衣室で、男女で半分ずつ使い分けています。ウッディな更衣室は広くて綺麗。さすが歴史ある上品な宿は違うなぁと感心しながら、快適に利用させていただきました。


八角堂の残りの2つは男女それぞれの浴場です。
浴室も天井高くて広々としており、非日常的な感覚を享受できます。男湯の場合、この浴場に入って右側に洗い場は加温浴槽が、左側には源泉別浴槽が配置されています。
洗い場にはシャワーが8個並んでいますが、うちひとつ(最も入口に近い箇所)は水栓の取り付け位置が若干高くて専用の椅子が用意されているバリアフリータイプです。


後述しますが、こちらのお風呂には2種類のぬるい源泉が引かれており、洗い場側の浴槽には2つの源泉をミックスして42℃程に加温循環させたしたお湯が張られています。源泉別の浴槽はぬるい状態を維持させているため、体を温めたい場合は加温浴槽を利用することになります。


洗い場と反対側の窓側には源泉別の浴槽が据えられています。2つの源泉は「大仙湯」と「韮山湯」です。


お宿の自家源泉である「大仙湯」は私の体感で32~3℃程というぬるさで、入りしなこそ少々冷たいような感じがしますが、肩までしっかり浸かる頃には既にこのぬるさに体が慣れ、むしろこのぬるさが最高に気持ち良く、じっくり長湯しているうちに微睡んでしまうこと必至です。
紺色のタイルの湯船には湯口からお湯がたくさん注がれていますが、分析表によれば湧出量は毎分11リットルしかないため、おそらく循環させながら源泉湧出時のぬるさを再現させているのかと推測されます(間違っていたらごめんなさい)。なお温泉分析表に記載された大仙湯の源泉名は「大仙湯 奈古谷24号」です。当地の温泉地名は今でこそ「畑毛温泉」で統一されており、函南町と伊豆の国市(旧韮山町)に跨っていますが、かつて韮山側は「奈古谷温泉」という別の温泉名を名乗っていました。表向きは消えてしまった奈古谷の名は自家源泉の源泉名としてまだ生き残っているのです。


一方「韮山湯」は共同源泉で湧出量は毎分609リットルもあるのですが、私の利用時に湯口から吐出されている湯量はチョロチョロ程度でした。こちらは「大仙湯」より若干低い30℃弱ですので、入ってしばらくは冷たさを感じますが、やがて体に馴染んでゆくとこの上なく気持ち良く、ぬる湯好きなら湯船に永遠に入り続けたくなることでしょう。

両源泉のお湯とも無色透明無味無臭で肌触りにもこれといった特徴は無いのですが、分析表によれば「大仙湯」は溶存物質2.080gを有する芒硝泉であるのに対し、「韮山湯」は0.213gという薄さのアルカリ性単純泉であり、また上述のように湧出量も大きく違うため、見た感じでは似た者同士でも、実際にはかなり中身が異なります。とはいえ、両源泉ともにぬる湯の名湯であることに違いはなく、長く浸かっていると副交感神経が優位になって心身が落ち着いてきます。かけ流しではなくても素晴らしいお湯であることに間違いありません。


露天風呂は42℃程でしょうか、やや強めに加温されていました。
なお露天風呂エリアには他にサウナ小屋もあります。

ぬるいお湯に長く浸かって静かにゆっくりと湯あみの時間を過ごす。
時間を思う存分に使うことこそ本物の贅沢です。
そんな贅沢を楽しめる素敵なお風呂でした。


(大仙湯)
大仙湯 奈古谷24号
ナトリウム-硫酸塩温泉 37.6℃ pH8.8 11.0L/min(動力揚湯) 溶存物質2.080g/kg 成分総計2.080g/kg
Na+:657.6mg(97.25mval%),
SO4--:921.9mg(65.85mval%), Cl-:201.6mg(19.53mval%), HCO3-:238.0mg(13.38mval%),
H2SiO3:27.0mg,
(平成28年3月31日)

(韮山湯)
韮山温泉土地第3号泉
アルカリ性単純温泉 29.2℃ pH8.7 609L/min(動力揚湯) 溶存物質0.213g/kg 成分総計0.213g/kg
Na+:44.7mg(79.51mval%), Ca++:9.5mg(19.26mval%),
HCO3-:72.4mg(49.17mval%), SO4--:34.5mg(29.75mval%), Cl-:12.3mg(14.46mval%), CO3--:4.8mg,
H2SiO3:33.6mg,
(平成22年11月26日)

静岡県伊豆の国市奈古谷655
055-979-7000
ホームページ

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

台湾南投県 福興温泉エリア(廬山温泉移転先)の現状

2023年02月10日 | 台湾
以前に拙ブログで何度か取り上げたことがある南投県の廬山温泉は、日本統治時代に富士温泉と呼ばれており、戦前から温泉地として有名な場所でした。しかし、急峻な地形が災いして何度も水害や地滑りなどの災害に襲われており、このまま営業を続けると甚大な被害が発生してしまうため、2012年には南投県政府が廬山温泉の廃止を決め、当地で営業している温泉旅館は、同じく南投県埔里近郊にある復興里の福興温泉エリアへ移転するよう、行政によって働きかけが行われました。しかし実際のところ、2023年1月の今日に至っても、旅館の移転は全く進んでいません。廬山温泉で経営する旅館の多くが許認可を受けていないため、移転に際して補償など一切受けられないためです。このあたりの事情は以前に拙ブログで取り上げていますので、よろしければ2013年の記事もご参照ください。2013年当時、廬山温泉で旅館を経営する27業者のうち、行政からの認可を受けて営業しているのはわずか6軒にすぎず、他21業者は無認可(台湾では非合法と称している)経営であるため、移転にあたっての補償が得られず、多くの業者は温泉街の閉鎖に反対していたのでした。廃止が決定されてから10年が経った2013年1月現在も廬山温泉の各温泉旅館は営業を続けており、行政サイドの掛け声はどこ吹く風といった状況です。

では、移転先として地元自治体が整備を進めているはずの福興温泉エリアは、現在どのようになっているのでしょうか。疑問を抱いた私は、実際に現地へ赴いて自分の目で確かめてきました。


まず場所を確認しましょう。
福興温泉エリアは南投県埔里の郊外北部に位置しており、街の中心部にある埔里バスターミナルから車で10分強(6km強)ほど離れています。徒歩だと1時間半弱といったところでしょうか。後述しますが、周囲にはまだ何も無く、観光需要はまだ全く見込めないため、福興地区へ行く路線バスは一日3便しか運行されていません。


私はレンタカーで当地へとやってまいりました。一応、遊客中心(インフォメーションセンター)は建てられているのですが・・・


ドアは固く閉ざされており中に入ることはできません。ドアの窓から館内を覗いてみると、観光の説明プレートが数枚置かれているだけで、観光客を相手に何か業務しているような形跡は全く見当たりません。


遊客中心の周囲は荒涼とした空き地が広がるばかり。単なる空き地ではなく、道路が整備されていますから、行政によって区画整理が実施された後の空き地であることがわかるのですが・・・


遊客中心に隣接する産直物販所も使われておらず・・・


建物前には立派な案内図こそ立っていますが・・・


遊客中心の前に置かれていたはずの車止めがひっくり返ったままになっていたり・・・


急須をイメージしていると思しきキャラクターが色褪せてボロボロになっていたりと、この荒れた有り様が福興温泉エリアの現状を端的に物語っているようでした。つまり完全に放置されているのです。


案内所からちょっと離れたところには、本来ならば足湯を楽しめるはずの公園が整備されているのですが、肝心の足湯は空っぽの状態で・・・


せっかく整備されているのに利用する人は皆無。


足湯の前に設置されている温泉の効能を説明するプレートの文言が妙に虚しく見えてしまいました。しかもこの写真を撮っていると、近所で放し飼いにされている犬が大声で吠えながらこちらを威嚇してくるので、仕方なく早々に退散せざるを得ませんでした。


とにかく空き地ばかりが広がっています。
現時点(2023年1月)で、福興温泉エリアで営業している温泉宿や施設は一軒もありません。


一部の区画は塀で囲まれていましたが、何か工事が進められているような状況ではありませんでした。意外なことに、地元の方のお話によれば、行政によって整備された福興温泉エリアの土地のほとんどは買い手がついているそうですから、単に荒れた空き地ではなく、将来的には土地所有者かもしくはその転売先によって、何かしらの施設が建てられるのでしょうね。オーナーたちはタイミングを見計らっているのでしょうか。


道路も綺麗に整備されていますが、誰も通らないのでエリア内の信号の多くは消されていました。なおこの福興温泉の開発整備のために投じられた金額は33億元(約132億円)なんだとか。


ここまで何も無いと、本当にこの地は温泉郷として利用されるのだろうかという疑問が湧いてきますが、どうやらこの地では本当に温泉が湧いているようなのです。エリアの端っこの方を散策していると、自来水、つまり上水道の施設に行き当たったのですが・・・


その施設内には上画像のような巨大タンクと、タンク上部へ設置された4本の配管があり、配管には左から「4號温泉井」「2號温泉井」「1號温泉井」「3號温泉井」と書かれているのを発見したのです。日本と同じく当地でも地下深くまでボーリングすることによって温泉を掘削することができ、少なくとも福興温泉エリアでは4本の源泉井の掘削に成功しているものと推測されます。上画像のタンクはポンプアップした温泉をストックするための貯湯槽かと思われます。上述の足湯公園の他、空き地に建てられるであろう温泉施設には、ここで汲み上げられて一旦ストックされた温泉が供給されるのでしょう。でも、その日が来るのは果たしていつになることやら・・・。

ちょっと古い記事ですが、2018年6月8日付「民報」では試掘に成功して実際に44℃の温泉が出ている様子を撮影した画像が掲載されています。
2022年12月14日付「自由時報」の記事によりますと、温泉用地として整備された土地は55ヘクタールを超え、4本の源泉井からは日量2600トンの温泉が汲み上げられるんだとか。
また、ネット版「聯合報」2022年12月1日付の記事によれば、地元自治体は「能高温泉ホテル」という名前の施設に当地としては初めての建設許可を与えたとのこと。この「能高温泉ホテル」は地下1階・地上4階建で客室数は計39部屋、1階に露天風呂が設けられる計画だそうです。

でもほとんど手が付けられていない広大な空き地を目にした私の実感としては、本当にこの地が温泉郷として花開くのか大いに疑問です。周囲にこれといった名勝等が無く、市街地から中途半端に離れているのに自然が豊かというわけでも無く、しかも公共交通機関の便は良くないので、観光地として人を集める要素に欠けるのです。

もっとも、付近には中台禅寺という巨大な寺院があり、コロナ禍の前はこの寺院へ中国大陸から大量の観光客がやってきていましたから、コロナ禍が落ち着いて中国大陸からの観光流入が再開すれば、高速道路のインターチェンジから比較的近いという立地を生かし、バスでやってくる中国人団体客を受け入れることによって、将来的には意外にも商売が成り立つのかもしれませんね。
ただ一方で廬山温泉の移転は全く進んでいないので、福興温泉エリアは本来の目的である廬山温泉の移転とは無関係に整備が続けられてゆくのかもしれません。

拙ブログでは引き続き廬山温泉と福興温泉の動向を追跡してまいります。

.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泰安温泉 錦水温泉会館

2023年02月04日 | 台湾

(2023年1月訪問)
引き続き台湾苗栗県の温泉を訪ねます。台湾にはたくさんの温泉地がありますが、なかでも近年注目されているのが泰安温泉です。最奥部には日本統治時代に上島温泉と呼ばれていた「警光山荘」の古い温泉があるほか、渓谷に沿って広がる温泉地には高級路線のリゾートホテルや新しい施設などが建ち並び、緑豊かな自然環境と相まって、魅力的な温泉地として人気を博しています。拙ブログでも以前に泰安温泉の施設をいくつか取り上げたことがありますが、今回ご紹介するのは「錦水温泉会館」です。
2023年1月の台湾旅行では、宿泊したい温泉ホテルの候補を予め挙げていたのですが、具体的な日程が決まらなかったため予約が出遅れてしまい、しかも旅程が旧暦の「尾牙」つまり忘年会の時期と重なってしまったため、宿泊を予定していた1月上旬の週末は多くのホテルで満室となり、希望のホテルはどこも予約不可能でした。そんな中、台湾中部の温泉ホテルでそれほど高額ではない価格帯で予約可能だったのが「錦水温泉会館」だったのです。


場所は汶水溪という川に沿って東西に伸びる泰安温泉のちょうど真ん中。以前拙ブログで取り上げたことのある「騰龍温泉山荘」の川を挟んだ真向いに位置しており、メインストリート沿いなので分かりやすい立地です。泰安温泉は公共交通機関でアクセスしにくいため、私はレンタカーで当地を訪ねたのですが、難儀したのがこのホテルの駐車場。建物の2階に駐車場が設けられているのですが(フロントは1階)、とにかく狭くて駐車に苦労します。大きなSUVのお客さんは、隣の車や柱に当たりそうになりながら、何度もハンドルを切りかえして、長い時間をかけて枠内に車を収めていました。この駐車場の狭さが嫌でしたら、屋外に車を停めてしまいましょう。


訪問時、ロビーはバスで乗り付けた団体客でごった返していました。おそらく企業主催の「尾牙」(忘年会)かと思われます。そんな団体さんを掻き分けながらフロントデスクへ向かってチェックイン。フロントの方は英語が話せたので、スムーズに手続きを済ませることができました。
今回私が宛がわれたのは上画像のお部屋。広くて明るい室内にはキングサイズのベッドが据え付けられています。もちろんWifi完備。なお客室のバスルームに引かれているお湯は、おそらく温泉かと思われます。詳しくは本記事の後半で触れます。


窓の外には小さなテラスがあり、川の対岸には「騰龍温泉山荘」が見えます。この窓を開けていると山の清らかな風が室内に入ってきて、とっても心地よいんです。

●戸外温泉区

泰安温泉では多くの施設で水着着用の露天風呂を利用できます。もちろんこのホテルにもありますので、入ってみることにしました。こちらでは戸外温泉区と称しており、傾斜地に沿って段々に浴槽類が設けられています。


といっても、日本的な温泉をイメージすると期待外れ。いわゆるスパ施設と言うべきもので、打たせ湯、入浴剤入りのお風呂、サウナ、水風呂、赤外線を浴びるゾーンなど、アトラクション的な浴槽が多く、温泉を感じるようなものではありません。


階段を昇りつめた最上段の浴槽でようやく純粋な温泉浴槽を見つけました。無色透明のお湯に入ると滑らかなツルスベ浴感を実感できるのですが、植栽や囲いなどのため、高台にあるにもかかわらず眺めはそれほど良くなく、しかもお湯自体もあまり面白くないため、わざわざここへ入りに来るほどの価値があるかどうか、私にはちょっと疑問でした。

●9階の個室風呂(景観湯屋)

一方、9階にある個室風呂「景観湯屋」では満足のいく湯浴みが楽しめました。宿泊客は無料で1回(1時間)利用することができます。利用に際しては予約する必要があるので、私はチェックイン時にフロントで予約し、その時にもらった予約券を手にして9階に向かうと、エレベーターを降りたところに専用カウンターがあり、そこにいるスタッフに券を渡すことで、そのスタッフがお風呂へと案内してくれました。9階は実質的に屋上であり、この屋上には上画像のようにたくさんの個室風呂(家族風呂)が並んでいます。


私が案内された個室は17号室(上画像)。木造の個室に2人サイズの浴槽があり、既にお湯が張られていました(利用の都度、スタッフがお湯を張り替えるようです)。窓を開けるとしっかり風が入ってきますので、半露天風呂状態で入浴することができました。なお壁に設置されているボタンを押すとジャグジーが作動するのですが、騒々しいので私はジャグジーを止めて湯浴みしました(ボタンを右に回すと止まります)。もちろん個室ですので水着を着用することなく、全裸で入浴できます。

こちらのお湯では重曹泉的な清涼苦味がやや感じられたほか、ツルスベの滑らかな浴感がしっかりと肌に伝わり、特にボディーソープで体を洗った後に温泉のお湯で洗い流そうとすると、重曹の効果によってツルスベやヌルヌルにブーストがかかり、いつまでもボディーソープを洗い流せた感じがしないほど、温泉の持つ浴感が強調されました。これは客室のシャワーに引かれている温泉でも同様であり、一見すると特徴が無さそうなお湯でありながら、実は隠れた実力の持ち主だったわけです。


個室風呂の窓からはこのような感じで周囲の温泉ホテルや景色が眺められます。
この時は皓々と輝く丸い月を見上げ、多幸感に満たされながら温泉を楽しみました。

●食事

今回の宿泊では夕食・朝食ともにホテルでいただきました。朝食は宿泊料金に含まれているのですが、夕食は別途料金がかかります。ホテルの食事は比較的高いので、本当は外に出て食事しても良かったのですが、この時は出かけるのが面倒になってしまったので、ホテルでいただくことにしました(チェックイン時に予約)。お食事は夕・朝ともに上画像の大広間(3階だったかな?)でいただきます。


お銚子に入った食前酒が意外と美味しく、調子に乗って銚子一本あけてしまいました。


料理はコースで提供されます(コースはいくつか選べます)。この日の献立は、ガチョウを塩味で蒸したもの、牛肉をザーサイで煮たようなもの、野菜と海老の炒め物、蒸しキャベツ、大根や豆腐とテールのスープといったラインナップで、おそらく客家料理かと思われます。なかなかの美味でした。


朝はバッフェスタイル。私のような個人客のほか団体さんも入り混じり、朝食会場は大混雑。


並んでいる料理はいずれも台湾的なものが多かったように記憶しています。
品数が多いので、全てを制覇しようとするとお腹がはちきれるかも。


碳酸氫鈉鹽泉(ナトリウム-炭酸水素塩泉) 35℃ pH8.48 成分総計1639.4mg/kg
Na+:442.5mg,
Cl-:16.6mg, HCO3-:1135.0mg,
H2SiO3:24.3mg,

苗栗県泰安郷錦水村横龍山72号
ホームページ

日帰り入浴
戸外温泉区(露天風呂)350元(水着・水泳帽必要) 7:30~21:00
景観湯屋(貸切風呂)350元/1時間+200元(清掃費) 8:00~20:40

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする