温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

おすすめ温泉書籍 『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』

2024年07月10日 | その他
今年(2024年)6月26日に温泉関連の素晴らしい書籍が刊行されましたので、久しぶりに拙ブログでは本を紹介させていただきます。


鈴木浩大さんのご著書『さあ、海外旅行で温泉へ行こう 〜親切ガイド 世界の名湯50選〜 (ビジュアルガイド)』
です。鈴木さんのご著書はこれまでも拙ブログで2冊取り上げており、1冊目は私が台湾の温泉を巡るきっかけにもなった私にとってのバイブル的存在である『湯けむり台湾紀行: 名湯・秘湯ガイド』(まどか出版・絶版)、2冊目は昨年9月の記事でご紹介した『ほぼ本邦初紹介! 世界の絶景温泉』(みらいパブリッシング)です。

鈴木さんによる今回の新刊は前作と同じ版元から刊行され、海外の温泉を取り上げているという点でも同じなのですが、前作は知る人ぞ知る秘湯がメインだったのに対し、今作はできるだけ多くの皆さんへ実際に行ってもらうべく、各地の比較的アクセスしやすい温泉を厳選して取り上げてる点が決定的に異なります。
拙ブログもしばしば海外の温泉を取り上げており、その場合には地図や現地到達までの過程を紹介する等、ブログをご覧になる方が実際に現地訪問する際の参考になるよう努めておりますが、この新刊は拙ブログと同じ方針で編集されており、しかもアジア・北南米・ヨーロッパ・北アフリカ・オセアニアといった地球規模の超広範囲にわたっていますので、内容がこの上なく充実しています。まさに私が欲しかった(出したかった)本です。

「浸かって気持ちいい温泉」「見るだけでワクワクする温泉」「海外旅行のついでに行ける温泉」「著者が太鼓判を押す温泉」
という4つのテーマに沿った計50カ所の各温泉は、いずれもビジュアル的に魅力的であるのはもちろんのこと、容易にアクセスできるところもあれば、ちょっと頑張れば行けそうなところもあり、また温泉のみならず周辺の観光情報や海外旅行のちょっとしたHow toも紹介されていますので、かなり実用的な旅行ガイド本となっています。ちなみに書中で紹介されている温泉の中には、拙ブログで取り上げている温泉も多くございますので、併せてご参照くださいませ。

拙ブログは日本語で書かれたウエブサイトの中でも海外の温泉を比較的多く取り上げていると自負しておりますが、とはいえ基本的にご覧になっているのが温泉ファンの方々なので、温泉ファン以外の目に止まりにくいのが残念なところ。日本で「温泉旅行」といえば国内旅行と直結してしまいがちですが、この著作が書店の旅行ガイド本と同じ棚に並ぶことによって、海外にも温泉が無数に存在し、アクセスしやすい温泉も多くあることが海外旅行好きの方に認知されたら、海外旅行の大きな目的のひとつに「温泉」が加わり、温泉を愛する人の裾野がより広がるかもしれません。

私はこの新刊を読んで、今すぐに海外の温泉へ出かけたくなりました。
温泉ファンの方は是非ご一読を。

さあ、海外旅行で温泉へ行こう 〜親切ガイド 世界の名湯50選〜 (ビジュアルガイド)

鈴木浩大さんのブログ 「世界の絶景温泉」


次回記事から再び私が訪ねた温泉の記録に戻ります。

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温泉関連書籍 おすすめの2冊

2023年09月13日 | その他
久しぶりに温泉に関連する書籍を取り上げます。

温泉に関する情報をネットから入手することが主流になって久しいものですが、とはいえ今でも書籍は重要な情報源です。
玉石混淆のネット情報と違い、情報が整理されている、わかりやすくまとめられて編集されている、そして編集者など複数の人の目がフィルターになっている、など多くのメリットがあり、そして何より著者の思いが文面から伝わってくるので、その思いにつられて記事で紹介されている場所へ行ってみたくなるのが大きな魅力です。
今回は直近1年の間に刊行された温泉関連書籍の中から、私が特にレコメンドしたい2冊を取り上げます。


温泉百名山
 著:飯出敏夫
 2022年10月
 集英社インターナショナル



刊行から1年が経とうとするタイミングで紹介するのはちょっと遅いように思いますが、でも秋の登山シーズンを控えた今だからこそあえてご紹介させていただきます。
登山を趣味とする方の中には日本百名山の制覇を目指す方も多いかと思いますが、根っからのへそ曲がりである私は、登る山を決める際に敢えて日本百名山を避けたくなってしまいます。天邪鬼な性格もさることながら、深田久弥の『日本百名山』も読まず妄信的に百名山を有難がって目指す世間の風潮に納得がいかないのです。山の好みは人それぞれなのですから、登山家一人一人に自分なりの名山があっても良いのではないかと私は常々考えているのですが、とはいえ、恥ずかしながらそこまで多くの山を登っているわけでもないので、多くの山の中から一定の基準を以て選り好むという崇高なこともできません。
そんな中で昨年10月に刊行された飯出敏夫さんの『温泉百名山』は、温泉と登山の両方を好む私にとって我が意を得たりと言わんばかりの著作であり、ページをめくる手が止まらなくなるほど大変興味深い内容でした。

日本の山と温泉は切っても切れない関係にある、と言いたいところですが、山があるからと言って決して温泉が湧いている訳ではなく、温泉の有無は火山活動や地質などいろんな条件によって左右されてしまいます。奥羽山脈や北アルプスのように温泉資源が豊富な山域もあれば、日高山脈や南アルプスのように、温泉資源が決して多くない山域もあるので、私のように「下山後は必ず温泉マニアとしても納得できる温泉に入りたい」と考えると、目指す山域に偏りが生まれ、結果的に日本百名山とは無関係な山行になるわけです。

そんな中、この『温泉百名山』は温泉と登山の達人である飯出敏夫さんが、「品格」「歴史」「個性」という深田久弥の百名山選定基準を援用しながら、麓や山腹に名湯が湧く名山を日本全国から100座選び、しかもご自身が選んだ100座全ての頂上をご自身で登って、その記録を一冊にまとめ上げたもの。しかも著者は悪性リンパ腫や膝関節症などの病に幾度も侵されながら、病気を乗り越えて自分の足で山の頂に立っているのですから、只々驚くしかありません。単に名山名湯を選定しているだけでなく、山と温泉を愛する飯出氏の生き様に感銘を受ける一冊です。仕事で疲れて週末ダラダラと過ごしてしまう私は、その精力的な動きに「すげぇ!」と尊崇の念を抱くと共に感銘を受けるばかりでした。

今回の著書では深田久弥『日本百名山』と同じく、一座一座の山や温泉についてそれほど文章量が多いわけではないのですが、簡にして要を得るというべきか、的確で無駄のない筆致なので、著者が実際に現地で感じたであろう景色や空気、そしてお湯の感触が如実に伝わってきます。また実際にその山を登ったことがある方なら、ご自身の山行や下山後に疲れを癒した温泉の気持ち良さを追体験できるでしょう。余計な表現が削ぎ落されているからこそ、想像を膨らませ、記憶を蘇らせることができるのかと思います。
このため、登山と温泉のガイド本として活用するのはもとより、新たな切り口による山選びの指南書として、あるいは紀行文や風土記のような読み物として捉えると、より面白みや有用性が感じられるのではないかと思います。日本には様々な百名山がありますが、この温泉百名山もアウトドアを趣味とする方々にとってのひとつのメルクマール的な存在として末永く在り続けていくことを、著者のファンの一人として願っています。

ちなみに現在、著者は早くも第二段として『続・温泉百名山』の選定に取り掛かっていらっしゃいます。この続編では登山初心者や高齢者でも登れるような山とその麓の温泉を中心に選定してゆく予定とのことで、具体的には今作であまり取り上げられなかった九州方面の山や、それほど高いとは言えないような箱根方面の山など、明らかに今作とは異なるターゲットを既に登っていらっしゃいます。詳しくはインスタをご覧ください。
https://www.instagram.com/oncolle_iiyu/


ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉
 著:鈴木浩大
 2023年6月
 みらいパブリッシング



拙ブログで以前ご紹介した鈴木浩大さんの著書『湯けむり台湾紀行』(まどか出版、2007年・現在絶版)は、私が台湾の温泉に深くはまってゆく契機となった名著であり、「台湾にはマニア心をくすぐる蠱惑的な温泉がこんなにあるのか」と感心しながら、私が台湾を旅行する際には文字通りバイブル代わりとしてこの本を常に携行していました。数えきれないほど読み返してきたので、今ではページの隅がヨレヨレになり、製本がバラバラになってしまいそうな状態になっているほどです。

卓越した調査力と探査力、そして行動力を兼ね備えた旅の達人である鈴木さんが、今度は世界を舞台にして、これまたマニアックな温泉本を世に出してくださいました。その名も『ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉』。「ほぼ」という副詞をタイトルに含める謙虚さに著者のジェントルな人柄が表れているような気もしますが、それはさておき、ビジュアルガイドシリーズというシリーズ名が示す通り、温泉マニアだったら間違いなく惹きつけられるグラビアが多く、著作の中で紹介されている温泉の全てに行きたくなって体が疼いてしまうこと必至。しかも「ほぼ本邦初紹介」の文言に偽りなく、著書の中で紹介されている温泉の多くは、日本語のウエブサイトではほとんど取り上げられていません。どうしてこんな温泉があるという情報を得たのだろうか・・・不思議で仕方ありません。私にとっては正に神の領域です。
著者が実際に入浴して紹介している温泉は、南北アメリカ、極東アジア、東南アジア、南アジア、中東、小アジア、欧州、アフリカというように新旧の大陸を股に掛けており、しかも単に取り上げるだけでなく、「析出物」「景観」「噴泉・気泡湯」「濁り湯」「変わり種」という温泉マニア視点で章立てされている点が読み物として面白いところ。分かる人にはわかる分類方法ですね。

私はたまに「海外にも温泉ってあるんですか」「日本こそ温泉大国ですよね」という質問を受けます。井の中の蛙大海を知らずと言ってしまうと語弊がありますが、日本のみならず、地球上の各地で星の数ほどの温泉がそこここで湧出しており、それぞれの地域にそれぞれの温泉文化が息づいています。日本の場合は毎日湯船に入る習慣が高度経済成長期以降に根付き、そこに古くからある温泉文化が混ざり、団体旅行ブームなども相俟って、温泉と庶民が非常に密接に結びつくようになったわけですが、文化や生活、そして観光や資本に組み込まれてしまった温泉が多い日本と比べ、海外の温泉はワイルドで手付かずのものが多くあり、それゆえ景観面でも泉質面でも良好な状態が保たれており、大地の恵みをダイレクトに受けられるという意味では、むしろ日本より海外の方が良い場合も多々あるように思っています。もちろん日本には素晴らしい温泉が余多あり、その中には大変ワイルドで到達困難な野湯などもあって、RPGをプレイするかのように野湯や地元民向け温泉浴場を訪ね歩く強者もいらっしゃるわけですが。でも海外旅行の醍醐味のひとつであるカルチャーギャップを体験したり、日本にない風土や景色に抱かれたりしながらワイルドな温泉を入浴するとその感動もひとしおであり、日本の温泉では決して味わえない強烈な想い出が残るのです。

拙ブログを以前からご覧くださっている方はお気づきかと思いますが、私もまさにそうした魅力を求めて海外の温泉へ出かけており、世界各地の温泉に魅了され続けてきました。そんな私にとって鈴木さんの新刊は目の前に応現した新たなバイブル。コロナ禍で海外旅行が一時的に難しくなり、その問題が去った後も円安という現実的問題が立ちはだかって、なかなか海外には行きにくい状況ですが、今回の著書を読んで、やっぱり海外に出かけなきゃ、という思いを新たにしたのでした。ということで、台湾に続いてこれからも私は鈴木さんが通った轍を追いかけてゆくのでしょう。

ちなみに鈴木さんはブログも執筆なさっています。
ぜひご覧になってください。
ブログ「世界の絶景温泉」


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新宿駅 小田急・京王から中央東口への通り抜けが廃止

2020年07月29日 | その他
久しぶりに鉄道ネタです。しかも思いっきり東京ローカルの話題です。興味のない方、ごめんなさい。
私は幼いころから長年にわたって小田急沿線で育ち、数年前から諸般の事情で京王沿線に移り住んでおります。こんな私にとって新宿はどんな街よりも馴染みがあるターミナルであり、物心ついた頃から今日に至るまで自分の目で新宿の変遷を見つめてまいりました。複雑に入り組んで分かりにく新宿駅構内に対して多くの方は「ダンジョン」や「迷宮」などと呼んでいるそうですが、通い慣れている私は迷ったことなど一度も無く、目を瞑っても構内の目的地まで歩いて行ける自信があります。そんな私にとっても大きな影響がある新宿駅の大変革が先日挙行されました。

●前置き
ニュースでも取り上げられていましたが、今年(2020年)7月19日に新宿駅構内を東西に貫く自由通路が開通しました。これまで新宿駅には東口~西口を自由に行き来できる通路が無かったため、南口の甲州街道を大きく迂回するか、丸ノ内線の駅構内地下通路を回るか、はたまた思い出横丁(いわゆるションベン横丁)の端から線路下を潜る狭くて薄暗いトンネル歩道を抜けるかのいずれかのルートで遠回りせざるを得ませんでした。いや、迂回しなくてもJRの入場券を購入して西口改札と東口改札を直線状に結ぶ構内通路を通過する、つまりお金を払うことで駅構内を通り抜けることもできたのですが、当然ながら入場券を買う必要があるため、わざわざそこまでする人は皆無に等しい状況でした。

長年にわたってこのような遠回りを強いられる構造でしたが、世界で最も利用者数の多い駅なのに、こんな不便な造りではみっともないということなのか、ようやく新宿区とJRは重い腰を上げ、難工事の末に東西自由通路が開通することになったわけです。といっても東西に新しく通路を開削したわけではなく、上述したJRの西口~東口を構内通路から改札を取っ払ってそこを自由通路とし、取っ払った代わりに新たな改札(西改札・東改札)と階段が作ったのでした。


上画像は、東西自由通路が開通する1~2日前に撮影したJR新宿駅西口および東口改札の様子。
それぞれ赤枠で囲んだ内側に写っている改札機が、7月18日の終電を以て撤去されました。


(JR東日本のプレスリリースより抜粋)
往来を阻む関所のような改札を撤去することによって、JRの西口と東口相互間が自由に行き来できるようになり、利便性が格段に向上しました。

以上のことは、いろんなメディアで既に報道されている通りですので、もうこれ以上詳しく述べる必要はないでしょう。



●本題 小田急・京王から中央東口への通り抜けが廃止
さて、ここからが本題。
今回の措置によって新宿駅を利用する多くの方の利便性や街全体の回遊性が向上されたのは間違いないのですが、「ちょっと待った、若干不便になるんじゃねぇの?」と声をかけたくなったのが、我々小田急・京王の両ユーザーなのです。
一般的に、鉄道会社の駅構内に入る際には、その会社の切符を所有していないといけませんね。でも7月18日まで、新宿駅では例外が認められてきました。もう一度、上のJR東日本のプレスリリースから抜粋した図をご覧ください。図の右側の上下(南北)に伸びている薄いブルーの通路が、今回開通した東西自由通路です。一方、左側にも上下(南北)に貫いている通路がありますね。こちらは中央通路と称し、JR構内の中央東口と中央西口を結んでいます。このうち、中央西口側(図の左上)には、小田急・京王からJRへ乗り換える連絡改札が接続しています(図にも「小田急・京王乗継口」と示されています)。連絡改札ですから、小田急・京王~JRの相互間で乗り換える乗客が通過するための改札ですが、この連絡改札では、小田急・京王それぞれの新宿までの乗車券を持っている旅客も、中央東口から出ることを条件に、通過を認められていたのです。
なぜか・・・。
それは小田急・京王ともに西口側に駅のコンコースがあり、東口側との行き来が極めて不便だったからにほかなりません。

この特例措置が、東西自由通路の開通とともに廃止されてしまいました。

話を自由通路開通前に戻らせます。7月19日にオープンした東西自由通路の供用前に、小田急・京王両線の新宿で下車する客が東口方面へ向かおうとすると、小田急も京王も西口側に駅がありますから、甲州街道か、丸ノ内線駅構内地下通路か、あるいはションベン横丁を迂回しなければなりません。これではあまりに不便すぎるということで、中央西口の連絡改札を通過した場合に限り、JR構内の中央通路を経由して、JR中央東口改札へ通り抜けることができたのです。


こちらは7月18日の京王線・中央西口連絡改札を撮ったもの。写真右手に写っているようなJRへの乗り換え専用改札機の他、JR中央東口へ通り抜ける旅客専用の改札機(黄色い自動改札機)が設置されていました。


同じ日の小田急線・中央西口連絡改札。こちらも同様に、JR乗り換え専用改札機の他、JR中央東口へ通り抜ける旅客専用の改札機(黄色い自動改札機)が設置されていました。


中央西口連絡改札を通り過ぎて中央通路を通り抜けてきた小田急・京王の旅客は、JR中央東口改札から出るのがお約束。上画像は7月17日に撮影した同改札です。画像中央に写る黄色い案内表示に「中央東口 小田急線・京王線からのお客様出口」と書かれているのがお分かりになりますでしょうか。当然JR構内では他の改札にも行けますが、新宿までの切符を持っている小田急・京王の旅客はJRの他の改札から出ることはできません。出場できるのは中央東口だけでした。ま、いまだから告白しちゃいますが、私はこの特例を使い、小田急の切符を持ちながら、JR構内の立ち食い蕎麦を食べたり、珍しい列車の入線を見学したりと、いろいろ活用させていただきました。


出場できるのならば、入場だってできました。東口側から小田急・京王の新宿駅を利用したい場合は、中央東口で各社の切符を購入し、中央東口改札を通過して、中央通路を通り、小田急・京王それぞれの中央西口連絡改札を通過して各線の乗り場へ向かうことができました。
上画像は中央東口改札のラッチ外に掲出されていた案内表示(7月17日撮影)。下の方に小さく「小田急線・京王線へのお客様入口」と書かれています。


構内へ入場するためには切符が必要。というわけで、本来JR構内である中央東口改札横には、小田急と京王の券売機も用意されていました。青い券売機が小田急専用、ピンク色の券売機が京王専用です。代々木上原など途中駅から乗客が増える小田急に対し、京王は始発の新宿からいきなり乗客が多いためか、券売機の台数も京王の方が1台多かったようです。とはいえ、中央東口は両社にとって裏口のような存在ですし、そもそも近年はSuica・PASMO利用者が圧倒的ですから、この券売機自体、使用頻度は激減していたものと思われます。


かく言う私も東京圏で切符を買う機会は久しくなかったのですが、たまには切符を手にしてみたくなったので、両社の券売機で購入してみました。ここで切符を買うのは、おそらく20年ぶりかしら・・・。
上画像は中央東口の券売機で買った切符。左側は京王、右側は小田急です。京王の券面は民鉄標準の地紋に京王標準の表記で印字されているごくごく普通の切符なのですが、小田急の方はいろんな面でイレギュラー。まず地紋がJR東日本のものであり、かつ左上に□囲みに東の字が印字されています。フォントも各語句の配置もJR仕様そのもの。つまり、中央東口で販売される小田急の切符は、JRの用紙にJRの機械でJRの仕様に従い発券されるのです。京王についてはよく覚えていませんが、小田急については私が小学生の頃(昭和)から既にこのスタイルでしたから、長年にわたってイレギュラーな切符が発券されつづけてきたのですね。


このように、新宿東口方面に用事がある小田急・京王ユーザーにとって優しい特例措置だった中央東口の通り抜けでしたが、東西自由通路の開通にともない「小田急・京王それぞれの西口改札(メインの改札)を出て、東西自由通路を利用すれば、JR構内を通り抜ける特例措置を廃止しても東口方面へ楽に行けるよね」ということで、7月18日を以てこの特例措置が廃止されてしまいました。


上の図は小田急のプレスリリースを抜粋したものです。図で左側に示されている赤い上下の矢印が、中央東口への通り抜けの動線です。廃止されたことを意味するバッテンがつけられていますね。通り抜けが廃止されるけれども、自由通路が開通するからそちらを通ってね、ということを示しているのが黄色い矢印。今後はこの黄色い矢印の動線に従って行き来することになります。なおこの図は小田急のものですが、京王も同様です。これにより、中央東口はJR専用になり、上述で紹介した案内表示の数々や券売機も使用中止・廃止されてしまいました。

新宿で東口方面に用事がある方は、旧東口から近い伊勢丹方面か歌舞伎町方面が多いので、小田急・京王ユーザーの多くも東西自由通路の開通により利便性が高まったのみならず、特例の廃止により各社の改札業務から「通り抜け」に伴う煩雑さも解消されたわけです。つまり多くの方にとっては歓迎すべき改善策なのですが、しかしながら、中央東口を利用した方が便利な場所も少なからずあるわけで、例えばルミネエストや武蔵野館などは中央東口の方がはるかに便利です。このほかビックロや丸井など、普通は東口から向かうような施設も、実は中央東口から向かった方が若干短い距離で到達できちゃいます。とはいえ、伊勢丹方面や歌舞伎町方面に比べてこれらに向かう人数は圧倒的に少ないでしょうし、そもそも小田急ユーザーならば南口から回っちゃえば良いので、大騒ぎするほどの影響はないのかもしれません。いや、西口の端っこの不便な場所に位置していて小田急やJRのコンコースに行手を遮られている京王線新宿駅ユーザーの中には、今回の特例廃止によって余計に不便になってしまう方もいらっしゃるでしょう。

でも諦めて嘆くのはまだ早い。新宿駅の改良は今回の東西自由通路の開通にとどまらないようです。現在のルミネエスト(東口側)と小田急百貨店(西口側)に高さ260mのツインタワーが建設され、JR駅構内の上を跨ぐ東西通路も設けられる計画もあるようですから、中央東口の通り抜け廃止によって不便になった方も、しばらく我慢すれば事態が好転するかもしれません。首を長くして待ちましょう。でも首を長くしすぎてろくろ首になり、「恨めしやぁ」なんて化けて出ちゃうかも・・・。



●小田急の中央地下連絡窓口(中央西口の出札窓口)も廃止に


さて今回廃止されたのは中央東口への通り抜けだけではありません。小田急中央西口地下連絡改札で続けられてきた精算や連絡切符の販売も廃止されてしまいました。
新宿に限らず、日本全国のJR(古くは国鉄)と民鉄各社の間に設けられた連絡改札では、乗り換え客のために出札窓口で切符が販売されてきました。自動券売機が主流になってからも、精算の必要性があったため、長らく出札窓口で駅員による対面発券が行われてきましたが、IC乗車券の普及により切符の必要性が激減したため、全国的に連絡改札を残しつつ出札窓口を廃止する傾向が強まっています。この新宿中央西口に関しても、京王は既に連絡切符用の出札窓口を廃止しているため、乗り換え先の会社の切符を所有していない場合は、一旦改札を出て、その会社の切符を購入することになります。もっとも先述のようにいまはIC乗車券の利用がほとんどですので、わざわざ切符を買い直す乗客は極めて少数派です(回数券利用者など)。
一方小田急は一見さんの観光客利用が多い路線であるためか、いままで出札窓口を残してきましたが、外国人旅行者ですらICを利用する時代になってきたため、中央東口の通り抜け廃止のタイミングに合わせて出札窓口も廃止することにしたようです。


廃止されてしまうということは、もう二度とここで切符が買えなくなるわけです。そこで窓口が廃止される当日に惜別購入させていただきました。
2つ並んでいるきっぷのうち、右はJRから小田急へ乗り換える手前の出札窓口で購入した、新宿から新百合ヶ丘までの乗車券です。私が子供の頃は5つほどの窓口が開いており、それぞれに長蛇の列ができていました。列に並んで自分の番がくると、出札窓口の駅員さんに新宿までの切符を差し出し、乗り継いで行きたい目的地の駅名を告げると、窓口の職員は秒速で精算金額を計算して切符を発券し、縦に積んである硬貨を指先でトントンと落として、真ん中がちょっと凹んでいる大理石の受け皿の上に、切符とお釣りを一緒にを差し出してくれました。窓口が廃止される当日は窓口が1つしか空いていなかったのですが、それでも利用する客は非常に少なく、全く待つことなく購入することができました。こんなに少なけりゃ廃止したってほとんど影響ないよね・・・。そう思わざるを得ませんでした。

一方、左の切符は小田急構内の窓口で購入した、新宿からJR経由西武新宿線新井薬師前までの切符です。この切符はちょっと変わり種。一般的にここで買える連絡切符はJRだけなのですが、例外的に初乗り区間の乗り継ぎ割引を実施している高田馬場接続西武新宿線の初乗り運賃区間までは、小田急の出札窓口で購入できたのでした。小田急の窓口で発券しているのに、小田急の駅はちっとも通らず、JRどころか西武線の駅に向けているのですから、実に不思議な券です。おそらく小田急で西武線の乗車券を発券しているのはこの窓口だけだったかと思います(定期券や企画券などは除く)。
といっても、実際に私が窓口で「西武線の新井薬師前まで」と告げたところ、窓口の職員さんはちょっと間を置いて「そういえばそんな駅も発券できたっけな」という感じでしたので、ここで西武線の乗車券を購入する客はほとんどいなかったかと思われます。このような変わり種の切符も7月18日を以て過去帳入りしてしまいました。


今回廃止された小田急の出札窓口ではこのようなメッセージが希望者に向けて配布されていました。
私もIC乗車券が普及するまではこの出札窓口に数えきれないほどお世話になりましたので、私からもお礼を申し上げたいと思います。


新宿駅のヘビーユーザーである私にとってはこの一連の措置は歴史的な出来事だったため、非温泉ネタですが記事にさせていただきました。
次回記事から温泉ネタに戻ります。
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ワタシ的2019年の温泉5傑

2019年12月27日 | その他
金融機関などを除けば、多くの企業では今日で仕事納めかと思いますが、拙ブログも今日で本年の記事を締めくくり、新年に向けた準備に取り掛かります。

数年前から公私ともに生活環境が変わり、これまでのように自由に旅に出ることができなくなってしまいました。これに伴い拙ブログの更新頻度も落ち、ここ2年程は1週間に1回のペースとなっております。
2019年の私の入浴記録を振り返ると、再訪を含めれば80湯に留まってしまいました(ただし自宅近所の温泉スーパー銭湯は除く)。1年間で3桁に届かないようでは、もはやマニアと呼べないでしょう。完全に失速状態です。スタジオジブリ制作のアニメ映画「紅の豚」に「飛ばねぇ豚はただの豚だ」という有名なセリフが登場しますが、今の私は「温泉に入らねぇ温泉バカはただのバカ」と自嘲したくなるような情けない体たらくです。
でもそんな状況の中で出会えた温泉たちは、いずれも珠玉の湯ばかり。私の温泉巡りはこの歳に至ってようやく、数より質を重視する方向へ転換した、とも言えます。旅の中で巡り会えた素晴らしい温泉たちに対して、一方的且つ主観的に序列をつけるのは本意ではないのですが、おバカさんなりに敢えてその中からベスト5を選出してみました。
意図したわけではないのですが、5ヶ所中4ヶ所はまだブログに登場しておりません。幼い頃から食事で自分の好みのものを最後までとっておく癖がある私。最後に好物を食べようとして他人に横取りされてしまう苦い経験を何度も繰り返しているのに、その教訓を生かそうとせず、いまだに後へ後へと残す悪癖が直りません。新年こそはそんな習慣を断ち切り、なるべく鮮度の良い情報提供を心がけるべく、年が明けましたらこれらのベスト5達をメインに紹介してまいります。

なお今回取り上げる5湯は順不同です。

●台湾・春陽温泉 楽密谷
本年6月18日付の記事で紹介済。その時の記事はこちら


いつも台湾を旅行する時にお世話になる方から教えていただいた、知る人ぞ知る温泉施設です。台湾中部南投県の春陽温泉にあり、細い路地のどん詰まりに位置しています。春陽温泉で営業する施設の中で最も奥にあるため、教えてもらわなければ決して行くことが無かったかと思われます。


お湯は加水加温循環消毒の一切ない完全掛け流し。絶え間なく投入されるお湯は、湯船で41.5℃という素晴らしい湯加減。しかも大量の湯の花が舞っています。
渓流を眺めながら、小鳥のさえずりに癒されつつ、掛け流しの適温露天風呂に浸かる幸せ。桃源郷にいるかのような夢心地でした。


●韓国・東莱温泉 マンス湯
2020年に紹介する予定です。


釜山市の奥座敷であり長い歴史を有する韓国屈指の温泉地、東莱温泉(トンネオンチョン)。当地には「虚心庁」という巨大な温泉入浴施設をはじめ、複数の入浴施設が営業していますが、いずれも規模が比較的大きく、大浴場という名称がぴったりな施設ばかりです。そんな中、細い路地に面しているこの「マンス湯(만수탕)」は日本の鄙びた温泉共同浴場を彷彿とさせる渋い佇まいで、何とも言えない趣きに心をギュッと掴まれてしまいました。



浴室もこじんまりとしており、温泉の浴槽と小さな水風呂がひとつずつ、そして洗い場のみという至ってシンプルな構造。でもその浴槽には源泉から引かれた温泉が絶え間なく供給され、循環などの小細工が一切ない掛け流しの湯使いが実践されていました。
このお風呂を切り盛りするおばちゃんもまた実に愛想が良く、すっかり気に入ってしまいました。


●新潟県 称名滝の湯
2020年に紹介する予定です。


ここ数年ネットに上がってくる情報を見る限り、以前は常時お湯が張られていた通称「称名滝の湯」も、最近はお湯が抜かれることが多く、当地を訪れたモノ好きマニアたちは、わざわざ滝壺まで行って、ぬるい白濁湯にお尻を浸して悦に入っていたようです。
しかしながら、今年9月中旬に私が火打山と妙高山を縦走登山した際、妙高山頂から燕温泉方面へ向かって下山している途中にこちらへ立ち寄ったところ、その日は運よく浴槽にお湯が張られていましたので、ありがたく入浴させていただきました。コンクリ製の浴槽脇にある源泉からホースで直接お湯を注いでおり、青白く濁るお湯は42~3℃というちょうど良い湯加減でした。
この上なくワイルドで素晴らしいロケーションもさることながら、この時は妙高山の山頂から急で険しい登山道を一気に下り全身が疲れ切っていましたので、そんな体を優しく癒してくれる硫黄白濁湯の有難さが骨身に沁みたのでした。


●都幾川温泉「旅館とき川」
2020年に紹介する予定です。


経済的に余裕がある温泉ファンから熱い支持を受けている埼玉県ときがわ町の鉱泉宿。
宿といっても宿泊客は受け付けておらず、日に4組限定でお食事付の日帰り入浴のみを受け付けています。お財布の余裕は無いけど人一倍見栄っ張りな私は、予約が取れた夏の某日に訪れてみました。



都幾川温泉の最大の特徴は、日本で最もアルカリ性が強い鉱泉であるということ。pH値はなんと11.3です。湧出量は毎分2.4リットルと決して多くないのですが、そんな貴重な鉱泉を加温した上でかけ流しているんだから、贅沢この上ありません。
お風呂上がりに個室でいただくお料理も絶品。詳しくは後日改めて記事に致します。


●某所野湯
2020年に紹介・・・しようかな、どうしようかな。


とある山の中をウロウロ彷徨っている時、たまたま見つけた野湯です。でも秋に日本各地を襲った台風の影響で、濁流と共に流されちゃったかもしれません。
崖の上で自噴する白濁硫黄泉のお湯を、石や土嚢を積み上げた原始的な浴槽で受け止めており、お湯は白濁しているものの湧きたてなので透明度が比較的高く、しかも湯加減がこの上なく良好。時間を忘れていつまでも浸かっていたくなる、極上の野湯でした。
(これまた偶然にもこのお風呂を手作りした方とお会いしたのですが、その方から場所などについての情報を公にしないでほしいと念を押されておりますので、申し訳ございませんが、委細をお伝えすることは自粛させていただきます)。


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来年も入浴のペースは変わらず、50~100の間で落ち着くものと思われます。
引き続き量より質を目指し、記録よりも記憶に残る湯巡りを心掛けてまいります。
今年も大変お世話になりました。
皆様、よいお年をお迎えください。

K-I

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2018年 今年もありがとうございました

2018年12月29日 | その他
狂ったような猛暑に続いて天災が相次ぎ、挙句の果てには年末に株価の乱高下に見舞われるという、波乱万丈な2018年を、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。「一年が経つのはあっという間ですね」なんて使い古された陳腐な歳の瀬のご挨拶をするまでもなく、あと数日で今年もおしまい。「平成最後の~」というコピーもあちらこちらで見かけますが、来年5月以降、私のような昭和の人間は3つの元号を生きることになり、自分が幼い頃に抱いていた「元号をいくつも跨ぐ明治生まれの人ってどんな感覚なんだろう」という疑問を、自らが体験して解決することになろうとは、夢想だにしていませんでした。



平家平温泉 こまゆみの里 (10月11日付記事)


前置きが長くなりましたが、今年も拙ブログにお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
公私諸々の事情によって昨年から更新ペースが急に落ち、今年春頃からは1週間に1~2度にまで衰えてしまいましたが、それでも何とか更新を続けて今日に至っております。これもひとえに皆様もご支援の賜物であると感謝しております。



入湯2500湯記念 桜田温泉山芳園の露天風呂(9月20日付記事)


今年の我が温泉活動を回顧しますと、新規開拓できた温泉は33湯でした。この数値はここ数年で最も少なく、再訪した温泉を含めても40~50程度ですから、年に200~300近い温泉を巡っていた4~5年前と比べると、4分の1から5分の1にまでペースダウンしたことになります。もはやマニアとは称せないような状態です。しかもこれまで毎年必ず海外に出かけていた私が、今年はパスポートを使うことなく、ひたすら日本という小さな島国の中で暮らしておりました。これも私にとっては異例です。



【伊豆大川 伊豆AZUMA(来年掲載予定)】


毎年末に拙ブログでは、その年にワタシが巡った温泉の十傑を発表させていただいておりましたが、訪問箇所が50湯にも満たない状態で、その中から10を選ぶのは不本意であるため、今年の十傑発表は見送らせていただきます。

おそらく新年も今年同様、羽根を折られた鳥の如く、あまり羽ばたくことはできないでしょう。でも、まだまだ入ってみたい魅力的な温泉がたくさんありますので、できる限り時間を作り、このブログでご紹介できたらと思っております。
来年も引き続き変わらぬ御贔屓を賜りますようお願い申し上げます。
年末の寒波に体調を崩されませんようご自愛ください。

K-I

コメント (9)
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