温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

イタリア シルミオーネ温泉 Aquaria

2009年11月02日 | イタリア


イタリア北部の小さな町シルミオーネは、イタリア最大の湖であるガルダ湖の南側に突き出た細長い半島がまるごと町になっている、風光明媚な湖水地方きっての観光地です。この町には古くから人々に愛されてきたことが窺い知れる遺跡が点在しており、たとえば、岬の先端にはオリーブ畑が広がる見晴らしの良い台地が盛り上がっていて、その緑に囲まれるようにGrotta di Catulloと呼ばれるローマ帝政初期の別荘遺跡が残っています。また、半島がボトルのネックのように中央で窄まっているところには、13世紀にスカラ家によって建築された城塞が聳え、二重構造の城壁の外側から眺望する湖の美しさは格別です。こんなシルミオーネにも硫黄の温泉が湧出しているという情報を得て、実際に行ってみました。

朝9:35にミラノ中央駅を出るユーロスターシティに乗り、約1時間でデゼンツァーノ駅下車。駅前から真っ直ぐ緩やかに下る坂道を約1.5km(15分程)歩くと、ガルダ湖畔の街デゼンツァーノ・デル・ガルダに到達します。湖岸の船着場へ行ってみると、5分後の11:00にシルミオーネへ向かう船が出航するとのこと。まさに渡りに船、運よく乗り込むことができ、順風満帆、船は爽快に湖上を滑って、約20分でシルミオーネ着。桟橋は上述のスカラ家城塞近くに位置しており、半島で最も幅が狭く建物が密集しているところで、なおかつ夏の観光シーズンだけあって、周辺は立錐の余地がないほどの大混雑。人波を掻き分けながら半島のメインストリートを北上すると、程なくして左手に今回目指すスパリゾート"Aquaria"に辿りつきます。城塞を思わす煉瓦の門柱に黄色く塗られた門壁は、青い空や周囲の緑と爽快なコントラストを作り出し、イタリアらしい明るいイメージをもたらしてくれます。

まるでホテルを思わせる広いフロント。ここでまず入場手続きを行います。この際なぜか自分の名前を聞かれ、端末に入力されます。場内で何らかのサービスを受ける時に名前を必要とするのかもしれません。入退場とロッカーを管理するリストバンドを貰い、更に別の受付で水泳帽(プールに入る際には着用を要します)とバスタオルの貸与を受けます。次に更衣スペース(男女別)となりますが、ここのロッカーが実に厄介。
一般的なロッカーは縦長の収納がズラっと並んでいるものですが、ここは立体駐車場を横に倒したような回転式ロッカーで、荷物や衣類を収納したり引き出したりするには、自分のロッカーをリストバンドで呼び出さなくてはならないのです。まず脱衣用個室の手前に掛かっている黒い布製の衣装入れを手にし、脱衣用個室に入って水着に着替えた後、この衣装入れに自分の衣服を収め、リストバンドで個室を出てすぐのところにある回転式ロッカーを呼び出し、そこに収納するという手順です。しかしながらロッカーとはいえ、棚ではなく、ハンガーをかける棒しかないのが実情で、カバンをどうやって預けるのかがわからず、仕方がないので私は衣服のみそのロッカーに掛け、貴重品は携行することにして、その他の荷物を脱衣個室の上に置いていくことにしました。このロッカーは限られたスペースを有効活用する策なのでしょうが、とても使い勝手が悪くて好きになれません。

更衣スペースから伸びる長い通路を出ると屋内プールです。手前には弧の形をした歩行湯、窓際手前に円形の浴槽、そして窓側奥に四角い浴槽があって、この四角の浴槽が温泉槽となっています。先ほどロッカーでは難渋しましたが、その苦労を癒してくれるかのように温泉のお湯は温泉好きの私の心を満足させるもので、はっきりとたまごのような硫黄の匂いが漂い、薄く青白く濁っており、白い湯の華も舞っています。つるつるすべすべ感も明確に感じられ、ぬるめのお湯でいつまでも長湯していたくなる良質なお湯です。

 
左:ガルダ湖を眺望する円形の屋内浴槽
右:白濁した温泉が張られた浴槽


ここにはいくつもの浴槽やプールがあり、屋外プールを中心としてジャグジー・バイブラ・打たせ湯なども備わっていますが、温泉槽はこのひとつのみのようです。しかしながらガルダ湖のまさに湖岸に立地しており、特に屋外プールに入っていると、目線がちょうど湖水面の高さに一致するので、まるで湖水浴をしているかのような感覚が得られ、実に素晴らしいロケーションです。
また、後述するように、この施設は温浴療養を目的としているので、各浴槽・プールともにただ水やお湯に浸かったり泳ぎだりするのではなく、温浴効果を高めたり、あるいはマッサージ効果をもたらしたりするような設備が多いのが特徴です。

 
ガルダ湖畔の爽快な場所にある屋外プール


湖岸のウッドデッキにはデキチェアーがズラリと並び、みなさん日光浴を楽しんでいらっしゃいます。シルミオーネには湖水浴ができる砂浜があるので、夏ならば一般的には砂浜へ行く傾向があり、わざわざ比較的高い入場料を払ってここを訪れる人はあまり多くないようですが、そんな事情があるからか、お客さんはどちらかといえば有産階級と思わしき余裕のある方が多いように見受けられました。高級ホテルのプールのような雰囲気に近いものが漂っています。また、ヨーロッパの他の温泉のように、療養目的でここを利用する人が多く、それゆえに年配の利用客の姿が目立っていました。実際にここではいろいろな医療・療養設備が整っていて、健康診断をはじめ、耳鼻咽喉科・皮膚科・婦人科・整形外科などの診察科目が用意されているそうです。



ミラノ中央駅またはヴェネチアからユーロスターシティで約1時間、デゼンツァーノ下車。
徒歩15~20分のデゼンツァーノ・デル・ガルダ観光船発着場から水中翼船で約20分。
シルミオーネの桟橋から徒歩5分


シルミオーネを経由してガルダ湖畔の各港を結ぶ観光船
(一部シルミオーネには経由しない便もあります)

所在地:P.zza Don A. Piatti, 1
電話:030-916044
ホームページ

10:00~22:00(月曜は14:00~。木曜は24:00まで)
29ユーロ~48ユーロ
曜日や時間によって異なるので詳しくはこちらをご覧下さい(英語)。


私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする