温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯野上温泉 民宿紫泉

2012年08月31日 | 福島県
  
福島県会津・湯野上温泉の「民宿紫泉」で日帰り入浴してきました。古民家調の宿が多い当地にあっては比較的近代的な印象を受ける建物です。敷地隅の道路に面したところには8号源泉があります。
玄関のガラス戸越しに、大きく「かけ流しの湯」と書かれた木の札が提げられており、この文字に惹かれて訪うことにしました。



民宿とは思えない立派なロビー。バーカウンターのような箇所もありました。声をかけて日帰り入浴をお願いすると、まるで『Oggi』あたりの読者モデルかと見まがうほど美人で笑顔が可愛い女性スタッフが快く対応してくださいました。それだけでテンションが上がりっぱなしの私。男って単純よね…。


 
館内には「紫泉文庫」と称する宿泊客向けの貸本コーナーがあり、宿の方がチョイスした本を月替わりで紹介しているんだそうです。ぱっと見たところ、国内や西洋の純文学から写真集や画集まで、様々なジャンルの書籍が用意されていました。


 
太鼓橋のような飾りが施されている廊下を歩き、浴室がある奥の方へと進んでゆきます。文庫といい装飾といい、小洒落て落ち着きのある館内の雰囲気からは、高い文化の薫りが伝わってきます。



脱衣所は中小規模の旅館で一般的な造りで、とても綺麗で整然としています。


 
脱衣所の洗面台の下には60℃を示す温度計があり、その配管は浴室の方へと伸びていました。給湯器でこんなに熱いお湯をつくる必要はないので、おそらくこの配管には熱い源泉が流れているのでしょう。後述しますが、ちょうどこの裏に浴室の洗い場が設けられているため、もしかしたらカランのお湯は源泉を使っているのかもしれません。


 
柔らかな暖色系のタイルでまとめられた浴室は、窓からの採光が抜群でとても明るく、手入れも行き届いているため気持ち良く利用できました。室内には浴槽がひとつ、洗い場にはシャワー付き混合栓が3基据え付けられています。上述のようにカランのお湯は源泉使用かと思われます。


 
内湯の浴槽は3~4人サイズ。湯口からは熱い源泉が、投入量を絞ったうえで投入されています。熱い源泉を非加水で浴槽に供給するために、湯量を絞っているのかと思われ、そのおかげで丁度良い湯加減となっていました。また、湯船に張られたお湯は槽の隅の切り欠けから排出されており、その流路はオレンジ色に薄く着色されています。硫酸塩の影響か、浴槽内のタイルの目地は虹色に輝き、湯面は青白く光っていました。お湯の見た目は無色澄明で、湯口脇に置かれているお玉で飲んでみるとふんわりと芒硝の味と匂いが感じられます。サラサラスベスベで当たりの柔らかい優しい浴感のお湯です。玄関に誇らしげに掲示されていた「かけ流しの湯」に偽りはありません。


 
窓の外には青々とした水田が広がっており、山と水田の間に民家がポツンポツンと建っています。実に長閑な景色です。田んぼのカエルもお風呂に入りたかったのか、一匹が浴室の中にまぎれ混んでいました。


 
露天風呂へはサッシを開けて屋外に出て10m強のアプローチを歩いてゆきます。途中、ホタルブクロの花が咲いていました。



こちらが露天風呂です。大きなひとつの円形の石風呂を、太い石の樋みたいなものや木材の仕切り塀によって男女に分けており、仕切りと湯面の隙間からは向こう側のお風呂がチラっと見えたり見えなかったり…。


 
露天風呂の目の前には田圃が広がり、田圃越しに湯野上の集落が軒を並べています。ということは、集落から男湯の露天が丸見えなんですね。ま、男の裸なんて見せても誰も喜ぶもんじゃないから特に気になるわけではありませんし、むしろ開放的でのびのびでき、田園風景にすっかり心が洗われました。なお、女湯側はちゃんと仕切りがあるので外からの視線に関しては問題ありません。田圃と反対側の女湯の上には貯湯タンクが聳え立っています。


 
露天の湯口は槽の中央にあり、岩の内部から真上に向かって噴き上げるような感じで源泉が出ています。折悪くこの日は入浴直前まで強い雨が降っていたため、露天のお湯はぬるくなっていましたが、そのおかげで長湯することができ、カエルの歌声を耳にしながら、のんびりとお湯に浸からせていただきました。

お風呂は綺麗でお湯も佳し、文化の薫りが麗しい綺麗で素敵なお宿でした。女性のお客さんにはおすすめですね。


湯野上温泉舘本混合槽(1・2・3・5・6・7・8号源泉混合)
51.9℃ pH8.2 267L/min(動力揚湯) 溶存物質408.8mg/kg 成分総計408.8mg/kg
Na+:96.5mg(84.09mval%), Ca++:14.3mg(14.33mval%),
Cl-:70.1mg(40.31mval%), SO4--:97.2mg(41.23mval%), HCO3-:51.4mg(17.16mval%),
H2SiO3:63.1mg,

会津鉄道。湯野上温泉駅より徒歩15分
福島県南会津郡下郷町湯野上居平乙832  地図
0241-68-2508
ホームページ

日帰り入浴時間確認忘れ(おそらく10:30~16:00)
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品帳場預かり

私の好み:★★★


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川原毛大湯滝 2012年8月

2012年08月30日 | 秋田県
 
8月下旬の某日、秋田県湯沢市の川原毛大湯滝へ行ってきました。拙ブログでは3年前にも当所を取り上げておりまして、私自身もこちらには何度か訪れておりますが、ここのようなワイルドかつダイナミックな温泉は他ではなかなか体験できるものではありませんから、夏になって秋田県へ行く機会があると、その度に川原毛のことを思い出してしまいます。今回は仙台での所用を済ませた後、無性に大湯滝に打たれたくなり、翌日がオフだったことを幸いに、急遽横手方面へ転進して一泊し、翌朝期待に胸ふくらませながら川原湯へと向かったのでした。
川原毛地獄を見上げる駐車場に車を止め、トイレを済ませてから、大湯滝へ向かって歩き始めます。駐車場ではご当地秋田の他、宮城、春日部、練馬、そして私の川崎と、東北のみならず関東のナンバープレートも見られました。大湯滝の知名度の高さがこんなところからも窺い知れます。


 
大湯滝の上流にあたる川を渡って先へと進みます。私の足取りも軽やかでした。


 
森の緑が麗しいトレイルをてくてく歩いてゆくと…



さぁ、大湯滝が見えてまいりました。



前回訪問時と同様、川の対岸には脱衣小屋があって、そこで水着に着替えるわけですが、いつの間にやら小屋には男女別の暖簾が掛かっていました。以前はただ2つの部屋に分かれているだけで、入口から両方が丸見えでしたから、この配慮は嬉しいですね。「湯沢市まるごと売る課」のみなさん、ありがとうございます。


 
この日も酸性のお湯が勢いよく落ちていました。豪快ですね。


 
でも、ちょっと湯量は少なめかもしれません。
硫黄のお湯に触れて白く染まった岩肌には深緑色の温泉藻が生え、美しいコントラストを創りだしています。



瀑布の中腹から滝壺方向を見下ろしてみました。この日はなぜかオッサンの姿が多く見られました。


 
かく言う私もオッサンのひとり。滝に打たれて思う存分大湯滝を楽しんじゃいました。湯量が少ないので温度は高めなのかと思いきや、滝壺直下でも大して熱くなく、寧ろ丁度良い湯加減でした。極楽極楽!

お湯は強めの酸性で、口に入ると途端に口腔内が収斂するレモン汁のような酸っぱい味を帯びており、この酸性のために肌に傷口などがあると入浴時はかなり沁みます。また飛沫が目に入るとかなり痛いので、大湯滝を楽しむときにはその点にくれぐれもご注意を。ま、この程度の留意点と、少々のアブに気をつけていれば、圧巻の景色の中で自然の恵みを思う存分楽しめるのですから、本当に素晴らしいところですよね。 ビバ!東北の大自然!

そうそう、この日とその前日の夜、車の運転中でしたが、思いっきりクマさんと遭遇してしまいました。遭遇現場は、この日は秋田・宮城県境の栗駒山付近、前日夜は秋田県横手市山内(さんない)の山道で、いずれも私が車を運転しているときに、目の前を大人のクマが道路をソソクサと横切っていきました。車の中という安全な状況ですし、クマもかなりビビっていたようでしたが、2日連続で遭遇するとは思いもよりませんでした。これは単なる偶然なのでしょうか、もしくはクマが人間界に近づこうとしているのでしょうか。
今年(2012年)の東北各県におけるブナの結実予測は、秋田が並作であるものの、青森は凶作、岩手・山形・宮城に至っては皆無という惨憺たる状況となる模様で、となれば当然ながらクマの被害も増えてしまうわけです。今秋の登山はクマに要注意のようです(私も気をつけなければ…)
 ※参考:東北森林管理局 ブナ開花・結実調査


酸性-含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)-塩化物泉
94.5℃ pH1.41 蒸発残留物2600mg/kg
H+:39.1mg(51.83mval%), Ca++:166.8mg(11.10mval%), Mg++:142.9mg(15.69mval%), Fe++:63.9mg(13.06mval%),
Cl-:2108.0mg(78.80mval%), SO4--:453.5mg(12.51mval%),
遊離CO2:2428.0mg,

秋田県湯沢市高松字高松沢国有林内
湯沢市物産観光情報(川原湯地獄のページ)

道路閉鎖期間(通常):11月上旬~5月上旬
従ってそれ以外の期間ならば訪問できますが、入浴するなら7月下旬~9月上旬がよいと言われています。

無料 水着着用
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花野温泉 たぬき湯

2012年08月29日 | 鹿児島県
 
鹿児島市内の千年団地から花野方面へ向かう途中に架かる千年橋近くの大規模な温泉スーパー銭湯「たぬき湯」を利用してきました。当初は前回取り上げた「大黒温泉」を出た後に中央駅方面へ戻るつもりでしたが、花野口バス停でバスを待っている時、目の前に「たぬき湯」の看板を発見し、携帯で調べてみたらどうやらこのバス停から徒歩10分程度で辿りつけそうだったので、どんなところか行ってみることにしたのです。
建物の前の駐車場には、平日のお昼時だというのにたくさんの車が停められており、早い時間から既に多くのお客さんで賑わっていることが窺えます。玄関前には八百屋やお花屋さんなどの露店が並んでいました。


 
玄関に入ると、両側には「願かけ龍」と称する龍の絵や不動明王の仏像など、宗教めいたものが祀られています。この施設って何かの宗教関係なんですか?



下足場から上がってすぐの正面にある券売機で料金を支払います。3台も設置されているので、てっきり食堂の食券販売も兼ねているのかと思いきや、3台とも入浴関係だけなんですね(子供料金や各種割引、入浴道具の販売などもこのベンダーで扱うためにたくさんのボタンを使うようです)。


 
スーパー銭湯らしく、ちゃんと食堂が完備されています。またフロント前にはいろんな食品類や入浴道具関係が売られていました。このフロントの左側が女湯、右側が男湯の入口です。


 
鰻の寝床のように奥へ長い板の間の脱衣所。この日はとても暑かったため、床置形のエアコンも柱に取り付けられた扇風機もフル稼働でした。室内には大きなカゴがたくさん積まれている他、ロッカーも多く用意されていますが、いずれも有料(100円)であり、また故障中も箇所が多かったのがちょっと残念なところ。ドライヤーは洗面台に2台ありますが、こちらもやはり有料(20円)です。



浴室はとっても広くて開放的です。大きな浴室の手前側、右側、そして奥という三方に洗い場のカランがズラリとならんでおり、浴室入口すぐのところには掛け湯枡が設置され、中央から左側の窓付近にかけて、プールのような主浴槽が据えられています。主浴槽の一部ではジェットバスや電気風呂などの装置が運転されています。更には主浴槽の奥には水風呂が付随していました。また、主浴槽と浴室左側の窓の間は寝転びゾーンとなっており、枕の代わりにウレタン板やビート板を持参したお客さんがトドと化していました。


 
洗い場には押しバネ式のカランと固定式シャワーの組み合わせが計27組設置されています。館内表示によればカランもシャワーも源泉100%なんだそうでして、洗い場の各ブースにも朱色の地に白字で源泉と書かれたプレートが自慢げに掲示されていました。



主浴槽には石のタヌキが置かれたモニュメントのような湯口が設けられており、量がやや少ない旧源泉と、大量に供給されている新源泉の二つのお湯が浴槽へ向かって注がれていました。両方のお湯の知覚を比べてみましたが、違いはあまりわからず、双方とも無色澄明で微かに重層的なほろ苦さこそ有するもののほぼ無味無臭でした。更にはもうひとつ塩ビのパイプからかなり熱いお湯も出ていましたが、これが新旧どちらの源泉なのかは不明です。館内表示によれば掛け流しの湯使いを実施しているらしく、私の実感でもその表示に偽りはないようでした。



露天ゾーンに出ると、まず目に入ってくるのが室内の打たせ湯です。勢いの違いで強弱が1本ずつあるそうですが、元々この打たせ湯室にはサウナがあったようです。


 
こちらは水風呂とお湯の露天浴槽。打たせ湯側(この画像ですと奥側)が水風呂で、その隣(同じく手前側)が温泉槽です。また、これとは別に一段高くなったところにも水風呂が設けられており、あまりに立派な造りなので、てっきりこれが露天の主浴槽なのかと勘違いしてしまいました。この立派な水風呂槽の冷水供給口には氷のような透明なオブジェが置かれており、ビジュアル面でも冷たさを演出していました。なおこの水風呂に隣接して、こちらの施設ご自慢の洞窟サウナがあります。


 
室内・露天を問わず、この施設で目につくのが温泉や水に関する説明文の数々です。
まず温泉の泉質についてですが、上画像のように大きく「明礬系の弱アルカリ泉」と表示しています。また浴室内やホームページなどではお湯の色を「エメラルドグリーンのきれいな色」と表現しています。でも泉質は明らかに単純泉でして、分析表を見ても明礬に該当するような物質はあまり見当たりませんし、色に関してもエメラルドグリーンなのはタイルの色に影響されているからであり、お湯自体は思いっきり無色透明です。

また別の説明プレートではこんな文言が…
「この地は大変波動(気)のよい場所(中略)思って願って行動にうつして下さい(中略)脳がその様な働きを始めます(中略)すべてなるんだの信念で強く念じて行動して下さい。すべてがきっと良い結果をもたらずはずです。化学(ママ)的にもこの事は証明されております」
信じて行動すれば必ず実現することは、科学的にも証明されているですって? マジですか? 玄関の両側の置物と言い、この文言と言い、この温泉施設からは私が苦手なスピリチュアル系の臭いがプンプンします。


 
ついでですから、もうちょっと突っ込んでいきましょう。温泉水と地下水の違いについては、温泉療法士の肩書や名前とともに、このように説明されています…
「採れる深さにあります。地下水は深さ20~30m、温泉水は深さ約1,000mから採ります(以下略)」
ええっ! 温泉水と地下水の違いって、単に深さの問題だったんですか…。いやはや知りませんでした(棒読み)。ま、たしかにこの温泉ではそのような相違点があるのでしょうけど、ちょっと書き方が曖昧ですね。

また水風呂で使われている水に関しては…
「たぬき湯の水は古代の岩しらす、樹木の堆積によって自然のろ過が充分にできた素晴らしいミネラルウォーターです。公的検査でも何一つ不純物がない水、まさに神からの恵みです」
と、ここでも水を擬人化させるとともに神仏を崇めるかのような表現が登場しているのですが、それはともかく、ここの水風呂は本当に気持ち良いのです! お風呂と同様、水風呂の水も、水道と天然水や地下水では、入ったときの感覚が全然違うわけですが、こちらの地下水は冗談抜きにして本当に質が良いため、爽快感が半端じゃありません。この日はとても暑かったので、温泉槽よりも水風呂に入っていた時間の方が長かったような気がします。正直なところ、温泉はあまり特徴のなく捉えどころのない浴感ですし、浴室もいろんな設備こそあるものの温泉らしい風情はあまり感じられせんが、水風呂はピカイチでして、これに入るだけでも十分に訪問価値があるかと思います。


 
この温泉はアクセス面にも恵まれており、「千年橋」バス停から徒歩1~2分という好立地です。しかもここを通るバスの本数もそれなりにあり、天文館や中央駅から乗り換えなしでアクセスできちゃいます。


甲突川左岸84号及び甲突川102号の混合泉
単純温泉 51.5℃ pH8.2 溶存物質0.805mg/kg 成分総計0.805mg/kg
Na+:216.3mg(95.92mval%),
Cl-:36.5mg(11.00mval%), HCO3-:471.3mg(82.48mval%),
H2SiO3:46.3mg,

天文館や鹿児島中央駅などから、いわさきバス「千年橋」バス停下車、徒歩1~2分
鹿児島県鹿児島市伊敷町4467  地図
099-229-2607
ホームページ

6:00~24:00(受付23:00まで)
360円
ロッカー有料(100円)、ドライヤー有料(20円)、シャンプー類の備付なし(販売あり)

私の好み:★★
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伊敷温泉 大黒温泉

2012年08月28日 | 鹿児島県

鹿児島中央駅から路線バスに乗って「花野口(けのくち)」バス停で下車します。このバス停はJRバスですと「花野口」と表記しますが、市営バス・鹿児島交通・いわさきバスでは「花の口」とちょっと表記が異なっており、両者は同じ場所にあるにもかかわらず、九州各県の路線バス時刻検索サイト「九州のバス時刻表」では別々の場所として扱われていますから、時刻を調べるときにはちょっと注意が必要です。


 
そのバス停の目に前にあるのが、今回の目的地である温泉銭湯「大黒温泉」です。国道沿いという好立地でして、道路からよく見える屋根の一角には「純天然100% 源泉掛け流し温泉」と書かれた看板が通行者に向かってアピールしていますが、建物自体はちょっと草臥れており、外来者が気軽に入浴できるような雰囲気とはちょっと離れているかもしれません。なお看板には「うどんそば各種定食」とも記されているように、館内ではお食事もできるみたいです。



典型的な昭和の銭湯風情が強く漂っており、男女別の三和土の入口を入り、暖簾を潜ったらすぐに番台です。私の訪問時には番台に誰もいなかったので、カウンターの上にお釣りが無いように小銭を置いて、中に入らせていただきました。


 
いかにも銭湯らしい脱衣室です。床には茣蓙が敷かれており、足元は快適。室内の隅っこにはバスの時刻表が掲示されており、私のような外来者にとっては便利です。


 
画像左(上):脱衣室の棚の上には常連さんのお風呂道具がズラリと置かれていました。地元の方の生活に密着したお風呂であることが窺えます。
画像右(下):入浴に際しての注意書きです。どこの浴場にもこの手の注意書きは貼りだされていますが、そこに書かれている文を書き写すと「浴槽のふちには座らないでください。人のお尻や○○ちんを目の前で見ながら入浴するのは衛生上も気分も良い物ではありません」とあり、一応伏字ながらもストレートに表現されているため、思わず吹き出してしまいました。


 
浴室の中央には、角が面取りされたようなスタイルの長方形の主浴槽が据えられいます。浴槽には仕切りが設けられて二分されていますが、この仕切りが低い上に湯口から噴出されるお湯の勢いも強いため、仕切りを挟んだ両方の浴槽には特に違いはありません。双方とも同じく丁度良い湯加減のお湯が張られていました。

浴槽の奥側に突き出た湯口から源泉がドバドバと凄い勢いで注がれており、浴槽縁の切り欠けのみならず、洗い場側の縁からも惜しげもなくオーバーフローしています。湯使いは完全掛け流しでしょう。お湯は無色澄明で、湯口に置かれたコップを飲んでみると、微かなタマゴや金気の味と匂い、そして仄かなほろ苦さが感じられました。飲むとおいしいお湯なのか、この時にいた先客2人は、各々焼酎用のデカいペットボトルを持参し、お湯を汲んで持ち帰っていました。じっとお湯の中に体を沈めていると薄く気泡が肌に付着し、湯中に含まれる重曹の影響か、ツルスベ感が良好な気持ち良い浴感が得られました。いわゆる美肌の湯の類です。


 
浴室左側には水風呂や低周波浴槽などが低い天井の下に配置されており、逆サイドの右側には洗い場が並んでいます。カランは押しバネ式のものが9基で、おそらくカランから出てくるお湯は源泉でしょう。

昭和風情に包まれながら、ほんのりタマゴ系の硫黄感を帯びた掛け流しの美肌の湯を堪能できるこちらの浴場は、鹿児島市街でも屈指の良泉かと思います。温泉ファンにはおすすめ。


甲突川左岸69号
単純温泉 43.9℃ pH8.3 100L/min(動力揚湯) 溶存物質973.8mg/kg 成分総計977.4mg/kg
Na+:293.4mg(98.00mval%),
Cl-:155.6mg(33.74mval%), HCO3-:424.7mg(53.50mval%),

鹿児島中央駅(または天文館など)から路線バスで「花野口(花の口)」停留所下車、すぐ。
鹿児島県鹿児島市伊敷8-22-20  地図
099-228-5300

6:00~22:00
360円
ロッカーあり、ドライヤー有料(30円/3分)、入浴道具販売あり

私の好み:★★★
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鹿児島市街 天然温泉湯乃山

2012年08月27日 | 鹿児島県
 
鹿児島の市街に渋く鄙びた温泉「天然温泉湯乃山」があると知り、市電の水族館口電停から歩いて上の画像の場所、即ちJRの線路沿いの道を進んで、西郷隆盛終焉の地とマンション「サーパス城山1番館」に挟まれた地点までやってきました。ネット上の情報によれば、その温泉は非常にわかりにくい場所にあり、初見時は多くの人が迷ってしまうそうですが、幸いにして私が現地へ赴いた時には、温泉の入口と思しきところに「温泉」と染め抜かれた赤い幟が立っていたため、これを見つけて迷うことなくたどり着くことができました。



幟のところから登り坂のアプローチを進んでゆくと、数台分の駐車場が広がり、その一角に「湯乃山」の看板を発見。ここで間違いないようです。なおこの看板から先は車両進入禁止です。


 
駐車場から更に登ってゆく路地の途中右手には「男湯自由浴場・初湯」と称する浴場がありました。この「湯乃山」では男女別の大浴場(ここではそれを自由浴場と称しているようです)の他、たくさんの個室風呂が設けられており、この日の私は個室風呂を利用するつもりでしたので、今回「初湯」はパスさせていただきました。


 
坂を登りきったところにある受付小屋で、係のおじちゃんに料金を支払います。


 
傾斜地を切り拓いたような敷地には、まるでお庭のようにたくさんの木が植えられており、その真ん中にはタイルが貼られたコンクリの休憩台が設置されています。その上にはビールやポカリスエットなどが入った小さな冷蔵庫が置かれており、もし飲みたければ自分で取り出して、すぐ下にある缶に料金を入れればOKです。市街地なのに完全にお客さんを信用したスタイルを採用しているところが、とっても長閑で素敵です。



また休憩台の傍には小さな池があり、池の畔にはコックで開閉する水道の水飲み場も設けられています。何とも言えない原始的な構造に心を奪われ、ついついカメラを構えてしまいました。


 
敷地内にはたくさんの古く鄙びた個室風呂が並んでおり、「桜島」などご当地らしい名前が付けられている部屋もあれば、名札が外れてしまったのか名前が見当たらない部屋もあり、また「空室」と記された利用状況を示す札が用意されている部屋もあれば無い部屋もあったりして、つまり部屋によって状況がバラバラなのですが、今回はその中でも名前が無く利用状況を示す札も無い部屋をチョイスしてみることにしました。


 
お部屋の中はとってもプリミティブです。1畳半程度の広さしかない脱衣室には蛍光灯1本と換気扇、そして腰掛と棚が用意されているだけで、床にはスノコが敷かれています。
脱衣室と浴室の間には一応ガラス戸によって仕切られています。浴室はタイル貼りで、一人サイズの浴槽とバルブで開閉するシャワーがひとつあるだけです。なおシャワーから出てくるのは水ですので、掛け湯したければ浴槽から桶でお湯を汲むことになります。またシャワーホースは空の浴槽みたいな狭い空間の上部から伸びているのですが、この狭い浴槽らしき空間を何に使ったら良いのかは不明です(人が入るには狭すぎる)。



浴室の隅っこを見上げると、そこには屋根が無く、鹿児島の街の空が広がっていました。つまり半露天状態なんですね。雨が降ったら雨ざらしになるわけだ…。でもこの構造のおかげで換気状態は抜群に良く、湯気が籠って不快感を覚えるようなことはありませんでした。それにしてもこのお風呂は何年前にできたんでしょうか。相当古そうです。


 
浴槽内には青いホースが伸びており、ここから源泉が供給されています。そのホースを浴槽の外へ出してみると、結構な量のお湯が出ていることがわかり、ホースを浴槽へ戻してから体を湯船へ沈めてみると、勢いよくお湯が溢れて浴室内は洪水状態になってしまいました。
お湯は薄い紅茶色透明の完全掛け流しであり、モール泉を思わせるようなツルツルスベスベ感が強い気持ち良い浴感です。口にしてみると金気と土気が混ざったような味と重曹味がそれぞれ薄らと舌に伝わり、モール系の香ばしい匂いがふんわりと漂っていました。湯加減はちょうどよく、しかも私が大好きなモール系のお湯であったため、上がろうと思っても体がそれを許してくれず、後を引いて1時間以上はお湯に浸かりっぱなしでした。

古く鄙びた雰囲気といい、お湯そのものの質といい、マニア受けするような要素だらけで、興奮しっぱなしでした。私はいままでにも鹿児島市内の温泉には何か所か入っていますが、その中でも屈指の素晴らしさです。そして、こんな佇まいのお風呂が市街地にあるなんて驚きです。鹿児島って本当にワンダラスですね。


甲突川左岸8号
単純温泉 43.2℃ pH8.6 溶存物質304.5mg/kg 成分総計304.8mg/kg
Na+:55.0mg(97.15mval%),
HCO3-:62.3mg(40.47mval%), SO4--:35.2mg(46.43mval%),
H2SiO3:135.4mg,

鹿児島市電・水族館口電停より徒歩5分、またはJR鹿児島駅より徒歩10分
鹿児島県鹿児島市城山町12-1 地図

7:00~21:00 火曜定休
500円
備品類なし

私の好み:★★★
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