温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯川内温泉 かじか荘(その1 部屋・食事・浴場(大))

2013年06月20日 | 鹿児島県
 

名湯揃いの鹿児島県でも、温泉ファンから熱い支持を集める湯川内温泉「かじか荘」に、先日一泊してまいりました。拙ブログでリンクさせていただいておりますしーさんさんのブログ「温泉を通じて」を拝見していましたら、こちらの温泉に宿泊なさっている記録がアップされており、魅力的なそのお湯に何が何でも浸かりたくなって、先日の九州における湯めぐりでは、真っ先にこちらのお宿を予約したのでした。


●客室
 
帳場では今くるよ(あるいはみかん山プロダクション所属の主婦タレント)みたいな風貌の、キャラの強いおばちゃん二人がお出迎え。湯治用のお部屋と旅館宿泊用の離れの客室があり、今回は離れの客室へと通されました。案内してくれたおばちゃんは「本当に古いんですよ。見たらビックリしますよ」と、冗談とエクスキューズを半分ずつ織り交ぜながら、自嘲っぽく話してくれましたが、実際に通されたその客室は、たしかに古い造りであるものの、きちんと清掃されていますし、障子も襖もきっちり閉まりますし、テレビもポットもエアコンしっかり完備。なぜかDVDデッキまで備え付けられています。広くて快適で全く問題ありません。入室時には既に布団が敷かれており、すぐにゴロンと横になることができました。


 
広縁の卓の上には、タオルや石鹸が入っている桶が置かれていました。近頃はビニールの巾着にタオルや歯ブラシなどの一式を収納しているお宿が多いのですが、こんなわかりやすい形で用意されているなんて、昔ながらの温泉宿らしいスタイルですね。しかもボディーソープじゃなくて石鹸ですよ。リアリティのあるレトロに思わず歓喜。



室内では板に貼り付けられたサーキットブレーカーがむき出し。こんな原始的なブレーカー配置が現役なお部屋は久しぶりに見ました。



広縁に置かれている冷蔵庫を開けると、中ではボトルに入った水が冷やされており、飲んでみますと滑り落ちるようななめらかな喉越しとともに、タマゴ水の香りや味が感じられました。これって温泉水なんですね。広縁の反対側には洗面台があるのですが、その水栓を開けて出てくる水もタマゴ水でした。


●食事

お食事は本館の食堂でいただきます。この日の宿泊客は私一人だけだったようで、いつもはいくつも並べられているであろうテーブル類はすっかり片付けられていて、妙にガランとした空間が広がっていました。当地は鹿児島県出水市ですが、熊本県に近いため、食堂のテレビは両県の放送を視聴することができました。


 
こちらは夕食。焼き魚・肉じゃが・そら豆など、とっても家庭的な献立ですが、それぞれが丁寧に作られていて、まさに愛情あふれる田舎のおふくろの味です。きびなごの刺身が絶品でした。



朝食も万人受けする肩肘張らないハートフルな献立。完食してその日の鋭気をしっかり養いました。



●浴場(大)

「かじか荘」には大小ふたつの浴場があります。大きな浴場は本館に隣接し、小さな浴場は大きな浴場の裏手に伸びる階段を登った谷頭の上にそれぞれ位置しております。まずは大きな浴場から入ってみましょう。レトロ感溢れる佇まいが何とも魅力的。


 
湯屋の向かいに建つ湯治客用の宿泊棟の一角には、入浴客向けのマッサージチェアやドライヤーが用意されている小部屋があって、いずれもコインタイマーで動く仕組みになっているのですが、なぜかマッサージチェアとドライヤーのタイマーが一緒になっており、100円玉をタイマーに投入すると両方に対して同時に1時間通電されるようになっていました。ドライヤーに対して100円は高すぎますが、マッサージチェア1時間で100円はかなり安く、利用者の貨幣価値を混乱させてくれること必至。なお客室にもドライヤーはありますので、宿泊客はここのドライヤーを使う必要は無いかと思います。



浴場は脱衣室と浴場が一体化している造りで、脱衣エリアは昔ながらの板敷きです。木造で渋い古風な建物に、私のテンションは早くも上昇基調。


 
ステップを下って向かうお風呂では素晴らしいお湯に出会える可能性が高いのですが、こちらのお風呂も低い位置に湯船が据えられており、そのロケーションゆえ期待に胸が膨らみます。
上屋は木造ですが、床には伐り出された石材が敷かれており、そのフィーリングからはこの温泉が有する歴史と重厚感が伝わってきました。昔ながらのお風呂ですので、シャワーなんて近代的なものはなく、壁に水道の蛇口がいくつか設置されているばかり。


 
源泉温度が40℃に満たないため、冬には加温されたお湯が用意されますが、麗らかな春の陽気のおかげでそれほど冷え込むことのなかったこの日、加温槽は空っぽでした。朝晩はちょっと肌寒いのですが、ぬるいお湯でも肩までしっかり浸かって長湯すれば全身ぽかぽか。ボイラー要らずでした。


 
湯川内温泉は足元から湧出するお湯が名物。玉砂利の底からブクブクと泡を上げて自噴する美しいターコイズブルーのお湯は、惜しげも無く木の縁を洗い越して、床へザバザバと流れ去って行きます。湯量は豊富で一切の濁りも鈍りもありません。大量のお湯が湧き出る様は、まるで阿蘇の白川水源のようです。純度高い宝石のように清らかに透き通るに身を沈めると、心身の隅々まで清浄されたかのような心地に包まれます。湯船は比較的深く、身長165cmの私の場合は胸まで浸かりますが、槽内には岩や段、そして輪切りの天然木などが沈められており、これに腰をかけるといい塩梅で座湯することができました。湯船の温度は37.8℃。不感温度帯ですので、時間を忘れていつまでも浸かっていられます。なお源泉は湯川内2号・3号の2種類とのこと。豊かなタマゴ臭と味、そして清涼感のあるほろ苦みが感じられ、誰しもが美人になれそうなツルスベ感も最高。その上、1分も浸かっていれば全身くまなく気泡が付着し、その浴感がより一層高まりました。


 
浴室内に掲示されていた「とびこみ およぎ きんし」の注意書き。たしかに子供だったらそんな衝動に駆られちゃうよなぁ。「いにしえの 殿の湯殿は エメラルドグリーン」。字余り。

宿泊中は何度このお風呂に入ったことでしょう。特に日帰り客が去った夜9時以降は、この晩たった一人の宿泊客であった私が完全にモノポライズ。なんていう贅沢でしょう! この浴場の一部は沢を跨いでいるのですが、ちょうど初夏を迎える時季でしたので、その沢ではカジカガエルが美しい歌声で合唱しており、カエルたちの美声にうっとりしながら、この清らかなお湯をひたすら独占し、思う存分堪能させてもらいました。


湯川内2号
アルカリ性単純温泉 36.3℃ pH9.4 溶存物質0.159g/kg 成分総計0.159g/kg
Na+:36.4mg(90.29mval%),
SO4--:16.1mg(19.54mval%), HCO3-:18.0mg(16.67mval%), CO3--:26.5mg(50.57mval%), HS-:0.2mg(0.57mval%),
H2SiO3:52.2mg,

湯川内3号
アルカリ性単純温泉 38.2℃ pH9.5 溶存物質0.163g/kg 成分総計0.165g/kg
Na+:36.8mg(91.95mval%),
SO4--:11.3mg(13.04mval%), HCO3-:9.8mg(8.70mval%), CO3--:36.1mg(65.22mval%),
H2SiO3:59.8mg, H2S:1.3mg,


所在地や電話番号などは次回記事にて。

(つづく)
コメント
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