温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

アイスランド 泊まって良かったホテル(その2) Hotel Berg 

2011年08月18日 | アイスランド
アイスランド旅行で「うわ~、素敵!」と思わず声をあげてしまったホテルです。
今回のアイスランド旅行は帰路で早朝7:45発コペンハーゲン行の飛行機に乗りたかったので、最終日は国際空港を擁する街ケプラヴィーク(Keflavík)で宿泊したく、外観の画像に心惹かれて"Hótel Berg"を選びました。まだ新しいホテルであるためか、ネット上には口コミ評価が見当たらず、どんなところか不安だったのですが、結果的には大正解でした。

 
ケプラヴィークの街の北にある小さな船溜まりを見下ろす小高い丘の上に建っています。ホテルというより民家のような外観で、民宿やペンションなどのカテゴリーに分類される施設だと思います。ちょっと街から外れているのでとっても静か。海や街が展望できる絶好のロケーションです。


玄関ホールはアロマキャンドルの良い香りに包まれていました。ラグジュアリ感のある調度品やファブリックにより、とってもいい雰囲気。思わず「うわ~素敵」と口にしてしまいました。


レセプション前のラウンジ。こちらもクラシックな造りのソファーが置かれ落ち着いた雰囲気です。窓からはハーバーや街が眺められます。どうやらご家族で運営されているらしく、この時もご夫婦で対応してくれました。

 
料金はアイスランドのハイシーズンにしては比較的安めだったのですが、ここでいいの?というほど広い部屋に案内されました。一人で使うにはもったいない程の大きなベッドです。
室内はとっても落ち着いた色調でまとめられており、液晶テレビ、冷蔵庫完備。室内ではWi-Fiが使えます(室内の机に敷かれたデスクマットにパスワードが書いてあります)。クッション・枕などにはオリジナルロゴが刺繍されています。

 
各部屋には個別にトイレ・シャワーが付帯しており、アメニティー類もちゃんと備え付けられています。白と木目を活かした室内はまだ新しいためか、とっても綺麗で清潔。ただし、このシャワーはトイレとの仕切り(ガラス)がやや短めであるため、どうしてもトイレまでビショビショになってしまいます。

 
街の中心部までは余裕で歩いて行けます。アイスランド最後のディナーは「ヴァイキング・サーモン・レストラン」と書かれたお店に入ってみました。


 
海岸を臨む窓際の席で、サーモンづくしの料理をいただきました。ボリューム満点でとっても美味!

 
食後の散歩を済ませて宿へ戻ってきました。ホテルというより完全に民家ですよね。海岸の小さな家に帰宅したような感じでした。スタッフもとってもアットホームで親切に接してくれました。
上述のように翌朝は早い飛行機に乗る必要があったため、朝5時にチェックアウトしたのですが、ご主人は嫌な顔ひとつせず、笑顔で対応してくれたので、ホッとしました。予めメールで連絡しておけば、私のように早朝対応してくれます。良い部屋だったので、もう少し長く滞在したかったなぁ。
ロケーション、室内の雰囲気、親切なスタッフ、などなど全ての要素がとっても印象に残る素敵で温かい宿でした。空港までは車で5分程度なのでアクセスも良好。一般的に空港付近のホテルって実用的な施設が多いようですが、せっかくでしたら、このような良い雰囲気の宿に泊まれば、旅行の想い出がより一層厚くなるに違いありません。
旅の締めくくりにこんな宿に泊まれて幸せです…。


所在地:Bakkavegur17 230 Keflavík  地図
電話:+354-422-922
ホームページ
エクスペディアなどから予約可能

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アイスランド 泊まって良かったホテル(その1) Vatnsholt

2011年08月17日 | アイスランド
旅行先のホテルの良し悪しは、その旅の印象を大きく左右するものですよね。観光立国アイスランドにはたくさんの宿泊施設があり、私も旅の計画を練っているときにはどこに泊まったら良いのかかなり悩んだのですが、実際に泊まってみて、あまりの良さに感激したホテルがあったので、当ブログの趣旨である温泉紹介からはかけ離れてしまいますが、感動を分かち合っていただきたく、ここで紹介させていただきます。皆様の旅行の参考となれば幸いです。
今回取り上げるのは、セルフォス(Selfoss)の郊外にある農家民宿"Vatnsholt"です。

 
セルフォルから1号線を東へ進み、途中で右折して305号線へ入り、しばらく南下してから砂利道の309号へ右折すると、まもなく到着です。
広大な牧草地が広がる丘の上にポツンと建つ、「大草原の小さな家」という表現がピッタリなホテル。チェックインの際には、オーナーの夫妻が握手で出迎えてくれます。

 
宿泊する客室は、本棟の向かいにある別棟にあります。玄関で靴を脱いでから建物内に入ると、そこには宿泊者用のリビングルームとダイニングルームが広がっていました。ホテルというより民家を訪問しているかのようです。調度品はおそらくIKEAで買い揃えたのではないかと思われますが、白と木目を基調にした落ち着いた内装で、明るく清潔感に溢れ、とても綺麗です。
話の時系列が前後しますが、夕食後にここで私が地図を広げて翌日の計画を練っていると、ニューヨークからハネムーンでやってきた新婚さん、フランス人夫婦、そしてドイツ人ファミリーが集まってきて、みなさんで酒を酌み交わしながら、夜が更けるまでアイスランドの景色を絶賛しあいました。一期一会の出会いとそこで繰り広げられた会話は永遠の想い出です。


ダイニングルームの隣はキッチンです。こちらも明るくて広くて使い勝手良好。自炊に必要なものは一式揃っています。リビングもダイニングもキッチンも、宿泊者は自由に使えます。客室内には冷蔵庫がないので、飲み物などはキッチンの冷蔵庫を使うとよいでしょう。


ゲストハウスとは思えないほど綺麗で広い共用トイレ。


これが私が泊まった部屋。階段を上がった二階の一室です。屋根の直下なので天井が思いっきり斜めですが、私は一人旅ですから、2つあるうち画像左側のベッドを使いました。室内には必要最低限のものしかありませんが、清掃がよく行き届いており、申し分ありません。なおタオル以外のアメニティー類の備え付けはありませんので、事前に自分で用意する必要あり。


階下には共用シャワーがあるのですが、これもまたゲストハウスらしくないバスタブを兼ねた立派な設備で、普通のシャワーの他、スチームバスやAVなど、いろんな機能が備わっていました。シャワー室はかなり広いので、共用シャワーにありがちな窮屈な思いをせず、のびのびと使うことができました。
なお別の場所にはホットタブ(温浴槽)もあるのですが、生憎この日は故障中とのことでした。


キッチンでの自炊も可能ですが、併設されたレストランでディナーすることも可能。農場直送の食材をいただけます。
なおこのホテルではWi-Fiが利用できますが、利用可能な場所はこのレストラン内だけです(レストラン内にラウンジあり)


このレストランはコース制で、メインディッシュを魚にするかラムにするか選択ができます。まずはワインを。


トマトとパプリカのスープ。美味い!


メインはラムのグリルを選びました。ボリューム満点。アイスランドのラムは全くクセがなく、本当に美味い。ラムが苦手な人も、こちらへ来れば克服できるかもしれませんよ。マッシュルーム入りのクリームソースもラムに合って美味かった。


食後はパンナコッタとカプチーノ。
給仕してくれたお姉さんとお兄さんは常に笑顔で、私のメチャクチャな英語にも苦い顔一つせず、爽やかに対応してくれました。家族経営ならではのアットホームな温かさや優しさって、ありがたいですね。


朝食はバッフェ式です。品揃えはパン・ハム・ソーセージ・チーズ・シリアルなど欧州の標準的な内容ですが、それぞれが実においしく、朝から何度もおかわりしちゃいました。画像には写っていませんが、セルフで作るワッフル焼き器もありますよ。

 
果てしなく広い牧場には牛や馬が放牧されていました。

 
ここではワンコも馬も仔牛も子供たちもみんな仲良し。


特にジャージー種のこの仔牛はとっても人懐っこく、体を私に密着させて離れようとしませんでした。めちゃくちゃかわいいです。

 
子供用遊具もあり、客の子供たちが歓声をあげながら遊んでいました。動物に触れあったり、雄大な景色を眺めたり、遊具で遊べたりと、ファミリーにとっては至れり尽くせりですね。

壮大な景色、おいしい料理、清潔で綺麗な館内、アットホームな雰囲気、そして笑顔が素敵な従業員家族のみなさん、その全てが強く印象に残った素晴らしいホテルでした。日本にもこんな宿泊施設があったらいいなぁ。次回アイスランドへ旅行した際にも是非こちらでお世話になりたいと思っています。


所在地:Vatnsholt 2, Selfoss 801  地図
"farmholidays"内の紹介ページ(←ここに詳細が記されています)

Hotels.comBooking.comなどから予約可能


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アイスランド ブルーラグーン(Blue Lagoon)

2011年08月17日 | アイスランド
今回のアイスランド旅行の実質的な最終日は、世界最大の露天風呂にしてアイスランド屈指の観光名所である「ブルーラグーン」で入浴し、以て当地における温泉巡りの締めとすることにしました。以前に書籍のグラビアやテレビで、広大な敷地に青白い神秘的なお湯が湛えられているブルーラグーンを見て以来、一度でいいから行ってみたいという強い憧憬を抱いていたのですが、ついにその願いを叶える日がやってきたのです。私は食事の際に好物を残しておいて一番後にいただく性格なので、温泉巡りに関しても同じような予定の組み方にしてしまいました。こういう性格の人間は『若きウェルテルの悩み』の主人公ウェルテルみたいに、シャルロッテへの想いに煩悶しつづけるものの、いろんな事情が重なった挙句、結局願い叶わずバッドエンドを迎えることが多いわけでして、今回もブルーラグーンを一番最後に回して、もし当日天気が荒れたらどうするんだ、予定がメチャクチャになって立ち寄れない事態になるかもしれないのに、などと心配していたのですが、雨男の私の来訪にもかかわらず、車を駐車場に止めると、それまで降っていた霧雨がピタっと止んで、何らの支障なく入浴できるコンディションとなってくれました。

 
ブルーラグーンは現地語では"Bláa lónið"と表記するんだそうでして、道路標識もこの現地語表記でした。
訪問時には駐車場にはたくさんの車がとまっており、人気の程がうかがえます。溶岩で覆われた土地を切り拓いたアプローチを進んで本館へ。駐車場の前に建物がいきなり建っているのではなく、あえて溶岩に挟まれた通路を歩かせる演出は、まるでテーマパークのアトラクションに入場するかのような高揚感をもたらせてくれます。


エントランスは意外と小さいんですね。観光客がひっきりなしに出たり入ったりしています。


北欧らしいガラスを多用した明るい館内は、奥に長い構造をしており、エントランスの小ささとは裏腹に、内部はかなり広い空間。さすがは世界に名の知れた施設だけありますね。レセプションの奥はカフェテリア、その手前はお土産売り場。


レセプションは個人客用と団体客用に分かれていました。一人旅の私はもちろん個人客用の窓口へ。料金は4800kr(この日のレートでは日本円で約3200円)という観光客の足元を見ているようなバカ高い設定。ユーロ支払いも可能で、その場合は30ユーロなんですが、ケチ臭くレートを計算したらアイスランドクローネで支払った方が若干安いことがわかったので、現地通貨で支払いました。なおレンタルタオルは800kr。
入場料の支払いを済ませると、このようなリストバンドが手渡されます。これは入退場の管理の他、ロッカーの施錠開錠、また場内における飲食などの精算に使用します。まずこのバンドの白い部分(チップが埋め込まれている)をゲートの受信部に当てて改札を通過し、ロッカールーム(更衣室)へ。大勢の客を捌くべく、ロッカールームは男性の場合A・B・Cの3室に分かれており、好きなところが使えたので、私は空いていそうなCを利用しました(女性もほぼ同様)。


ロッカーも空いている任意のところを利用します。ロッカーの施錠には先ほどのリストバンドを使用するのですが、その方法は…
(1)まず着替えを済ませて衣服や荷物をロッカーに入れる
(2)扉を閉めると、そこから最も近い読み取り機(↑画像下部に写っています)にその扉の番号が表示される
(3)番号に間違いなければ、読み取り部分にリストバンドをタッチ
(4)機械の読み取りから5秒後に施錠完了
という流れです。尤も、ロッカーにはちゃんと図示されていますから、その通りに操作すれば問題なし。開錠は同じ機器に再びリストバンドをタッチすればOK。ただし、施錠後の自分のロッカー番号はどこにも表示されませんから、番号やおおよその位置はきちんと記憶しておく必要があるかと思います。

このロッカールームは係員さんが床を清掃してくれているのですが、シャワーエリアとフラットになっている上に客が多いため、床がビショビショで着替えしづらかった…。着替え後はシャワーで全身をくまなく洗います。なおシャワーには「ブルーラグーン」ブランドのシャワージェルが備え付けられていました。買うと結構高いものですが、ここでは使い放題なので、嬉しいあまり、入浴前も後も、このジェルでこれでもかという程、徹底的に体を洗っちゃいました。またシャワーエリアには入浴後の水着を入れるビニール袋が用意されていました。

 

おお! これが夢にまで見たブルーラグーンか! めちゃくちゃデカイ! そしてお湯が神秘的な色だ!
このラグーンはなんと5000平米もあるんだとか。そのうち浴用に開放されているのは約半分の約2,400平米ですが、それでも十分に広いですよね。

 
巨大な露天風呂のみならず、打たせ湯があったり、サウナがあったり、よりどりみどり…


プールサイドには露天風呂に入りながら飲み物などを購入できるスタンドがあり、みなさんビールなどを買って、グビグビ飲みながら湯浴みを楽しんでいました。

 
ブルーラグーンといえば、温泉泥パックが有名なので、さっそく実践してみました。プールサイドには白い泥が入っている箱が何箇所か置かれているので、そこから金属のオタマで泥を掬いあげ、手で顔など好きなところに塗ります。泥はちゃんと箱に入っているものを塗ってくださいね。浴槽の底に沈殿しているものは汚いから使っちゃダメ。
顔面を白い泥で塗りたくっている東洋人は、まぎれもなく私です。気味悪い写真でゴメンなさい。

 
露天風呂の奥の方には、湯口が石灰華に覆われ山のようになっている箇所がありました。これに寄りかかると、いい具合に体にフィットするので、ここに腰かけながらじっくりのんびりお湯を堪能。
湯温は38℃前後なので、日本人には若干ぬるめですが、長湯するにはちょうど良い湯加減。いつまでもお湯に浸かっていられます。気持ちよくて出たくない…。


蒸気に隠れて見えにくいのですが、ラグーンの向こうに建っているのはスヴァルトセンギ地熱発電所です。ブルーラグーンのお湯はこの地熱発電所でタービンを回すために使われた地熱海水が二次利用されたもので、人工的に造られたお湯なんだそうですが、珪素をはじめとするミネラルを豊富に含み、特にアトピーや湿疹など皮膚疾患に効能があるんだとか。海水由来のお湯なので、口に含むと苦みとしょっぱさが感じられました。ツルスベ浴感も気持ち良く、何度も肌をさすりたくなります。このラグーンには常に600万リットルもの地熱海水が貯められており、40時間ですべての海水(温泉水)が交換されてゆくそうです。

広さ、湯加減、お湯の質、そして神秘的なお湯の濁り方など、感動する要素が満載で、料金の高さなんか忘れてしまうほど、非常に気持ちよい露天風呂でした。念願のブルーラグーンに入浴できて本当に幸せ…。
ここは露天風呂に浸かるだけでなく、エステやレストランなどいろんなサービスがあるのですが、それはまた次の機会にでも。
なお、帰りにはお土産コーナーへ立ち寄り、世界的に有名なブルーラグーンのスキンケア用品をしこたま購入。帰国後方々へ差し上げたのですが、特に女性陣からは大好評でした。


所在地:Blue Lagoon 240 Grindavík  地図
電話番号:+354-20-800
ホームページ

9月1日~5月31日→10:00~20:00
6月1日~8月31日→9:00~21:00
年中無休

大人4800kr(30ユーロ)、14~15歳1600kr(10ユーロ)、13歳以下無料
レンタルタオル・レンタル水着:各800kr(5ユーロ)
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アイスランド クリースヴィーク(Krysuvik)の野湯Skatalaug

2011年08月16日 | アイスランド
★今回後半に登場する野湯は、日本語サイトでは当ブログが初めて取り上げるのではないかと思います。

アイスランドに初上陸したとき、荒涼な大地のあちこちから地熱の白い蒸気が上がっているのを目にした私は、噴気を見つける度に興奮していたのですが、やがてそれがこの国では当たり前なんだと気付きはじめると、それ以降は噴気を見かけても「あ、あそこにもあるのね」程度にしか気にしなくなってしまいました。それほどこの国は地熱活動が盛んなのですが、首都レイキャヴィクの南西に位置するレイキャネス半島はその典型でして、ユーラシアプレートと北米プレートが分かれてゆくこの地は地熱の活動が非常に活発で、あちこちから白い噴気が上がっています。
レイキャネス半島には世界最大の露天風呂にしてアイスランド屈指の観光名所である「ブルーラグーン」がありますが、今回はその東側にある地熱地帯クリースヴィーク(Krýsuvík)へ行きました。まずは地熱地帯を見学してみます。


●地熱地帯セルトゥーン(Seltún)
 
未舗装の427号線を辿って南部の海岸沿いを走行。黒い溶岩の上にモスグリーンの苔が生えている不思議な地形が広がっています。その苔はあたかも絨毯のようであり、上を歩くとフワフワです。


クリースヴィークに近づくと舗装路面になりました。前方の山からは白い噴気が上がっています。

 
(地図)
界隈でも屈指の地熱地帯であるセルトゥーンに到着。車を降りると、さっそく硫黄の匂いが鼻を刺激してきました。こういうところの硫黄の匂いって、日本もアイスランドも共通なんですね。駐車場からは木道が伸びているので、その上を歩いて探索してみます。

 
あたりは荒涼とした噴気帯となっており、硫黄の匂いとともに、あちこちからフツフツと温泉が煮え滾る音が聞こえてきます。また前方の山からも濛々と白い蒸気が上がっていました。

 
木道には説明プレートが設置されています(が、細かい英語を読むのが面倒だったので、どんな内容が記されているかはわかりません)。プレートの前では灰色の泥がプクプクと泡を立てています。地獄絵に出てきそうな風景ですね。

 
ここはかつて硫黄の採掘が行われていたようで、火山性の灰色の泥が湧出しているのみならず、黄色い硫黄で覆われた鉱床もところどころで露出していました。日本と違って過保護な柵やロープや注意看板が無いため、トレイルから外れなければ、安全にかつ余計な人工物を目にすることなく、地熱地帯の様子を観察することができます。一般的に地獄谷のような場所は、噴気孔から蒸気が噴出するため、その孔の真上で湯気が立ち上りますが、ここは孔のみならず一帯の地表から万遍無く湯気が上っているようでした。

 
日本だったらこれらの源泉に引湯用の黒いホースが何本も敷設され、付近には旅館が建ち並んでしまうのでしょうが、ここではそんな事態には陥らず、自然のままの姿が保たれています。


●野湯Skátalaug



(↑画像はクリックで拡大)
さて、この付近にある温泉ファンが好きそうな或る物を見つけに行きましょう。今回の旅でお世話になった"Enjoy Iceland"にはセルトゥーンの傍に入浴可能な野湯がある(このページ)と紹介されていたのです。是非とも行ってみなくては!
車のGPSの座標をN63°54.236,W22°02.599に設定し、42号線をクレイヴァルヴァトン湖方面に向け北上して走っていると、道は途中で未舗装となり、セルトゥーンから1km程で、道路から左の荒れ地へ車の轍が伸びている箇所を発見しました。その轍をたどって、車で行けるところまで行っちゃっても良いし、スタックが不安ならば路肩の広いところに車をとめて歩いてもOK。私は後者を選択しました。↑画像で小さく車が見えていますが、そこが路肩にあたります。目的地までは私の駐車場所から100~200mくらいです。

 
一帯はフワフワの柔らかな地表に短い草が生えている光景が広がっているのですが、東の山の方へ歩いていると、画像のような小さな沢とその湧出点を発見しました。この沢は流量が少ないため、川を形成できず、途中で地面に浸みこんで消えてしまっていますが、沢の周りは草の生育具合が良好なので、もしやと思って温度を測ってみると…


34.3℃もありました。立派な温泉です。しかし湧出量が少ないので、これでは入浴できませんね。


地図
歩く方向をちょっと南に転じてさらに進んでみると、突如目の前にこのような池が出現しました。池にしてはやけに形状が整っていますね。


池の上流には土管が埋設されており、そこから水が供給されているようです。この池は明らかに人工でしょうね。今回の目的地は、まさにこの池です。これが野湯Skátalaugであります。でも池面からは湯気が立っていないぞ…。しかも底には大きな水草が育っちゃってる…。


それもそのはず、池の温度は28.5℃しかありませんでした。冷たいわけじゃないのですが、入浴にはかなり低い温度です。しかもこの時の気温は12℃でしたから、もし入ったとしても湯上りに風邪をひいちゃいそうな予感がします。

 
土管の先をたどってみると、すぐに源泉にたどり着けました。土管から10mも離れていません。湧きたてのお湯の温度は34.4℃で、この温度なら入浴しても問題ありませんが、湧出地はちょっと浅すぎて、とても体が浸かれるような状態ではありません。


そこで、土管の傍ならギリギリ30℃あるかないかの温度でしたので、土管の脇で足湯を楽しみ、それで妥協することにしました。ご覧のように大自然に囲まれたとっても壮大な野湯です。"Enjoy Iceland"の紹介ページでは湯温が34℃と記されていますが、おそらく気候や地熱のコンディションによって上下するんでしょうね。もし再訪できる機会があれば、次回は晴天で気温の上がっている日を狙いたいと思います。
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アイスランド クラプラ(Krafla)の地熱発電所・地熱地帯・そして野湯

2011年08月16日 | アイスランド
●クラプラ地熱発電所
 現地の位置(Google Map)
 
アイスランドは国内で供給される電力を水力と地熱で賄っており、なかでも地熱はその約3割を占めているんだそうです。温泉好きが高じて日本国内の地熱発電所巡りもしている私は、ご当地の地熱発電所がどういうものか関心を抱き、北部アイスランドのミーヴァトン湖東側にあるクラプラ(Krafla)地熱発電所を訪れてみました。クラプラ火山麓に建設されたこの発電所は1975年に稼働を開始し、60MWhの発電能力を有しています。単一ユニットとして考えた場合の日本最大の地熱発電所は、福島県会津地方にある柳津西山地熱発電所が65MWhですから、それにほぼ匹敵する能力があるわけです。

 
道路に面したこの白い建物は冷却塔。タービンを回転させた熱い蒸気は復水器で凝縮され、そしてこの冷却塔で外気に接触させることにより冷却されて、再び復水器へ戻ってタービンの回転に利用されたり、あるいは還元井から地中へ戻されます。

 
冷却塔に隣接したこの赤い建物にはタービンと発電機が設置されています。いわば発電所の心臓部ですね。日本の地熱発電所はセキュリティー等を理由に、発電所内部への立ち入りはできず、敷地内の端っこにちょこっと設けられたPR館で模型や映像が見られるだけですが、この発電所は内部に立ち入って実物を見学することができるのです。しかも予約不要で無料。なお開館時間は毎日10:00~16:00です。


エントランスホールはこじんまりとしており、展示物も必要最低限といった感じですが、映像ルームが設けられており、発電所の説明やクラプラの火山活動・噴火に関するビデオを見ることができます。事前に申し出れば英語版で見ることが可能。言葉がわからずとも映像だけでも理解できる構成ですので、訪問の際には是非見ていきましょう。


エントランスホールにはボーリング掘削の際に使用された(と思しき)ピットが展示されていました。

 
係員のお姉さんの引率により、階段を上がっていきます。踊り場にはタービンを中心とした発電所関係の写真が掲示されていました。その多くは建設当時の様子を撮影した物のようですが、タービンを据え付けようとしている写真には、極東人らしき人物がその作業を指示監督している状況が写っています。

 
階段を上がりきると、そこは広大なホールを見下ろすデッキのようなところでした。室内にはものすごい音が響き渡っています。案内のおねえさんは階段を登る途中に騒音対策の耳当てを装着していましたが、見学客は数分滞在するだけなので、特に何か装備するようなことはありません。このホールの中央には濃紺に塗られたタービンと発電機が据え付けられていました。ものすごい騒音はタービンから発せられているわけですね。


この見学デッキにもいろんな機器が設置されているのですが、特に立ち入り禁止になっているわけでもなく、触りたい放題だったりします。大丈夫なのかしら。

 
さきほど、建設中の写真に極東人が写っていると述べましたが、それもそのはず、この発電所は日本の技術供与によって建設されたのであり、つまり件の極東人は日本人なのであります。更に言えば、実際に関与したのは三菱重工でして、タービンケースにはお馴染みの三菱の家紋、そして"MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES"という銘板が誇らしげに輝いていました。館内には三菱が携わった世界の地熱発電所の一覧も掲示されています。脱原発&CO2削減という課題に直面している我が国ですが、地熱資源は豊富にあるんですから(その量たるや世界3位)、他所の国の発電に貢献しているのなら、自分の国にも積極的に造って有効活用していただきたいものです。

さて、地熱発電所は当然ながらマグマの熱を利用しており、その特性上、どうしても活動中の火山や地熱地帯の傍に建設する必要があります。ということは、火山の噴火に襲われてしまう可能性があり、実際にこのクラプラ地熱発電所は、1981年にすぐ傍のレイルフニュークルが、そして1984年にはクラプラ火山が噴火して、とっても危ない状況に陥ったんだとか。


そこで発電所見学を終えたあと、簡単なトレッキングが楽しめるレイルフニュークルという火山の丘に登ってみることにしました。道の途中では蒸気を通す配管がクネクネ曲がりながら路上を跨っているので、そこを潜っていきます。


●レイルフニュークル(Leirhnjúkur)
 地図(Google Map)
 
駐車場に車を置いて約1時間のお散歩開始。前方に盛り上がっている小高い丘に登りながら一周するコースを歩きます。駐車場には簡易トイレとホットドッグを売っている屋台がありました。

 
ここは活発な地熱地帯で、発電所の箇所で記した通り、1981年に真っ赤な溶岩を噴出させており、その時に冷えて固まった溶岩が、黒光りしながら台地のような形状をなして広がっています。

 
黒い溶岩の上を歩いてゆくと、やがて現役の地熱地帯へと導かれていきます。温泉湧出箇所には木道が設置されているので、その上を歩きます。湧出地ではフツフツと音を立てながら白濁した温泉が池をつくっていました。入浴してみたい気持ちは山々ですが、多分熱湯でしょうし、そもそも立入禁止なので、ここはすんなり諦めました。

 
あたり一帯は黒い溶岩だらけ。日本も火山国ですから、国内を旅行していれば溶岩を目にする機会は多いのですが、ここまで大規模に真っ黒い多孔質の溶岩が広がっている場所ってあるでしょうか。溶岩が冷えて固まったそのままの姿を見て、そして触れることができるんです。ついさっきまで溶岩が流れ、そしてたった今目の前で固まったばかりのような、ものすごい迫力が感じられました。溶岩に触れると今でも温かいんです。いや、熱いと表現すべき温度でした。路傍のあちこちで蒸気が噴き上がっています。


(↑画像クリックで拡大)
見渡す限り黒光りする溶岩の台地が広がっています。溶岩が流れて平地を焼き尽くしたんでしょうね。

 
(↑画像クリックで拡大)
スタートから35分ほどで丘の上に到達。360度の大パノラマです。しかも目に入ってくる光景は、すべて溶岩によって焼き尽くされた黒い不毛の大地。この異様な景色を何と表現、形容したらいいのでしょう。SF映画に出てきそうな、実に不思議かつ壮大な眺めです。



(↑画像クリックで拡大)
駐車場側を眺めてみると、新しくて真っ黒い溶岩、それより古い褐色を帯びた溶岩、そして緑の草原がトリコロールとなって、はっきり色別されているのが確認できます。荒々しい自然の色彩美とでも言いましょうか。特に黒い溶岩は流れていった様子が形となって残っているため、とても生々しいのです。いまにも草地を襲いそうな迫力でした。


●クラプラの野湯
1時間のお散歩で軽く汗をかいたので、ちょっとサッパリしていきたいものですね。どこか良い場所はないかしら…。そこで、このページ最上部に載せた画像に再登場してもらいましょう。


この画像です。クラプラ発電所を眺めているこの画像の下には小さな川が流れていますね。


クラプラへの一本道の路傍にはこのような案内看板が立っていますが、上の画像の撮影場所は、この看板が立っているところのちょっと手前(1号線側)です(地図)。一本道から砂利の路地が右に伸びています。


川面からは湯気が上がっているので、水の温度を測ってみると、35.7℃でした。これは十分に入浴できる温度ですね。

 
その路地は丸い大きなFRPの管で川を跨いでおり、その管の川下にはちょっとした堰ができていました。上の2枚の画像は同じところをアングルを変えて写しています。軽く堰きとめられていることにより、その部分だけ川は程々の深さになっており、しかも温度が入浴に適している…

 
ならば入っちゃえ! ということで車で水着に着替えて川へ入っちゃいました。無機質なFRP管のおかげで排水路っぽく見えちゃいますし、事実、発電所で使われた温水が捨てられている川なんだと思いますが、川自体は汚れておらず、生活排水が流れているわけではないでしょうから、私としては無問題。むしろ、入浴している時には川下方面に壮大な眺望が得られるので、とっても爽快でした。私が写っている画像の手前には不気味な泡がかたまっていますが、これって何かしら…。でも気にしない気にしない。


お湯(というか川)からは軟式テニスボール臭とタマゴ臭を足して2で割ったような硫黄的な匂いが漂い、弱いツルスベ浴感があります。pH計は8.8を表示していました。アルカリ性の硫黄泉なんだと思います。
景色は良いし、ぬる湯で長湯できるし、硫黄感はしっかりしているし、お湯は川だからどんどん流れてくるし、とっても気持ちよい野湯でした。
しかしながら、川の流れが管で集められて一気に解放されるポイントですから、ここの流れの勢いは結構強く、場所によっては流されちゃいそうになる。川の温度は時間や天候など諸条件により上下する(実は入浴する前日にもここを訪れて温度を測ったのですが、その時は31℃しかありませんでした)。また、川底は白い硫黄分が付着した苔が生えているため非常に滑りやすい。そしてその苔がはがれてたくさん舞いあがっているので、川に入ると全身に苔の破片が付着しちゃって気味悪い。更にはクラプラへの一本道から丸見えなので、道路を走る車から「こいつ、ここで何やってんの?」という好奇の目で見られる。極めつけは、川面に怪しい泡が浮いているので、衛生面が気になる…などなど、諸々の問題点も挙げられるため、特に衛生面が気になる方はNGかと思います。逆に「野湯はそういうものだ」と開き直っている温泉ファンの御仁でしたらおすすめです。

※なお、この野湯を探し当てるには、Takemaさんのサイトこのページを参考にさせていただきました(同じ場所で入浴させていただきました)。

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