温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

パンチャール山温泉群 カワ・メラ温泉

2017年01月30日 | インドネシア
前回記事の「ギリティルタ・ホットスプリングリゾート」で貸切露天風呂を楽しんだ後、近所にあるもう一軒の温泉を訪れることにしました。

 
続いて向かうのは「カワ・メラ」(Kawah Merah)という温泉です。グーグルの翻訳によれば"Kawah"は火口やクレーター、"Merah"は赤いという意味なんだそうですから、さしずめ赤湯と意訳して良いかと思います。この「カワ・メラ」へは車で行くこともできますが、その場合は再び荒れた悪路を進まねばならないため、車は「ギリティルタ温泉」の駐車場に留守番させ、ショートカットできる道を歩いて現地へ向かうことにしました。とても麗しい棚田を眺めながら山道を南に向かって歩きます。


 
棚田の脇から森の中に入り、杣道を上がってゆくと…


 
「ギリティルタ温泉」から歩くこと6〜7分で、林の中からいきなり掘っ立て小屋のテントが姿を現しました。これが今回の目的地「カワ・メラ温泉」です。山の傾斜に沿って幾棟もの小屋が建てられており、ワルン(屋台)だったり浴場だったりと、用途に応じて使い分けられていました。



「カワ・メラ温泉」はいくつかの浴室に分かれています。これは斜面の上の方にあるお風呂で、数人のおじさんたちが談笑しながら湯浴みしていました。コンクリの浴槽の上に簡素な屋根を立てて、低いパーテーションで周りを囲っただけの、至って簡素な半露天風呂です。



これは後述する源泉から引くお湯を中継するための槽です。この中継槽でワンクッション挟むことにより、湯船へ供給するお湯を冷ましているようでした。温泉卵が作れるほど非常に熱いので、ここに入ることはできません。


 
屋台小屋の人たちに挨拶しながら斜面を下ってゆくと、下の方には女性や子ども用の浴場、トイレや更衣室などの個室類、休憩用の小上がりやマッサージルーム、そしてその奥に大きな男性用浴場が設けられていました。飾り気が全くない、地元の人が憩う普段着の温泉です。私が訪れた時には、風呂上がりのおじさんたちがマッサージを受けていました。


 
屋根掛けされた大きな湯船には、崖から伸びるホースより温泉が注がれていました。浴槽自体はコンクリ造の質素なもの。お湯は上述の中継槽から流れてくるのですが、途中で配管が外れており、漏れた温泉によって斜面は赤く染まっていました。


 
ホースの先から出るお湯の温度は55.8℃という高温。さすがにこのままでは入浴できないため、温泉のホースと並行して伸びているもう一本のホースから水も投入されていました。


 
加水によって42.8℃という湯加減に調整されていました。日本人なら「ちょっと熱いかな」という程度ですが、現地の方にとってはこれでもかなり熱いらしく、烏の行水ですぐに上がってしまう方や、苦悶の表情を浮かべながら我慢して入ろうとするものの途中でギブアップして出て行く方もいらっしゃいました。いつもこんな湯加減なのでしょうか。



浴槽がとても広く、しかもそこそこ熱いので、しっかりとした入り応えを楽しめました。前回記事の「ギリティルタ温泉」から徒歩数分という近所にもかかわらず、温泉の質としては全く異なり、こちらのお湯はわかりやすい重炭酸土類泉(もしくは塩化土類泉)の濁り湯です。みちのくの肘折・遠刈田など温泉地に似たタイプのお湯と言ったらわかりやすいでしょうか。具体的には、やや緑色を帯びた黄土色に濁っており、薄い塩味と弱い金気、そして少々の石膏感が得られました。そして湯中ではギシギシと引っかかる浴感が肌に伝わってきました。外気温が高い(30℃近い)ので42〜3℃のお風呂でもかなり熱く感じられ、あまり長湯はできないのですが、しっかりとホールドしてくれる浴感が気持ち良いので、体が逆上せそうになっても後ろ髪を引かれて湯船から出たくなくなるような感覚になりました。なかなか良い湯です。


 
斜面の上へ上がってゆくと自噴するお湯が溜まる源泉の池がもうもうと湯気を上げていました。近づくだけで熱気が伝わって来るこの池に温度計を突っ込んでみたところ、62.9℃という高温が表示されました。こんな池に落ちちゃったら一巻の終わりですね。



源泉の熱湯池の縁は赤くなっていました。これが"Merah"(赤)と言わしめているのでしょう。
水着は必須ですが、ローカルな風情の中で東北の名湯と似たお湯に入れる、穴場的な温泉でした。ちなみにこの周辺にはこの他にも「カワ・ミネラル」などの温泉があるんだとか。残念ながら、今回は時間の関係で行くことができませんでしたが、また次回ジャワ島へ旅したら、今度はそれらにも行ってみたいものです。




入浴料Rp10,000
備品類なし

私の好み:★★★


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パンチャール山温泉群 ギリティルタ・ホットスプリングリゾート

2017年01月28日 | インドネシア
 
ボゴール(Bogor)の東に聳えるパンチャール山(Gunung Pancar)は、自然豊かで且つ首都ジャカルタからのアクセスが良好であるため、山麓にリゾート施設やゴルフ場などが点在しており、現地に滞在する日本人も週末レジャーでこの界隈をよく訪れるんだとか。この山の周辺にも温泉がいくつか湧いているのですが、その中でも「ギリティルタ・ホットスプリングリゾート」(Giritirta Hotspring Resort and Spa。以下「ギリティルタ温泉」)はネット上で日本語の情報がたくさん検索されたので、どんなところか行ってみることにしました。


 
ギリティルタ温泉を含むパンチャール山の各温泉は自然公園のエリア内にあるため、アクセス路の途中に設けられた公園のゲートで入園料を支払います。でも外国人料金Rp100,000って、いくらなんでも高すぎないか! ボッタクられたのかな?



ゲートを入ってしばらく進むと、途中で道が分岐しており、その分岐点には各温泉など様々な看板が立っていました。まっすぐ進むと他の温泉へ行けるようですが、今回はここを左折します。


 
左折するとすぐに未舗装路となるのですが、この道がとっても酷い。いわゆる砂利道なのですが、随所が大きくえぐれており、凸凹も激しくて非常にバンピー。しかも急勾配の登り下りが連続するのです。パワーの弱いセダンだったら途中で立ち往生しちゃうかも。とてもリゾートと名乗る施設へのアクセス路だとは思えません。途中に立つ看板で更に左折するのですが、奥へ行けば行くほど道が狭くなり、荒れ具合も悪化し、この道で本当に大丈夫なのか心配になってきます。


 
訪問時は薄曇りだったので路面の砂利は乾いていましたが、とんでもなく荒れた勾配路なので、もし雨が降ったら車高の高い四駆車以外はアクセスできないかもしれません。それほどの悪路をひたすら進んで行くのです。
心配な面持ちで車に乗る当方を、路傍で草を食む水牛が呑気に見つめていました。


 
自然公園のゲートから約20分で「ギリティルタ温泉」に到着です。


 
熱帯雨林と棚田に囲まれたとても麗しい環境です。悪路の先にある施設とは思えないほど建物は綺麗で、スタッフの対応もしっかりしています。レセプションで入浴したい旨を伝え、料金を支払うと、スタッフが貸切風呂へと案内してくれました。



山の斜面に広がる敷地内にはいくつもの貸切風呂が設けられており、それぞれには目隠しの塀が立てられていますので、お風呂の中では思い思いのスタイルで入浴することができます。



今回私が通された貸切露天風呂はこちら。トロピカルな植物に囲まれてリゾート感たっぷり。


 
各露天風呂にはシャワーというか打たせ湯があり、バルブを開けるとれっきとした温泉のお湯が出てきました。またお風呂の脇には、能舞台みたいな板敷きの東屋が建てられていますので、湯船から上がった後に、そこでのんびり過ごすこともできます。


 

ハート形の石風呂は2〜3人ほど入れそうなほど余裕があり、肩までしっかり浸かれる深さも確保されているので、入り応え充分。湯加減も42.5℃というインドネシアでは珍しい高温なので、お風呂にうるさい日本人でも満足できるかと思います。なおpH値は8.06でしたので、弱アルカリと言えるでしょう。
湯船のお湯は暗い青白色に微濁しています。お湯は全量完全掛け流し。湯船を満たしたお湯は惜しげもなく排水口から捨てられていました。


 
筧から注がれるお湯の温度は43.5℃。薄い塩味と石膏系の味が感じられますが、匂いはあまり嗅ぎとれませんでした(強いて言えば石膏臭があったかも)。湯中では弱いツルスベ浴感とともに、土類泉のようなグリップも得られました。


 
掛け流しのお湯が注がれる広い露天風呂。貸切ですから誰にも邪魔されず裸で入れるし、足はしっかり伸ばせるし、湯加減も良い。そして周囲の自然も麗しい。うん、とっても気持ち良いぞ。フルーツを絞った美味しいジュースのサービスもあり、湯浴み中は極楽気分でくつろげました。これでアクセス路が良ければ皆さんにおすすめしたいのですが、それにしてもあの道はひどすぎる…。


●奥の方を探索
 
お風呂を満喫した後、山の傾斜地に広がるリゾート内の中を散歩していると、坂道を登った奥へ方で、何やら怪しい建物を発見。リゾートというポジティヴイメージな言葉とは縁遠い地味で薄汚れたな建物の中を覗いてみたら、なんとそこは浴室だったのでした。内部には大きな浴槽が設けられており、中は空っぽでしたが、でも配管からはお湯が出続けていました。



その隣の部屋にはもっと大きな浴槽が据えられ、こちらにはお湯が張られていました。そして温泉が勢い良く供給されていました。これは地元民用のお風呂なのかな? 言葉がわからない私は、面倒なことに巻き込まれたくなかったので、ここでは湯浴みせず見学だけにしておきましたが、このお風呂は一体何なんだろう?


 
「ギリティルタ温泉」に引かれている温泉は、周囲の源泉からお湯を集めているらしく、上述の薄暗い浴室棟から更に山を登ると、温泉を集めてストックする中継槽が数ヶ所設置されていました。先ほど私が入った露天風呂のお湯もここから供給されていたのでしょう。なお「ギリティルタ」はあくまでリゾート施設名であり、現地ではこの温泉を"Kawah Hitam"と呼んでいるんだとか。Google翻訳によれば"Kawah"は火口やクレーター、"Hitam"は黒色を意味するそうです。直訳の「黒い火口」では意味が通らないので、おそらく暗い青色を帯びて見えるこの温泉の色合いをそのように表現しているのでしょう。言われてみれば、上画像の中継槽に溜まっている温泉は、ちょっぴり黒く見えますね。


Taman Victoria, Jl. Mahkota Raja No. 76 Babakan Madang Sentul City

ホームページ

入浴料Rp70,000
(宿泊も可能)

私の好み:★★+0.5
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ボゴール郊外 ティルタサニタ温泉群 グヌン・プヤッ

2017年01月26日 | インドネシア

「ティルタサニタ公園」の周辺にはもっと面白い温泉(しかも野湯)があるらしいので、事前の情報に基づいて、公園や「グヌン・パンジャン」のゲートが面する道路を更に奥へ進むことにしました。すると、やがて上画像のようなゲートを潜ります。


 
ゲートの両側に描かれたサインから推測するに、ここはどうやら化学兵器・生物兵器そして放射能兵器を取り扱う陸軍部隊の駐屯地のようです。


 
外国軍隊の駐屯地前を歩くだなんて滅多に体験しませんし、しかも厄介なものを扱う特別な部隊なので、面倒なことに巻こまれないかと心細くなり、妙に緊張しながら一人でこの道を歩いたのですが、そんな私を尻目にバイクや車などに乗った地域住民が、砂埃を上げながらごく普通に往来していたので、その様子を見て、私の緊張も徐々に解けていきました。キャンプ正門には、ガスマスクを装着した兵士の像が立っており、この部隊の役割を端的に表していました。


 
兵営の角に立つライムグリーンに塗られた門柱が今回の目的地の目印。この門から路地に入って、東へ進みます。路地の左手には兵舎と思しき平屋の長屋が建ち並んでいましたが、その長屋が尽きるあたりで路地は急に細くなり、土が剥き出しの杣道となってしまいました。


 
畑の脇を進みながら丘を下ると、養魚場と思しき溜池のあぜ道へとつながりました。


  
溜め池の向こうに目的地である石灰華ドーム「グヌン・プヤッ(Gunung Peyek)」が見えてきました。池を仕切るあぜ道は田の字状に築かれていますので、適当に道を選びながらその石灰華ドームへと近づいてゆきます。インドネシア語で"Gunung"は山のことですが、"Peyek"は「凹み」という意味なんだそうです。何がどのように凹んでいるのでしょうか。

あぜ道は池に水を通すため所々で切り刻まれており、橋の代わりに丸太や太い木の幹などが架けられている箇所もあるのですが、たまに何も架けられていない所もあるので、道のチョイスを誤ると、走り幅跳び感覚で水路を飛び越すか、あるいは来た道を戻って別の道へ迂回しなければなりません。まるで迷路のような感覚であぜ道を進んでゆくと、視界に入る「グヌン・プヤッ」が徐々に大きくなってきました。



日本だったら観光名所になりそうなほど巨大な石灰華ドームです。高さ3~4m、幅30~40mはあるでしょう。こりゃ凄い!


 
細かな鱗状の模様が形成されている側面では、上から水が滴り落ちています。私が行きたいのは、その滴りの源流です。ドームの左端には踏み跡があったので、そこからドームの上へ登ってみました。



溜め池群を見下ろす眺望の良いドームの上は、広くて真っ平らなテーブル状になっており、そのど真ん中には真円形の水たまりが複数ありました。先程の滴りの源はこの穴で間違いないでしょう。そして地名に含まれる"Peyek"(凹み)とはこの穴を指しているのでしょうね。


 
穴はそれぞれ大きさが異なり、最も大きな穴の水は澄んでいますが、他ではメロンカルピスみたいな濁りを呈しています。直径1.5mほどある最も大きな穴に近づいてみますと、底面の穴から気泡をあげて温泉が自噴していました。この穴が源泉であり、他の小さな穴はここから流れてくるお湯を受けているに過ぎないため、その過程でお湯が濁ってしまうのでしょう。それにしても、こんな綺麗な円形の水溜りが自然に形成されるはずがないので、おそらく元々自然湧出していた箇所を人為的に削って、入浴できるくらい穴を作ったのでしょうね。


 
湧出箇所に測定器を突っ込んだところ、温度は36.3℃、pH値は6.22と表示されました。いずれの数値も「ティルタサニタ公園」や「グヌン・パンジャン」と似たような感じですね。お湯からはタマゴ臭が漂い、口に含んでみますと、タマゴ味とともに前2者よりも更に強い鹹味が感じられました。お湯の知覚的特徴もやはり前2者と似ていますが、塩味に関してはここが最も辛いように思われます。



最も大きな穴で入浴中の私。穴の大きさも深さもいい塩梅で極楽至極。お湯は濁りが一切ない湧きたての超フレッシュ。しかも高台なので眺めも良好。桃源郷で湯浴みをしている気分です。
なおこのドームを形成するトラバーチンは、熱帯の直射日光を受けて熱々になっており、しかも穴から漏れ出る温泉で表面がドロドロになっていますので、当地を訪れる際はサンダルを持参することをおすすめします。


 
「ティルタサニタ公園」「グヌン・パンジャン」と比べて大きく異なるのは、この温泉では炭酸ガスが非常に多くみられること。もちろん前2者の源泉でも、ものすごい石灰華を生み出しているわけですから、当然ながら炭酸ガスが多いはずなのですが、浴槽へ注がれるまでの過程で相当量が飛んでいってしまうため、炭酸が含まれていることをあまり実感できません。しかしながら、ここでは湯船の中で湧出していますから、まだ外気の影響を受けておらず、大気中に飛ぶ前の炭酸ガスを思いっきり体感することができるのです。実際に入浴しますと、全身がものすごい泡付きで覆われました。試しに腕に着いた泡に指先で「アワ」と書いてみましたが、この小さい画像でも2文字がはっきりと見えますよね。

開放的で眺めが良いというロケーション面はもちろん、石灰華ドームで野湯できるという珍しさ、そして塩辛くて硫黄らしさもはっきり現れているのに遊離炭酸も非常に多いという、日本ではなかなかお目にかかれない個性的な泉質も珍しい、稀有なもの尽くしのブリリアントな野湯でした。




野湯につき24時間入浴可能
無料
備品類なし

私の好み:★★★
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ボゴール郊外 ティルタサニタ温泉群 グヌン・パンジャン

2017年01月24日 | インドネシア

続いては、前回記事で取り上げた「ティルタサニタ公園」の向かいにある温泉露天風呂「グヌン・パンジャン」(Gunung Panjang)を訪れることにしました。
まずは上画像の横断幕が掛かっているゲートで、小屋の下にいるおじさんに入園料Rp10,000を支払います。ゲートのまわりにはワルン(屋台の小屋)が並んでいるので、ドリンク類や簡単なおつまみ程度なら現地で調達可能です。


 
入園した先にある階段で丘の上へ登り、小径の左手に建つ祈祷小屋の脇を抜けてゆくと・・・



俄然視界が開けて、周囲の田園風景を見下ろす絶景が広がりました。この見晴台に温泉露天風呂があるのです。


 
露天風呂自体は極めて質素な作りですが、浴槽はいくつかに分かれており、なかでも主浴槽はプールのように広々しています。お風呂の一部にはビニールシートを継ぎ接ぎした即席のテントが張ってありますので、この下に入れば赤道直下の鋭い陽光を遮って湯浴みすることができます。テントの手作り感がなんとも言えないローカルな風情を醸し出していますね。私が訪問した時には、地元の若者たちが着衣のまま温泉に入って談笑していました。


 
先ほどのゲートで入園料を支払いましたが、入浴する際には別途Rp5,000を、お風呂の前で店番しているお爺さんに支払います。ここには温泉露天風呂以外に客が利用できるような施設はないのですが、なぜゲートで一括徴収せず、このように支払いを分けているのかは不明。ま、なんらかの権利関係が存在しているのでしょうね。私が料金を支払ってしばらくすると、お爺さんは乾燥させた真っ白いココナツの粉の袋詰め作業をはじめました。


 

露天風呂は丘の斜面に沿って緩やかな段々状になっています。最上段には2つの小さな浴槽が並び、そこへパイプから温泉が注がれていました。パイプから出てくるお湯を口に含んでみると、「ティルタサニタ公園」の個室風呂と同様に、非常に塩辛く、そして刺激を伴う硫化水素臭が感じられました。
パイプに温度計を突っ込んでみると、吐出時の湯温は40.6℃。すでにこの時点でかなりぬるめですから、浴槽では40℃未満です。でも赤道直下の常夏ですから、むしろこの温度でも数分浸かるとしっかり温まります。二つの浴槽は、一般的な浴槽よりやや深い作りなので、肩までしっかり浸かることのでき、しかも全浴槽の中で最も湯温が高いため、日本人でも入り応えがあるお風呂と言えるでしょう。



最上段の露天の隣にはテントで囲われた掘っ立て小屋があり、内部は2つの部屋に分かれています。一つは更衣室なのですが、もうひとつは小さな内湯となっていました。でも前回記事で取り上げた「ティルタサニタ公園」の個室風呂と同様、浴槽はカルシウムで分厚く覆われて非常に狭くなっているため、浴槽としての機能を果たしておらず、単なる掛け湯用の湯壷と化していました。


 
小屋に隣接した副浴槽は38℃で、熱くもなくぬるくもない、長湯向けの絶妙な湯加減です。最上段の湯船から流れてくるお湯を受けているほか、岩から伸びる細いパイプからもお湯が注がれており、どうやらこの丘の岩盤のあちこちからお湯が湧出しているようでした。浴槽の底には湯泥が溜まっており、上画像のように手で掬うことができました。


 
副浴槽の隣が、絶景を眺めながら湯浴みできる主浴槽です。


 
上から流れてくるお湯を受けているため、湯温は34℃とかなりぬるめ。でも日中はとても暑いので、むしろこのくらいの温度の方が気持ちよいんですね。ちなみにpH値は6.56でした。お湯は、湧出時こそ無色透明ですが、空気に触れると濁り始め、この露天風呂では緑色を帯びた灰白色に強く濁っていました。


 
東南アジアらしい麗しの景色を眺めながら主浴槽で湯浴みする私。あぁ絶景哉。34℃のぬる湯ですが、塩辛い温泉ですので意外にも体がよく温まります。
この主浴槽の更に下段には、プールみたいに広い槽があるのですが、そこの温泉水は完全に冷めており、しかも不気味に濁っていたので、今回は入っておりません。


 
しかしながら、その下段の冷めきっている広い槽の近くには、このようにテント掛けされた一人サイズの小さな槽があり、温度を測ってみたら37.6℃というそこそこの温度でした。どうやらこの小さな湯溜まりは独自の源泉を有しているようです。先述したように丘の斜面ではあちこちでお湯が湧いているわけですね。
ボゴールから車で約1時間の田舎ですが、ジャカルタからも同じく車で1時間半でアクセス可(渋滞にはまるとこの限りではありませんが…)。プリミティブな作りの鄙びた雰囲気も魅力的な、自然溢れる麗しの素晴らしい温泉露天風呂でした。




入園料Rp10,000、入浴料Rp5,000
備品類なし

私の好み:★★★

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ボゴール郊外 ティルタサニタ温泉群 ティルタサニタ公園

2017年01月22日 | インドネシア
環太平洋火山帯の真上に位置する島国インドネシアでは、各地で火山活動がみられますが、火山が多いということは地熱資源が豊かであるということでもあり、その副産物である温泉もたくさん湧いているわけです。昨年(2016年)10月にインドネシアのジャワ島とバリ島で温泉巡りをしてきましたので、今回記事からインドネシアの温泉について取り上げてまいります。まずは首都ジャカルタを擁するジャワ島の温泉からスタートすることにします。
首都ジャカルタ(Jakarta)の南部にある人口100万の都市ボゴール(Bogor)。周囲に山が聳えるこの都市の周りには、個性的で面白い温泉が点在しています。ボゴールの中心部から約30kmほど北西へ向かった片田舎にあるティルタサニタ(Tirta Sanita)には、半径1kmの範囲内に興味深い温泉が固まっていますので、それらをハシゴすることにしました。


 
はじめに訪れたのは、こんもり盛り上がった丘を中心にして敷地が広がっている「ティルタサニタ公園」です。ゲートで入園料のRp12,000を支払い、半券をもらって園内へ入ります。


 
園内には子供用のプールや各種遊具がありましたから、地域の方々にとっては小さな遊園地みたいな施設なのでしょうね。



ゲートから伸びる園内通路を歩いて公園の中心に行くと、上画像のような巨大な石灰華ドームが現れました。このドームはグヌン・カプール(Gunung Kapur)と称するらしく、この公園のシンボルとなっています。重炭酸やカルシウムを多く含む温泉が湧出することによって、このような巨大な石灰華ドームが形成されたのでしょうけど、現在はお湯が止まっていますので、これ以上トラバーチンが成長することは無さそうです。


 
お湯が止まっているとはいえ、そのまま風化させてシンボルを失うことは避けたいのか、現在は上からホースで水をチョロチョロ流し、表面を湿らせていました。


 
園内で静かに水を湛える池の上にはレストラン(左or上画像)が設けられていたのですが、訪問時は池の周囲にバリケードが張り巡らされており、レストランなど池周辺の施設に立ち入ることはできませんでした。この池の先にはVIP個室風呂(右or下画像)と称する施設もあるようですが、こちらもバリケードの向こう側にあるため閉鎖中でした。



さて、上述の池を左に見ながら、巨大な石灰華ドームの左手にまわって奥の方へ進むと、上画像の建物に行き当たります。ここが今回の目的地である入浴施設です。池の上にある閉鎖中の個室風呂棟はVIPというクラスでしたが、こちらの等級はスタンダートなんだとか。玄関で靴を脱いで入館し、正面の受付で料金を支払うと、スタッフの女性が私の手首に赤いリボンを巻きました。どうやら支払い済証の代わりのようです。


 
ここは個室風呂専門の施設。個室はRp9,000とRp12,000という2種類の料金別に分かれているのですが、今回は後者を選択しました。廊下の両側に個室風呂がズラリと並んでいます。この廊下を歩いていると、岩手県の国見温泉みたいなツーンとくる刺激を伴う硫化水素臭が香ってきました。その匂いを嗅ぐと、期待に胸を膨らまさずにはいられません。



私が案内された部屋は9号室。2畳くらいの狭くて飾り気のない個室の中には、浴槽がひとつあるだけ。シャワーや腰掛けなどの備品類は皆無。壁の高さ約1.7mのところに釘が何本が打ち付けられているのですが、これは衣類を引っ掛けるためのものでしょう。このような質素な構造は、台湾やタイの個室風呂を連想させます。国や文化を問わず、モンスーンアジアではどこでも似たような個室風呂を造るんですね。Rp12,000でこの狭さなのですから、これより安い部屋はどれだけ狭いのかな?
でも、そんな狭さなんてここではどうでも良いのです。入室時の浴槽には既にお湯が張られていましたのですが、この湯船がすごい! 公園のシンボルである石灰華ドームを彷彿とさせるほど、全体が細かな鱗状の分厚く白い石灰華で覆われて、元の素材が全く分からないほどコンモリと盛り上がっているのです。その姿を目にして思わず「すげーーっ」と絶叫してしまいました。


 
無造作に削った壁から突き出ているパイプより温泉が注がれており、その雫が垂れる湯口直下には鱗状の模様を描きながら、小さな石灰華ドームが形成されていました。ここではお湯に触れる箇所全てが石灰華で覆われてしまうのです。


 
湯船の温度は40.1℃でpH値は6.49。湯口のお湯をテイスティングしますと非常に強い鹹味にビックリ。もしかしたら海水よりも塩分が濃いかもしれません。そして先述したように刺激を伴う硫化水素臭がはっきりと香ってきます。


 
浴槽は1人サイズですが、日本の湯船に比べるとかなり浅く、肩まで浸かろうとすると、思いっきり寝そべらないといけません。もしかしたら、元々はちゃんとした深さがあったものの、石灰華が分厚く付着することによって浅くなっちゃったのかもしれませんね。上画像で私が入っているような向きならば2人入れるかもしれませんが、この向きではとにかく浅いので、湯浴みした気分にはなれないかも。
先述したように湯船は40℃というぬるいお湯ですから、つい長湯したくなるのですが、非常に塩辛いお湯であるため、この程度の湯加減でも十分に火照り、10分も浸かっていると汗が止まらなくなりました。室内には「入浴時間15〜20分」と記されたプレートが掲示されていたのですが、なるほど、その時間設定には十分納得できます。
プリミティブな作りのお風呂ですから、循環ろ過なんてできるはずもなく、全量完全掛け流しの湯使いです。湯船のお湯は縁の上を越えて床へと流れ落ちてゆくのですが、そのオーバーフローによって、浴槽の側面には白くて美しい鱗状の模様が生み出されていたのでした。

硫化水素とカルシウムの両者を一緒に多く含む強食塩泉って、日本ではお目にかかれませんよね。泉質面で珍しいのみならず、石灰華が産み出した温泉造形美も楽しめる、マニアには堪らない温泉でした。個室風呂なので水着を着用せず裸で入浴できるのも嬉しいところです。


Jalan Raya Ciseeng, Desa Bojong Indah, Kecamatan Parung, Bogor


公園入園料Rp12,000
個室風呂はRp9,000かRp12,000のいずれかを選択。
備品類なし

私の好み:★★+0.5
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