温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

某所 ヒューム管の硫黄泉風呂

2023年06月28日 | 長野県

(2022年7月・8月訪問)
梅雨がまだ明けていないというのに、東京をはじめ全国的に真夏のような暑さが続く今日この頃。
仕事が忙しくて遠くへ出かけられないので、せめて昨年出かけた高原の画像でも見て、その時の気分を思い出しながら、束の間の現実逃避を試みたいと思います。

具体的な場所の説明は敢えて避けますが、上画像の場所は既にある程度の知名度を有しているらしく、昨年私が二度訪ねた際は、いずれも先客と後客がいらっしゃったほどです。
付近の源泉施設から温泉が排出されており、沢水と一緒にヒューム管に流れ込んで、うまい具合に露天風呂となっているのです。あたりには硫黄の香りが立ち込めており、オーバーフローで周囲の地面や石ころは白く染まっています。


排出口の温度は52.6℃ですので、このままでは熱くて入れません。
そこで、直下の管から吐出している沢水を混ぜて湯加減を調整するわけです。


訪問時のヒューム管湯船は40.3℃という絶妙な湯加減でしたが、おそらく先客が調整してくれたのではないかと思われます。うまく調整しないと沢水の量が多くなってかなりぬるくなってしまう一方、沢水を湯船の外へ逃がし続けると、当然熱くて入浴できなくなっちゃいます。
人によっては、わざわざパイプに接続できる太いホースを持参し、沢水を入れたり逃がしたりを繰り返しながら、湯加減をしているそうです。ヒューム管を据え付けてお湯や水の管を敷設した方はもちろん、ホースを持参して湯加減を調整してくれる先人がいらっしゃるからこそ、横着者の私は手ぶらで楽しめるわけで、このような先人に感謝です。


場合によってはこのようにお湯が灰色に濁ったりします。
底に硫黄の湯泥が溜まっているため、利用者が多いとこのように濁るのでしょう。
硫黄臭漂うこの温泉は、苦みを伴う硫黄味が強く、本格的な硫黄泉です。
都会の猛暑とは無縁の、高原の爽やかな風を受けながら、開放的なロケーションで湯あみする硫黄泉は最高です。
ただ、環境が環境だけに、ブヨやアブに刺される可能性がありますので、その点はご注意を。


24時間利用可能
無料
マナーを守って湯浴みを楽しみましょう。
ゴミを散らかしたり、場所を荒らしたりなど、決してなさらないように。

私の好み:★★★

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コメント (2)
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志賀高原 木戸池温泉ホテル

2023年06月19日 | 長野県

(2022年6月訪問)
下界が暑くなると標高が高いところへ避暑したくなるものです。まだ梅雨が明けやらぬ2022年6月下旬某日、東京の蒸し暑さに音を上げた私は信州の志賀高原へ逃げ、冷涼な空気に抱かれながら束の間の休息を得たのですが、その際に日帰り入浴で立ち寄ったのが「木戸池温泉ホテル」です。


その名の通り、志賀高原で静かに水を湛える木戸池の池畔に位置しており、周囲はとても爽やかな環境です。


昭和の高度経済成長期に流行った団体客向けのホテルを思わせる建物で、館内もやはりその当時の面影が色濃く残っていますが、綺麗にメンテナンスされており、スタッフの方の対応も明るく丁寧です。私がフロントで日帰り入浴をお願いすると快く受け入れてくださいました。


館内の通路を進んで浴室へ。お風呂は男女別の内湯のみで露天風呂はありません。浴場もやはり昭和のレジャー施設という雰囲気が強いのですが、ちゃんと清掃が行き届いていますし、かなり広いので、気持ち良く利用できました。


コバルトブルーのタイルが貼られた浴槽に温泉が張られ、しっかりかけ流されています。なお浴槽はこの一つです。


湯口から落とされる温泉は、お宿の説明によれば2つの源泉をブレンドしているんだとか。片方の源泉は26℃、他方は70℃で、両者を混ぜることによって加温や加水、さらには循環やろ過などを行うことない掛け流しを実現させているそうです。

実際に私が湯船に入ってみますと、お湯は無色透明でほぼ無味無臭。あまりにアッサリしており、癖が全くなく、優しくて入りやすいお湯ではありますが、温泉に求めたくなるような香りなどの特徴が無いので、人によっては物足りなく感じるかもしれません。館内に掲示されている分析表の下部には、分析対象の本温泉について「以上は温泉が巣を井水へ熱交換したものにつき、分湯枡において分析をおこなった結果である(熱交換時に微量の温泉ガス混入あり)」と記されており、つまり漢字三文字で表現しちゃうと「造成泉」ということになるかと思います。熱交換でつくられた造成泉ゆえに癖が無くアッサリしているのでしょう。お湯に対する満足度は人それぞれですが、肌の弱い方や匂いなどに過敏な方にはこのようなアッサリしたお湯だと入りやすいかと思います。付近には「熊の湯」という個性の強い温泉がありますから、それとは好対照なアッサリ系のお湯というのも有難い存在です。

なお脱衣室にはコインランドリーがあるので、宿泊利用の場合は、トレッキングやスキーなど志賀高原でのアクティビティ後に洗濯することもできますね。


お風呂上がりはご当地の冷水で喉を潤しました。うまい!


お風呂から上がって気分爽快になった私は、付近をお散歩。
下界と違って実に涼しくて爽やかです。


シラカバの近くで咲く高原のシャクナゲも綺麗。
東京に戻りたくないなぁ。


熊の湯 平床の湯
単純温泉 65.8℃ pH6.5 溶存物質0.0989g/kg 成分総計0.1089g/kg
Na+:4.0mg(20.02mval%), Ca++:10.1mg(58.90mval%),
HS-:0.4mg, S2O3--:0.1mg, SO4--:20.6mg(50.95mval%), HCO3-:20.3mg(39.10mval%),
H2SiO3:37.5mg, H2S:1.4mg,
(平成26年10月3日)
加温加水循環消毒なし

長野県下高井郡山ノ内町平穏7148
0269-34-2821
公式サイト

日帰り入浴14:00~18:00
700円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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長嶺温泉

2023年06月13日 | 長野県

(2022年6月訪問)
至る所に温泉が湧いている信州は、多少無計画に巡ってもそれなりの温泉に出会えるのが嬉しいところ。今回は北信の中野市にある温泉旅館「長嶺温泉」を訪ねます。中野市の北部、飯山市との境界に近い場所にあり、国道292号からちょっと西へ入った集落の中に上画像のような年季の入った建物が建っています。初めて訪問する私は、建物の草臥れ方、建物の周囲に設置された謎の立像、そして館内の薄暗さを目にし、ちょっと不安を覚えたのですが、玄関の中の様子を窺うとどうやら営業しているらしく、玄関の引き戸に手を掛けたらちゃんと開いたのでまずはひと安心。こちらのお宿は地域の公衆浴場的な役割も果たしており、日帰り入浴を積極的に受け入れていますので、私も今回は入浴のみ利用させていただきました。番台前に置かれている小さな券売機で湯銭を支払い、番台のお婆ちゃんに券を渡して、奥の浴場へと進みます。


館内の廊下にはこけしをはじめいろんな種類の人形が数多く陳列されており、その前を進んで浴室へ向かいます。
余談ですが、飾られている人形にそこはかとない恐怖心を抱いてしまうのは私だけでしょうか。たくさんの目がこちらを向いているからなのか、あるいは人形にまつわる怪談話に洗脳されてしまったのか、何が怖いのかはっきりとわからないのですが、とにかくこの長嶺温泉の館内で私は人形たちから逃れるように、足早にお風呂へ向かったのでした(良かれと思って陳列なさっている温泉の方には申し訳なく思っております)。

男女別の内湯も30年以上も時が止まったかのような佇まいなので、昭和末期や平成初期の感覚を好む方は思わずニンマリしてしまうかもしれません。長野県というより青森県の鄙びた温泉銭湯を彷彿とさせる雰囲気です。
室内には浴槽がひとつ据えられ、手前側に洗い場が配置されています。


洗い場にはシャワー付き水栓が7基取り付けられており、カランからは源泉のお湯が出てきます。温泉を頭から浴びたい方には嬉しいシャワーですね。


カエルが侍らう湯口からは、金気を伴う食塩泉が加温された状態で吐出され、循環されることのない放流式の湯使いで、浴槽の縁からしっかりオーバーフローしています。お湯は淡いレモン色を帯びており、湯口から出てくるお湯をテイスティングしてみると、薄い塩味と金気味、そして金気の香りが感じられます。またほんのりとゴムのような風味も伝わってきます。特に金気の匂いは湯口のみならず、湯船のお湯を体にかけるだけでもわかるほど、はっきりと香ってきます。

湯船に浸かると肌に気泡が付着し、弱いながらもツルスベの滑らかな浴感が得られます。源泉温度が40℃未満なので上述のように加温した上でかけ流しているのですが、加温が控えめなので、逆上せを気にせずのんびり寛いで湯浴みできました。


内湯から出て退館しようとした際、ふと目にはいってきたのがこの暖簾。内湯とは別にお風呂があるのか。しかも露天と書かれているではないか。せっかくなのでこの露天風呂にも入ってみることに。なお内湯と異なり利用可能時間がちょっと変則的で、平日と土曜日は17:00~21:00、日曜と祝日は10:00~21:00なんだとか。


屋根がほとんど無くて開放的な露天風呂。周囲は塀に囲まれており、集落の隅っこにあるため視界には民家が入ってきますが、でも塀の向こうには北信の田園風景が広がり、遠方に聳える山々も望めてとっても爽快です。なお露天風呂に張られているお湯は内湯と同じ源泉ですが、湯船の大きさに対してお湯の投入量があまり多くないためか、お湯の鮮度感は内湯の方が良かったように記憶しています。


露天風呂にもカランがあり、もちろん源泉のお湯が出てきますので、もし内湯のカランが混んでいたら、こちらを利用するのも良いかもしれません。

冒頭で申し上げたように私は日帰り入浴で利用しましたが、温泉旅館ですから宿泊利用も当然可能であり、素泊まりだと1泊4,000円、朝食付きでも4,950円という驚きの価格設定となっています。北信には名湯が多くて温泉旅館もたくさんあるので、温泉地でもない当地が宿泊先の候補になることはなかなか無いかと思いますが、車で当地を移動し且つリーズナブルに泊まりたい場合は、意外と有力な候補になり得るかもしれません。


ナトリウム-塩化物温泉 39.0℃ pH7.8 湧出量未測定(掘削動力揚湯) 溶存物質1.007g/kg 成分総計1.009g/kg
Na+:211.7mg(70.96mval%), Ca++:39.5mg(15.18mval%), Fe++:0.4mg,
Cl-:452.6mg(81.75mval%), Br-:1.9mg, I-:0.8mg, HCO3-:155.6mg(16.33mval%),
H2SiO3:81.1mg, HBO2:14.3mg, CO2:2.4mg, H2S:0.2mg,
(平成28年10月26日)
加温あり
加水循環消毒なし

長野県中野市田麦338
0269-26-1010

10:00~22:00 無休
400円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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伊東温泉 東海館

2023年06月06日 | 静岡県

(2022年6月訪問)
たまには観光客向けの施設も取り上げてみましょう。伊東温泉の真ん中を貫きながら流れる松川に沿って、歴史ある重厚な旅館建築が並んでいるのは皆さまご存知の通りかと思います。以前拙ブログでは「K'sハウス(旧いな葉)」を取り上げたことがありますが、今回はその隣にある「東海館」をご紹介します。
昭和3年(1928)年に開業した「東海館」は、戦前までに何度か増築が繰り返され、戦後まもなく望楼も建てられてたんだそうです。昭和初期の立派な木造3階建ては、余多ある伊東の旅館建築の中でも群を抜いた存在感を放っており、誰しもが足を止めて眺めてしまうことでしょう。1997年に旅館としての営業を終えた後、2001年に伊東市へ寄贈されて観光施設となり、入館料を支払うことで館内を見学できるようになりました。しかもこの施設のすごいところは、旅館時代のお風呂で掛け流しの温泉に入れるのです。お宿や建物についての詳しい説明はネット上に多くの記事がございますので、関心がある方はご自身で検索していただくとして、今回の記事ではお風呂を中心に取り上げてまいります。


まぁなんて立派な唐破風だこと。透かし彫りも素晴らしいですね。


さて玄関に入り、かつての帳場と思しき受付でお風呂に入りたい旨を申し出て、所定の料金を支払います。


中庭を横目に見ながら・・・


廊下を右の方へ向かうと突き当たりに浴場が2つあります。浴場は大小に分かれており、時間帯によって男女の暖簾が入れ替わります。具体的には以下の通りです。

 大浴場:男湯→11:00~12:45、15:00~16:45
 大浴場:女湯→13:00~14:45、17:00~19:00

 小浴場:男湯→13:00~14:45、17:00~19:00
 小浴場:女湯→11:00~12:45、15:00~16:45

私の訪問時には大きなお風呂に男湯の札が下がっていましたので、以下の記事では大浴場についてご紹介します。


更衣室もシンプルながらなんとなく風情が良いんですね。おそらくは骨董品のような清酒白雪の鏡がレトロな雰囲気を醸し出しているのでしょう。レトロなんだけどしっかりお手入れされているので、大変気持ち良く使えます。


さすが老舗旅館のお風呂だけあり、総タイル張りの浴室も実に秀麗。
大浴場には丸い浴槽がひとつ据えられており、(上画像には写っていませんが)窓側の壁に沿ってシャワー付きカランがいくつか並んでいます。


黒い唐獅子の湯口から伊東のお湯が投入されており、浴槽を満たした温泉は縁からしっかりオーバーフローしています。分析表によれば源泉温度が30℃を下回っているため、当然ながら加温した上での掛け流しでしょう。お湯の特徴は無色透明でほぼ無味無臭。湯船に入るとお湯の柔らかさを実感できるのですが、もう少し加温を抑えてくれると嬉しいかな、と感じました(つまり私が利用した時の湯船はちょっと熱めでした)。とはいえ、昭和の老舗名旅館の館内を見学できるだけでなく、実際にお風呂に入ることで、当時の宿泊客に想いを馳せることができるわけですから、こうしてお風呂が利用できる点は、温泉の文化を理解するためにも大変素晴らしいのではないでしょうか。


せっかくなのでお風呂上がりに館内を見学させていただきました。
雁行型の廊下を歩きながら、かつて湯浴み客が泊まった客室の前を通り過ぎます。


こちらも客室の一つ。一見すると普通の客室に思えますが、檜の他、紫檀や黒檀など、値の張る木材を多用しているんですね。


一部の客室は伊東にまつわる歴史の資料館となっているんですね。ここは三浦按針のお部屋。


そしてこの部屋は東郷平八郎。


3階にあるこの大座敷は圧巻。なんと120畳もあるんだとか。
広さだけでなく、欄間の細工、そして一枚の板に彫られた舞台両袖の彫刻にも心を奪われます。
目を瞑ると、三味線の音と芸者さんの歌声が聞こえてきそうですね。


松原25号泉
アルカリ性単純温泉 25.8℃ pH8.7 成分総計0.433g/kg
Na+:133.2mg,
Cl-:120.7mg, SO4--:81.3mg, HCO3-:72.4mg,
(平成23年8月16日)
加水循環消毒なし
加温あり(温度調整のため)

静岡県伊東市東松原町12-10
0557-36-2004
紹介ページ

入浴時間は上記本文をご参照ください
500円
ドライヤー、シャンプー類あり

私の好み:★★+0.5

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