鹿児島県さつま町の中心部である宮之城地区から車で10分ほど離れた田園地帯に位置する宮之城温泉は、温泉地にしては妙に整然とした区画割りが施されているのですが、某フリー百科事典によれば昭和47年の水害によって温泉街の建物が流出しちゃったため、その後新たに整備されたエリアが現在の温泉街なんだそうです。
今回訪れたのは、真っすぐ伸びて幅員も広いメインストリートから一本裏路地に入った角に建つ「ちさと別館」です。ちょうど「旅館ちさと」本館の裏手に当たります。本館の方で入浴を乞うたのですが、スタッフの方から別館を利用するように案内されたので、それに従ってこちらを訪れたのでした。
訪問時、ガラス窓に囲まれた番台は無人でした。カウンターに開けられた穴に100円玉を納めて中へと入ります。本当に100円で良いのかしら。とてもワンコインで利用できそうな施設とは思えないしっかりとした建物なので、ついつい恐縮しちゃいます。
西部劇に出てきそうなスイングドア(バネで勝手に閉まる扉)を開けて脱衣室に入ります。室内はウッディな造りで、さすが旅館が運営しているだけあって綺麗に維持されています。洗面台にはコインタイマーが取り付けられているのですが、タイマーの先にあるはずのドライヤーは存在していませんでした。
ウッディーな脱衣室とは打って変わって、赤みを帯びた石板が全面に貼られている浴室。戸を開けて入った瞬間、ふんわりとした硫黄の匂いとともに、石膏泉のお風呂によくある独特な匂いが鼻を突いてきました(石膏泉じゃないから、何か別のものの匂いなんでしょうけど)。シャワー付き混合水栓が室内の左右に分かれて計3基設置されており、各カランからは源泉のお湯が出てきます。
室内に漂う温泉の硫黄のためか、水道の蛇口は硫化して黒く変色していました。一方、シャワーの水栓金具には腐食を防ぐコーティングが施されているためか、特に変色などは見られず、カルシウムと思しき白く粉をふいているだけでした。
浴槽は3~4人サイズで、室内内装と同様に石板貼り。湯口からは直に触れないほど熱い(加水が無いと思われる)源泉が出ているのですが、源泉をドバドバ投入しちゃうと湯船が熱くなりすぎてしまうからか、入室時にはチョロチョロとしか注がれていなかったため、自分で白いコックを開けて投入量を増やさせていただきました(退室時には元に戻しておきました)。
湯船のお湯は薄く白い靄がかかったような濁り方をしており、半透明で明るいグレーの湯の花がたくさん浮遊しています。お湯を口にすると、硫黄泉らしいタマゴの味と匂いの他、重曹由来と思しき清涼感のあるほろ苦さも感じられました。アルカリ性という性質や少量ながら重曹が効いているのか、全身浴すると少々のヌル感を伴うツルスベ浴感が肌に伝わり、入浴中は思わず自分の肌をさすってしまうほど気持ち良いひとときが過ごせました。こんなちゃんとしたお風呂で掛け流しの硫黄泉に入れるにもかかわらず、わずか100円で利用できるとは驚きです。
この日はたまたま公衆浴場が定休日だったためか、こちらのお風呂は実質的に公衆浴場の代わりとして機能しており、平日の日中だというのに、次々とお客さんが暖簾を潜っていました。こんなお風呂に毎日入れる地元の方が羨ましくてなりません。
館内には家族風呂もあり、部屋の扉が開いていたので、勝手ながら見学させていただきました。利用の度にお湯を張り替えるタイプのお風呂なんですね。広さもしっかり確保されており、しかも手入れもちゃんと行き届いています。素晴らしい!
単純硫黄温泉 51.2℃ pH9.2 溶存物質360.8mg/kg 成分総計361.0mg/kg
Na+:96.3mg(96.99mval%),
HS-:2.6mg(1.65mval%), S2O3--:0.5mg(0.21mval%), HCO3-:180.0mg(60.95mval%), CO3--:39.0mg(26.86mval%),
H2SiO3:360.8mg,
(所在地・電話番号とも「旅館ちさと(本館)」のものです)
鹿児島県薩摩郡さつま町湯田1354-30
0996-55-9079
ホームページ
5:30~22:00
100円
備品類なし
私の好み:★★