ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

時の流れに Ⅲ

2016-04-16 07:39:25 | 日記
勿論こんなかっこ良くなかったけど、僕が高校時代まで過ごした海岸沿いの田舎町では中学入学を控えた春休みにスポーツ自転車を購入するという風習があり、誰が仕組んだのかも分からないタイマーのスイッチが入るように、僕も例に漏れず自動的に入手した。


一点おかしかったのは、自転車店で当時流行の〝 方向指示器の付いた高級車 〟を眺めながら「いいなー」などと呟いただけで、その過剰装備車が誤って納品されたこと。 両親に咎められたが身に覚えがなく、事情を話して一式を撤去してもらい一件落着。

また、中学の校則でドロップハンドルは禁止されていたため、販売店では せっかくの格好いいセミドロップハンドルを上下逆に付け直していて、この部分だけはカタログと異なる少々滑稽な姿に変わり果てていた。 だがしかし、皆同様の改造車に乗っていたため、違和感は ほどなく消え失せることとなった。

室内に置いた新品の自転車には5段変速ギアのメンテナンスオイルが試験管様のビニールチューブに封入された形で付属。 そいつはワイン色をしていて、まだ棘の生えた真新しい臭いのするタイヤとともに、ちょっぴり大人になったような気分にさせてくれた。


入学と同時に吹奏楽部に入部。 理由は、ガットギターが6本置かれた音楽準備室の鍵が貸与されるため。 ユーフォニウムからフレンチホルン ・・・ 僕の意思とは無関係にパートを任されたが、その代わりにギターを思う存分弾くことができた。

夕立の中、コートで男子バレー部が滑り込みの練習をしているのを窓から見下ろしながら、雷鳴と一緒に弾きかき鳴らすのはそれなりに痛快だった。 時代はオカルトブームで Mike Oldfield を知ったのもこの頃。


近所の〝〇銀電化センター(田舎の小さな電気店)〟で父に買ってもらった SONY 製の FM/AMラジオ〝Action〟で深夜放送の世界に目覚め、未明にカップ焼きそばを食べたり、友人達と浜辺をぶらついたり、学校をサボって遊び回ったり、父親が税理士で事務所を運営している友人宅から調達したジョニ黒ミニボトルの詰め合わせを別の友人宅に集まって飲み干したり、電車で夜遊びに遠征し朝帰りになったりと、生活が乱れ出した僕らは兄の世代と比較され、地元で後ろ指をさされるようになった。

中学2年のとき我が家ではステレオを購入。 レシーバー中心に構成された Technics 純正コンポーネントから余裕をもってゆったりと発する細やかで太く厚く、ときに床を揺るがす音は刺激的で、夕刻から FM、深夜は AM と、想像を掻き立てる音の世界へ誘われ、僕を TV の世界から遠ざけていった。

同時期に、ステレオを購入した〝〇カ〇ン電化センター(田舎の小さな電気店)〟の若旦那に突然車に乗せられ、トラックの荷台を背中合わせにしたステージに飛入り、ギター1本で吉田拓郎の 〝 新しい朝 〟 を歌ったことが、僕のバンド活動の始まりだった。


たまに京都から750ccのバイクでやって来る従兄弟が置いていった見るからにハンドメイドの真空管アンプに、ラジオの MPXOUT 端子を繋ぐと、思いのほか澄んだ良い音がした。

薄い低音を補うために自作のスピーカーを窓際の角の天井ギリギリの高さに吊っていたが、ある夏の日、遊びに行こうとしたら そこから流れてきた曲

… おいらが贈った薔薇は …
… 港町にお似合いだよ、たった …
… 一輪挿しで色褪せる悲しい恋の血の薔薇だもの …

思わず足が止まる。 最後まで黙って聞き入ると、DJ が歌手と曲名を紹介した。 その肉声は、いかに背伸びをしようとも届くことのない大人の世界。 だけど切なく悲しい唄だった。


母が焼豚やマルシンハンバーグなんかをメインに詰め込み、概ね付け合わせの即席パスタを添えた弁当が狂おしいほどに美味く、ガツガツ食べた。 食欲旺盛だったんだろう。

Pink Floydの Wish You Were Here、吉田拓郎さんの 伽草子、Deep Purpleの Shades Of Deep Purple、The Book Of Taliesyn、Fireball、Led Zeppelinの BBC Sessions 等々、様々なアルバムを聴きまくった。 そして高校受験のときを迎える。


そんなある日、某 FM局が放送開始前に流していた曲に一目(耳?)惚れをした。 それは朝もやがかかった都会の風景から始まり、徐々に時代を退行 ・・・ エンディングでは何かに背を向けて懸命に逃げているような激しいパートを経て、原始時代を彷彿とさせるアフリカンドラムで幕を閉じる。

その試験放送は何日も続き、我慢できなくなった僕は、自宅最寄駅から電車で40分程の街にある、某メーカー経営の〝ビル一棟全てがレコード&楽器売り場〟という超大型店舗のギター売り場で男性店員を捉まえ、アドリブで弾いて聴かせた。 すると笑顔で曲名を教えてくれたのだ。 その店員もファンだったのかな?

その曲名は Mike Oldfield の〝 Ommadawn 〟。 今なお週に1回は聴いている程、この世で一番好きなアルバムとの運命の出会いを果たすこととなった。 勿論なけなしの小遣いで即購入し、ワクワクしながら家路に就いた。


高校受験のための進路指導では、地元にできた新設校への強引な誘導が盛んだったが、僕は兄と同じ歴史ある上位校を選択。

上位校は成績から見て安全圏だったのに、担任からは「オマエよりできる〇〇(←友人の名前)も〇〇〇(←新設校)を受けるんだぞ」などと嫌みを言われるし、以前から時々自覚していた偏頭痛が悪化して一時的に視力を消失してしまう症状(高校時代も時々発症して駅のベンチから動けなくなったりと、僕を困らせた)も出るようになるしで意気消沈し自信がなくなって、一旦、誘導先とは異なるもう1つの新設校へ志願変更をしたが、改めて第一志望校へと再変更し、何とか入学することができた。

因みに現在、この新設校は2校とも他校へ統合され廃校となっている。 一方、僕が選んだ上位校は当時と同じ偏差値ランクを保っている。 強引な誘導に負けて母校を失うようなことにならず、本当に良かったと思う。




フォトも段々と大人の階段を上っている。 少しずつ、あの雄姿が重なるようになってきた。


そうそう、先週は知り合いの結婚式で名古屋の徳川園へ。 庭園も人口滝もスタッフマナーもなかなかだったが、テーブル毎の撮影をする際にカメラマンが断りもなく客席を機材置きとしてしまうという粗野で劣悪な光景を目にしている。

実は、以前にも名古屋が地元という部下の結婚式で訪れており、その際、料理が綺麗に並べられた皿の中に小さな籠で蓋をした一品があったのだが、この籠を開けると中から小バエが出てきた、というお粗末もあった。

所詮二流のくせに由緒を悪用して一流ぶるなんて滑稽だ(笑)







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